「映画 プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法!」感想


 毎春恒例の「映画プリキュアオールスターズ」第8弾にして、プリキュアシリーズ映画20作記念作品。プリキュアの涙を狙う謎の魔女ソルシエールに、魔法つかいプリキュア!プリキュアオールスターズが立ち向かう。

 みんなで楽しく歌って踊るがコンセプトだった前作「春のカーニバル♪」が、想像を絶するあんまりな出来だったために、当初シリーズ初のミュージカルと聞いた時は、正直嫌な予感しかしなかった。
 事実、冒頭、何の前触れもなく魔法つかいプリキュア!の二人と、「Go!プリンセスプリキュアの面々が、見覚えのある顔もちらほらの街の人達と仲良く歌いだした時は、作画の微妙さも相まって、またあの悪夢が繰り返されるのかと、背中に冷たい汗が流れたが、大きなマイナス点と言えるのは、全編通してそこぐらい。後述するツッコミどころも多少あるものの、概ね悪くない出来だったと評したい。

 現在放送中の魔法つかいプリキュア!をメインに、オールスターズのピンチと逆転劇、そして苦難を乗り越えてよく強い友情で結ばれる二人の成長を描く、といった内容で、お笑い要素とシリアスを適度に交えつつ、テーマである「歌」に即した、見応えのあるドラマに仕上げてある。

 ディズニーピクサーの作品を観る限り、そんな事はないように思えるが、実は本来、アニメとミュージカルは、相性がいいようで掛け合わせが難しく、ヘタに扱おうものなら、途端に陳腐で白けた、観るに堪えない噴飯モノに成り下がってしまう事も、珍しくない。
 そんな中、本作は上記した冒頭シーンを除けば、歌いながら展開させていく事を前提としたストーリーと、キャラクターの表情や動き、演出等、それに合わせた作りとなっていた事が見事に相乗し、嫌な言い方をすれば「ちゃんとしたミュージカル」になっていたのは、非常に大きい。
 ちゃんとしたミュージカルになりすぎて、クライマックスは若干マクロスみたいな絵になっていたが(笑)、モチーフをしっかりと認識し、使い切るという意味では、前作の反省点が活かされていたと感じられた。

 何より、ともに舞台経験豊富で、歌唱力にも定評のあるゲスト声優御二方の尽力が、本作の完成度に大きく貢献している点は見過ごせないポイント。
 謎の魔女・ソルシエール演じる新妻聖子さんの、現役ミュージカル女優の本領発揮と言わんばかりの圧倒的歌唱力は、それだけで説得力十分。プリキュアの涙を狙う、悲しい過去を背負った少女の心境を、完璧なまでに表現してみせてくださった。
 ソルシエールに仕える伝道師・トラウーマ演じる堀北の旦那こと山本耕史も、またいい仕事。歌の上手さもさることながら、花より男子」「明日のナージャ等での声優経験もあるだけに、コミカルながら不気味な思惑を匂わせる男を怪演。いつものイケメンっぷりからは想像のできないくらい、ドラゴンボールフリーザを彷彿とさせる口調と声質で、プリキュア達を苦しめる好敵手という大役を、見事務めきってくださった。
 敵役にせい何にせい、ゲスト声優を起用するにしても、物語のキーとなるキャラクターは、それなりの実力のある人に演じていただくのが、もっとも適切であると、改めて確信した。やはり、どこぞの武勇伝だのナントカヒューマンとか言ってる半竹芸人もどきなど、採用するべきではないという前作の失敗が、この上ない教訓になったと察する。

 不満点があるとするならば、あの程度の檻、ブラックさんならステゴロパンチ一発で破壊できるだろ、とか、そもそもパッションさんの能力でテレポートできんじゃね?とか、細かいツッコみどころがどうしても目についてしまったのと、ラクルライトの登場と扱いが、ものすごくご都合的だった点。あれはさすがに、もう少し捻りがほしかった。
 それから、結局あの少女はどうしてラクルさん達の前に現れたのか不明だった事と、ディスピア様の扱いがそこいらのクリーチャー並に酷かった事(笑)。まあ、歴代ラスボスほぼ総出演であったし、そちらの意味でも「オールスターズ」だったのかもという事で、大目に見よう。

 さて、プリキュア新聞によると、来年はとうとう「オールスターズ」ではなくなるかもしれない、との事。確かに、「NS」辺りから員数が増えすぎて、活躍できるキャラとそうでないキャラの格差があまりにも大きくなりすぎているといった問題も起きているが、果たしてどういう形になるのか…。
 普通に考えるなら、新作と近年のシリーズ3、4作品だけの登場がベターだが、ストーリーに合わせての選抜メンバーという可能性も。あるいは、エコーさんよろしく映画完全オリジナルのプリキュア登場、とか。何にせよ、本作の興行収入次第だなー(エー)。

 ちなみに、今回もフリーダムなマリンさんに加え、ピンクカルテットという名のグダグダ4人組が個人的に超ツボ(笑)。


 ☆☆☆★★++

 隣の席の女児が、エコーさん観て「アレだ〜れ?」って言ってたのが、今回のハイライト(エーー)。そうだよなー、2〜4年前とはいえ、彼女らが生まれる前かもしれんもんな〜。星3つプラスプラス!!


 つーかモフルンの走行フォーム、完璧すぎやろ(笑)。