Hatena::ブログ(Diary)

タダスケの日記

2018/02/10(Sat)

予備試験受験者の取り込みを画策する法科大学院(法科大学院等特別委員会(第84回))

以下の資料に書いてありました。

法科大学院等特別委員会(第84回) 配付資料:文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/041/siryo/1401206.htm


【資料2】これまでの法科大学院等特別委員会における委員の主な御意見 (PDF:179KB) PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/041/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/02/07/1401206_002_1.pdf



予備試験受験者の取り込み


p3
○ 今後既修は3+2や4+2のいずれであれ一貫コースに移行するだろうが、予備試験を受験する者をいきなり取り込むことはできず、一貫コースを運用する中で結果がついてくれば、取り込めていくのではないかと思う。


法曹コース構想は,ロースクールの時間的負担を軽減する話かと思っていたので,予備試験受験者を取り込むという話が出てきて,何のことかと思いました。

要するに,学部段階で優秀な学生は,ロースクールに行かず予備試験へ流れてしまうので,学部に法曹コースを設ければ,法曹コースからこれに続くロースクールへ取り込めるだろう,という話らしいです。

p4
○ 法学部と法科大学院の連携を、複数の大学が協定を結んだ上で進めるに当たり、学生の流動性にあまり制約がかかるとなれば、法科大学院進学よりも予備試験を選択することになることを懸念する。ついては、流動のある程度担保された制度の仕組みが必要と考える。


こちらの発言も,学生が予備試験へ流れることを意識しています。
たとえば,A大学からは,同じ大学のAロースクールにしか進めないという硬直的な制度を仮に想定すると,他のBロースクールに行きたいA大学の学生が,やむなく予備試験へ流れてしまう,というような話らしいです。

p4
現在検討している3+2では、予備試験を受けている層は法科大学院に来ないと思う旨の学生から感想を聞いた。さらにどういう方策があるかまで議論を深めることができれば有り難い。


しかし,学生の感覚からは,予備試験を受けるような層は,3+2では,ロースクールに行かないそうです。

下の発言にもあるように,法曹コースではかなり厳しく勉強しなければならないらしいですが,そんなにガリガリゴリゴリ勉強するのが5年も確定し拘束されるのであれば,学部1年から予備校に通ってガリガリゴリゴリ勉強して,予備試験を受けた方が,早期に合格できる可能性もありますし,仮に撤退することになったときにリスクが少ないと思います。

p6
法曹コースにおいてはかなり集中して法律に関する学修を行うべきではないかあまりに緩やかでは、あえて法曹コースを創設する意味は無いのではないか



法曹志願者減少の原因


p2
一番の課題は法曹志願者の減少。その原因は費用と時間的な負担が大きい。時間的負担の軽減を進める必要がある。一方、既修者中心となると、多様なバックグラウンドを持つ者が挑戦しにくくなる誤ったメッセージとなるおそれがある。


法曹志願者の減少の原因を,費用と時間的負担と分析されていますが,本当の原因は,弁護士の経済的価値の毀損ではないでしょうか。

10年前の10倍増 弁護士が独立より「企業内」を目指す理由 (日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース

では、その待遇はどうなっているのか? これも日弁連調査によると、企業内弁護士の最も多い年収帯は「500万〜750万円」。つまり、普通のサラリーマンと大差はない。実際、8人の企業内弁護士を抱えるソフトバンクは、基本的に給与は一般社員と一緒。所属の弁護士会に支払う弁護士会会費(東京弁護士会は年間50万円ほど)を肩代わりしてくれるだけだ。

 資格取得の難易度に対して給与が見合わない気もするが、今や弁護士の平均所得(収入から経費を除いたもの)は、わずか907万円。5年未満の弁護士にいたっては、448万円という薄給だ。ソフトバンク社員の平均年間給与1164万円というのを考えれば、普通の弁護士になるより安定した生活が待っている

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180208-00000019-nkgendai-life


インハウスの例ですが,多額の学費を払って,1日10時間勉強するなど数年間プライベートな時間を犠牲にして,それで「給与は一般社員と一緒」なら,わざわざ弁護士になるメリットはないでしょう。
それならば,最初から一般社員として入社した方がいいと思います。

また,旧司法試験でも,合格者の平均勉強期間は,時期によっても違いはありますが,5年〜6年だったときもありました。
ロースクールの既修と比べると,ロースクールが2年ですから,修了後3年〜4年目の合格となります。
旧司法試験も,決して,時間的負担が小さかったとは言えないでしょう。
予備校の利用も必須でしたから,ロースクールほどではないかもしれませんが,経済的負担もそれなりにありました。
それにも関わらず,旧司法試験が5万人の出願者を集めたのは,やはり弁護士の経済的価値に魅力があったからだと思います。

