Living, Loving, Thinking

2018-06-13

「初めて読んだ時」

柳広司*1「未完のカーニバル――ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟』」『図書』(岩波書店)832、2018、pp.36-40


少し抜書き。

カラマーゾフの兄弟*2を初めて読んだ時、私は圧倒された。それまで自分が読んできた小説――作者の身勝手な告白や身辺雑記、他人にはどうでも良い”ほれたはれた”の恋愛話、テレビのワイドショーでも見ているような卑小な犯罪*3、正義は必ず勝つ勧善懲悪物語、あるいはその逆の悪漢小説*4、さもなければ荒唐無稽な御伽噺といったものは、いったい何だったのかとしばし呆然となった。

何も『カラマーゾフの兄弟』が”そういった話ではない”と言っているのではない。むしろ逆だ。『カラマーゾフの兄弟』は作者の身勝手な告白文や身辺雑記であり、他人にはどうでも良い恋愛話であり、テレビのワイドショー的な卑小な犯罪(所詮は田舎の一家族内の揉め事だ)、同時に勧善懲悪物語でも、その逆の悪漢小説でもある。さらに言えば、悪魔が出てくる荒唐無稽な御伽噺だ。

私が打ちのめされたのは「一つの小説にここまで盛り込むことができるのだ」という事実であった。自在な書き方はそのための手段だ。視点の問題など何ほどのことであろう。(p.39)1

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)

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