Ugaya on conspiracy theory

デイリー新潮編集部「はびこる「陰謀論」6つの特徴とは――フェイクニュースの見分け方」https://www.dailyshincho.jp/article/2017/07030620/


7月の記事だけど、烏賀陽弘道*1フェイクニュースの見分け方』という本の紹介。
曰く、


「真実」と「陰謀論」をどう見分けるのか。報道記者の烏賀陽弘道氏は、新著『フェイクニュースの見分け方』で、「陰謀論」(または「陰謀史観」)の特徴を以下のようにまとめている。


(1)ある出来事(あるいは世界・国内社会全般)の背景には、何らかの「秘密の強い力・組織」が働いている、と考える。こうした力・組織の例としては、日本政府やアメリカ政府、米軍、中国、韓国、ユダヤ人(ユダヤ系金融資本、ユダヤ人国際機関なども含む)、ロスチャイルド家フリーメーソンナチス、ロマノフ家、共産主義者共産党(かつてはコミンテルン)、宇宙人、UFO、反日勢力などがある。

(2)こうした「強い力」を持つ者たちの狙いは、日本や世界を自分たちの思い通りに動かすことだ。

(3)その「強い力」を持つ勢力が、裏で社会や歴史を動かしている。

(4)この勢力や陰謀の存在は、秘密のまま決して明るみには出ない。

(5)こうした勢力や陰謀の存在を、新聞・テレビなど主流マスコミは一切伝えない。それは「強い力」を持つ勢力の圧力による。またはマスメディアそのものが彼らに支配されているからである。

(6)自分たちが利益を得た場合は陰謀論は登場しない。自分たちが何らかの「被害」を受けたと論者が考えるときのみ、その原因として陰謀の存在を主張する(例:ルーズベルト米大統領は日本の真珠湾攻撃を事前に知っていた。日本を「騙し討ちの卑怯な国」と非難して世論を参戦に向かわせるためにわざと放置した)。

陰謀理論で好まれる或る種のトートロジー

「PはQの陰謀」と主張する人に、論拠となる事実を尋ねても、「それはない。なぜならQが隠蔽しているからだ」といった回答が返ってくるばかり。

 簡単にいえば、「Pは陰謀だ。しかし証拠は存在しない。なぜなら陰謀だから」という堂々巡りの主張なのである。厄介なのはこうした論理は、完全に否定することができない。「ないこと」の証明は不可能に近いのだ。

陰謀理論については既に何度も何度も言及しているのだが、ここでも陰謀理論について最初に書いた断章*2採録しておく;

さて、私見では、「陰謀理論」の前提にあるのは、個人にせよ集合体にせよ、〈主体〉の力能への過信である。そもそも自らの〈主体性〉に自信のある人は「陰謀理論」にはあまりはまらないだろうけど、自らにはそのような力能はなくても、どこかにオムニポテントな個人的・集合的〈主体〉がいる筈だという願望的確信が抱かれる。特に、自らの〈主体性〉が危機的状況にあると感じている人にとって、「陰謀理論」は自らの剥奪された(と妄想されている)オムニポテントな〈主体性〉が実在若しくは架空の〈主体〉に投影されているわけである。「陰謀理論」というのは、〈主体性〉の崇拝であり、その限りでは〈ヒューマニスティック〉であるといえよう。或いは浪漫主義的ということだろうか。(略)「陰謀理論」のもう一つの機能というのは、主観的というか想像的な〈勝利〉をもたらすということである。「陰謀理論」を唱える人・信じる人にとって、(所謂エリートも含めて)世人はオムニポテントな「陰謀」の〈主体〉によって欺かれており、自分はといえば、「陰謀」によって世の中を好き勝手に操作する力能はないけれども、少なくとも「陰謀」に気付き、それを見抜いているということになる。何かしらロマンティック・アイロニーに似ていなくもない、この〈勝利〉によって傷つけられた〈主体性〉は幾分か癒されるというわけだ。
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20050904