『幽幻道師キョンシーズ』

獣拳戦隊ゲキレンジャー』からアクション映画に触れてみよう企画、第十九弾。
 今回は『幽幻道師キョンシーズ』。

 大道芸人の親方と共に旅する四人の子ども達。ある夜、キョンシー隊に出会った子ども達は、軽い悪戯のつもりでキョンシーのお札をはがしてしまう。暴れだしたキョンシーに影を踏まれた親方には、様々な不幸が降りかかってしまう。
 テンテンと金おじいさんの住む町にやって来た親方達だったが、親方はキョンシーに影を踏まれた事によって運に見放され、公演はキャンセルになり、博打にも負け、ついには警察に捕まってしまう。
 捕まったその夜、親方の前に以前に親方の影を踏んだキョンシーが現れ、暴れだす。親方はこれと戦い、キョンシーに噛まれキョンシーになってしまう。
 テンテンは子ども達と共に親方を捕らえようとするが……。

 ストーリーはこちら。
『ゲキレン』的には、臨獣殿のリンシーのモチーフとなったキョンシーを主題とした映画。
 両手を上げ、ぴょんぴょん飛び回るアクションが有名すぎるくらい有名。
 キョンシー映画はサモ・ハン・キンポーが製作した『霊幻道士』シリーズが先んじて作られた作品でもあり有名。しかし個人的には一番思い入れのあるキョンシー映画なのでこちらをセレクト。子供の頃、TV放送をよく観てました。
 でも覚えていたのは、キョンシーのアクションと「コト」に及ぼうとする夫婦をキョンシーが襲う所だけ。えーっと……自分、どんだけエロガッパ(何)!?
 以下感想。



「アクションホラーコメディ」と言うだけあって、この三つのバランスが絶妙。
 適度に笑わせてくれて、適度に怖くて、アクションも中々と、九〇分間飽きる事無く楽しめる良作。
 アクションはキョンシーの不自由な動きを十二分に活用したもの。どうも、死後硬直のせいらしい。
 親方キョンシーを捕らえるため、特別霊魂になった四人の子ども達の人間とキョンシーの半端な動きも秀逸。あの半端さとわけの分からなさが巧い。四人で「気(?)」を増幅させて打ち出すのはちょっとゲキレンジャーっぽい。
 その他、道士的な、呪術的効果も見逃せないポイント。明らかに吊っている動きだったりするのだが、それも含めて「こういう映画」とするりと納得。
 ホラー面は、もちろんキョンシー
 基本的には旅先や出稼ぎ先で死んだキョンシーを故郷に連れ帰るために道士が先導する、と言う長閑な字面。
 事実、お札を貼っていれば何の問題も無いのですが、お札をはがせばさあ大変。恨みを持っている人間を襲い、人肉を喰らう。何が一番恐怖かと言うと、こいつらは男の陰茎を喰らうのです。キョンシーだって男です。うわぁ、怖っ!
 コメディ面では、もう全てとしか言いようがない。登場するキャラクター、ストーリーの流れそのものがコメディと言える展開。
 ひたすらキョンシーに尻を噛まれるデブ署長らを初め、占いにこだわる金おじいさん。何よりキョンシーだって、何故か骸骨をピンとボールに見立てて夜の墓場でボウリング。何でボウリング!? と、ツッコんだら負け、と言わんばかりの緩い空気が面白い。




 しかしこの作品で一番魅力を放っているのは子ども達。
 テンテンはもとより、四人の子ども達、スイカ頭、チビクロ、チビトラ、デッパ。そして父親を探すベビーキョンシー
 テンテンには、何と言うかこう、独特の魅力がありますね。いや、別に幼女好きとか、そう言うのではなくて(笑)。『フルハウス』のミシェルにも似た魅力と言うか……まあ、単純に可愛らしいんですよね。悪女だけど(ぇー)。
 スイカ頭、チビクロ、チビトラ、デッパの四人も、それぞれ面白いのですが、やはり四人揃っている時が一番面白い。四人それぞれの巻Kねいせいと、キョンシーになっても親方を想う心根は感動物。この辺り、身内びいきの中国らしいと言えばらしいのかも。
 そしてベビーキョンシー(劇中での呼称は単なる「キョンシーの子ども」)。
 自分の父親を探し、夜を彷徨する子どものキョンシー。誰彼構わず「お父ちゃん」と言って、一緒に連れていこうと悪戯を繰り返すベビーキョンシーは、しかしどうにも憎めないキャラクター。




 シリーズにもなっていて、多くの作品が世に出ているキョンシーシリーズ。これに関わらず他にも多くのシリーズものが存在するので、一個ずつ片付けていこうと思います。
『ゲキレン』もクライマックスが近いので、しばらくは臨獣殿しばりでやってみます(笑)。