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鈴鹿中高 人権室日記 RSSフィード

2010-08-24 星守る犬

suzuka_h2010-08-24

とても心に残る本を紹介してもらった。今話題になっている本だと聞いて、アンテナの低さに少し寂しくなりました。でも、いい作品を紹介してもらって得した気分です。

ひとけのない場所に放置された車の中から、男性の遺体と犬の骨がみつかるところからはじまります。男性は死後約1年、犬は約3カ月。これは、いったいどんな作品だと思って読み進んでいくと物語は男性の過去へとさかのぼっていきます。ごくありふれた家族が描かれていきます。男性は妻と娘のため、まじめに仕事をこなしています。出世にも魅力を感じず、時間通りに帰宅し、家の手伝いをし、子どもが拾ってきた野良犬を飼うことなど子どものわがままも、妻の相談にも「おまえの気の済むように」と、十分に応えている気のいいお父さんです。帰宅すれば犬の散歩もする、ちょっと古くさいところもある「いいお父さん」。しかし、こんなほのぼのとした家庭にもささいなところからほころびが出始めます。妻の思い通りにさせてやりたいという思いも妻の心には伝わらず、思い通りにさせていた娘は反抗的になっていきます。追い打ちをかけるように「いいおとうさん」は職を失い、さらに病のために就職も見つからず、妻からの離婚届が手渡されます。妻と娘が出て行った後に残ったのは、わずかな家具だけ、マンションも売り、その家具を車に乗せて彼は犬とふたり、海岸線を眺めながら、あてもなく南を目指すドライブに出かけます。助けた子に財布を盗まれても、犬の治療のためになけなしの家財を全部売り払っても、男性はちょっとヘコんでしまいますが、すぐに立ち直ります。すごく印象的な言葉が「何もかもなくなったのに 隣におまえがいるからって ヘンに幸せだぞ」という言葉です。お金も底をつきあるキャンプ場を自らの死に場所に決め、彼は犬を残して旅立っていきます。

そして、数ヶ月後、ハッピーというその犬も死んでしまいます。二人は再会して・・・。

あとがきで作者は男性のことを「ちょっと不器用だけど、平均的ないいお父さん。しかし、今ではそれが十分『普通の生活』を失う理由になりうるようで、本当につまらないことになってきたなあと思うのです」と書いている。

妻や娘に対して怒りを覚えるかもしれないが、でも、切なく、切なくて、ひたすら信じ合っている「おとうさん」と犬。犬を大事にする「おとうさん」とひたすら「おとうさん」を慕う犬。このふたり(あえて)の新たな出発に心が少し癒されました。そして、「やさしさ」を大切にしたいと思いました。悲しくやるせない思いになるけど、少し温かい気分になる作品です。黄色い紙からあとの話もいい。そこに出てくる主人公も「おとうさん」のあたたかさを持っています。来年映画化されます。