セクシュアリティと性別差異(メモ)

ジェンダーで学ぶ教育

ジェンダーで学ぶ教育

伊藤裕子「「女」になる、「男」になる――ジェンダー発達心理学」(in 天野正子、木村涼子編『ジェンダーで学ぶ教育』世界思想社、2003、pp.25-39)


少しメモ。


(前略)男子ではマスターベーション経験率が射精経験率を追いかけるように重なっていく。ところが女子のマスターベーション経験率は(かつてに比べれば飛躍的に増大したが)、月経とはなんら関連なく、結びつくの性交経験である*1。すなわち、女子の場合、異性との性関係を経て、性的な興奮を経験するなかで性的な欲求を自覚し、マスターベーションを経験すると考えられる。
女子と男子の、むしろ性交に至るまでの性的欲求のもち方に違いがみられるのは、一つには外性器の構造の違い(ペニスとクリトリス)もあるだろうが、そこにはやはり文化のなかで形成されてきたセクシュアリティ二重基準、すなわち、女性が性的な快感を自ら得ることをタブー視するこれまでの歴史がある(略)遠いアフリカの地で女子に施される割礼(クリトリス切除)の例を挙げなくとも、夏のプール指導で、生理中の女子にタンポン使用を禁じる教育委員会があるということで十分だろう*2。それは、未婚の女子が性器を自己の管理下におくのは望ましくないからだという。ここに象徴されるように、女子にマスターベーションの経験が少ないということは、性的欲求を自己の管理下におく者が少ないことを意味する。ある研究によると、性的なビデオを見せたときの生理的反応(脳の興奮、膣の反応など)は明らかに性的興奮のレベルに達していたのに、多くの女子学生たちはそのことを自覚することができなかったという*3。(pp.36-38)

*1:日本性教育協会『「若者の性」白書』(小学館、2001)が参照されている。

*2:何処の教育委員会

*3:出典不明。