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流浪の狂人ブログ〜旅路より〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2013-12-24

「永遠の0」感想

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 発行部数累計300万部を越えるベストセラーにして、百田尚樹のデビュー小説を、ALWAYS 三丁目の夕日山崎貴監督天地明察岡田准一主演で映画化。太平洋戦争時、周囲から「臆病者」の謗りを受けながら、愛する妻と子の元へ帰るため、何よりも生きる事に執着したゼロ戦乗りを姿を描く。

 ツイート上では絶賛の声多数、中には「本年度ナンバーワンの出来」と評する人も少なくない本作。が、小生の感覚が死んでいるのか、はたまた観るべきところが他と違うのか、正直さっぱり引っかかる部分のない、非常に退屈な内容だった。

 確かに、愛国精神の名の下に死ぬ事こそ本懐とされた、軍国主義の真っ只中において、愛する妻のため子のために、敵味方問わず何よりも人の命を優先しようと務めたその生き様は感動的であり、平和を謳歌するこの時代だからこそ、その思想を貫く難しさは理解できるつもりである。
 また、多分にテンプレじみた、ガンダムか何かで100回ぐらい観たようなストーリー展開は、分かりやすい定番物として解釈し、一部の「歴史の捏造」「ゼロ戦の不当な美化にして神格化」「『赤城』のCGが酷い」「ゼロ戦はあんな色じゃねぇよバーカ」等の見解についても、小生自身がその辺の事情に明るくない点も含め、あえて目を瞑るものとしよう。

 では、何がいけなかったか。それはひとえに、登場人物のキャラクターが押し並べて薄っぺらく、バックボーンがまったく見えてこなかった点にある。

 例えば、岡田准一くん演じる主人公・宮部久蔵。操縦士として一級の腕を持ち、小隊長を任されるほどの人物が、いかにして反軍国主義ともいえる思想にたどり着いたのか。愛する妻と子のため、と言えば簡単だが、何も彼一人が妻子持ちなわけはあるまい。まあ、あんな可愛い嫁なら、すぐにでも飛んで帰りたくなる気持ちは分からなくはないとはいえ、それだけでは納得力に欠ける。

 その嫁に関しても、どこでどうやって出逢い、なぜあそこまで深く愛するに至ったのか、やはり説明不足。無論、未来永劫結婚する事などない小生には到底理解できない心境等があったにせよ、せめてお見合いか恋愛結婚か、馴れ初めぐらい語ってほしかったところ。
 彼に限らず、登場人物ほぼ全員そんな調子なので、まるで「お前、ここに立っとけ。お前はこっち」と、ストーリーを動かすため、適当なキャラを適当に配置したような安直さが見受けられてしまう。

 何も、各人の誕生から今日に至るまでの経緯まで全て作中に晒せ、と言っているのではない。上記の件も含め、宮部は嫁のどこに惹かれ、どうして結婚しようと思ったのか。家は元々何をする家系なんだ。濱田岳演じる井崎のご両親と兄弟は、彼をどんな面持ちで戦地に送り出したのか。田中泯演じる景浦は、軍に入る前からヤクザだったのか。そうでないなら、なぜヤクザになったのか。彼らの好物は何だ。趣味は。利き腕は。好きな女のタイプは。そういった事を多少なりとも匂わせる、いわば彼らの生活臭のようなモノが、本作には圧倒的に欠落している。

 仮に誰よりも死を恐れ、乱戦時には一目散に逃げる宮部が、上官から拳銃を突きつけられて「もし次の戦闘で逃げたら、即座に射殺する」と脅された時、彼はどういう行動にでるだろうか。その結果が特攻?明らかに違う。物凄く底意地の悪い言い方をすると、どうも本作は最初にストーリーありき、人物はあとから沿って動くべく置いていっている、そんな印象をアリアリと受けた。

 これは特別な人々の物語ではなく、作中の三浦春馬のセリフよろしく、あの戦争を体験した人と、現在に生きる人々を繋ぐ、当たり前の日常に光を当てる物語なんだよ、と好意的にとらえる人もいると察する。しかし残念な事に、物語とは=人間が何を考え、何をするかであり、逆から言えば、そこに意思を持って動く「人間」がいない限り、決して成立するモノはない。ゆえに断じて、ただの泣けるエピソードの羅列などではない。

 主演の岡田くん井上真央をはじめ、多くの実力派俳優陣の仕事により、一見ものすごく熱い血の通った人間ドラマのようでありながら、その実、中身の伴わない御涙頂戴のナンチャッテ戦争絵巻。本作が遺作となった故・夏八木勲にはたいへん申し訳ないが、一映画ファンとしてこれを褒めるわけにはいかない。

