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sunaharayの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-10-15

[]政治学の第一歩

『政治学の第一歩』という教科書を,大阪市立大学の稗田健志さんと神戸大学の多湖淳さんのお二人との共著で出版しました。個々の意思決定主体の選択(方法論的個人主義)とその戦略的相互作用に注目して,マンション管理組合から国際制度まで,利益の調整と集合行為問題の解決を図るための政治権力とそのコントロールのあり方を考える,という感じでしょうか。まだそういう概括的な教科書を書くような年齢でもないだろうとも思いましたが,私などとは違って国際的に活躍されているお二人とともに入門的な教科書を書くというプロジェクトに魅力を感じて時間をかけて用意してきました(執筆・編集過程の議論は非常に面白かったので,終わってしまうのが残念ですが)。執筆中に,安保法制の議論など,権力や法の支配・立憲主義,選挙安全保障などにかかわるのアクチュアルな問題が盛り上がってきたわけですが,そういう問題を理解するためのひとつの枠組みを提供したいな,とも考えておりました。

網羅的なのでひとつひとつのトピックの紹介を深掘りするのは難しいですが,基本的に一貫した枠組みで説明しているということですから,学生のみなさんには本書を予習してもらいつつ,内容を深めるかたちで授業する,というスタイルを想定しているつもりです。今後もウェブサポートページの充実を図っていきたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

現在,ウェブサポートページでは,教科書採用を頂いた方に授業用スライド(政治学原論(4単位),政治過程論(2単位),政治学概論(2単位))の配布も行っています。スライドはさらに追加される予定です。

また,2016年6月7日に「『政治学の第一歩』で考える政治学教育のあり方」というワークショップを開催する予定です。ご関心のある方はお問い合わせください。

政治学の第一歩 (有斐閣ストゥディア)

政治学の第一歩 (有斐閣ストゥディア)

2016-08-26

[]家探し

出発前にバタバタして手が回らなかったのと(そういう問題か…),奥さんが現地見てから探そうという感じで考えてくれたこともあって,日本出国前には家を決めずにカナダにやってきた。二週間ほど(まだ滞在中)UBCにあるGage Apartmentというところに滞在して家を探そうということに*1。しかしそうはいっても家族連れで,二週間して家が決まらなかったらどうしようという不安は強烈なもので,行く直前になって慌てて大学のHuman resource sectionに相談するとか泥縄なことを…。UBCは大きなキャンパスの中に住居エリアがあって,教員向けのちょっと家賃が安い住宅とか,キャンパス内でMarket rentalやってる会社があったりする。この辺はやっぱり人気があって,ウェイトリストに載ってなんとか…という感じなので,泥縄ではだめみたい*2

そういうわけで,出国直前からネットで家探しをしていたわけだが,使っていたのはsabbatical homesという在外研究など短期研究者向けに住宅をマッチングする(要するに在外行く人が来る人に貸す)ウェブサイトと,バンクーバーのクレイグリスト。前者は何というか「研究者」という身元がある程度はっきりしてる人向けのサイトで割と反応があるのだけども,その分期間などの条件にいろいろ制約があるのでなかなかうまくマッチせず。後者のほうはちょこちょこ出てるんだけど,メールで連絡しても基本的に返ってこない…というやや悶々とした日々が続く。

結局何も手持ちの候補がないままバンクーバーにやってきて,半ば途方に暮れつつ家探し。クレイグリストでいけそうなところにメールじゃなくて電話するとまあ反応が返ってくるという感じになり,何とか内見し,かなり狭いなあとは思いつつ契約へ。まあやっぱり手持ちがなくて全然反応ない状況だと不安になるわけで,きちんと反応してくれる人だとありがたいし何とかやっていけるかなあと思うもんですねえ。しかし「ウサギ小屋」としばしば揶揄される家に住む日本人*3から見ても狭いなあと思う家っていうのはどうやねんと思わんでもないですが。

