「取締役」だった!

承前*1

『スポーツ報知』の記事;


古市憲寿氏、日大アメフト部・内田前監督の取締役辞任に「トカゲのしっぽ切りみたいにならない」
2018年6月7日8時46分 スポーツ報知

 7日放送のフジテレビ系「とくダネ!」(月〜金曜・前8時)で日大アメリカンフットボール部の内田正人前監督が日大が出資する「株式会社日本大学事業部」の取締役を5月30日付で辞任していたことを報じた。

 番組では一方で日大の人事部長、保健体育審議会事務局長は役職に留まって自宅待機という状況と報じた。こうした状況にコメンテーターで社会学者の古市憲寿氏(33)*2は「初動を間違えた事件だなと思うんですけど」とした上で「人事って組織における権力の根源だと思うので、そこを辞めないってことはまだ影響力あるって見るのが普通でしょうし。そもそも内田さんの問題だけじゃないって日本大学全体の問題ってことが分かったわけですよね。と考えると、トカゲのしっぽ切りみたいに内田前監督の処分でってことになかなかならないんじゃないかなと思います」と指摘していた。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20180607-OHT1T50056.html

内田正人が「日本大学事業部」の「取締役」だということは知らなかった。「日本大学事業部」といえば、井ノ口忠男という(オーディエンスにとって)新しいプレイヤーと大いに関係があるのだった*3

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180515/1526402283 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180517/1526526344 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180518/1526605124 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180520/1526830731 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180521/1526870676 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180522/1526951457 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180523/1527042148 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180524/1527126099 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180524/1527139574 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180525/1527213239 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180525/1527235507 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180526/1527301904 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180527/1527395126 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180529/1527606338 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180530/1527650525 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180601/1527853486 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180602/1527961419 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180604/1528124480

*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140102/1388675061 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160106/1452053491 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160120/1453264420 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160326/1458965055 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160619/1466310752 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160622/1466563386 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170808/1502217788 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20171027/1509073175 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180125/1516858031 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180206/1517935255 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180315/1521121373 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180429/1524968231 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180523/1527094826

*3:See 「日大アメフト騒動 “黒幕コーチ”の「フェラーリ」「大阪堂島ビル」「芦屋の豪邸」」http://news.livedoor.com/article/detail/14821825/

或る遺稿

NHKの報道;


5歳女児死亡事件 食事十分与えず両親逮捕
2018年6月6日 13時28分

東京 目黒区で、5歳の女の子が死亡し、33歳の父親が暴行を加えたとして逮捕・起訴された事件で、警視庁は、この父親と25歳の母親が十分な食事を与えなかったうえ、病院に連れて行かずに死亡させたとして、保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕しました。

ことし3月、東京 目黒区の船戸結愛ちゃん(当時5)が死亡し、父親の船戸雄大容疑者(33)が前の月の2月に自宅で結愛ちゃんの顔を殴るなどの暴行を加えて大けがをさせたとして、傷害の疑いで警視庁に逮捕され、その後、起訴されました。

警視庁がさらに捜査を進めた結果、雄大容疑者と母親の船戸優里容疑者(25)がことし1月下旬以降、結愛ちゃんに十分な食事を与えずに栄養失調状態にさせたうえ、その後、病院に連れて行かずに死亡させたとして、保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕しました。

これまでの調べによりますと、結愛ちゃんは、1月下旬に香川県から都内に引っ越したあと、雄大容疑者と一緒に暮らすようになり、その後、2か月ほどの間に体重が4キロほど減って、死亡した時には同じ年齢の子どもの平均から7キロ余り少ない12キロほどだったということです。

警視庁によりますと、調べに対し2人は容疑を認め、雄大容疑者は「しつけのつもりでやった」と供述しているほか、優里容疑者は逮捕前の調べに「自分の立場が危うくなることを恐れて見過ごしていた」と話していたということです。


「もうおねがい ゆるしてください」
警視庁によりますと、死亡した船戸結愛ちゃん(当時5)は、しつけと称して、毎日午前4時ごろに自分で起きて体重を測ったり、ひらがなを書く練習をしたりすることを命じられていました。
(略)
結愛ちゃんは父親に「太っている」と指摘されたことから、食事は1食につきスープ1杯か、おわんに半分のご飯とみそ汁などしか与えられず、ノートには自分で測った体重を毎日、書き記していたということです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180606/k10011466491000.html

「結愛ちゃんが鉛筆で書いた書き込み」は読む度に切なくなり、コピペするのも忍びないという引用者の自分勝手な理屈でカットすることにした。そのテクストは、


「「もうおねがい ゆるしてください」死亡した5歳女児のノート」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180606/k10011466621000.html
音喜多駿*1「「もうおねがいゆるして」防げなかった虐待死…東京都と児童相談所は何を変えるべきか」http://otokitashun.com/blog/daily/18123/


