やりたいことに忠実になるなら、そうなるよね。という話。

前回のぐだぐだ話のちょっとした続き。
相変わらずぐだぐだです。話も途中で飛ぶ。
きっと後で書き直す。


とりあえず三行まとめ。

  1. えこPの新作「嵐が丘」は、えこPがやりたいことに忠実になったら3Dになっただけ。
  2. 「あえてアイマス?」ってそれは誤解ですよ。先にアイマスありきなんですよ。
  3. つうか、アイマスでやりたいことが増えすぎた。ゲーム素材だけじゃ無理。→自作素材ばっちこい。

話つながってる…よね…?


というわけで、えこPの最新作がうpされました。

この動画を例にして、ニコマス動画がどの方向に行くのか、ちょっと書いてみたいと思います。なんとなくPV系が念頭にありますがそれ以外のジャンルも一応考慮に入れている…つもりです。

動画の紹介とか感想とか。

この「嵐が丘」は、映像面でいうとゲーム由来の映像素材一切なし、すべて一から3DモデリングされたPV動画です。
歌い手のイメージとして千早が登場します。モデリングには賛否ありますが(たしかに、アケ版・箱○版どちらにもそれほど似ていないけど)、一から作り起こされただけあって、表情、口の動き、髪や衣服の動きなど、こまかい部分まで曲とシンクロしています。
…丘の上にすっと立ち、集まる雲に嵐を予感しながら、その細い体を風に巻かれながら、それでも空に向かって声をはりあげるその姿は、孤高の歌姫である千早のイメージによく合う演出だと思いました。
背景のモデリングも素晴らしいです。曇天から嵐に向かう天候の変化、巻き起こる風、そよぐ草原、波打つ水面、雲間から差し込む光、どれも気持ちいいものでした。

やりたいことをやろうとしたらこうなった?

…と、ここまで書いて思ったんですが、こういうイメージの千早の動画って、ニコマス動画全体から見てもそんなに多くないですよね。
彼女はもともと歌手志望ですから、ダンス抜きで純粋に歌を歌うPVがあっても不思議ではないと思います。というか、むしろしっくりくると思います。


では、なぜそういった動画が少ないのか。


理由は簡単で、そのようなシーンが原作のゲーム映像にないからです。
ただ突っ立って歌うという、絵的には至極単純な映像すらゲームにはありません。
一応、立ち絵はコミュやアイドラにはありますが、ほとんどバストアップだったり、表情が歌向きでないなどの問題からあまり使えません。あとは…衣装選択画面のぐるぐるくらいか。いずれにしても厳しい戦いです。
もし「嵐が丘」に出てくるようなシーンをゲーム映像を使って表現しようとすると、大加工が必要なうえ、それでもアングル固定の映像を作るのがやっとだと思います。もちろん力技ですので、労力の割りに応用というか使いまわしができません。他のアングルが欲しければ、その都度キャプ映像を切り張りです。*1


なので、こういう動画を作りたいなら実は一から作ったほうが早いし、演出の自由度も高く、結果的に動画クオリティの向上が望めます。一度作ったデータはのちのち改良しつつ使いまわせるという意味でもお得です。


そういう意味で、えこPのやり方は実に真っ当です。
やりたいことに忠実に手段を選んでいったら3Dになりました、という。

「あえて」ってなんだよ。

ところで、この動画についた視聴者コメントの中に「あえてアイマスでやる意味がない/なぜオリジナルじゃなくてアイマス?」とか、それに対して「あえてアイマスでやるからいいんじゃないか」といった意見が散見されます。
まあ、他の動画でもよく見る光景なんですけど。
ただ少なくともこの動画については、俺はどっちも間違いと言うか、見当違いのように感じます。


別に難しい話じゃないです。ていうかお前ら動画のタイトル嫁。
アイドルマスター 如月千早 嵐が丘
ですよ。つまり、
アイドルマスターっていうゲームに出てくる如月千早っていうアイドルに出演してもらって嵐が丘っていう曲をプロデュースする映像を作りました」
ってことですよ。
実は「嵐が丘を使って千早をプロデュースしました」なのかもしれませんが、まあどっちでもよいです。


そのうえ、動画の内容もちゃんとアイマスです。実に千早らしいじゃないですか。
この動画には、千早というキャラクターにふさわしい演出がたくさんあったと思いませんか?
逆に、たとえばこの曲調でいつものようにバタバタとせわしなく踊られたら、かえって千早らしくなかったのではありませんか?
それともアレか? お前らはまな板に「72」って書いたネタ画像のほうが千早っぽいとか抜かすのか?
胸か? また胸ネタか!?*2


そんなわけで、この作品の感想として「あえてアイマス」という言葉を差し挟む要素はどこにも無いように思います。
作ってる当人からすれば「あえて」でもなんでもなく、当然なのです。
つうか、Pだし。PってのはプロデューサーのPなんだから、アイドルを使って作品作って何が悪い。という感じ。


