柴崎友香「主題歌」

主題歌

主題歌

ころころと変わっていく視点についていけず、短いお話の、とても平易な文章なはずなのに何度も挫折しかけました。これはもう相性の問題だと思うのだけど、このひとの文章のリズムに最後まで乗ることができなかったようです。
女の子を見て、かわいいと思う気持ちは、わかる。わかるのだけど、女が同性を見る目ってなにかもっと微妙なやりきれなさや無意識の引き算があって、そうしてしまうことへの自己嫌悪があって、というものだと思うのです。女は女を他人事のようにかわいいとだけ言えるのかな。男が男をかっこいいというよりもそれは難しい気がします。でもこの作品の実加も小田ちゃんもそういう内包する感情、醜ささえ伴う複雑さなんて一切なくて、するりとした手触り。主人公にそもそも悩みといったものが見当たらない、いわば『リア充』(彼氏がいて、仲間がいて、そこに諍いはなくて、仕事もそれなりに満たされていて)なので、非リア充の私にはどうも取っ掛かりがなかったのかもしれません。でも正直なんだかそれをわざわざ小説として読まされてもなあというのが拭いきれないままでした。