大人の見識


大人の見識 (新潮新書)

旧帝国海軍での勤務経験を持つ阿川弘之氏が
日本人の国民性ともいえる「軽躁」について指摘し
それを戒めた書。
古来より、我が国では蛮勇が慎重より尊ばれ、
軽躁が剛勇と誤解されることかしばしばあり
そうした軽躁が国全体に蔓延したのが
大東亜戦争の頃ではなかったかと作者は回想している。
そしてその軽躁は、未だにこの国はびこり
多くの問題を引き起こしては、こじらせている。


ガソリン税日銀総裁の問題、その他について
枝葉末節にこだわり事態の本質を見失い、
事の軽重をわきまえない今の民主党の頑迷ぶりと
それを批判しきれないマスコミを見る時
ああコイツらがその典型かと納得できる内容だった。


最近、保守派でその評価が見直されている東条英機について
"局長であれば名局長"とこき下ろしてはいるが、
ステレオタイプ的な陸軍悪玉海軍善玉論ではない。
意外と人気が高かった首相在任中の東条の精勤ぶりに辟易しながらも
東京裁判での言動は立派だったと一定の評価を下しているし
"軽躁病"ともいえる熱に浮かされて
バスに乗り遅れるなとばかりに三国同盟に賛成した海軍を
せめて行き先くらいは確認すべきだったと皮肉をもって批判している。


軽躁なる子供の日本に対して、
大人であるイギリス流の対応を政治家も国民もマスコミも身につけよ、というのが
作者の云わんとするところだが、大いに首肯できる書である。