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sunaharayの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-11-25

[]参議院が「地方の府」となるには

参議院で憲法審査会の議論がはじまり,憲法改正議論が行われるのかなあという状況のようだが,そこでまず議論されないといけないことのひとつとして挙げられるのは参議院の位置づけだろう。今年の参議院議員選挙で,徳島・高知と島根・鳥取の合区が行われることになって,特に人口の少ない(=将来的に合区の可能性がある)県などから,合区はよろしくないので参議院を「地方の府」として位置付けつつ,各都道府県から代表を出すべきだという話が出ている。そんなに圧倒的というわけでもないけど,「選挙区は都道府県単位がよい」とする人が多いという世論調査もあるようで。

選挙制度を考えると,参議院の現在の一番の問題は小選挙区制と中選挙区制(それに比例代表制)が混在していて,何がどう代表になっているのかわからない,というところだと思われるので,各都道府県を小選挙区制にするというような話ならまあ望ましいのではないかと思う。他方,小さい県で1議席を必ず確保しつつ,東京とかで6議席とか7議席とかを中選挙区制で実施するというのは絶対に反対で,そんなことするくらいなら合区のほうが全くもって望ましいと思われる。どうせ合区するなら二県でとかちまちましたことを言わずに複数県を合区して複数代表の選挙区を作り,(これだけだと中選挙区制で当選の閾が低くなるので)連記制を導入することもありうるのではないか*1

合区→連記制,というような方向ではなく,あくまでも都道府県代表ということにするならば*2,やはり参議院の機能についての見直しをセットにするべきだろう。今「一票の格差」で違憲判決が出るのは,衆議院と同様の権限を持つ国民代表的な議院として扱われていることによるところが大きいのだから,都道府県代表にして「一票の格差」が出るのを容認するとすれば,衆議院には権限で劣る議院として位置付けるほかない。都道府県代表というからには,基本的には地方自治に関することを集中的に議論する議院として扱うことにして,権限もそのあたりのみにとどめるべきではないかということになる。

このあたりまでは議論として出ているところで,そんなに異論があるわけではないのだけど,しかし憲法を改正してこのような参議院を再構築するということになるとしたら,それでよいのだろうかという感じもある。現状では都道府県が代表を議会に出すという立て付けが必ずしも自明でないわけで,それを憲法的に設定するのであれば,やはり都道府県がそれなりの機関であるという根拠が必要になるのではないか。個人的には,そこで重視すべきは都道府県の役割の(再)定義ではないかと思うところ。とりわけ重要なのは,都道府県という単位である程度完結した自治が成立する−受益と負担のバランスが取れる−ということが大事なのではないだろうか。つまり,ある程度「自治体」として自立してるからこそ参議院という「地方の府」にその代表を出すという設定が成り立つわけで,国からの補助金に過度に依存して仕事をする状態ではなかなか自治とは言えないし,変な話国(というか省庁)から補助を通じて参議院での地方代表に影響力が行使されるという不思議な状態も成り立つように思われる。

何も,今やっている地方の事務をすべて地方税で賄うべきだ,とかいうことを言いたいわけではなく,国と地方の役割分担を見直したうえで,しかるべき事務は国の責任ということに戻し,地方でやるべきとされたことはその自治体の財源で賄うという話であり,国の仕事をするとしたらそれはきちんとした「委任」として補助の制度を再設計するということに他ならない。しかし,地方の仕事をその自治体の財源でやるということは,必要に応じて地方税を上げるということが求められるし,また上からの補助というのではなくて一次的に割り当てられた地方税で豊かな自治体と貧しい自治体の差が大きくなったとしたら地方自治体間での財政調整を議論しないといけないのではないかということになる。そういった国に頼らない自治というのを規定してこその「地方の府」ではないだろうか。そのようにすれば,「地方の府」たる参議院で議論すべき議題というのも自ずとハッキリしてくるわけだし。

しかしそうすると「地方の府」にする道のりは本当に大変そうだ…。単一国家という特徴をきちんと強調していくなら,別に「地方の府」的な第二院が必要とも思えないわけで,個人を選びたいなら上述の連記制にするか,あるいはぐっと権限を落として非公選の有識者を含めた諮問機関(カナダがそんな感じ)みたいなものだって考えられるだろう。しかしそのあたりの話は今のところあんまり出ているようには思えないし,方向性としては「地方の府」というノリがあるように見える。繰り返すように,それに反対というわけでもないだけれども,ノリで「地方の府」にしちゃえばいいじゃない,とかいうのには抵抗を覚えるところ。

