南での反応

承前*1

MARTIN FACKLER “Attack Bares South Korea’s Complex Links to North” http://www.nytimes.com/2010/05/30/world/asia/30mood.html



Like many South Koreans, Choi Byung-wook said he felt outrage over the North Korean attack that sank the warship Cheonan and killed 46 sailors. But he also said that he did not expect the hostilities to get any worse and that his nation must continue to engage the North.
これは「天安」撃沈に対する韓国における「典型的」な見方であるという。因みに、インタヴューを受けているChoi(崔?)氏は公務員。

“South Korea has a dual perception of North Korea as both brother and enemy,” said Lee Nae-young, a political scientist at Korea University. “After the Cheonan, the majority sees the North as enemy, but the brother view also remains.”
ギャラップ/『朝鮮日報』の輿論調査によると、韓国政府の北朝鮮への制裁発動への支持率は60%。これは高いのか低いのか。
こうしたアンビヴァレントなスタンスの背景のひとつは韓国の経済的豊かさ;

The conflicting emotions stirred by the Cheonan’s sinking are also apparent in Munsan, a suburb of Seoul with rows of white high-rise apartments filled with middle-class Koreans.

“It may be stupid of us not to just sever ties, but it is not that easy with North Korea,” said Park Eun-joo, 48, who sells shoes at a local shopping mall. “We are living better than they are, so we have to forgive them.”

また、” a strong sense of shared ethnic identity with Northerners”。政治的敵対にも拘わらず、韓国の新聞では北朝鮮のサッカー関係の報道が盛り上がっている。
ところで、


John Duerden “Jong Tae-se is North Korea's answer to Wayne Rooneyhttp://www.guardian.co.uk/football/2010/may/30/jong-tae-se-north-korea-wayne-rooney


は、北朝鮮代表ティームの在日選手Jong Tae-se(鄭大世)へのインタヴュー。

Norseman

承前*1

http://d.hatena.ne.jp/dondoko9876/20091227/1261874669


曰く、


 西暦984年にグリーンランドに入植したノルウェー人は、15世紀のある時期に滅亡しました。

 土地の肥えた北欧式の牧畜・農業を地力のないグリーンランドで行ったため、環境を破壊してしまい、食糧不足に陥ったのが大きな原因です。

 しかしそれだけではありません。

 彼らの驚くべき保守性と差別性、そして暴力性が自らを滅ぼしたとも言えるのです。

 彼らの最後は餓死でした。

 暴力的争乱による社会秩序の破壊と、その結果もたらされた生産の途絶によるものです。

 当時グリーンランドには二つの社会勢力がすんでいました。

 ノルウェー人と、イヌイット人です。

 イヌイット人は西暦1200年代のいつか、グリーンランドに入植したと思われます。

 彼らはたちまちその地に適応した新しい生産様式を産みだし、ノルウェー人を飢餓に陥らせたのと同じ土地と気候条件の下で、充分に食料を得て繁栄しました。

私が参照したhttp://www.greenland.com/content/english/tourist/culture/the_history_of_greenlandには、グリーンランドへのイヌイットの最終的な到達とヴァイキングの到達は略同時期だとあったのだが*2、上の文ではイヌイットは数百年遅れていることになる。どちらが正しいのか。
いちばん気になったのは「ノルウェー人」という表現。スカンディナヴィア半島に諾威、丁抹瑞典といった国民国家が確立するのは近代以降のこと。グリーンランドに最初に到達したヴァイキングは「赤毛のエイリーク」で、アイスランドの人。諾威生まれという説とアイスランド生まれという説がある。また、グリーンランドの住民は13世紀に諾威王国に服属したが、それからしばらくして、その諾威王国が丁抹王国の属国となってしまう。これがグリーンランドが現在丁抹領であることの起源。私が見た英語のソースでは、Norwegianという表現は使われておらず、使われているのはNorse(Norseman)という表現。Norsemanの定義をWikipediaから引くと、

Norsemen is used to refer to the group of people as a whole who speak one of the North Germanic languages as their native language. ("Norse", in particular, refers to the Old Norse language belonging to the North Germanic branch of Indo-European languages, especially Norwegian, Icelandic, Faroese, Swedish and Danish in their earlier forms.)
http://en.wikipedia.org/wiki/Norsemen
また、

Norse and Norsemen are applied to the Scandinavian population of the period from the late 8th century to the 11th century. The term "Normans" was later primarily associated with the people of Norse origin in Normandy, France, assimilated into French culture and language. The term Norse-Gaels (Gall Goidel, lit.: foreign Gaelic) was used concerning the people of Norse descent in Ireland and Scotland, who assimilated into the Gaelic culture.

