挟み撃ち

http://d.hatena.ne.jp/popoi/20100321


昨年のエントリーであるが、1950年代に手塚治虫がバッシングを受けたということは知っていたものの、『鉄腕アトム』が見せしめのために小学校の校庭で燃やされたということは知らなかった。これはhttp://d.hatena.ne.jp/gureneko/20110116/1295112327で採り上げられていた「太陽族」バッシング*1とほぼ同時期。この頃、確か谷崎潤一郎の作品も国会審議で取り上げられるということがあったのではないか。上のエントリーでは米国におけるマッカーシズム*2との同時代性が指摘されており、手塚バッシングの先頭に立っていた者として、近藤日出造の名前も挙げられている。こうして見ると、主に〈右側〉の主導で進められたかにみえるが、『鉄腕アトム』を燃やした「日本子どもを守る会」というのは、『日本労働年鑑』(法政大学大原社会問題研究所)第26集によれば*3、ばりばりの共産党系団体である。つまり、左右から挟み撃ち。それから、この騒動における鳩山一郎の立ち位置は戦前の「京大滝川事件」の時の立ち位置と似ているなと思った*4
団塊の世代以前の左翼の漫画観を示す出来事として、1970年代後半の稲葉三千男vs. 津村喬論争というのがあった(『メディアの死と再生』に資料として、双方のテクストが再掲載されている)。

メディアの死と再生―青い地平をみつめて…

メディアの死と再生―青い地平をみつめて…

魯迅と木版画(メモ)

『O2』の1月号を捲っていて、陳丹青*1魯迅に関する講演を集めた本が出たことを知る(『笑談大先生』廣西師範大学出版社)。そして、『南方週末』(1月27日号)を買ったら、陳氏が「魯迅與藝術」というテクストを寄稿していた(E23)。
その中で先ず魯迅が日本から取り入れ・推進した「左翼木刻」(木版画)運動が言及されている;


使我吃驚的是、由魯迅一手培植的左翼木刻、包括魯迅自己設計的幾件書籍装幀、不但依旧生猛、強烈、好看、耐看、而且毫不過時、比我記得的印象、更優秀――縦向比較、左翼木刻相対明清時代的旧版画、是全新的、超前的、自我完満的;横向比較、與上世紀二三十年代徳国、英国、蘇俄、以及東欧的表現主義、完全是対応的、除了技術略顕粗糙、論創作的動機、状態、甚至品相、與欧洲同期的同類作品、幾乎同一水準。
但し、陳氏は、木版画も1949年以後は「全部教条化」し、結局その「黄金時代」は魯迅が生きていた5年か6年の間という短いものであったともいう。
魯迅は同時代の中国の美術運動に対しては、「清醒的傍観者」、「熱情的介入者」、「精彩的議論者」、「自己掏銭四処吆喝的賛助者」であったが、文人とアーティストのこのような交流は魯迅以前の中国にはなかったし、魯迅以後にもないという。
また、「在文学與思想方面、歴来総是強調、誇張魯迅戦闘的一面、決裂的一面、政治正確的一面、忽略他文学中閑適的一面、游戯的一面、頽廃的一面」。

アーロン・コープランドなど

数日前。
CDと本を買う。

Eiji Oue/Minnesota Orchestra Copeland: Third Symphony, etc.

Copland-Third Symphony; Appalachian Spring Suite; Fanfare for the Common Man

Copland-Third Symphony; Appalachian Spring Suite; Fanfare for the Common Man

指揮は大植英次。「庶民のファンファーレ」*1も入っている。

陳新『歴史認識 従現代到後現代』*2北京大学出版社、2010


序(于沛)


第一章 歴史思惟
第二章 西方現代歴史認識
第三章 西方後現代主義歴史認識
第四章 観念的歴史性――認識與反思
結語 態度決定歴史――後現代状況下的歴史学


後記

任軍『理解胡塞爾 従自然主義批判到先験現象学』中国社会科学出版社、2010


引言
第一章 従自然主義批判進入先験現象学的道路
第二章 自然主義的形成與伝承
第三章 自然主義的問題及其現象学分析
第四章 従生活世界到先験現象学
結語


附録一 胡塞爾現象学的両種自然態度之懸擱
附録二 胡塞爾現象学中的歴史進路及其意義
附録三 胡塞爾現象学自然主義批判
附録四 胡塞爾現象学作為歴史哲学的意義
附録五 作為科学基礎理論的胡塞爾現象学思想
附録六 作為自然科学之基礎的胡塞爾現象学
参考文献
後記

*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101004/1286215386

*2:英題はHistorical Knowing: From Modern to Postmodern

Hand Made by Tinho Pereira

上海在住の伯剌西爾人ギタリストTinho Pereira*1のリーダー・アルバムHand Madeを聴く。


1 Brazilian Groove
2 Verdiana
3 Walter's Song
5 Desabafo in Blues(My Picture of You)
6 Sol e Mar
7 Shanghai My City
8 Amistad
9 Natalia
1月24日に彼のライヴがあって、その場で買ったのだが、封を開けて聴き始めたのは昨日辺りから。上海でレコーディングされ、伯剌西爾でミキシングされた。参加したミュージシャンの国籍は伯剌西爾のほかに、米国、モーリシャス諸島、コロンビア、チリ、白露、キューバ仏蘭西、中国。
“Brazilian Groove”は「伯剌西爾的」というよりは、まさにフュージョンはこのようにしてつくれという感じの曲。最後にドラム・ソロがあって盛り上がるかなと思わせて、次の瞬間に肩透かしのようにホーンが入って唐突に終わってしまうところが何故かかっこいい。”Walter's Song”は全編バロック的なギター・ソロ。” Desabafo in Blues”はサックス・ソロから始まって、そのまま歌へ。また、オルガンとギターの絡みがいい。”Sol e Mar”はパーカッションを前面に出した、アフリカ的なビートを楽しむ曲。”Shanghai My City”ではメローなミディアム・テンポにTinho Pereiraの何語か不明のラップが絡む。”Amistad”と”Natalia”はまさにこれぞ伯剌西爾! という感じのノリ。