などに引用されている。先ず、5歳なのにこれだけきちんと言葉が綴れているということにはなまるをつけてあげなければいけないと思った。これから成長すれば、様々な言葉を綴ったり刻んだりすることができた筈なのに、これが遺稿になってしまったわけだ。
『スポーツ報知』の記事;


尾木ママ、虐待死の女の子のノートに涙…「邪魔になっても虐待して命奪わないで!」と訴え
2018年6月7日10時34分 スポーツ報知


 尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏(71)*2が7日、自身のブログを更新。東京都目黒区で5歳の女の子が虐待死し、両親が逮捕された事件で、女の子が「ゆるしてください」などと書いたノートが見つかっていたことに「涙で視界がボヤけて読めません」と悲痛な思いをつづった。

 尾木ママは「5歳の女の子が毎日一人四時に起きて、幼稚園・保育園も行かせてもらえず独習で練習、書けるようにさせられた平仮名でしっかりしっかり命乞いしてる叫び SOS 涙で視界がボヤけて読めません」と記述。

 「児相が関わっているのに 家庭訪問までしているのに 転居前には2回も児相が親から引き離し預かっていたこともあるというの明白な虐待リスクの高い女の子を命乞いの平仮名のSOS綴らせて救えなかった」とつづり、「児相や誰かを責めるつもりはありませんーーただ悔しくて情けなくて目覚めても胸が熱くなります もやもやします」と吐露した。そして「私たちの日本社会 こんなに悲しい女の子の命さえ救えないのでしょうか?辛いです、、」と記した。

 また、7日未明に更新したブログでは「連れ子が邪魔になっても、虐待して命奪わないで!!」とし、「邪魔ならどこか施設にでも預けてほしい!命奪わないでください!絶対に殺さないで!」と訴えていた。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20180607-OHT1T50069.html

ところで、多くの虐待事件において、「しつけ」というのは虐待の口実にすぎないわけだが、この「父親」の場合、マジで「しつけ」だと思っていた可能性はあるようにも思えた。4時起きの字の練習も、相手が継子だからということではなく、実子でもこのくらいの大きさになればやらせていた可能性はあるんじゃないか。また、「しつけ」というのはこういうものだと、自分の経験その他を通して思いこんでいたのかも知れない。「親学」系の人々*3はどんな卓見を示しているのだろうか。
See also


「5歳女児死亡 両親「虐待発覚恐れ病院行かず」」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180606/k10011466821000.html

『ハン・ソロ』を観た

日曜日、Solo: A Star Wars Story(中国でのタイトルは『游侠索羅・星球大戦外伝』)を観に行った。日本では6月末からなのか*1
この映画では、ハン・ソロ、チューバッカ、そしてランド・カルリジアンという『スター・ウォーズ』世界の重要なキャラクターたちの出会いが描かれる。また、他の『スター・ウォーズ』映画とは些か趣を異にしている。全体的な主題である、シスVS.ジェダイ、帝国VS.レジスタンスというのは殆ど前面に出て来ない。描かれるのは、銀河帝国の辺境(底辺)におけるアウトローたちの小競り合いとサヴァイヴァル。また、ハン・ソロと幼馴染のキラとの報われぬ恋を描くラヴ・ストーリーとして理解することも可能だ。まあ銀河帝国を舞台とした西部劇ということだろう。西部劇として最もエクサイティングな部分はハン・ソロがトビアスベケットの一味に加わって列車を襲撃するシークエンス。う『スター・ウォーズ』世界からすると、ハン・ソロとランド・カルリジアンのミレニアム・ファルコンを賭けた大博打の方が重要なのかも知れないけれど。ところで、前半で兵隊としてのハン・ソロが動員される戦争のシーンは(『スター・ウォーズ』全般の如何にもSF的な戦争ではなくて)戦争映画としてリアル。
さて、ハン・ソロを演じているのはオールデン・エアエンライクだけど、ハン・ソロ役というのは独特の困難がある。若き日のハン・ソロといえば当然ハリソン・フォード*2で、本人は老いたとはいえまだ健在なのだ。多くのオーディエンスはどうしても(例えば)『エピソードIV』のハリソン・フォードハン・ソロと比較してしまうだろう。エアエンライクは素顔においては決してハリソン・フォードに似ているわけではないのだけど、(少なくとも)私にとっては違和感はなかった。