Vikings has been a common term for Norsemen in the early medieval period, especially in connection with raids and monastic plundering made by Norsemen in Great Britain and Ireland. Northmen was famously used in the prayer A furore normannorum libera nos domine ("From the fury of the Northmen deliver us, O Lord!"), doubtfully attributed to monks of the English monasteries plundered by Viking raids in the 8th and 9th centuries.

さて、スラヴ人、ビザンティン人、アラブ人はNorsemanのことをRus’またはRhosと呼んでいた。これはRussiaやBelarusの語源となる。露西亜はその起源においてヴァイキングによる征服国家であったわけだ。
Normanは現在の仏蘭西北部(ノルマンディ)に定住したNorsemanの一派*3。Normanはそこを拠点にさらにブリテンを征服したりしたが、初期十字軍の主力もフランク族に同化したNorman。ムスリムは十字軍を「フランク人」と呼び、ビザンティン人はあからさまに「野蛮人」と呼んだ(Zachary Karabell People of the Book*4, p.97)。また、多文化国家の範とも賞される中世シチリア王国もそもそもはNormanによる征服国家(Cf. 高山博『中世シチリア王国』)。
People of the Book

People of the Book

中世シチリア王国 (講談社現代新書)

中世シチリア王国 (講談社現代新書)

写真をお祓い

『読売』の記事;


ワケアリ写真、神社が“供養”引き受けます


2010年5月29日(土)11時52分配信 読売新聞


 何枚も焼き増しして余ってしまった写真や、なぜか人影がボンヤリ写っている心霊写真――。

 処分に困っているワケアリの写真を集めて、“供養”したうえで焼き払う「写真焼納祭」が、6月1日、石川県金沢市丸の内の尾崎神社境内で行われる。

 県カメラ商組合と県営業写真協会が毎年、「写真の日」にあたる同日に実施しており、今年で18回目。

 “写真供養”の希望者は、29日までに、県内の両団体に加盟する各店に写真を持ち込むか、6月1日午前9時〜正午に、尾崎神社まで直接持ち込む。フィルムは不可だが、今年からは、不要になったカメラ・レンズも引き受けるという。

 実行委員の太田健二さん(カメラの太田)は「写真は人の思いや魂がこもっていると思われる方もいらっしゃるので、我々できちんと供養させていただきます」と話していた。
http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/yomiuri-20100528-00003/1.htm

「供養」は佛教用語なので不適切だろう。神社本庁からクレームがつかないのか。
「尾崎神社」についてはhttp://5.pro.tok2.com/~tetsuyosie/isikawa/kanazawa/ozaki/ozaki.html 東照宮系の神社といってよく「尾崎神社」になったのは明治期の神仏分離以降であるが、何故「尾崎」なのかということはわからず。神仏分離に加えて、陸軍に境内を接収され移転を余儀なくされるとか、近代化の犠牲者でもあるようだ。

福は去る。

沖縄の普天間飛行場問題についてはこの間言及をしてこなかった。
結局は元の木阿弥、社民党福島瑞穂党首の閣僚罷免という事態になったようだ。これに関しては、様々な論評が出ているのだが、広坂さんの意見と「研幾堂」さんの意見は特に共感するところ大であった。
広坂さん曰く、


鳩山首相は「最低でも県外」と言い、かつ五月中に解決できなければ職を辞すると公言していたのだから、辞任すべきである。

万事決着とはいえなくとも、せめて「最低でも県外」という方針の延長線上で、解決の見通しが立ってでもいれば、マスコミがなんと言おうと私は辞任の必要はないと思うが、結局、辺野古ということであれば、これはもういたしかたない。鳩山氏は政権交代を成し遂げたことでもってよしとして、潔く総理の職を辞すべきだろう。
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20100528/1275058318

広坂さんの議論に関しては、カントの「統制的原理」と「構成的原理」を巡るhttp://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090219/1235057079も参照されたい。
「研幾堂」さん曰く、

