6/1 - 6/15 CHART

 6月のチャートです。最近チャートしか書いてないなあ。いろいろ書きたいことはあるのですが、なかなかまとまらずに日々が過ぎてゆく。


 このところ、ぼくの友人や、サンレインでずっと推し続けてきたアーティストの評判が高まるようなニュースをよく耳にします。それは本当に嬉しいことで、長谷川健一フジロック出演をP-VINEツイッターで見て知ったときには画面の前で小躍りしました。
 でも、ひとつ残念なことは、彼らが名を成したときには、彼らの作品はもうサンレインで買われなくなってしまう、ということです。所謂「オーバーグラウンド」に行ってしまった(安易にこんな区別をするのもどうかと思うのですが)アーティストの作品は、タワーレコードディスクユニオンといった大型の店舗、あるいはアマゾンやi-tunesで手に入れるひとが圧倒的に増えます。そりゃそうだ。わざわざ小さな通販サイトで買う必要なんてないですものね。
 そんなわけで、結果的に限定流通のCD-Rやレコードがチャートの上位を占めてゆくことになります。
 でも、今回の1位は「森ゆに / 夜をくぐる」。堂々たる著作権管理、全国流通のプレス盤です。サンレインでは店舗限定のCD-Rが特典。森ゆにによる、埋火の見汐さん(高円寺店舗時代のスタッフです)とぼくの曲のカヴァー。レーベル、アーティスト、そしてお店で一緒に企画した、そしてなぜこの店でこの内容なのか、ということがよくわかる特典です。
 アルバムを作り、発売する側のことを考えると、より大きなセールスを目指す限りはこんな小規模店にいちいち構っていられないだろうというのは明白ですから、この企画を一緒に進めてくれたパーフェクトミュージックさんと森ゆにさんには、本当に感謝しています。

 そのほかにランクインしたタイトルを見てゆくと、最近のサンレインのカラーが色濃く出たラインナップ。「夜をくぐる」とは逆に、赤い疑惑の新譜はあえてディストリビューターを通さず、直接取引できる店舗に直接卸すという方法での流通ですが、当店に限らず各地の小規模店でしっかりと反響を得ているようです。



1.森ゆに / 夜をくぐる
http://www.sunrain-records.com/catalog-3300.html
2009年の「夏は来る」以来、2年ぶりのセカンドアルバムは、全曲クラシック・ピアノ一台での弾き語り。エンジニアにWATER WATER CAMELの田辺玄を迎え、山梨県でレコーディングされた8曲は、静けさも、レンジの広い豊かな響きも、余すことなくコンパクトディスクの中にすーっとおさまった、そんな印象を受けます。曲が始まるその瞬間の呼吸とピアノのタッチが、あまりにもさりげなく、それでいて力強く聴く者の耳を惹きつける。心地よさと想像力を掻き立てながら流れてゆく曲を聴くにつけ、楽器も、うたも、そしてエンジニアも、すべてがその「役割」を果たしているのだと、しみじみとした感動を覚えずにはいられません。
ちなみに、1曲目は金延幸子さんのカヴァー。当然のことながら素晴らしいです。


2.鳴海徹朗 / 美しい叫び
http://www.sunrain-records.com/catalog-3298.html
青森県弘前市在住のシンガーソングライターによる、ささやかで、かつ巨大な作品が到着。
谷川健一さんから「弘前にいい歌うたいがおんねんけど…」と紹介していただいたのが、この鳴海徹朗氏。すこし翳りのある透き通った声、独白と祈りのあわいを行き来する詩、控えめながらも濃密と言っていいほど丁寧に紡がれるギター、シンプルな「弾き語り」というフォーマットの滋味を余すことなく詰め込んだ6曲入りCD-Rです。
その完成度に「どうしてこんなひとが、"知る人ぞ知る"ようにひっそりと活動を続けているのだろう?」と思う反面、おそらくこの町の風土や気候、ひととのかかわりの中で必然的に根を張り育ってきた「うた」だからこそ、これほどの説得力を持ちえているのだろうと、分かる気もします(かく言うぼくも弘前という町を訪れたことは未だないのですが…)。
いずれにせよ、胸に響く「歌」を求める耳には届いて欲しい。WATER WATER CAMEL〜Gohfishそして長谷川健一あたりが好きなひとにはマストだと思います!!100枚限定のハンドメイド(しかもすごく丁寧)作品。お早めにどうぞー。


3.王舟 / 賛成
http://www.sunrain-records.com/catalog-2882.html
即興性あるライブと高いクオリティの楽曲で、最近ふつふつと話題を生みつつあるSSW=王舟(おうしゅう)によるCD-R。1〜5曲目は宅録、6,7曲目は七針でのライブ音源です。US INDIE〜オルタナティヴ・フォークのエッセンスと、宅録による遊び心がうまく溶け合っており、さらには麓健一やOONO YUUKI(現在は王舟氏による9人編成のバンドにも参加)といった盟友からのフィードバックも見事に自分のサウンドに結実させて、「王舟」というポップミュージックを作っているように思えます、
けして声を荒げることも、思い入れたっぷりに歌われもせず、淡々と流れてゆく静かなトーンの作品ですが、聴きながら、胸がざわめいてしまうのはなぜでしょうか。


