Hatena::ブログ(Diary)

sunaharayの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-10-15

[]政治学の第一歩

『政治学の第一歩』という教科書を,大阪市立大学の稗田健志さんと神戸大学の多湖淳さんのお二人との共著で出版しました。個々の意思決定主体の選択(方法論的個人主義)とその戦略的相互作用に注目して,マンション管理組合から国際制度まで,利益の調整と集合行為問題の解決を図るための政治権力とそのコントロールのあり方を考える,という感じでしょうか。まだそういう概括的な教科書を書くような年齢でもないだろうとも思いましたが,私などとは違って国際的に活躍されているお二人とともに入門的な教科書を書くというプロジェクトに魅力を感じて時間をかけて用意してきました(執筆・編集過程の議論は非常に面白かったので,終わってしまうのが残念ですが)。執筆中に,安保法制の議論など,権力や法の支配・立憲主義,選挙安全保障などにかかわるのアクチュアルな問題が盛り上がってきたわけですが,そういう問題を理解するためのひとつの枠組みを提供したいな,とも考えておりました。

網羅的なのでひとつひとつのトピックの紹介を深掘りするのは難しいですが,基本的に一貫した枠組みで説明しているということですから,学生のみなさんには本書を予習してもらいつつ,内容を深めるかたちで授業する,というスタイルを想定しているつもりです。今後もウェブサポートページの充実を図っていきたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

現在,ウェブサポートページでは,教科書採用を頂いた方に授業用スライド(政治学原論(4単位),政治過程論(2単位),政治学概論(2単位))の配布も行っています。スライドはさらに追加される予定です。

また,2016年6月7日に「『政治学の第一歩』で考える政治学教育のあり方」というワークショップを開催する予定です。ご関心のある方はお問い合わせください。

政治学の第一歩 (有斐閣ストゥディア)

政治学の第一歩 (有斐閣ストゥディア)

2016-09-21

[][][]税のかけ方

バンクーバーの住宅に関して話題になっている二つの税,空き家税と外国人投資家への税についていくつか進展があったみたい。空き家税については議会がPublic consulatationにかけることを認めた,ということでボチボチ動き始めた感じ。基本的にはいわゆる二次的住宅への課税ということで,Airbnbなんかで使ってるんじゃなくてちゃんとレンタル市場に出せよ,というようなものになりそうとのこと。税逃れをした場合の罰金が10000ドル(上限だということ)で,高い家なら課税額よりも低くなるが,これはもちろんばれた場合に追徴課税があってさらに罰金という感じになるんだろう。面白いのは,次のツイートで書かれているように,現在0%近傍(!!)に張り付いてるバンクーバーの貸家の空室率が3−5%程度に戻ったら(これもたいして高くないが)一応成功ということで税は縮小するか廃止するかする,という話が出ていること。空き家の持ち主の行動を変える(=なんとか賃貸に出す)というのが狙いの政策課税が基本であって,それ以上のことはないというコミットメントなのかもしれない。ただ,上がった税収ってどうするんだっけ。まあ基本的には空き家かどうかのInspectionに向かいそうな感じがする。そう考えると,日本でやってたいわゆる産廃税に通じるところがあるのかも。

(ちょっと追記)Metroでは,City can now audit your homeというややおどろおどろしい見出しで書いていた。これによると,1年のうち9か月が空き家になっているところに税をかけるという話で,こういう立法の背景には,BC州がこの夏に,バンクーバー市に対してこの税の徴収や執行を認めたということがあるらしい。下で書いている管轄権jurisdictionが基本的には州にあるところ,ということなんだろうか。また,この記事では,バンクーバー州議会のうちNon-Partisan Association(無党派の集まりという政党みたいな組織!?)の議員3人が,あまり効果がないということで反対票を投じているらしい。過半数はVision vancouverで押さえてるからあまり問題にならない,ということなのかもしれないけど。