鳩山由紀夫総理大臣は、福島元大臣を罷免した。私は、このようなことが為されたならば、それと並んで同時に、鳩山首相自身も、その判断に従った行動を取るべきだと思う。それは、苟も国家の最高判断者たるを求められる人が、何をさしおいてもそう為すべきところと思うからである。他に対して権限上の命令なり、処罰なりを下すに用いた判断方法、判断基準等を、全く同等に、自らに対しての判断に於いても用いないような、そのような国家上の最高指揮権者による政治は、決して、平等な人々に於ける政治とは言い得ないものである。

 そして、福島元大臣が主張し、その実行を求めたところのものは、従来、鳩山首相自身が広言し、その実行を約してきたところのものである。福島元大臣に対し罷免の処置を下した様よりすれば、そう主張し、その実行を求めることが罷免という政治的地位の剥奪に値するとの判定を、首相自身が有していることを明瞭に告げている。であるならば、鳩山由紀夫自身に対してもまた、全く同じ判定基準による政治的処罰を下すのが、最高指揮者たるものが為すべき衡平な判断と言うべきである。

 ところで鳩山由紀夫自らは、従来の主張を破棄し、従来の方針を変更したことを、謝罪するという形で、しかるべき処罰に付したと言うかも知れない。しかし、私は、それは適度なものでもなく、十分なものでもなく、そしてまた妥当なものであるとも思われない。何となれば、その主張と、その方針とによって、この国の政府、ならびに関係諸機関、そして関与する様々な人々が、数ヶ月間に及ぶ権能、職務、そして生活上の行使とエネルギーとを費やした。これを過去の損失と呼ぶならば、これに対し、福島元大臣の罷免の根拠は、将来生ずるであろう損失の防止であると言えよう。

 であるから、将来の損失への処罰として、罷免が相当すると判断するならば、その損失を生じさせるのと同じ原因物、つまり同じ主張、同じ方針、そして同じものの実行要求によって過去に生じたところの損失に対する処罰もまた、同じく罷免に匹敵するものであってこそ、衡平なものであると言われ得る。そして、大臣の地位の剥奪と匹敵する同等の処罰には、首相辞任というものしかあり得ない。
http://d.hatena.ne.jp/kenkido/20100529

まあ、鳩山内閣に今後ツキはないだろう。福は去ってしまったのだから。

ホッパー、跳び去る

EDWARD WYATT “Dennis Hopper, 74, Hollywood Rebel, Dies” http://www.nytimes.com/2010/05/30/movies/30hopper.html


デニス・ホッパー死す。癌に冒されながらも生涯現役の役者であった。『理由なき反抗』から始まるその長いキャリアは、それ自体で第二次大戦後の米国映画史の或る側面を構成しているといっていいだろう。
その膨大なフィルモグラフィ*1の中から、かつて観たことがある作品を挙げてみる。『理由なき反抗』、『ジャイアンツ』、『OK牧場の決闘』、『イージー・ライダー』、『アメリカの友人』(ヴィム・ヴェンダース)、『地獄の黙示録』、『ランブル・フィッシュ』、『アメリカン・ウェイ』、『リヴァーズ・エッジ』、『ブルー・ヴェルヴェット』、『スピード』、『ウォーター・ワールド』。NYTの記事では『イージー・ライダー』と『地獄の黙示録』と『ブルー・ヴェルヴェット』を代表作として挙げているのだが、私としては『アメリカの友人』を欠かすことはできないだろうと思うし、『イージー・ライダー』と並ぶ彼の代表作としてプッシュしたいのは『アメリカン・ウェイ』*2。これはamzon.co.jpを検索しても見つからず、DVD化はなされていないようだ。1986年、つまりはロナルド・レーガン体制の最盛期に封切られた。これを最初に観たとき、戦争に関して『宇宙戦艦ヤマト*3しかつくり出せなかった日本人は恥を知るべきだと思ったのだった。

ジャイアンツ [DVD]

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OK牧場の決斗 [DVD]

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イージー★ライダー [DVD]

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アメリカの友人 デジタルニューマスター版 [DVD]

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地獄の黙示録 [DVD]

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スピード [DVD]

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なお、デニス・ホッパーには現代アートウォーホールジュリアン・シュナーベルなど)のコレクターとしての一面がある。