『見下ろす少女、見上げる少年』

校舎裏に呼び出されたと思ったら、やはり告白だった。
泣いて走り去る後ろ姿を見送って、軽く溜息をついたときに。
「ねえ!」
空から声が降ってきた。
見上げる。
青い空と、入道雲と、陽光を反射する純白のセーラー服。
屋上の手すりから、誰かが身を乗り出していた。
「きみ、告白されてたね」
響きの良いその声には聞き覚えがあった。
同じクラスの……、なんていったっけな。
「ずっと見てたんだよ」
告白されたところなんて、見られて嬉しいものでもない。
――クラスメイトには黙っといてもらえないかな。
そう言うつもりで口を開いて、
「私、ここから飛び降りるつもりだったの」
出しかけた言葉を思わず呑み込んだ。
ここからって、そこ屋上ですよ。
「けど、やり残したこと思い出しちゃった」
彼女の声は弾んでいた。
「私ね、きみのこと、ずっと見てたんだよ!」


第三回萌理賞
非投稿作品
テーマ:「上/下/同級生」
350文字