 それにしても、以前同著者の「ボックス!」を観た時も思ったが、この人は文章力と物語を書く才能はあるのかもしれないが、人間を書くのはどうにも上手くないらしい。著作物を読んだ事がないので実際のところはよく知らないが、映像化するならその辺をしっかり補填・補完できる人物に任せるべきではないかと、勝手に苦言を呈しておく。


 さて、随分ボロクソ書いてしまったんで、軽くフォローしておこう。やはり何と言っても、井上真央の演技力は素晴らしい。あの若さで、戦後のくたびれた未亡人をあそこまで完璧に演じられる女優は、綾瀬はるかを除けば他にいまいて。
 加えて、着物の着こなしと立ち振る舞いの見事さ。「武士の献立上戸彩も悪くなかったものの、時代劇の所作ができていなかった点が少々マイナス。その点、彼女の場合は文句のつけどころなし。謝罪の王様でも書いたが、与えられた役割を十全以上にこなせる彼女の才能を、日本映画界はもっと大事にすべきである。
 次回作の「白ゆき殺人事件、原作も面白かったんで今から楽しみ。


 ☆☆☆★★−−

 で、彼は結局なんで特攻したん?小生の勘が悪すぎるのか?星3つマイナスマイナス!!










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ふじき78ふじき78 2013/12/28 17:24 やっと上がったよ。
おでは、とても強引な(歌舞伎みたいに張る見栄を思いっきり張る)浪花節として、この映画を評価する。

synkronized417synkronized417 2013/12/30 21:05  ふじき78さん、いつもコメントありがとうございます。

 浪花節、うんまさにそれなんですよね。結局そこに集約されてしまうんです。凄く嫌な言い方をしますと、戦争で特攻した英霊達の云々より、まず誰が観ても泣けるようなエピソードを並べて、あとは各々で深読みするなり考えるなりしてください、という印象を受けるんです。
 商業的には正しいんでしょうけど、それを「感動作」と呼ぶ度量は、残念ながら小生にはないです、ハイ。まあ多分、こんな事書くといろんなところから怒られるんでしょうけど(笑)。

まっつぁんこまっつぁんこ 2013/12/30 21:27 「白ゆき姫殺人事件」の井上真央はまるで別物でした。
0とあまり間隔あけずに観たので、オッと思いました。ご期待ください。

synkronized417synkronized417 2013/12/30 21:41  まっつぁんこさん、コメントありがとうございます。

 「白ゆき姫殺人事件」、期待して良いんですね?原作読んだときは「これは映画に向かないだろうな〜」と思っていただけに、完成品がどうなっているか今から非常に楽しみです。

volervoler 2014/01/03 09:19 キャラのバックボーンが見えてこない、という意見は同意ですね。
特に主人公と奥さんの馴れ初めなんかは、物語を展開する上での必須要素だと思うんですけどね。

synkronized417synkronized417 2014/01/07 21:13  volerさん、コメントありがとうございます。

 何も一から十まで描けとは言いませんが、最低限それを匂わせる程度の演出はあって然るべきですよね。またすごく嫌な書き方をしますけど、結局「太平洋戦争」「特攻」というキーワードで、無理やり成立させちゃってる観があるんです。そこがどうにも、鼻についてしまいました。

ナオキンナオキン 2014/01/14 18:25 初見の者です。
私もこの映画を観てきました。確かに、戦争に反対していたにしては、少々おかしな点がいくつも有るのが目につきました。最後に特攻に出撃したのは、なんでだろう。あんなに死ぬの嫌がっていたのに。そして、行ったとき最後に、ニヤっと相手を巻き込んで死んでやる的な笑みを浮かべたのは、本人の考えとは一致しないので矛盾が生じる。という感想を真っ先に思っちゃったのは私だけでしょうか?
しかし、当時の人たちがあれほど日本の未来のために散っていったのを軽く表現しすぎな気もする。もうちょっと、主義主張を表現して欲しかった。拳で語られても何も解らん。
現代の私からみたら感動はしたものの、ちょっと脇の甘い作品と感じました。

synkronized417synkronized417 2014/01/15 21:57  ナオキンさん、コメントありがとうございます。

 ですね。色々と説明が足りない作品でした。一から十まで何もかもとは言わないまでも、必要最低限の事柄ぐらいは見せてくれないと、途端にチープに見えてしまいます。気にしなければ多くのレビュアーさんのように「感動したー!」と言えるのかもですが…。
 まあ、どっちが正しい正しくないという事ではないんでしょうけどね。

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