さて,もうひとつの外国人投資家への税の話は,それで被害(?)を受けた人たちが集団訴訟を提起しているっていう話。こちらの記事で出ているのを見ると,今のところの原告は,バンクーバーにいて不動産を買ったけども,買った後に税金が入ることになってしまってえらい高くなった,どうしてくれるんだ,みたいな感じが中心か。永住者じゃない人は税金を払わないといけないということになっているので,そういった非永住者が原告となって集団訴訟を起こしているみたい。立法過程はフォローしてないけど,そんなにバタバタと決まったものなんだろうか。日本の感覚だと,法律ができてから施行までに結構間があるから,そこで「駆け込み需要」的な売買がむちゃくちゃ増えそうなもんだけど。そういうのを防ぐためにもすぐに施行した,ということかもしれないけどそれはそれで結構きつい話ではある。

それに加えてなかなか興味深いのが,先ほどの記事のリンクにあるビデオで紹介されている憲法の話で

The constitution allows Provinces to impose taxes within the provinces to raise revenue for provincial purposes. British Columbia acted to protect the residential real estate market from distortion.

ということで,BC州政府が市場の歪みを是正するような税を,しかも永住権を持っていない外国人に限って課すというのは,カナダが連邦として結んでいる国際的な取り決めを破るような越権行為であって認められないというような議論が出されているらしい。しかしだとするとバンクーバーの空き家税だって歪みに対する対応なわけでどうなるんだ,みたいな気がしてくるわけだけどどうなるんだろうか。

2016-09-20

[]憲法判例からみる日本

原本を見てないのでわからないのですが,寄稿させていただいた『憲法判例からみる日本』が日本評論社から出版されていると思います。もともと慶應義塾大学の清水唯一朗先生にお声がけいただいて,なんだかよくわからないままに慶応大学でお話したものをベースに,『法学セミナー』の2016年3月号に記事が掲載されて,それが今回まとまって出版になったという次第です。私は,和光大学の徳永貴志先生と一緒に「一票の格差」問題の憲法判例を分析して(今回初めて全部まともに読みました…),それを憲法学者の徳永先生と一緒に論評するという感じです。『民主主義の条件』でも扱ったところですが,私自身の専門かというとちょっと外れているところもあるわけで,これまでの菅原さんの業績などを大いに参考にさせてもらいながらまとめています。

本書の他の章では,憲法学者とそれ以外の分野の政治学社会学・歴史学の人など入って,同じように分担・協力して一章をまとめるというかたちになっています。他の章で扱われている憲法判例も非常に重要なものばかりで,政治学でも扱われるようなものですから,政治学者など憲法学とは違うところから憲法について議論する,というときによい入門書になっているのではないかと思います。

2016-09-16

[][]空き家税

一戸建てを中心に住宅価格が急激に上がっているバンクーバーでは,ここにきていくつかの対策が取られている。まあ何よりも住宅供給しないといけないんだ,ということで,スカイトレインの駅中心に集合住宅を作っているというのもあるが,需要側のほうに効くような対策も取られている模様。以前にも触れた,海外居住者が住宅を購入するときに15%の税をかけるというのがこの8月から実施されていて,8月は住宅取引量が減ったというのが出ていたが,まあ減ったといっても去年が異常に多かったので,量的には一昨年と大して変わらない程度(だったと思う),最近は結局そんなに効かないんじゃないの?というような論調を見かけることの方が多くなったように思う。ただ,The Globe and the mailのこの辺の記事あたりから,お金がない学生が買ってた,とか購入時に特別扱いがあったというような話が出てくるときびしいくなっていくかもしれない。