(一応決まったから言うところあるけど)住宅の研究をしている人間としては非常に興味深いプロセスではありました。住宅について日本みたいに仲介業が発達しているわけではないようなので*4,基本的に相対で契約が行われます。借りる側から言うとどんな人なんだろうというのは不安ですが,貸す側から見ても不安なので,メールなんかで連絡するんじゃなくて家に来てくれる人を優先する感じになるみたい。ていうか,メールだけだととても信用できないというか。この点,sabbatical homesのほうだと一応研究者ということで交渉できるのはまさにシグナリングということなんだと思います*5。通常の貸し借りの場合,家主自身が契約書を作成して,借り手に対して説明するような感じなわけですが,内見に来た客にその説明をしてるときに,客の信頼度合いを判断し,客が本当に信頼できるのかについての照会先(勤務先とか前の大家とか)も重要になっているみたいです。

日本と比べて難しいなあと思うのは,カナダのほうは移民が多い中で,賃貸業をするには移民を相手にせざるを得ないところがあるので,この信頼性の判断を大家自らがしないといけないところかなと。(日本のように)敷金をかなり高くとればまだ簡単なのかもしれないけど,たぶん法定の敷金というのがかなり安くなっていて(家賃の半分)そういうことができないんだと思う。借りる側から見ると,一応帰ってくる敷金を多めに払って解決できるならそれでいい,というのはなくもないだろうけど,他方でそれが用意できない人が住宅にアクセスできないとそれも困るだろうから難しい。まあざっくりした話になるけど,一時的に現金持ってるよりも,ある程度永続的な照会先を持ってる人を選別的に住宅に入れるシステム,と言えるのかもしれない*6

大家さんからいろいろ聞いてるとなかなか面白くて,バンクーバーはやっぱり土地が高くて普通にローンを返すだけだと厳しいと。そこで今回我々が入るLaneway houseと呼ばれる裏庭の小屋みたいな家を作ったり,地下部分をBasement suiteとして貸し出したりして家賃を稼ぐということがよくみられるみたい。このLaneway houseは,ウィキペディアによると2009年ころから始まって,ほとんどバンクーバーにしか見られないような形態らしく,その発達について調べてみるのも面白いかもしれない。こういうのができるのは,もともとの区画がそれなりに広いからということで,土地の細分化を防いでるところはあるけども,このLaneway houseをそれだけで売り出したりするようになるとひょっとしたら細分化が進んだりすることになるのかも。このあたりもなかなか興味深いところ。

自分の生活で研究ネタにするのはあんまり…って感じですが,要するに一応落ち着けそうだということで。家のことでいろいろとご心配いただいた方々,どうもありがとうございます。

*1:ここすごいいいとこなんて,バンクーバー長期滞在の方にはお勧めです

*2:ただ言い訳すると,教員向け住宅は資格がよくわからず,Market rentalのほうは正直うちには高いのでちょっと無理

*3:なおこれは,1980年代にOECDの視察でそいう話になたということですが,あくまで公団を中心とした賃貸物件の話であって,持家についてはそんなに狭いわけではないということになっています。

*4:あるけどエイジェンシーのための料金は高いみたい

*5:このサイトの場合,登録するために大学所属のメールアドレスが必要になるので一応身元は分かる。

*6:ただこれは家族連れ向けのバイアスが大きい話だと思う。たぶん1人向けの住宅はもっと入りやすい。

2016-08-23

[]カナダ入国

4月からは大学の異動に加えて,日本で残された期間でやるべき仕事,ゼミがないのでそれほど多くはないけれども一年分の学部大学院の講義があったので,どうしてもバタバタとして自分自身の手続きが後回しになってしまった。今回難しかったなあと思うのは,カナダに在外研究でいくときの手続きなどについての情報が意外とネットで拾えなかったこと(ワーキングホリデーについての情報は非常に多い)。備忘を兼ねつつ,もしカナダでの在外研究を考える方がいたとすればそのために手続きを紹介しておきたい。

