「ArT RANDOM 71 Robert Longo」京都書院
「平坦な戦場でぼくらが生き延びること」といえば岡崎京子の代表作「リバーズ・エッジ」に引用されたウィリアム・ギブスンの詩の一節で、岡崎ファンなら誰でも知ってると断言してもいいくらい有名ですね。椹木野衣も自分の「岡崎京子論」の題名を、そのまま「平坦な戦場でぼくらが生き延びること」としたくらいだし…
で、その出典がこの本*1なわけなんですが、それを知って探し始めた時点で既に出版元の京都書院は倒産していたし、本屋にも在庫はなく、アマゾン・コムでもヒット無し。古本屋をマメに回る根性もない自分は、とっくの昔に、もう、絶対手に入らないだろうと諦めていました…
しかし、世の中、何が起こるか分かりません。つい最近になって、あちこちの岡崎関係の掲示板*2に「まだ手に入れられるぞ!」という情報を書き込んでくださった方がいて、半信半疑のままメールで注文してみたら、いやぁ、本当に届いちゃいましたよ! 今日になって…
というわけで、この幸運のお裾分けとして、この本に載っていたギブスンの原文該当部分をアップロード。尚、右が故黒丸尚氏による和訳(岡崎に引用された部分)。
何かの参考にしていただければ幸いです。
THIS CITY | この街は |
IN PLAGUE TIME | 悪疫のときにあって |
KNEW OUR BRIEF ETERNITY | 僕らの短い永遠を知っていた |
OUR BRIEF ETERNITY | 僕らの短い永遠 |
OUR LOVE | 僕らの愛 |
OUR LOVE KNEW | 僕らの愛は知っていた |
THE BLANK WALLS AT STREET | 街場レヴェルの |
LEVEL | のっぺりした壁を |
OUR LOVE KNEW | 僕らの愛は知っていた |
THE FREQUENCY OF SILENCE | 沈黙の周波数を |
OUR LOVE KNEW | 僕らの愛は知っていた |
THE FLAT FIELD | 平坦な戦場を |
WE BECAME FIELD OPERATORS | 僕らは現場担当者になった |
WE SOUGHT TO DECODE THE | 格子を |
LATTICES | 解読しようとした |
TO PHASE-SHIFT TO NEW | 相転移して新たな |
ALIGNMENTS | 配置になるために |
TO PATROL THE DEEP FAULTS | 深い亀裂をパトロールするために |
TO MAP THE FLOW | 流れをマップするために |
LOOK AT THE LEAVES | 落ち葉を見るがいい |
HOW THEY CIRCLE | 涸れた噴水を |
IN THE DRY FOUNTAIN | めぐること |
HOW WE SURVIVE | 平坦な戦場で |
IN THE FLAT FIELD | 僕らが生き延びることを |
THE BELOVED(VOICES FOR THREE HEADS | 愛する人(みっつの頭のための声) |
BY WILLIAM GIBSON | ウィリアム・ギブスン 黒丸尚 訳 |
≪蛇足≫
やっぱり原文を見ると色々分かることがありますね。
そもそも「平坦な戦場」って「THE FLAT FIELD」だったんだ…
「僕らは現場担当者になった」って「WE BECAME FIELD OPERATORS」だから、ここでいう「現場」って「平坦な戦場」のことだったんだ。つまり「平坦な戦場」を自らの活動の舞台として生きる人間になったということ。
最後の4行で「HOW THEY CIRCLE IN THE DRY FOUNTAIN」と「HOW WE SURVIVE IN THE FLAT FIELD」は対を成しているから、「平坦な戦場で僕らが生き延びること」は「干上がった噴水の中で風に吹かれた落ち葉が渦を巻くこと」と同じことなんですね。(←ホントかよ!?)
何が分かったのかはよく分からないけど、何か色々分かったような気がする…(気分的に…)
*1:ロンゴの写真(?)にギブスンが詩を付けた「写真集」というか「詩画集」みたいなもん。というか、ひょっとしてギブスンの詩にロンゴが画像を付けたのかな?
*2:星野さんの岡崎HP附属掲示板、mixiの岡崎京子コミュニティ、当方の岡崎ファンHP附属掲示板等々