「彼奴は利己主義だ」などと他人を非難する声があつたとする。この場合本当の利己主義は非難する側にあることを私は殆ど請合つてもよい。よくそんな非難をするくせのある人は、勤労奉仕をする前に、坐禅でも組むべきだと私は思つてゐる。(無方針、○利己主義)

これも19歳の若造の吉本の文章ですね。勤労奉仕という言葉に戦争中の風俗があらわれています。人を利己主義でもいいし、不道徳でもいいし、卑怯者でもいいけど、責める人はあんたのほうが利己主義なんじゃないの、ということを言っています。そういう人は座禅でも組んで自分と対話したほうがいいみたいな。まあたいした洞察がここにあるというほどじゃないですが、人から非難され、攻撃される、しかも相手は多数で自分は一人きりだという、なんか吉本のこれからの人生の予感のようなものがあるといえばあるんじゃないでしょうか。



おまけ

ありません。