  • 当たり前だけども,まずはどこに行くか決めなくてはいけないわけで,僕の場合,家族で行くということでできればアメリカ以外ということを考えつつ,しかし海外に全然知り合いがいないので誰に紹介してもらえるか…とやや迷う。ただ,2014年に調査でバンクーバーに行って,非常にいいところだというイメージが強く,また都市研究・都市計画研究も盛んだということで最終的には割とすんなりUBCということで落ち着いた。
  • 2015年中に受け入れをお願いする先生を紹介していただくものの,異動とそれに伴う調整があったので,結局手続きがはじまったのは4月末ころから(たぶん異動がなければもっと早くからできたはず)。今回は,先方にLetter of Offerを送っていただき,それにサインするというところから。その上で,滞在に必要な費用について小切手で送るということで非常に戸惑う。小切手の作り方でトラブるし郵便はなかなかつかないし…ということでここでむちゃくちゃ時間をロスしてしまった。
  • 小切手がついたら,そのレシートと正式なLetter of Offerが届き,カナダの移民CICに就労許可証(Work permit)を申請することになる。別に給与をもらうわけではない客員なのになあ,と思うけれどもそういうことになっているらしい。ただ,一般の仕事であれば移民が入国することによる労働市場への影響の評価(Labor Market Impact Assessment)が必要になるけれども,客員の場合は除外exemptionということになる。細かくはよくわかってないけど,小切手で払った中から大学からCICの方にも申請がいって,専用のIDが振られることになる模様。
  • 就労許可証の申請だが,以前は普通に在日カナダ領事館で申請して取得できたようだけれども,どうも行政改革の一環で日本から領事業務が撤退したようで,アジアの申請については数年前からマニラで統合しているということ。で,もともとマニラに書類とパスポートを送らないといけないという話を聞いていて*1,「えー大変だ」と思っていたら,どうも最近オンライン申請ができるようになったということで,喜び勇んでこれを試すことに。
  • カナダの申請センターに行って,郵送とオンラインとどっちがいいでしょうか,と聞いたところ,オンラインならすぐだということで,さっそくオンラインで送ろうとするけどもこの書類がまたなかなかそろわない。結局送ってないからよくわからないけど,ビザ申請センター経由で要求される書類とオンラインの書類が違ってて,もともとあきらめて郵送か…と思ってた感じで作っていたのであとから書類を用意することになったのも失敗*2。オンラインで必要になった書類は,大学の在籍証明・給与証明をはじめ*3,現在の勤務先からのレターとか,exemptionで行くことの証明としての一応学位記とか。
  • 結局申請が可能になったのが7月上旬で,もともと標準手続き期間が2週間とか出てたので甘く見てたらこれが全く動かないで焦りまくる(あとで3週間に延びる)。2週間たち3週間たち…とやっていて,3週間を過ぎたら問い合わせできるというからしてみたものの何も起きない。4週間ほどたったときにメールが来て,「よかった」と思ったも束の間,オンラインのアカウントを見ても何も変わらない…。焦って大学や今サバティカルでカナダにいらっしゃる先生に聞いてみると,まあ来なくても大丈夫じゃないかと。しかしこれ,郵送でパスポートごと送ってたらどうなってたんだ…。
  • オンラインで取得できるのは(たぶん郵送でもそう)就労許可証そのものではなくて,就労許可証を受け取るためのLetter of Introduction。どうもこれがあると審査が早いということらしいけど,CICのウェブサイトには,LoIを取得することを強く勧告する(Strongly recommend),もしなかったら取得後一度国外に出てもう一度入国審査をする,みたいなことが書いてあるから非常に恐ろしい。とはいえ待てど暮らせど連絡が来ないので,まあ何とかなるだろうということでLoIがないままに出発。飛行機では緊張でなかなか寝付かれず,やや怯えながら入国審査へ。
  • 入国審査のところではいろいろ説明したけど審査自体はまあなんかものすごくあっさりした感じ。ああよかった,と思ってたら,「荷物取って移民審査のところ行って」と言われ,言う通り移民審査へ。結構並んで30分ほど待って審査を受ける。LoIがなくて大丈夫かなあと思いつつ,藪蛇にならないようにLetter of Offerをはじめ申請に使った書類だけ渡すとしばらくしてまあ問題ないという返事が…。これまでの緊張はいったい何だったのか…とは思うものの,まあ一応無事に入国して就労許可証を取得できました,ということに。在日の申請センターでは,子どもの就学許可証も必要だといわれたので,自分の就労許可証を取得するときに,併せて申請しようとしたところ,小学校(とたぶん中学校)は必要ない,親の就労許可証があれば滞在許可証でOKだといわれる…。まあ助かるわけだが,子どもの小学校問題はまだこれから…。
  • オンライン申請なしで大丈夫じゃないか,という気はしないでもないが,たぶんこれは客員研究員みたいに割と気楽な(確実に一定の年限で帰国する)職だからというところも大きいはず。ちゃんと給料が発生する仕事だとこうはいかないかもしれない。でも,日本の企業からの海外赴任みたいに,準備期間が短くていつ戻るかわかるような仕事であれば同じような感じになるのかな。で,ただ,全然返事が返ってこないのはやはり困りもので,最終的に就労許可証を受けるときの話だと,僕自身がやや誤解をしていたところがあって,少し申請に不備があったのかもしれない。そうであれば一度却下→再申請みたいなことにならないと動きようがないわけだが,そういう連絡もないし,一度オンライン申請をしてしまうと変更や取り下げも難しくて無為に過ごすことになる(実際,入国した現在でも取り下げできず申請は宙に浮いたまま…)。
  • LoIなしで困るのは荷物の輸送。そこまで大量じゃないにせよ,家族で行くための荷物を船便で送る必要があり,7月の申請後に某宅配業者にお願いして送ろうとしたものの,海外に実際に送るためにはLoIがないと動かせない,と。いろいろと親切・丁寧にやってもらったけれどもまあ仕方がない,という状況で,結局入国してから就労許可証をスキャンしたPDFを送りやっと発送,ということでおそらく到着は大幅に遅れる見込み。

