「オデッセイ」感想


 アンディ・ウィアー原作の小説「火星の人」を、「エイリアン」リドリー・スコット監督「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」マット・デイモン主演で映画化。不慮の事故により、火星に一人残された宇宙飛行士が、生き残るべく科学と知識を駆使して奮闘する、SFサバイバルムービー。

 聞けば本作、元々は個人のウェブサイトで連載していた小説を、読者からの要望に応える形でkindleにて出版したものなんだとか。作者自身も、15歳からサンディア国立研究所プログラマーとして働いていたという、本編の主人公マーク・ワトニーに負けず劣らずの秀才だそうで、やはり地頭のいい人の書くモノは一味違うものだなーと、妙に感心してしまった次第。

 水も空気もほとんどナシ、加えて救助の可能性がある次の有人探査機が来るまで約四年と、まさに絶望的な状況の中、残った食料のジャガイモから畑を作り、壊れた機材のパーツから水を精製、生き残るためにありとあらゆる手段を行使する行動力とタフなメンタリティは、何故か笑ってしまうほどエネルギッシュ。
 実際はかなりギリギリの、一歩間違えれば即死確実な事態にも関わらず、問題を一つ一つ解決し、僅かな希望を繋いでいく爽快さ、痛快さが、悲壮感と緊張感を中和相殺。劇中の7、80’sディスコナンバーも相まって、この手のサバイバルものにしては珍しく、終始明るく、悲惨さを感じさせなかったのは、個人的にはグッド。

 火星と言っても、エイリアンゴキブリ人間が襲ってくるわけでもなく、中盤の畑の一件を除いて、大きなトラブル、ハプニングも特になし。まあ上記したとおり、それらのうち一つでもあったら生き残れないのだから、当然と言えば当然で、むしろそういったドラマは、彼を救助するべく悪戦苦闘する地球のNASA関係者が担っているのだが、ために全体的に絵の派手さ、抑揚が弱く、またマット・デイモン演じるマークの、TOKIO顔負けのスーパーチートサバイバーっぷりに、「割と余裕だったんじゃね?」と思ってしまう人も、少なくないと察する。

 おそらくは、これ以上何かしら別の要素を足してしまうと、途端に陳腐な、リアリティもヘッタクレもないただの妄想厨二小説にグレードダウンすると覚り、エンタメとして落とせるスレスレを突いたのではと邪推するが、それだけに、何を求めてチケットを買ったかで、賛否の分かれる作品であるのは間違いあるまい。

 とはいえ、本来なら「ただ退屈な火星の景色が続くだけ」に成りかねない本作を、これだけ見応えのある作品に仕上げる手腕は、さすがは人間描写に定評のある、天下のSF番長リドリー・スコット。謎の中国推しはともかく、演者の芝居も非常に良好で、この原作のポテンシャルに対してベストな仕事だったと評したい。


 正直、映画のアイデアとしては「もう20年早ければ」という観もあり、SF史に残る大傑作!と絶賛するほどでもないが、「一回撮っとこう」という早い者勝ち的な意味では、価値のある作品。こういう映画こそ、ちゃんとしたスクリーンで観ておくべし!


 ☆☆☆★★+++

 あと、「マン博士」って言うの禁止な(エー)、星3つプラス3つ!!

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