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流浪の狂人ブログ〜旅路より〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2014-07-18

「渇き。」感想

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 第3回このミステリーがすごい!大賞を受賞した、深町秋生推理小説を、「告白」中島哲也監督聯合艦隊司令長官 山本五十六役所広司主演で映画化。

 同監督の前作「告白」以上に凄惨さと残虐性を全面に押し出した、360度どこを切ってもクズばかりの金太郎飴状態、まさにTHE・くず&クズ&KUZU、「クズオールスターズDXみんなロクデナシ!奇跡の大集合」映画。

 とにもかくにも、主演を含め役者陣の頑張りが素晴らしい。日本を代表する名優・役所広司は、昼間から酒を呷り、誰彼かまわず暴言を吐きまくり、共演した女優陣ほぼ全員に暴力を振るい、おまけに娘のパンティまで被らされる、ご自身も「こんなダメ人間演じたの、初めてかもしれない」と苦笑されるほど、ダメダメな元刑事を熱演。
 行方不明になった娘を探す口実に、元妻にレ○プまがいの方法で復縁を迫った挙句、翌日しれっと朝飯を作れと強要。あまりの無軌道、傍若無人、破滅的人格に、入場料1000円の学生向けキャンペーンに釣られてやってきた高校生達は、硬直ドン引き状態だった。

 脇を固める妻夫木聡オダギリジョー二階堂ふみらも、年上の元上司にロト7を買いに行かせるかのごとき鬼畜ぶりで、全員いい感じに腹立つ事ウケアイ(笑)。中でも特筆すべきは、やはり事件の発端にして最重要人物である、主人公の娘・加奈子演じる小松菜奈
 フワッとした透明感と、繊細なガラス細工を思わせる儚げな表情を漂わせながら、その裏に隠された底知れぬ狂気と妖艶さを見事に体現。父親役の役所氏を含む(!)6人もの相手とのキスシーンをこなす、本作が映画デビューとは思えない胆力もまた、未来の大女優を予感させる注目ポイント。
 日本映画界はこういった逸材こそ大事に育てるべき。ついては、彼女のさらなる飛躍のため、本作を超える難役に多数抜擢、徹底的に苛め抜いて鍛え上げていただきたい(エー)。

 CM出身の中島監督らしく、主人公視点の現在と、清水尋也演じる「ボク」視点による3年前の出来事を、アニメーションキッチュな色彩の効果を多用した、ポップでサイケデリックな作風で交錯させながら観せる手法も面白く、同時に、安易に暴力とドラッグと快楽に手を染める若者達、及びダメな大人達の幼児性をも具現化しているようにも感じられた。

 古人曰く、人はみな潜在的「性悪」であるそうで、それを教育や理性によって矯正・律する事で、社会に適応しているのだと言う。裏を返せば、「悪」とは抑制を受けていない人の素の本性、もっとも幼稚で恥ずかしい部分とも言える。なるほど、作中の登場人物が、見た目や年齢や地位に関係なく、どいつもこいつもアホなクソガキに見えたのも、頷ける。

 そんな中、クソガキの代表みたいな主人公が、愛する家族のために文字どおりボロボロになりながら駆けずり回る姿を描いた本作だが、どうも小生には、彼の行動が「愛」とは思えない。
 まあ、生まれてこの方「愛」なんて見た事も食った事もない上に、普段から極悪非道の妖怪を自称している小生が言っても、なんら説得力はないのだが(笑)、察するに彼が抱き、縋り付いている感情は、相手を思うままに動かしたい、独り占めしたい、生殺の自由を握っておきたいという、単なる「独占欲」「エゴ」ではないか。
 仮にほんのささやかな、そういった気持ちが残っていたにせよ、「俺が探し出して、俺の手でぶっ殺してやる」というセリフは、怪物となった愛おしい娘を、せめて最後は自分の手で決着をつけたいという親心ではなく、自分の娘が知らないうちに自分以上の怪物になったので、気に入らないから探してぶっ殺す、と言っているようにしか感じられなかった。
 クソとクズとゴミと既知外だらけの中、唯一の救いのように見えたソレは、実は救いでも何でもなく、あまりの汚れが酷すぎて若干白く見えていただけに過ぎない。つまりは、この作品世界に最初から救いなど1ミリもなかったのだと、断言する。

 とはいえ、作品そのものの完成度は低いわけでは決してなく、巷で言われているような「クズだらけのクズみたいな映画」では断じてないと、声を大にして言っておく。確かに小生自身も、作中に登場するようなクズ連中は心底嫌いだし、絶対に知り合いにもなりたくないばかりか半径10km圏内にも入ってほしくないところだが、本作を含めこういった連中でないとできない物語は確実に存在し、且つ、それを許容しエンターテイメントとして落とし込める事こそ、映画の魅力の一つだと、小生は考える。

 その意味で、本作は映画という娯楽に対するスタンスが問われる、リトマス試験紙のような役割も担っているように思われる。もちろん、本作がダメな人は映画を観る資格がないという事では当然ないし、観ていて気持ちのいい場面はほぼ皆無、そこから何かを汲み取ろうとする感覚すらも嘲笑する雰囲気すら漂い、正直相当に観る人を選ぶ作品ではある。
 しかし、安全安心なハッピーエンドに慣れ、それが当たり前だと思い込んでいる現代にこそ、本作のようなある種の「劇薬」が必要であり、製作された意義もあったのだと確信する。クズの山の中に埋もれた純粋な物語としての価値に、どうか注目いただきたい。


 ☆☆☆★★++

 あとあんまり関係ないけど、「合法ドラッグは違法じゃないから大丈夫だもんね」とかぼざいてるヤツ、全員ブタ箱にぶち込んでやればいいと思う。わりと本気で。星3つプラスプラス!!
















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