要実証(「排外主義と社会階層」)

http://maishuhyouron.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-72cc.html


「排外主義は「日本人」であること以外に自らの存在の正当性を示すことのできない、社会的な弱者の痛切な叫び声と言ってよい」という。曰く、


問題になるのは、2000年代になって急増した非正規労働者と低賃金正社員のような不安定低所得層である。彼らの職場は労働基準法以下であることは当たり前で、上司に不満や要求などを口にできるわけもなく、地域社会に依存できる人もほとんど珍しくなっている。さらに悪いことに、国家による社会保障制度の生活上の必要性が極めて高いにも関わらず、健康保険や年金すら満足に払えていない人が多い上に、利害関心が人口や投票率の面で選挙結果に反映されにくいことである。先にも述べたとおり、既存のマスメディアは団塊世代を中心とした旧中間層に配慮したものである。

 こうして不安定低所得層は、職場では全く無力であるだけではなく、自らの苦境について政治からもメディアからも全く無視されているというルサンチマン潜在的に抱えている。もちろん、彼らの利害関心を代弁する議論は新書やインターネット上において一定数存在するが、そうした言説を目にするのは所詮は一握りにすぎず、一般レベルにおいては「自己責任」言説が依然として根強いものがある。

 それでは、不安定低所得層が自らの利害関心を代表しようとするためにはどうすればいいのかというと、それは「自分たちも同じ日本人である」ということになる。つまり、「日本人」であるという以外に自らの困難を訴えるための正当性の資源を何一つ持たない彼らは、容易に排外主義的な言説にシンパシーを抱きやすい性質をもっているのである。

 そもそも、「新自由主義」を批判する言説はそれなりの知的能力を要求するが、「日本人」であることには何一つ知識は必要なく、それに賛同するための敷居がきわめて低いという利点がある。「在日」それ自体は実のところどうでもよく、「日本人」であることの手応えを得るために、あらためて呼び出された仮想敵に過ぎない。

また、

そして、この排外主義は、社会経済的な利害関心とも絡み合っている。「在特会」の会長の話では、在日が年金の受給権を主張したことへの憤りが会の設立の動機であったという。これが事実かどうかはわからない。しかし重要なのは事実かどうかよりも、これが今の日本国民の世論感情に訴えると彼が確信していたことなのである。つまり、年金というのは言わば旧来の安定正社員の身分を象徴する制度であるが、現在は「普通の日本人」でも当たり前のようには享受できない「特権」になっている。その「特権」に、「在日」であるというだけで平然と要求できるという態度に対する、「普通の日本人」のルサンチマンが排外主義的感情の根底にある。

 つまり「在特会」のいう「特権」というのは、そう遠くない昔には「日本人」であれば当然のように享受できた(と少なくとも思われている)権利や生活水準、ということを意味している。その意味で、「在日特権」を批判する排外主義者は今のところごく一部にすぎないが、「公務員特権」を批判する一般世論と気分としては緩やかにつながっていることがわかる。

勿論彼が現在の「在特会」の蛮行についてどういう意見を持っているのかはわからないが、赤木智弘の「在日特権」批判については以前採り上げたことがある*1。赤木の言説も、上の主張に対する傍証とはなるだろう。ただ、さらに実証が必要。


See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091001/1254397108

ところで、「ネトウヨ」を巡るhttp://bund.jp/modules/wordpress/?p=3101について、「「ゴリ」という言葉があったのを知った」*2。「ゴリゴリ」という言葉は聞いたことがあるし、使ったこともあるけれど、それを略した「ゴリ」というのはちょっと俺も知らなかった。「ゴリ」というのはあくまでもお魚です。また、


中核の「日米戦争論」を本気で信じていた下部構成員がいたという話には笑ってしまった。あんなもの、幹部だって本気で言ってたわけではない与太にすぎなかろうに。それとも本気だったの?
http://b.hatena.ne.jp/PledgeCrew/20091005#bookmark-16503353
ただ、たしかに、レーニンの『帝国主義論』を状況の変化を無視して当て嵌めれば、帝国主義相互の市場争奪競争の激化→帝国主義間戦争ということになって、理屈としては一応筋は通っていたということになります。
帝国主義―資本主義の最高の段階としての (岩波文庫 白 134-1)

帝国主義―資本主義の最高の段階としての (岩波文庫 白 134-1)