*1:公明党は,少なくとも以前はブロック単位の選挙区に編成することを主張していた。それ自体は悪くないと思うが,そこで単記非移譲式にするのは好ましくない。名前を書きたければそれでいいと思うけど,有権者の側に変な戦略投票をさせず,また当選の閾を上げるために連記制にするべきだと思う。

*2:もちろん比例制という選択肢もありうると思うけれども,衆議院のほうを多数制的な選挙制度で選ぶのを変えないのであれば,あんまりいい選択肢だとは思えない。とはいえ二院とも比例制というのもよくわからない。このあたりは『民主主義の条件』で触れた。

民主主義の条件

民主主義の条件

2016-11-13

[][]バンクーバーの車事情

大学にはバスで通っているので車は持っていないのですが,荷物を運ぶ時などたまに車が欲しいと思うときがあります。まあまだレンタカーも使ったことがないのですが,練習がてらバンクーバー(をはじめ北米)で普及しているカーシェアを使ってみました。僕が使ったのはcar2goというダイムラーがやっているサービスで,基本的にはメルセデスが作ってるsmartという二人乗りの車を使うものです。登録したあとは,スマートフォンを使って車の開錠や使用終了を伝えるというものですが,バンクーバーの場合,この車が適当に路駐してあって,それに乗って自分が好きな場所に移動して路駐するという感じになってます。まあカーシェアというより自転車シェアみたいなもんですね。ただsmartは二人乗りなんで,家族みんなで動くときには使えないわけですが。もう少し多くで使う場合にはEvoとかZIPCARというサービスがあるようですが,こちらのほうは決まった駐車場を使わないといけないとかもうちょいハードル高いみたいですね。

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バンクーバー市内に住んでいるので,基本的にはバス,たまに電車(Skytrain),でさらに稀に車,という感じなわけですが,これが市外に出るともう圧倒的に車という感じになるようです。郊外に連れていっていただいたときにお話を聞いたりすると,バンクーバーの郊外にあるリッチモンド,バーナビー,ニューウェストミンスター,コキットラム,ポートムーディー,サレーなどといった自治体から多くの人が来るまで通勤をしているようです。そのために特に朝の通勤ラッシュは結構ひどいもんだと。で,その対応としては電車の延長ということで,リッチモンドのほうはずいぶん電車が伸びていますし(カナダライン),バーナビーやコキットラムについてもある程度スカイトレインが出ています。そして12月に入ってからはポートムーディーの方に行く新しい線(Evergreen)ができるとか。この10年の戦略では,サレーの方につながる路線を出すなど,これから増える可能性はあるようです。

このあたりの郊外を見ると,特に駅の近くは基本的に集合住宅なんですよね。計画としてはそういった集合住宅を増やしてこれから100万人近くでも人口を増やすことを考えているとか。だいたいバンクーバーの広域都市圏(Metro Vancouver)で250万くらいいるので,3割くらいの増加になります。他方で,バンクーバー市内については人口が60万くらいで,しかも一戸建てが圧倒的に多くて住宅不足に悩んでいると。そこで周辺の自治体と電車でつなぐかたちで人口増に対応するということになると,まあ今更ながらどっかで聞いたことがあるような話のような気がします。大阪の経験を思い起こすと,問題はどこまで住宅地を増やすかということと,都心の空洞化を防げるのかということでしょうか。前者については土地規制が厳しいのでやればできなくもなさそうですが,後者は簡単じゃないかもしれません。住宅価格の高いバンクーバーから郊外に人が流出して,今度は都心に人が来なくなると…ということですが,まあ今でもモータリゼーションが進んでショッピングモールだらけなわけですから,そこは日本とはやや問題のタイプが違うのかもしれません。観光都市(というと言い方悪いですが)としてのバンクーバーのブランドをどの程度維持できるか,というところにかかっているような気はしますが。