なお、この映画では「ハン・ソロ」という名前の由来も明かされるのだが、それをずばり言ってしまうと、ネタバレということになるだろうか。

パンチョ加賀美

『サンスポ』の記事;


2018.6.4 05:02

ピンキーとキラーズパンチョ加賀美さんが死去


 往年の男女5人組グループ、ピンキーとキラーズ*1のドラム、パンチョ加賀美さんが死去していたことが3日、分かった。74歳だった。死因は不明。同グループの紅一点でボーカルを務めた歌手、今陽子(66)が公式ブログで明かした。

 ピンキーこと今は故人と昨年に会う約束をしていたが、入退院を繰り返していたとし、「励ましのLineを送ったら…もう自分で読めなくて身内に何回も読んでもらって涙を流していたそうです」と述懐。仲間を亡くした無念を募らせ、「これでオリジナル ピンキーとキラーズは無くなりました…でも私が大切にピンキラナンバーを歌い続けていきます」と誓った。

 葬儀は家族だけで済ませ、家族の意向で大々的なお別れの会は開催しないことも明かした。

 関係者によると、密葬はこの日、営まれたという。また、パンチョさんは生前、C型肝炎や肝細胞がんを患っていることを公表していた。

 同グループは1968年に「恋の季節」でデビューし、同年から4年連続でNHK紅白歌合戦に出場。パンチョさんはオリジナルメンバーで、今が72年に脱退後にニュー・キラーズとなったグループでも活躍し、74年に解散後は女性歌手とユニットを組むなどして活動していた。
http://www.sanspo.com/geino/news/20180604/geo18060405020018-n1.html

See also


「「恋の季節」の「ピンキーとキラーズ」ドラムのパンチョ加賀美さん死去…今陽子がブログで報告」http://www.hochi.co.jp/entertainment/20180603-OHT1T50062.html
「「ピンキーとキラーズ」 パンチョ加賀美さん死去」https://www.j-cast.com/2018/06/04330404.html


ところで、『産経新聞』が元号デフォルトなのに対して、『サンケイスポーツ』は西暦を使用していることに今気づいた。

Kate Spade(in Japanese)

承前*1

ケイト・スペイドの訃報。日本語を中心にメモ。


「デザイナーのケイト・スペードさん死亡 自殺か」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180606/k10011466221000.html
飯田香織*2「【Kate Spade突然の死】」http://blogos.com/article/302297/
ケイト・スペードさん死去 日本にも多くのファン...「本当に悲しい」」https://www.j-cast.com/2018/06/06330610.html?p=all


また、BBCの報道;


Kate Spade: Fashion designer found dead in New York home” https://www.bbc.com/news/world-us-canada-44374844
Kate Spade: Tributes pour in for 'great talent' after apparent suicide” https://www.bbc.com/news/world-us-canada-44379095


夫アンディの声明;


Erica GonzalesKate Spade Husband Releases Statement on her Death” https://www.yahoo.com/lifestyle/kate-spade-husband-releases-statement-222300866.html
Kate Taylor “Kate Spade's husband says in heartbreaking statement that he is 'appalled' that his wife's suicide note to their 13-year-old daughter has been 'heartlessly shared'” https://m.stamfordadvocate.com/technology/businessinsider/article/Kate-Spade-s-husband-says-in-heartbreaking-12973925.php
Kate Spade's husband: Apparent suicide a "complete shock"” https://www.bbc.com/news/world-us-canada-44392792


ところで、彼女は2016年にKate Valentineに正式に改名している。Valentineは彼女の祖父のミドル・ネーム。これは、過去のKate Spade New Yorkと新たに立ち上げたブランドFrances Valentineという「2つの世界を分離する」ためであったという*3。 

何が彼をさうさせたのか

昨日『二度目の人生を異世界で』騒動を取り上げた際*1、まだ事情を呑み込めていなかったせいもあって、細部においては頓珍漢なことを言ってしまったのではないかと気付いた。
「TVアニメ化されるというラノベ二度目の人生を異世界で』の設定がひどすぎて目眩がする」というエントリー*2に、この『二度目の人生を異世界で』の主人公「功刀蓮弥」の「設定」*3 というのが引用されていたので、孫引きしてしまおう;