もうひとつ出てきたのが空き家税という話。バンクーバーの空き家率は4%くらいということだが,集合住宅の部屋には比較的空き家がある一方,その他の家は1%程度と厳しい状況になっている(数字はこの記事に出ている)。空き家にしてても賃貸市場に出てこないので,借りたい人が借りれない状態が続いているのが問題だ,ということで,この賃貸に出さずに単に空き家にしている家には税金をかけよう,という話が出てきたようです。まだ市長の側の提案議会は通っていないのでどう推移するかわかりませんが,今出てるのは「2%」みたいな数字で,たとえば1億円の家を空き家にしてる人からは年間200万(!)の税金をとるんだ(may cost owners as much as $20,000 a year on a million-dollar home),みたいな感じ。かなり高い。空き家になってるかどうかというのをどう判断するかが重要なわけで,もともとは電気使用量を見るとかいう話もあったようですが,今のところ自己申告ということになるようです。ただ自己申告だけじゃなくて,市で監査する人を増やして空き家かどうかをチェックしていくと。市長は今のところ多くの市民に関係ない税だということを言ってますが,こういう監査の費用と税収のバランスていうのはおそらく重要な論点になるんじゃないかと思われます。

今回の空き家税は,基本的にバンクーバーにいない人を対象にするということで,ある種東京都の宿泊税とか観光客にかける税とか,そういう法定外目的税に似ているところがあるかもしれません。税収よりも単に資産価値が上がるのを待つという行動を制約したいという感じなので,「取れるところから取る」という趣旨とはやや違うかもしれませんが。ただこれは資産として魅力的なところがあるからできるわけで,日本の空き家(特に農村部)でやったら差し押さえられるまで無視する人が続出したりして…。

まあとりあえず,この空き家税ができれば,BC州政府による外国人の購入時の税金(15%)に続いて市が空き家税をかけたというわけで,それなりにできることをやっていることになります。新聞を読んでいても,次は国の方の行動を求めるような話がありました。国は何するのかなあ。この流れでいくと購入時の特別扱いなどと絡めて,マネロン規制の厳格化とかそういう感じになりそうですが。

2016-09-10

[]大震災復興過程の政策比較分析

御厨貴先生の編著(五百旗頭真先生監修)で『大震災復興過程の政策比較分析』という書籍が出版されることになりました。これは,五百旗頭真先生を研究代表者とした科学研究費補助金「関東、阪神・淡路、東日本の三大震災の復旧・復興過程に関する政治学的比較研究」の研究成果をまとめたものです。三つの大震災の1復旧・復興の政治過程,2政府と官僚危機管理,3震災をめぐる社会認識について,分担して比較分析したものになっています。全てではありませんが多くの研究が三つの震災(少なくとも二つ)を扱っていて比較をしているというのはひとつの特徴ではないかという気がします。私もやったわけですが,三つを並べるのって結構難しいんですよね…しかも関東大震災は結構離れているわけだし。しかも今回難しかったのは,兵庫県の人と防災未来センターにある公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構(理事長は五百旗頭先生)のプロジェクトだったので,政策提言を強く求められたことでした。政策提言というと単に分析と違うわけで,何が妥当かは必ずしもはっきりしないという中である種の言い切りが求められてしまうので…。

私のほうは,それぞれの震災における住宅復興についてまとめたうえで,共通する問題点とそれを踏まえた政策提言という感じになっています。おそらく住宅政策について始めて書いたまとまったものになります。内容は,三震災のいずれも仮設住宅から恒久住宅へという流れの中で,従来の都市計画からはやや逸脱するかたちで「復興計画」が出てきてしまい,大量の住宅が建設されることになるわけですが,それがもたらす弊害(大量に作ろうとしてコストがかかる/供給を急いで将来の資産価値がないがしろにされがち)が大きいことを考えると,災害によって生じる実質的な再分配を平時からの家賃補助(と危険な家の撤去/空間管理)に転換していかなくてはいけないというような話です。まあ結局のところ,なんか「これだ!」みたいな話じゃなくて,普段から言ってることの延長線上にしかないような話ですが…。他の研究論文には興味深い比較が多いと思いますので,ご関心のかたはぜひお手に取っていただければと思います。