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サニーデイ・サービス web

2010-04-05

2ndアルバム『東京』レビュー by太田浩(タワーレコードオンライン事業本部)


8thアルバム『本日は晴天なり』の発売を記念し、7日間連続で、サニーデイの今までのアルバムについて、いろいろな方々に書いて頂いたレビューを紹介していく<サニーデイ・サービス review week>!

本日のレビューは、2ndアルバム『東京』を太田浩さん(タワーレコードオンライン事業本部)に書いて頂きました!


サニーデイ・サービス
東京

1996年2月21日 発売 MDCL1303

¥3,059


1. 東京

2. 恋におちたら

3. 会いたかった少女

4. もういいかい

5. あじさい

7. 青春狂走曲

8. 真赤な太陽

9. いろんなことに夢中になったり飽きたり

10. きれいだね

11. ダーリン

12. コーヒーと恋愛




「’96年、渋谷の青春」



初めて曽我部くんにお会いしたのは確か、「cosmo sports ep」が(私が当時勤務していた)HMV渋谷のSHIBUYAチャートに8位にチャートインしたときに売り場を見に来てくれたのが初対面だったように記憶しています。清潔感のある好青年の印象でした。

それからあまり時間が経たないうちに今でも僕の大好きな名曲「コズミックヒッピー」が発表され、さぁ、そろそろ直球渋谷系アーチストになるだろうと所属のmidiレコードの方と話したりしていた。ちょうど小沢健二くんのアルバム「LIFE」が嵐のような勢いでメジャーヒット化する頃であった。


そして別件。

その数年前に耳の肥えた渋谷界隈のリスナーたちにその「早すぎた」アレンジの素晴らしさで再評価が高まり、改めてアナログの再発などされたはっぴいえんどの局地的ブーム、レコード会社が仕掛けた流行りではなくクラブや街から起こったこの旧作の再評価。僕も思わず以前輸入盤担当時にやっていたような発掘魂が共鳴した。自分もはっぴいえんどのリアルタイムには遅れて生まれた世代なのでちゃんと聴くのはそのときがが初めてのようなものでもあって。

同じくして小沢くんのソロデビューフリーライヴで開演前にかけられていた金延幸子の「み空」の異例の問い合わせや、アナログ7“で左とん平の「ヘイ・ユウ・ブルース」が売れたり、ムッシュの「ゴロワースを吸ったことがあるかい」の入ったベストCDが旧譜では異例の回転率を叩き出したり。そしてサニーデイサービスの「若者たち」がリリースされる95年になると、はっぴいえんどを大胆にサンプリングしてしまったかせきさいだぁがデビューし、小沢くんもスカパラ小坂忠の「しらけちまうぜ」をカヴァーしたり。ここにきて見事に70‘sと90’sがシンクロした瞬間であった。また、その同時代感をリスナーも歓迎、共感した。


それを体感してもなお、まだ、なんで「街へ出ようよ」で「青春狂騒曲」で「若者たち」なのか?なんで上記往年のアーチストのような洗練感のない昭和のアングラフォーク風なのか?そのときには鈍い僕のような職業音楽人には知るすべもなかった。そして前出のmidiの担当の方から完成した音源(たぶん先にカセットだったような)をいただき聴いたとき、初めて曽我部くんの確信犯的なストーリーがやっと繋がった。

アルバム「東京」は曲順もアレンジも、ジャケットも、完全なるトータリーな「オリジナル作品」だったのだ。ビートルズで言えばサージェント的な、ね。

それからは、この年の桜(=発売)が待ち遠しく、早くお客さんたちに「あじさい」を店頭演奏で聴かせて「今かけてるのは誰ですか?」「ヤバイよねぇ(笑)。これが今度のサニーデイ!やられちゃうでしょ、でしょう?」というやりとりを目に浮かべながらサンプルCDが届くのを待った。そして届いたのはまだジャケのないサンプラーCDでこのダミージャケも今回の「作品」のひとつかい!?って言いたいぐらいシャレてた!(写真)すぐさま、1日の要所要所でかけて現実にそのやりとりを何人のお客さんとしただろう。予約もたくさん入ったなぁ(特典なにやったっけ?また失念)。



<当時の太田手帳の記録>

・新譜一覧表には・・・

2/21発売SDS(イベント)/KOJI1200/カスタネッツ/藤原カセット

2/25発売PLAGUES  3/1発売エレグラ

・予約数一覧には・・・

2/21SDS・200

ディスプレイ予定表には・・・

2/21SDS・DJブース脇平台

・スケジュール表には・・・

2/25(日)15:00〜SDSイベント

と記載が今も残っていました。


そして待望の発売日、大量に入荷した商品を並べて陳列するとまだ寒い店内をひとあし早く満開の桜にしてくれたのでした、小田島 等さんの絶妙なアートワークとともに。

あぁ、あの日まだ寒い2月に、幸せな(そして忙しい)春の日をすごさせていただきました。そんな、レコ屋冥利に尽きる思い出深いアルバムです。

しかし、僕はこのときもうひとつ別のことも感じ取ってしまいました。

曽我部くんは心底、本当にいやらしいエロいヤツだと!(笑)


この年の夏、僕は渋谷店から本社勤務に異動することになる。

そのときに瀧見憲司さんが企画してくれた「太田浩、渋谷お別れイベント」にサニーデイも有志で参加、演奏してくれました。本当に嬉しかった、ありがとうございました。

そして、今回このレヴューの依頼をいただいて改めてデスクで何回も聴いた。

そこにはまぎれもない96年の青春が詰まっていた。昭和でもレトロでもなく、96年のあのときの春の日の匂いが確実に封じ込まれていた。あらためて素敵な感動をありがとう。


最後に、解散ライブのときに記念に3人にサインしていただいたTシャツ(折ってますが)とCDを掲載させていただき旧サニーデイを葬り、新生サニーデイの前途を祝させていただきます!(笑)





太田浩(タワーレコードオンライン事業本部)


太田浩

1962年生まれ。

'81年新星堂入社、吉祥寺DISK INN No.2からレコード屋スタート。

高円寺DISK INN No,1、新宿店勤務を経て'90年HMVジャパン入社。

日本最初の出店HMV SHIBUYAの立ち上げから従事、渋谷界隈の業界のみなさんと

ともに90年代のジャパニーズポップスを渋谷から発信してまいりました。

のちに本社勤務を経て、03年タワーレコード(株)入社。

現在オンライン事業本部勤務。