2016-10-31

[][]ハロウィン

いつの間にかもう10月も終わりということでハロウィンの季節に。ご招待をいただいてかぼちゃ畑(Pumpkin Patch)に行ってみたり,Jack-o'-Lanternを作ってみるなどちょっと北米仕様の日々。いろいろ興味深いんだけど,このあたりは文化の違いもあって,どうやってふるまっていいのかいまいちはっきりしないところ。もちろん僕の英語力の問題もあるんだけど,そもそもどういう言い方や語彙が適切なんだろうか…と思ってしまうと苦手な日常会話ほど喋りにくいという負のスパイラルに…。

海外で過ごすハロウィンはもちろん初めてなので,家の近くで「Fireworks」という幟がある季節限定のイベントショップが立ち並んでいるのを見て,ああこちらのハロウィンは花火をやるのか…と思っていたところどうも違うみたい。全く関係ないわけでもないのだろうけど,こちらのハロウィンであるところの10月31日は,インドのヒンズー教旧正月であるディワリ(Deepavali)に当たるんだとか*1。どこでも同じように花火があるのかと思ったら,うちの住んでいるところは「インド人街」みたいな感じのところなので,どうもそこにお店が集中してるみたい。このディワリでも伝統的にはお菓子を配るみたいで,ハロウィンとの親和性はあるということなんだろうか,Fireworksのお店ではだいたいインド系の人がやってるのにハロウィンのお化けみたいなのをあしらった人形が店の前にあって(うちの次男は異様に怖がる),中ではお菓子とかを売ってるみたい。毎年時期が重なるんだろうか…。ただ,これ書きながら調べていると,バンクーバーではハロウィンに花火をあげるのはよくあることだという記事もあり,謎が深まる。

ハロウィンといえば,"Trick or treat!"といいながら家を回る,ということになっているわけだが,うちの家主さんからは,最近だと子どもにあげるお菓子に変なものを入れるやつがいるから気を付けろ,と厳重な注意もあった。こちらのニュースを見ていても,ハロウィンで人の家を回るのは危ないけど,近隣地域への信頼というものを子どもに教えるのは大事だから一概に否定もできない…みたいな話があったりして。他方,この記事では,"Trick or treat!"のhotspotがどこか,みたいな紹介もされていて,よく見るとうちのある地域(正確にいえばもうちょい東でインド系の人が多いところ)はかなりのhotspotだったりする。記事にあるように,子どもの「猛攻」を受けるところで(単純に子どもが多いので),去年は80人くらい来たとか…。しかしそういう地域でも家主さんのように考えてる人がいるわけでやはり難しい。まあせっかくなのできもち参加できると嬉しいですが。

さて10月に予定していた仕事が一応(こちら時間の)10月に終わり,年末はがんばって本の原稿書きをする予定。それが終わったらようやく持ち込み仕事は一段落になる(はず)。少しこちらでの活動に精を出したい。

*1:10月30日という説明と31日という説明があってよくわからない

2016-10-25

[]『はじめての行政学』ほか

著者のみなさまから『はじめての行政学』をいただきました。わざわざカナダまで送っていただきありがとうございます。「はじめに」に書いておりますが実は私自身,この4月に本書の検討会に参加させて頂いて,いろいろなコメントをさせていただいたこともあり,出版を大変うれしく思っております。『政治学第一歩』と同じストゥディア・シリーズとして出版されておりまして,非常に堅実な内容でまとめられていて使いやすい教科書なのではないかと思います。私たちの『政治学の第一歩』に引き付けて言うと,本書でも初めの方に集合行為問題の解決という議論がなされていて,さらに全編を渡って重要な概念として「調整」が具体的に説明されているわけで,『政治学の第一歩』のほうからつながる教科書としてもいいのではないかと…(我田引水ですみません)。しかしそれとは別に,本書では一度分業して書かれたものを全体の整合性などの観点から「調整」されていて,それは大変なご苦労だったかと思いますが,そのおかげでとても読みやすいものになったのではないかと思います。

はじめての行政学 (有斐閣ストゥディア)

はじめての行政学 (有斐閣ストゥディア)

その他,読めてはないのですが,この間日本の研究室のほうなどにいくつか新刊を頂戴しているようです。読みたい本ばかりなのでご案内しかできないのは残念ですが…。

戦前史のダイナミズム (放送大学叢書)

戦前史のダイナミズム (放送大学叢書)

人を見抜く「質問力」 (ポプラ新書)

人を見抜く「質問力」 (ポプラ新書)

