文化

「本書は,世界各地の多彩な事例を通して,こうしたグローバリゼーションの深化に伴う文化的課題を俯瞰するとともに,それらについて考えるうえで留意すべき諸点を論じたものである。」 (�瞼頁)

「問題はナショナリズムそのものではなく,むしろ国民国家が大きな位相を占める国際関係において,「政治の失敗」や「市場の失敗」がナショナルなものへの愛着を流用しやすい点にある。」(18頁)

「言語や歴史のみならず,グローバル/リージョナル/ナショナル/ローカル/コミュナルという重層的な位相を踏まえながら文化について考える必要がある。」(21頁)

「品質管理から,認定,保証,報告,評価に至るまで,往々にして「客観的なデータ」を媒介に行なわれることが今日的な特徴でもある。個人の実存性や内面性が顧慮されることはなく,個人(ないしその群れ)は計算かつ制御可能なものとして捉えられる。」(46頁)

「文化相対主義とは,文化的差異を尊重し,その優劣や善悪に関する判断を保留・回避する立場を指す。それは中立で公正な態度ではあるが,ややもすると,人びとの生存・生活・尊厳を脅かす状況を「文化」の名の下に黙認することにもなりかねない。」(78頁)

「今日の文化的位相をめぐるもう一つの特徴は,市場経済や情報通信技術の進展に伴い,文化を競争力の源泉として捉える傾向が強くなっている点である。 84砂漠のなかの一粒の砂にすぎないことを極限まで悟ることから生まれる強さや美しさのようなものがあると思えたのである。」 (151頁)

文化人類学は人間社会に関する何かしら客観的なパターンを「説明」しようとする「社会科学」なのか。それとも何かしらの「解釈」を示そうとする「人文学」なのか。」(180頁)