以上,2016年夏時点での話です。オンライン申請は最近導入されたみたいだし,LoIがこれからどういう扱いになるのかよくわかりません。カナダ入国に当たっては,アメリカのESTAと同じようなeTAを事前に申請しないといけないということになっているけど,今は移行期間でなしでもいけるとか書いてあったりして(もちろんこれはちゃんと取得して出国しました)なかなか不透明なところ。このあたりはアメリカと比べて(?アメリカでやったことないから本当のところよくわからないけど)融通無碍というべきか…。これからどうなるのかよくわかりませんが。

*1:浜松町にあるカナダの申請センター(シンガポールのセンターと並んでる)経由で送るみたい

*2:もともとは家族関係での書類が多かった。戸籍謄本とったりとか。

*3:過去分も含むので,異動があるとややこしい…

2016-08-19

[]ごあいさつ

職場から在外研究のお許しをいただき,8月17日に日本をたちましてカナダ・バンクーバーのブリティッシュコロンビア大学に客員准教授としてしばらく研究生活を過ごすことになりました。いい年して初の海外生活,しかも家族連れということで,英語についても生活の立ち上げについてもなかなか苦労が多いところではありますが,研究者としての寿命を少しでも延ばせるようにボチボチ頑張って参りたいと思っております。

ただ,そういうわけで,残念ながら,いかにも慌ててご紹介した前回の更新で,いただいたご本の内容紹介や感想なども難しくなりそうです(いただいているようでしたらできるだけご紹介したいと思うところではありますが)。たまに雑記を書く程度で更新頻度も減ってしまうことが予想されますが,引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

2016-08-17

[]新書・文庫いくつか

7月に入ってからまたいくつか本を頂いておりました。まず細谷雄一先生から『安保論争』を。ありがとうございます。細谷先生が,集団的自衛権を認める安保法制について新聞や雑誌などの媒体にかかれてきた内容をまとめたものになっています。歴史的な観点,地政学的な観点から日本の安全保障環境について論じた上で,安保法制についての冷静な議論を呼びかける感じですね。細谷先生ご自身は,安保法制の必要性を主張するお立場で,ブログやフェイスブックなども含めてかなり広範に議論を呼びかける仕事もされています。こういった議論を読んでいると思うのは,政治学として一般化可能な議論を目指す一方で,どうしても個別性からは離れがたいところがあるわけで,両者の折り合いをどうつけるべきなんだろうかということです。最近の国際政治が,それぞれの分析対象の固有性を外してフォーマルセオリーや計量分析で議論する傾向があるのに対して,特に地政学なんかだと場所の固有性が全面に出てくるわけですが。政策担当者としては後者のほうがおそらくとっつきやすい話になるわけで,そのときに前者の研究者はどうすべきなんだろうかなあと。

