掏摸ではなくて人名

http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY200702250273.html


「ピック病」という言葉を知る。その名前を見て、掏摸(pickpocket)とか鍵をこじ開けるピッキングと関係があるのかと一瞬思ったのだけれど、アーノルド・ピックという人名に由来するらしい。
以前から、若年でも痴呆症に罹りうるということは知っていた。アルツハイマー先生が最初に報告した症例も40代の人ではなかったか。
「甘いもの」に関係が深いらしい。また、アルツハイマー症候群では損傷される「短期記憶」は維持される。
記事では、


 「ピック病」と呼ばれる認知症になった公務員らが、症状の一つである万引きをして社会的地位を失うケースが相次いでいる。脳の前頭葉の萎縮(いしゅく)で感情の抑制を失って事件を起こしてしまうためで、犯行時の記憶がないのが特徴だ。
といい、「病気が原因でやった行為なのに、社会的な名誉を失い、その後の人生が大きく変わってしまうのは非常に残念だ」という医師のコメントが引かれている。
たしかに〈病気〉と認定されることによって〈犯罪者〉としてのスティグマを免れることはできる。しかし、同時に主体性が剥奪されてしまうということを考慮しなければならない。悪意を抱いたり悪事を行う資格がないと社会的に認定されるわけだ。そして、最悪の場合、ただ存在するということそれ自体が監視やさらには監禁の対象となってしまうだろう。当事者にとっても、その周囲にとっても、非常に複雑な問題だといえるだろう。
ところで、上の記事では「病」と症候群が混同されているようで、これでいいの? と思ったのだが、http://www.whonamedit.com/synd.cfm/1120.htmlとかを見ると、医学の専門家もこの2つを同義に使うこともあるんだと気付いた。ただ、一般的には

A syndrome is a "collection" of the same symptoms that occur in a large number of patients. They may not have all the EXACT symptoms but fall under the large "umbrella" of symptoms enough to include them in a "group". A disease, on the other hand, is rigidly defined with known disease mechanisms and identifiable diagnostic protocols. An example is Parkingson's DISEASE--it is well recognized and can be tested for, while Chronic Fatigue SYNDROME is again a collection of symptoms that "group" a set of patients together, but which there is no Test that can identify them as suffering from the disease. They must be diagnosed by symptom alone.
http://www.geocities.com/HotSprings/Falls/8150/
という定義は依然有効なわけですよね。私の感覚として、”disease mechanisms”が十全に解明されていないものを「病」と呼ぶのは抵抗があるのだけれど、如何なものだろうか。
さて、以前にアルツハイマー症候群の特効薬が開発中であるという話を聞いたことがある。真偽は知らない。勿論、根治されるわけではなく、記憶力の低下を強力に抑制するというものである。その時、これが実用化されたら、(プロザックやヴァイアグラと同様に)〈健常者〉が使い出すに決まっているのであり、大学入試とか司法試験のような暗記系の試験は、例えば受験者全員にドーピング検査をしなければいけないコストとかによって、制度として崩壊するんじゃないかと考えたことがあった。