(前略)
界渡り前は、功刀一刀流第14代当主。
幼少より剣道を嗜み、13歳にして剣術へ移行し、その才能を開花させる。
15歳より、武者修行と称し中国大陸へ渡り黒社会で活動。
刀一本で大人数へ切り込み、生還する様から「剣鬼」の異名で呼ばれる。
黒社会活動中の殺害人数は5年間で912名に及ぶ。
その後、世界大戦に従軍。
4年間の従軍期間中の殺害数は3712名、全て斬殺。
「ブレードオーガ」のコードネームで畏怖される。
終戦後は功刀流の家督を継ぎ、後進の育成や、剣術の普及に尽力。
各地で公演や剣術の実演を行い、功刀一刀流を広く普及させ、国内外に49の道場を持つに至る。
晩年は刀匠として大成し、「華蓮」の銘を持ち、人間国宝に指定。
美食家としても知られ、自身も高い料理の腕を持つ。
94歳と127日目にして、老衰にて死去。
生涯殺害数、5730名。
「設定」はこれだけなの? 「生涯殺害数、5730名」、しかもすべて刀による「斬殺」。これは途轍もないことだ。フィクションであるといえども、何らかの正当化がなければ読者は納得しないだろう。納得してしまう人がいたら、その人間性を大いに疑うべきであろう。例えば、殺生を重ねることによってしか(重ねても)癒されることのないトラウマを抱えているとか。或いは、洗脳によって自らを殺人機械へと改造したとか。或いは、(〈村正〉のような)呪われた妖刀を持っていて、その妖刀が殺人を唆し続けるとか。
10年前に秋葉原虐殺事件を起こした加藤智大について、内田樹氏は、

人を殴ろうとしたことのある人なら、他人の顔を殴るということがどれくらいの生理的抵抗を克服する必要があるかを知っているはずである。

そこに生身の身体があり、その身体をはぐくんできた歳月があり、親があり、子があり、友人知人たちがあり、彼自身の年来の喜び悲しみがそこに蓄積しているということを「感じて」しまうと、どれほどはげしい怒りにとらわれていても、人を殴ることはできなくなる。

人間の身体の厚みや奥行きや手触りや温度を「感じて」しまうと、人間は他人の身体を毀損することができない。

私たちにはそういう制御装置が生物学的にビルトインされている。

他人の人体を破壊できるのは、それが物質的な持ち重りのしない、「記号」に見えるときだけである。

だから、人間は他者の身体を破壊しようとするとき、必ずそれを「記号化」する。

「異教徒」であれ、「反革命」であれ、「鬼畜」であれ、「テロリスト」であれ、それはすべての人間の個別性と唯一無二性を、その厚みと奥行きとを一瞬のうちにゼロ化するラベルである。

そこにあるのが具体的な長い時間をかけて造り上げられた「人間の身体」だと思っていたら、人間の身体を短時間に、「効率的に」破壊することはできない。

今回の犯人の目にもおそらく人間は「記号」に見えていたのだろう思う。

「無差別」とはそういうことである。

ひとりひとりの人間の個別性には「何の意味もない」ということを前件にしないと、「無差別」ということは成り立たない。
(「記号的な殺人と喪の儀礼について」http://blog.tatsuru.com/2008/06/11_1020.php

と述べている。それに触発されて、私は、

(前略)「そこに生身の身体があり、その身体をはぐくんできた歳月があり、親があり、子があり、友人知人たちがあり、彼自身の年来の喜び悲しみがそこに蓄積しているということを「感じて」しまうと、どれほどはげしい怒りにとらわれていても、人を殴ることはできなくなる」ということよりも手前のレヴェル。それは物理的な抵抗だろう。誰かを殴れば私も手が痛い。また、ナイフで刺すにしても、ナイフが他者の皮膚を、また脂肪を刺し貫こうとするとき、やはり物理的抵抗を受けないことはない。さらに、他者の悲鳴や呻き。また、血、返り血。これらから、それが「記号」ではなく「生身の身体」であることを了解するのに大した想像力は要らないだろう。殺戮の技術は、殺す者の衝撃というか〈心の痛み〉に配慮して、殺される者の「生身の身体」を隠蔽する方向で進歩してきたともいえる。また、直接殺される者の「生身の身体」に対峙することに耐えられないから、多くの場合、殺したい者は必殺仕掛人とか刑務官(死刑執行人)等々の〈プロ〉に委ねる(押し付ける)ことになる。加藤智大は敢えて(?)犠牲者の悲鳴とか返り血を引き受けた。勿論、日本では飛び道具を合法的に入手することは難しいということはあるかもしれないが、何が加藤智大に犠牲者の悲鳴とか返り血を引き受けさせたのか。それはわからない。ただ、「記号化」ということでは答えにまだなっていないということはたしかだが。
と書いた*4。「功刀蓮弥」は如何にして「生理的抵抗」「物理的抵抗」を克服したのか。
さて、


Toratarou*5「原作者の差別発言で主演声優全員一挙降板、「二度目の人生を異世界で」アニメ化中止で小説版は出荷停止に」https://buzzap.jp/news/20180606-nidome-anime-cast-off/