4.Alfred Beach Sandal / Alfred Beach Sandal
http://www.sunrain-records.com/catalog-2886.html
ビーサン」の愛称で親しまれる、キタザト氏のソロユニット。弾き語り、エレキギターが若干加わった曲、ベースやアナログシンセが加わった曲、そのどれもが不思議なリズム(というか呼吸)とコード進行を絡み合わせていて、その中を人を食ったような歌詞(しかもいい声!)がつらつらと流れてゆく。 これが奇妙に耳の気持ちいいところを刺激して、なおかつツボにはまりきらずに奇妙に脱線しており、しかも大げさなカタルシスなくブツっと切れてしまう感覚も巧妙、とにかくその先を聴きたい!と思わせられます。TEASI、山本精一氏のソロなどが好きな方にはぜひおすすめ、でも誰にも教えずに隠しておきたい気もする、そんな音源。
完全に手作りなので、一度売り切れるとなかなか入荷しません。あいにく現在は売り切れ中ですが、間もなくアルバムが発売です!お楽しみに。


4.ゆーきゃん / To The Sea
http://www.sunrain-records.com/catalog-3304.html
2010年〜2011年にかけて、ポータブルレコーダーで何気なく拾われた音の記録。ドアが開閉する音、バーで氷が砕かれる音、ハーシュノイズ、些細な間違い、それらさえも「アリだな」と思える瞬間の詰まったテイクをコンパイルしました。マスタリングはWATER WATER CAMEL田辺玄。スピーカーから流れてくる音の一切があたたかいです。


5.シャムキャッツ / BGM
http://www.sunrain-records.com/catalog-3226.html
「なんでもないところで演奏したい」という衝動を引きずりながら場所を探し、ついに荒川の河川敷での演奏が実現するまでを追った脱力ドキュメンタリー。マジックアワーに奏でられるシャムキャッツは素敵としか言いようがない!!同年11月8日、乍東十四雄とのスプリット・ツアーで訪れた名古屋鶴舞K.Dハポンでのライブ映像も収録。監督、エリザベス宮地。


6.赤い疑惑 / オレ達は日本で生きてる
http://www.sunrain-records.com/catalog-3274.html
ダーティ・サーティに突入した赤い疑惑、待望のサードアルバム。実生活に基づいたであろう数々の物語が、告白手記にもにたリリックで綴られてゆく。むき出しのボーカルはどこかコミカルでありながら哀愁に満ち、諦めや自嘲をはらみながらも、生きているその実感をダイレクトに伝えてくれる。「与作」のオマージュから始まるこのアルバム、持ち味のリアルなエモーションはより濃度を増し、さらに音楽性は雑多になり(民謡/クンビア/ヒップホップ/ポストハードコアetc..)、なお全く揺らぐことなく「赤い疑惑」。世界や社会に対する反発や憤りを覚えながらも、やむを得ず様々なしがらみや不条理を受け止め飲み込んで生きざるを得ない、けれどただ打ち負かされるのではなく、状況の中で立ち上がり、立ち向かってゆく―そんなすべての弱者のための、真のレベル・ミュージックがここに。


7.洞 / まぼろし
http://www.sunrain-records.com/catalog-3262.html
これレコード主宰・洞のファーストアルバム。深いエコーの森からたち現れる「うた」。洋邦のあたらしい音楽の潮流を踏まえながら、日本語で「自分たちの周囲を歌う」ことを大事にしている彼らの姿勢がぼんやりと浮かび上がってきます。
先輩格のミュージシャンや友人たちと同様に、日々流れる和製エモ/ポストハードコア/インディへの愛情を抱き、また長野ネオンホールで育まれてきたフォークミュージックにもその根を下ろしている―幅広い音楽性とそれを等身大の自分たちへ還元する力をもったバンド「洞」の魅力がぐっと詰まった。11曲入り。これで850円!!


8.ちゅうぶらんこ / MOT OTO
http://www.sunrain-records.com/catalog-3275.html
1990年に発売した1stCD「ハローフーラ」は現在廃盤、DVD「26世紀の夢売人」も残部僅少となっているなか、レーベルヤバンがなんともふとっぱらなリリースを。2作品をカップリング+特典に初期スタジオ音源(1at&2nd 収録曲)に未発表の2曲「ファンファン」(7分50秒)と「瑠璃色キッス」(11分32秒)を加えた貴重なCD-R「TOT OTO」(とっとぉ〜と)がついて3150円(税込み)。
以前、向井秀徳氏が「ちゅうぶらんことライカスパイダーは福岡のミッシングリンクだ」というお話をしてくださいました。いわゆる伝統の「めんたいロック」が、ナンバーガールモーサムトーンベンダーそしてパニックスマイルに至るための、革命的に重要かつ盲点であった存在が残した貴重な記録をぐっと凝縮した3枚組です!!必携。


4.フジワラサトシ / 夜に生まれる
http://www.sunrain-records.com/catalog-2900.html
oono yuukiバンドにも参加するSSW、フジワラサトシのCD-Rが、八丁堀・七針の主宰するレーベル"鳥獣類魚"よりリリース。低めのやわらかい声、張り上げることなく、訥々と丁寧に紡がれてゆくうた。様々な音色で彩りを添えるギター。チェロやフルート、そしてドラムはそんなフジワラサトシの世界をそっと支えて、でもけして歌の輪郭をぼやけさせることなく、溶け込んでゆく。思わず手や足を止め、座り込んで聴き入ってしまう、そんな音楽。時折差し挟まれるドローンも気持ち良くまどみに誘ってくれます。mmmがゲストで参加、録音からも参加メンバーの親密感が伝わってくるようで、とても素敵です。いいですねえ。



映像は、最近YOUTUBEにアップされたばかりの、山梨県立科学館スペースシアターでのWATER WATER CAMELと森ゆにによる共演の模様です。
曲は「分室」に収録されている「海沿いの家」。すてきです。