日本の政策課題

日本の政策課題

行政学

行政学

再考・医療費適正化 -- 実証分析と理念に基づく政策案

再考・医療費適正化 -- 実証分析と理念に基づく政策案

2016-10-23

[]『経済学者 日本の最貧困地域に挑む』

紹介を読んですぐにKindleで買いました。非常に勉強になったし,何より読んでいて面白いと思えるところが優れた本だと思います。題名には煽りがあるし,力み過ぎてるところもあると思うし,また内容についても鈴木先生じゃない人が見たらそんなにいいもんじゃないと別のことをいう可能性はあるかもしれません。でも,鈴木先生は特別顧問を務められた間での行政や地域の政治過程というのをよくご覧になっていて,非常に体系的な形でまとめられているなあという印象を受けました。知らないことばかりで驚きも多かったですが,個人的に特に面白かったのは,警察の話が出てくる16章と,まちづくり会議をやっている18章です。あと,あいりん総合センターの移設検討のときに,初めての検討会の直前で毎日新聞がリーク記事を発表したという話(のちに訂正があったとか)。

一貫して本当にすごいなあと思ったのは,関係者の信頼関係がなんとなく浮かんでくるところ。たぶん規制改革会議などでの発言から,鈴木先生と言えば相当尖った物言いで,言い出したら自説を曲げない困った人,みたいなイメージがないわけではないと思うのですが,本書での議論の進め方はそういう印象とは違います。実際それだけの人だったら,多くの関係者を巻き込んでいろんな意思決定を進めることは絶対できないと思うし,少なくとも西成でのとりくみを一緒に進めている方々からは信頼されていなくてはいけません。ただその信頼っていうのは,人格的に立派とかいうことでこの人がいうことを疑わないっていうタイプのものではなくて,まあ少なくとも人を陥れるようなウソはつかないとお互いに認め合っているような感じの信頼という印象を受けました。実際政治の場面で約束したことを全て守るというのは簡単なことではないでしょうし,約束を守れないこともあるはずです。そこで約束を守ったと強弁するのでも,守れなかったからといってお互い切り捨てるのでもなく納得してやっていくという姿が浮き彫りになっているような気がしました。実際,本書20章でも「人々の信用を得るために」という節があって,いくつかの心がけが書かれています。

本当に組織間調整は大変だ(大阪市は縦割りがきつくてほぼ組織間調整になってるようなので)ということですが,やはり思うのは,鈴木先生のような研究者がやるべきなんだろうかというところ。もちろん鈴木先生に限らず,大阪市大の水内先生をはじめ,登場している先生方みなさんそうです。上の「心がけ」のところでも書かれてますが,中立を旨とする有識者が持つアドバンテージはあるわけですが,実際ほとんど給料というか報酬は払われていないようですし,そういった人々を確保するのは本当に容易ではないでしょう。もちろん,それでこそ信頼されるところがあるし,中立を保てるし,公的な利益のために邁進するべきだというのはよくわかるわけですが*1,あまりに個人にかかる負担が大きすぎるのではないか。逆に言えば大きすぎるからこそ,そういった人たちを調達するのがほとんど不可能になっているんじゃないかという印象を受けました。できるものならば,そこにこそ地方議員の役割があるのではないかという気がします*2。地方議員は政党色がついてるから中立ではないということになるんだと思いますが,完全な中立というのはあり得ないし,鈴木先生が橋下市長とパイプを持っていたように,政治力も必要になるわけです。たとえば小選挙区で選ばれていれば,政党所属していても地域の代表という立場を持つはずだし,比例制で選ばれている場合は複数代表がいるわけで,そんなに極端に偏るということもないと思いますし。

単に政策過程を動かすことの難しさを学ぶだけではなく,研究者として公共政策にかかわる意味も考えさせられるよい本だと思います。そういう関心のある方はぜひ。

経済学者 日本の最貧困地域に挑む

経済学者 日本の最貧困地域に挑む

*1:余談ではありますが,鈴木先生が政策にかかわる理由として,「怒り」を挙げていたのは何というか妙に納得しました。

*2:この西成の場合は,柳本さんという優れた地方議員がいらっしゃったわけですが,正面から橋下氏と論争する役割を与えられた方でもあり,なかなか絡みにくいところは難しかったのではないかと思います。