私にはほぼ無関係だが、それにもかかわらず


gachapinfanのスクラップブック - [gov] 関東大震災の虐殺の話とダルフールのジェノサイドの話

 上の記事を読んで考えたことを書きます。gachapinfanさんへの批判とか反論とかを意図してはいません。

もし「日本人」に対するレッテル貼りを避けたいのであれば、町山氏のように、相手にとって身近な虐殺の例を持ち出して問題の普遍性を主張すべき。

 たぶん、そうではないと思う。レッテルうんぬんはおいておく。相手にとって身近な「虐殺」の例を持ち出すことは、一義的には、相手にとって身近な「虐殺」の例を思い出させることでしかない。自分にとって身近な例であればあるほど、普遍性を意識することとはほど遠くなる。

 立場の交換可能性は現実には擬制にすぎない。「自分も同じような目に遭うかもしれないから」とか「かつて自国民が他人を同じような目に遭わせたことがあるから」という気持ちに訴えるという方法では役に立たない問題がたくさんある。ルワンダがそうだった。ダルフールもそう。日本人にとってアフリカはあまりに遠い。
 遠いアフリカで起こっていることなど私たちの日常生活とは関係がない。あと何万人が殺されても、あるいは助かっても、私の生活にはほとんど無関係なことだ。そんなひどいことを自分がしたことはないし、自分がこの先同じようなひどい目に遭うこともたぶんないだろう。と思う人が多いだろう。私も思う。日本を含めた国際社会がルワンダを見捨て、ダルフールを見捨てているのはまさにそれが理由だ。だからといって無理に卑近な例に引き寄せて考えることは、今回の一連の論争のように、無用な摩擦と大量の誤解を招く。

 問題があれば解決しなければならない。少なくとも改善しなければならない。そのために自分がすべきことはする。重大な問題であるにもかかわらず他の人が関心をあまり持っていない事柄に気づいたら、自分ができる範囲で関わる。単にそういうことだと思う。

 およそ問題に普遍性があるかどうかということは、「親近感を感じるかどうかにかかわらず、人類の一員として関与しなければならないこと」かどうかにかかっている。ジェノサイドという問題はまさにそれ。
 非難とか皮肉でなく事実として言うのだが、たとえばビンテージものの電子楽器の流通の保護のためには動いても、スーダン人数十万人の命のためには動かない人も多い。そのことからしても、世の中になにか普遍的な価値というものが存在すると考える人はあんまり日本ではいないのかもしれない。
 「人それぞれに価値観がある、価値観の押しつけはいけない、複数の正義があってどれも正しい、違う考えの押しつけこそが間違いの原因だ」そんな考えからは、外国で起こっている悲惨な事態に介入しようという発想など出るわけがない。そのような間違ったタイプの価値相対主義的な考え方を改めなければ、ルワンダのような事件が再び起こっても私たちは相変わらず無関心なままで過ごすと思う。現にダルフールの事態に対して日本ではほとんど関心が持たれていない。


ダルフール問題が大事だと考える方たちへ。

1. 個人レベルでできることは何だろう、と考えてみたのですが、速効性のあるようなものが思い浮かびません。よい方法があればご教示ください。

2. なんだか私が今さらこういうことを書くと非常に間抜けのようにも見えるし、finalventさんをはじめとして以前からコミットしてきた方々に対して失礼であるのは承知しておりますが、継続的コミットメントのために、finalventさんが尽力していらっしゃるhttp://wiki.fdiary.net/sudan/などの関連サイトの拡充に参加したり(一番簡便な方法はリンク紹介)、ジェノサイド問題についての補完サイトを立ち上げたりしませんか?

 

わたしはとりあえず Genocide Watch の人の "The Eight Stages of Genocide" を訳します。(でもちょっと忙しいのでずれ込むかも。もし既訳であればご教示いただければ幸いです。)

  1. 私も速効性のある方法は思い浮かびません。関心を持つこと、関心を持っていることを表明すること、その2つを継続すること、以上の3つはそれなりに有用かと思い実行しています。
  2. 私はコミットしてきたといえるほどコミットできていませんが、gachapinfanさんの呼びかけが間抜けだとは思いませんし、誰に対しても失礼にはあたらないと思います(むしろ、課題に対して目を背けず誠実であろうとする態度に敬意を持ちます)。そんなわけでgachapinfanさんの記事をリンク紹介させていただきました。


 この私の記事で少しでも読者がダルフールの事態に関心を持ってくだされば、私としてはうれしく思います。関心を持ったあとどうなさるかは私が決めることではありませんし、そもそもこうすればいいという答えを持っていません。黙って心に留めておくのも、その人の置かれた状況によっては、最も適切な対処かもしれません。
 ただ、ひょっとしたらこれまで関心を持った人たちが行ってきた試みがご参考になるかもしれません。日本語ではスーダン・ダルフール危機情報wikiにある程度まとまっています。
 なお現地の状況の推移としては、国境なき医師団日本 スペシャルリポート 特集・スーダン内戦 ダルフール緊急事態)が主に医療活動による支援の視点からの報告を逐次掲載しています。