『ウィキノミクス』『FREE』『「みんなの意見」は案外正しい』

ウィキノミクス(著:ドン・タプスコット、日経BP社)』
『FREE(著:クリス・アンダーソン日本放送出版協会)』
「みんなの意見」は案外正しい(著:ジェームズ・スロウィッキー、角川文庫)』
を読んだ。
なぜまとめて感想を書くかというと、ひとつは『ツイッターノミクス(著:タラ・ハント、文芸春秋社)』を読むための予習として読んだため。
(『ツイッターノミクス』の感想はこちら)
そしてもうひとつは、これらの本(+ツイッターノミクス)から得たメッセージがひとつだったからだ。
前二者はウェブの発達によるビジネスの変化について。
ウェブの発達によってコミュニケーションのコストが下がり、また情報の流通も圧倒的に速くなった。
そんな中で今までのような組織構造や仕事のやり方は通用しなくなり、代わりにフラットな組織による人と人のつながりを基にするような方法が採用されるようになる。
それはプログラムの構築であったり、あるいはマーケティングでも。
そして会社と個人もまた、ウェブではフラットな関係になり、様々な情報やツールを提供したり、一緒にオープンソースのソフトウェアを作ったり、意見をダイレクトに伝え合ったりする。
すでにそういう方法を採用している会社は成長しているし、今後はそうしていかなければもうやっていけない。
後者は、条件が揃えば集団の判断は優秀な個人のそれよりもときに優れているということを、様々な事例を基に主張する。
個人では持っている情報にも、視点にも、そして行動範囲にも限界があるが、集団が多様な意見や独立性、そして意見をまとめることができるなどの条件をン備えていれば、それらは極めて優秀な結果をもたらすのだ。
ふだん、集団のダメな面ばかりに目がいってしまうが、集団というひとつの塊を考えたときに、そこにあるデータや経験値は、一個人のものよりは確実に大きい。

                  • -

前二者はビジネス書であり、その点で僕にはあまり関係はなかった。
しかし重要なのは、ビジネスという物自体が、すでに企業・個人という枠から離れている、もっというと、それがある会社のビジネスであろうが、そんなことは関係なしに、自分で楽しむために何らかの形で参加出来るようになるのがこれからのウェブなのだ。
企業と個人という垣根は、取り払われ、そこにはウェブ世界の参加者としての対等な主体がそれぞれ能力や信頼という、ツイッターミクスやFREEで紹介されたところのウッフィーが、その主体の価値を決める。
価値が高ければそれだけでいいわけではない。
いくら優秀な個人であっても、ウッフィーをたくさんもっていても、限界がある。
インターネット上の1%は、例えば1万人の会社の1%よりもめちゃくちゃに多い。
1パーセントでも参加すれば、かなりのことが出来る。
そんな可能性のある空間に、ウェブはすでになっているのだ。
そして気が向けば、いつでも99%の側から1%の側に行くことができる。
Twitterで一回つぶやくだけで1円が寄付できるイベントに参加するだけでもいい。
それが他の人のTLに流れて、大きな流れになるかもしれない。
少し知識があるなら、便利なソフトウェアの開発に参加してみてもいい。
試作品を試すだけでもいい。
それだけで何百、あるいは何千、それ以上の仲間の一員になれる。
まだインターネットに対する捉え方が、あくまで趣味領域にとどまっているかもしれない。
でも、もはや基礎インフラとして機能するレベルまで行っているはずだ。
ネット社会の何が悪いのか?
現実はそんなに素晴らしい空間なのか?
すでに多くのひとがコミットしている空間は、もはや単なる虚構ではないはずだ。
ネット社会から現実を変えればいい。
わざわざ二つをわけて考える必要はないのだ。
いろいろな可能性を感じさせてくれる三冊だった。
「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)
フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ
ツイッターノミクス TwitterNomics