上記の設定について、


第二次世界大戦で剣を使って殺戮……となると「百人斬り」が思い浮かぶのはもちろんですが、斬り殺した「3712人」という数字も、南京事件が起きたとされる「1937年12月」を想起させるもの。

さらに94歳という没年も、南京事件に関与していたとされつつも皇族として戦犯指定を免れ、天寿を全うした上海派遣軍司令官・朝香宮鳩彦王(満93歳没)とほぼ同じです。

という解釈を提示している。その是非はともかくとして、このような読みも可能になるという例示として引用しておく。
また、今回「降板」した声優たちが〈在日認定〉されるという差別の上塗りが起きているらしい*6

「最低賃金」

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

湯浅誠*1『反貧困−−「すべり台社会」からの脱出』から、抜書き。


日本の最低賃金*2が低すぎることは、二〇〇七年に大きな社会問題の一つになった。日本の場合、最低賃金は以前から労働者の家計(生計費)を支えるに足るものではなかった。最低賃金が想定していたのは、主婦パート・学生アルバイトのいわば「お小遣い」であり、それは老齢年金が高齢者の「お小遣い」だったのと対応していた。主婦・学生は夫または親の庇護下で生計を立てるべきもの、高齢者は子どもまたはそれまでの資産で生計を立てるべきもの、というのが日本の「常識」であり、それゆえに、以前から夫に頼れない母子世帯、親に頼れないフリーター、子に頼れない高齢者は数多く貧困化していた。
しかし、一九九〇年代を通じて雇用が融解する中で非正規労働が爆発的に増え、パート・アルバイトなどの非正規労働で家計を支えざるを得ない世帯が、一般世帯の中にも広がってきた。これを私は「一般世帯の母子世帯化」と呼んでいる。深夜のコンビニ・牛丼屋・立ち食いそば屋・ファーストフード店でのアルバイトは、私が学生だった二〇年ほど前には学生が小遣い稼ぎにやるものと相場が決まっていたが、今では四〇代、五〇代の「働き盛り」の男女が若者に混じって働く光景がありふれたものになった。(p.185)

発音の問題ではなかった

“Pomegranate contamination kills woman in Australia” https://www.bbc.com/news/world-australia-44378911


4月に濠太剌利のサウス・オーストラリア州で、埃及産の冷凍柘榴を食べた64歳の女性がB型肝炎*1 に罹り死亡したという話。濠太剌利では、今年の3月にリステリア菌で汚染されたメロンを食べた3名が死亡するという事件も起こっていたのだった*2
日本語のザクロとは対照的に英語のpomegranateというのは何故か発音しにくい。だから、記事のタイトルを見たとき、一瞬、pomegranateを発音しようとして、舌を噛んで死んでしまったのかしら? と思ったのだった。
なお、柘榴のイメージということで、ヘザー・ノヴァの”Redbird”とケイト・ブッシュの”Eat the Music”を再度マークしておく*3

REDBIRD

REDBIRD

Red Shoes

Red Shoes

自転車に恋して

『ハフィントン・ポスト』(『朝日新聞』)の記事;


2018年06月05日 19時20分 JST | 更新 2018年06月05日 19時22分 JST
サドルに体液つけた疑い、共産党所属の長野市議を逮捕
長野中央署は認否を明らかにしていないが、性的な意図も否定できないとして調べている。


朝日新聞社
サドルに体液つけた疑い 長野の市議を逮捕

 他人の自転車のサドルに自身の体液をつけたとして、長野県警長野中央署は5日、長野市伊勢宮2丁目の長野市議、生出光(おいでひかる)容疑者(28)を器物損壊容疑で逮捕し、発表した。署は認否を明らかにしていない。

 署によると、生出容疑者は1月30日午後11時50分ごろ、県北部の一般住宅敷地内に駐輪してあった自転車のサドルに、自身の体液を付着させた疑いがある。

 署は性的な意図も否定できないとして調べている。

 生出容疑者は日本共産党長野市議団に所属。2015年9月に市議に初当選し、現在1期目。

朝日新聞デジタル 2018年06月05日 17時31分)
https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/05/nagano_a_23451194/

メディアで使われる「体液」*1という語は精液という意味なのだが、まあ突然自転車とやりたい! という欲望が擡げてきたわけね。そういえば、米国では自動車とセックスしようとして(?)逮捕された男がいたのだった*2。生出さんが共産党内部で美学的理由でもって迫害されないことを願う。社会主義リアリズム(笑)とは相容れないシュールレアリスムに接近したということで。