…ただ、まあ、この手のコメントがつくこと自体は仕方ないことです。
うまく言葉にしづらいんですが、ライトなファンにとっては、そこに出ているのが千早かどうかはたぶん、どうでもよいのです。というか、彼らにとってはどの動画にしても、アイマスである必要はないのです。


彼らの場合は「すごい動画が見たい」のであって、それがたまたまアイマスのジャンルにあったから見に来てるのです。
だから、やもすると「あなたはすごい映像を作れるのに、なんでアイマスでやるの?」ということになります。
言い換えると、あなたは原作以上の映像が作れるんだから、もう原作にこだわる必要はないでしょ、という。


でもニコマスPにしてみれば、先に書いたように「アイマスで何か作りたい」という欲求が先にあるわけで、そこを否定されるのはちょっと…という感じじゃないかと思います。*3


根っこが違うので、まさに「まあ、仕方ないね。」としか言いようがありません。
アイマス知らなくても楽しめるアイマス動画という意味では、わかむらPの動画を見るのがいいと思います。

「まずゲーム映像素材ありき」の時代が終わりつつある。気がする。

あれこれ書きましたが、無理矢理まとめの項です。
前の項とつながりが見えなくても気にするな。


なんか俺何度も似たようなこと書いてますが、ニコマスPは、アイドルにやらせてみたいことが増えすぎました。
最初はせいぜい公式以外の曲でアイドルに歌って踊ってもらうだけで満足していました。公式のダンスを組み合わせれば、曲に合わせて大概それっぽい動きができるとも思っていました。
ところが、次第に「アイドルなんだから」とドラマに出してみたり、講座をもたせてみたり、アニメ化漫画化ゲーム化。
そもそもPVだって、最初はお決まりのステージで踊ってただけなのに、いまや生身のアイドルと同じようにロケしたり、CG合成したり。


そのうえ、前項でも書いたように視聴者の目も肥えて「アイマスの動画が見たい」から「すごい動画が見たい」へ嗜好がシフトしつつあるように見え、…とにかく求めることも求められることもやたらと大きくなりつつあります。*4


これは作る側からすると、ゲーム映像を使う「だけ」では実現不可能なことが増えすぎた、ということでもあります。


そういった問題を解決(欲求を実現)するために(だけではないと思いますが)、描いてみた系の人や3D系の人、あるいは素材職人が増えているのは必然の流れのように思います。*5
もしかしたら「ニコマス動画はゲーム映像素材と動画編集ソフトでがんばるものだ」という認識は、過去のものになるんじゃないか、とも思っています。


もちろん今でも(そして今後も)ゲーム映像を使った動画は出てくると思います。
なんだかんだでゲーム映像のクオリティは異常です。表情は自然だし、ダンスは滑らかだし、髪や衣装の質感もすごいし、云々。使えるなら使わない手はないのです。それに、これと同等のものを作れる素人はめったにいないでしょう。*6また、原作ゲームへのリスペクトとしてゲーム映像にこだわる人もいるでしょう。


それでも、いまやゲーム映像を使うのはあくまで表現のための手段の一つであって、別に目的でもなければルールでもありません。
むしろ手段に縛られてしまうと、何より自分自身の肥大する表現の欲求に応えられなくなります(そして自縄自縛で動画作成をあきらめることに…)。


…もしかしたら、これからアイマス動画を作ってみようと思う人は、去年あたりのように「まずゲーム映像素材の加工を覚えて…」といったことは少なくなるのかもしれません。これまで主流と思われてきたPV系であってもです。
つまり、アイマスをネタにしてどんな作品をプロデュースしたいのかが先にあって、その実現手段として、ゲーム映像加工/3D/描いてみたなどのジャンルを選択して習得していく…といった風に。*7
そして、たとえば底辺スレで「こういうの作りたいです」って質問したら
「その構想だと動画キャプとか時間の無駄だから、3Dモデリングの勉強しろ!」
みたいなやりとりが普通になる日が…
…それはないか。


まあそんな感じでこのエントリおしまいです。
読んでくださってありがとうございました。

*1:この辺の話で言うと、たとえばセバスチャンPの「だんご大家族」が非常にがんばっています。元のダンスを意識させないであたかも新しい動きをしているように見せる技術については、ノリスケPの「Bomb a Head」や慈風Pのロボキッス以降の作品がいい感じです。

*2:落ち着けエアーD。

*3:別に「アイマス愛()笑」とかそういう話ではなく。

*4:「視聴者の目をいちいち気にしていたら作品なんか作れねーよ」という話もありますが、一方で自作を見てもらうために視聴者の動向を気にしたいPもいるでしょう

*5:架空戦記・ノベマス界隈での「歪」氏の捏造コミュ絵の汎用性は異常。あと小鳥さんのおっぱいが素敵。

*6:まあ、そう言いながら野生のプロはごろごろいますが…

*7:その点、架空戦記やノベマスの場合はだいぶはっきりしているように見えます。とりあえず紙芝居メーカーを使えるようになれ、と。