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流浪の狂人ブログ〜旅路より〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2015-06-13

「海街diary」感想

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 吉田秋生原作のコミックを、そして父になる是枝裕和監督・脚本(兼編集)で映画化。鎌倉を舞台に、かつて家族を置いて家を出ていった父が残した腹違いの妹と、彼女を引き取った3姉妹との一年間の暮らしを描く。

 人間描写の掘り下げに定評のある是枝監督だけに、本作もまた素晴らしい出来。自然と海に囲まれた鎌倉の美しい景観、あるいは風土をも巧みに用い、どこにでもある、しかし深みと温かみのある人々の生活を、優しいタッチでフィルムに納めている。
 
 日々移り変わる季節と、そこで営まれる大小の出来事や、毎年の行事などを通じ、単身鎌倉にやってきた四女・すずの、そこで積み重ねられていく時間と思い出によって自分の立ち位置、居場所を少しずつ見出し、成長していく姿を繊細に描くと同時に、一緒に暮らす3姉妹と、その周辺の人々の心のありようや変化をやはり丁寧に汲み取り、一級の群像劇へと仕上げる手腕は、さすがを通り越して、どうやったらこんな絵が撮れるのかと、もはや憎たらしさすら覚えるレベル(ナゼ?)。

 脚本、および台詞回しも秀逸で、何気ない会話や小さな姉妹喧嘩、または本編に直接関係のないような台詞をはさむ事で、登場人物に格段のリアリティを与えている。例えば「アレさ、アレしといて」といった曖昧な言い回しも、普通の映画ならまずNGに違いないところをあえて多様し、気心の知れた相手とのいつもの会話という雰囲気を表現する事に成功している。
 中でも個人的に「上手い」と思ったのは、冒頭、姉妹の父の葬式のシーン。泣き崩れて喪主の挨拶が出来ないと駄々をこねる再々婚相手が、すずに自分の代わりのやってくれと押し付けようとするところを、綾瀬はるか演じる長女・がこれを遮り、自分がやると言い出す一連の流れで、の大人としての責任感と父親への意地、そして再々婚相手のすずに対する感情と、ちっぽけなプライドにこだわる内面の安っぽさを、コンパクト且つ雄弁に物語ってみせてくれたと評したい。

 しかし、本作を語る上で特筆すべきは、何といっても四姉妹を演じる女優の存在感と、圧倒的なバランスのよさ。
 長女・演じる綾瀬はるかは、家族を支える母親代わりとして、時に優しく、時に厳しく姉妹に接しつつ、自分達を捨てた父と母を許せずにいながら、自らも既婚者との不倫に身を染めるなど、同じ過ちを犯してしまう自分に苦悩する女性を好演。主人公の一人でありながら、どこか一歩引いたようなスタンスで立ち振る舞う事で、姉妹をまとめる屋台骨として十全に機能してみれてくれた。
 前々から、彼女の真価をまったく理解していない日本映画界のキャスティングに苦言を呈してきたが、今回に関しては文句のつけようがない。まさにハマリ役と断じてよい、見事な仕事ぶり。

 男運と酒癖が悪く、たびたび長女と衝突するも、実は家族の事を一番冷静に見ている次女・佳乃演じる長澤まさみも、また同様。出だしからセクシーな太ももアングル&ブラトップ姿披露もさる事ながら、デビューからしばらく付きまとっていた清楚可憐な美少女臭を完全に脱却。一見だらしないgdgd女のように見えて、危ういバランスの上に立っている姉妹を繋ぎとめる重要なポジションとして君臨。
 やはり彼女には、ちょっと品のないビッチ系の役がよく似合う。和製キャメロン・ディアスだ(笑)。

 4人の中で一番地味で、のほほんとした印象の三女・千佳演じる夏帆は、衝突しあう上の姉妹に対する緩急剤のようでありながら、お互いがいい意味でぶつかり合い、角を取り合うための研磨剤のような役割も果たし、同時にすずと二人をよりよい方向へと導くナビゲーターでもあると感じられた。

 そして四女・すず演じる広瀬すずは、その境遇からか見た目しっかりしていながら、常にイい子であり続けようと気を張る難役を熱演。物語が進むにつれ、徐々にわだかまりが解け、憎まれ口まで叩くほどに親密になっていく様子には、グッとこみ上げるものがった。可愛らしく大人しめの容姿にも関わらず、少年サッカーチームでエースとして活躍する意外な一面も高ポイント。

 かねがね小生は、ここ数年ようやくマイマイ新子と千年の魔法片渕須直監督、あるいは先日レビューを書いた百日紅原恵一監督といった、「当たり前の日常」を映像に落とし込めるアニメ作家が出現、台頭してきた点を受け、表現方法としての実写とアニメーションの明確な差異はなんだろと考えてきた(単純に生きた人間か、絵に描いたキャラクターかという事ではなく)。その結論は、当然のごとくまだ出ていないが、少なくとも本作は、この4人が奇跡的にこの時代に生まれていなければ完成しなかったと断言できる。
 もちろん、脇を固める樹木希林さん大竹しのぶさん堤真一リリー・フランキーといった俳優陣による相乗もあるが、例えばビートルズジョンポールジョージリンゴでなければならないように、GLAYTERUTAKUROHISASHIJIROでなければならないように、本作もまた、この4人ではじめて成立し得た作品に違いない。まさしく奇跡の一本である。

 弱くて、欠点だらけで、どうしようもなく哀しい事、腹の立つ事、享受できない事もあるけれど、生きていく中でそれらを一緒に経験しつつ、傷ついたり、助け合いながら人はゆっくり時間をかけて、自分の居場所を見つけていく。そんな当たり前の事に気づかせてくれる作品。とはいえ、小生にはそんな温かい家庭だの友達だの、一人もいなかったけどね!!(台無し)


 ☆☆☆☆★

 アニメ音楽界の絶対王者菅野よう子さんの劇中曲もグッド。星4つ!!












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