安保論争 (ちくま新書)

安保論争 (ちくま新書)

中澤俊輔先生からは,同じくちくま新書の『昭和史講義II』を頂きました。ありがとうございます。ちょうど一年前に出されて好評だった前巻(こちらは英語でも出版されるとのこと)の続きということですね。しかし好評で一年後にきちんと出せるってのはなかなか素晴らしい…。執筆のみなさんがきちんと〆切を守ったのか,あらかじめ二巻目も計画されていたのかわかりませんが。この中で,中澤先生は治安維持法について書かれています。前著の『治安維持法』のときには,この法律が,結社の制限に係る法律として出現したことを詳細に論じられていましたが,今回は結社や政党の話よりも他の国での進行状況との比較のようなことが意識されているように思います。新書の1章ですから短いものですが,他国での状況についての言及が多かったのが特徴なのかなと。

治安維持法 - なぜ政党政治は「悪法」を生んだか (中公新書)

治安維持法 - なぜ政党政治は「悪法」を生んだか (中公新書)

西川賢先生からは『ビル・クリントン』を頂いております。ありがとうございます。「クリントン」じゃなくて「ビル・クリントン」なんだなあ,と思いながら興味深く読ませていただきました。しかし『分極化するアメリカとその起源』(単著)『ポスト・オバマのアメリカ』(編著)に続いての単著ということでホントにすごいペースです。上記の細谷先生もすごい刊行ペースですが,やはり全体として業績を出すというプレッシャーがかかる一方で,出版業界が出版点数増やしているということもあって,書ける人はとにかく書くということになってるのかもしれません。

さて,『ビル・クリントン』のほうは,非常に読みやすいもので楽しく読ませていただきました。90年代というのは私などは中学生から大学生という時期で,まあいろいろニュースは見てたと思いますが,詳しく知らなかったことを改めて学んだ感じです。モニカ・ルインスキーの話なんかは,まあ率直に申し上げてすごいざっくりとしか知らなかったことがよくわかりました(苦笑)。全体としての印象は,(叙述のスタイルによるところもあるのでしょうが)クリントン自身が何を考えていたのか,言い換えると彼の人柄みたいなものを明らかにするのって難しいんだろうなあ,と感じました。本の中に出てくる「三角測量」(相手との関係の中で自分の政策ポジションを決めようとする話)とか典型だと思いますが,彼自身の確固たるイデオロギーみたいなものは見えにくくて,それぞれの場面で役割をきちんとこなす,競争に勝利するためのチームを用意する,というのが1つの特徴なのかな,と。政党にイデオロギー的な差異が薄いとき,やはりそのようなある意味で実務的なリーダーというのは重要だし,日本でもそういうリーダーがいていいんじゃないかと。…まあ逆にだからこそ「分極化」が強調される中でヒラリー・クリントンが苦戦している,ということなのかもしれませんが。

最後に,御厨貴先生から以前に出版されたものの再版である『後藤田正晴と矢口洪一』『宮沢喜一と竹下登』を頂きました。ありがとうございます。いずれも再版ではありますが,もともと朝日新聞出版から出された時にカットせざるを得なかったようなところも含めて「完全版」という感じになっているそうです。いずれも2つのオーラル・ヒストリーの結果を交差させながら作られた本なのですが,前の版からこのようなオーラル・ヒストリーの使い方があるんだ,というのは非常に勉強になった本でした。自分自身もオーラル・ヒストリーに参加させていただくことがあって,これを論文でどうやって使うかなあ,といつも思うのですが,論文の中での「証拠」として使うよりも,ある種時代の雰囲気/時代認識みたいなものを描き出す手法として使うというのが面白いのかもしれない,と最近思っています。両著は(それが意識的に行われている)最も先駆的な試みの一つではないかなと。