法曹志願者減少の原因を見誤っていたら,どんな対策をとっても,法曹志願者の回復にはつながらないと思います。

地方大学の法曹コース


p2
○ 法曹の多様性をしっかりと確保するため、地方の法学部や法科大学院をどのようにして確保するかも重要な論点となるのではないか。


p3
法科大学院を持っていない地方大学の法学部から法科大学院に進む途を示すことが非常に大事である。(再掲)


p5
法科大学院が廃止された地方や、立地しない地方における法曹志望者をどのように吸収するかについても考慮すべき。他大学の法学部に置かれる「法曹コース」からの進学を考えるのであれば、教育課程をある程度標準化せざるを得ないのではないか。


p7
法科大学院は設置できなくとも、学部に法曹コースを設置することで、地方在住の者に法曹を目指す機会を提供することができるのではないか


地方にもかつてロースクールがありましたが,多くが廃校の憂き目にあっています。
それが,学部の「法曹コース」だと,うまくいくのでしょうか。

新制度を作れば,なんとなく人が集まってきてお金を払ってくれる,と思うのは,現実を甘く見ているとしか思えません。
学部の「法曹コース」であっても,選択者が1ケタ,さらには1ケタ前半になれば,独自のカリキュラムを組んで教員を配置するコストが効果に見合わなくなり,法曹コースの廃止ということもありえるのではないでしょうか。

未修者教育の「拠点化」という名のマス教育化


拠点 キョテン
デジタル大辞泉の解説

活動の足場となる重要な地点。

https://kotobank.jp/word/%E6%8B%A0%E7%82%B9-479844


未修者教育の「拠点化」が検討されているようです。

共通認識があるように,「拠点化」と各委員から連呼されていますので,何のことかと思いましたが,どうやら一部の有力校sl7(LL7?)が,未修者に対してマス教育をする,という構想のようです。

p9
拠点化や連携する意味は、適切な切磋琢磨ができることや、学生間で刺激を受けられるような環境を担保することだと考える決して少人数なら少人数の方が良いとか、楽をしようという意味でないことを確認する必要がある


p9
(前略)
未修者教育で大きな変革を考えるのであれば、既修者と切り離すのが良いかという議論はあるが、既修者と3年間切り離して教育することも考える必要があるのではないか。マンパワーの問題もあり、拠点化を考える必要もあるのでないか


p9
(前略)
一部の法科大学院を未修者の受け入れの拠点とすることは、養成すべき人材像を明確にして、法科大学院教育との接続まで考えて、合わせ技で行うべき。


p11
教育実績の高い法科大学院に法学未修者の受入れを拠点化することが必要ではないか


要するに,少人数教育という法科大学院の理念を投げ打って,易きに流れる,ということです。

現に,そのような指摘もありました。

p11
○ 法律基本科目について学部の講義を活用することとした場合、少人数教育を行うという法科大学院の理念との関係で問題があるのではないか


マス教育,多人数教育ということを決して明示せず,姑息な言い換えでごまかそうとするのは,有識者会議のもはや伝統芸と言えます。

これまでにも,制度設計ミスで下位ロースクールが次々と廃校に追い込まれていく様を,「選択と集中」と美しく言い換えていた,ということがありました。

「選択と集中」〜「転進」する法科大学院 - タダスケの日記
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20130102/1357110722


初学者へのマス教育ということであれば,各大学に法職講座などありますし,わざわざロースクールでやる必要があるとは思えません。課外講座として,各人が任意に受講すれば足ります。

法職講座カリキュラム | 中央大学
http://www.chuo-u.ac.jp/career/law_exam/support_tama/curriculum/


また,現在にもまして,未修者教育をするロースクールが少なくなるわけですから,近くに「拠点化されたロースクール」がない学生も多くなってしまいます。
「引っ越せ」ということなのでしょうか?

いわば「初心者コース」とも言える,学部の「法曹コース」と,「未修者教育」との区別が曖昧になるような気がします。
現に,未修者は「法曹コース」に編入すればいい,という発言もありました。

p11
法学未修者については、法学部(の法曹養成コース)2年または3年に編入して基礎的な法学を学修することとしてはどうか


(未修者コースの改善に関する配布資料では,なぜか拠点化については一切触れられていない……)

【参考資料2-2】法学未修者コースの改善について(案) (PDF:113KB) PDF
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/041/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/02/07/1401206_005_1.pdf



法科大学院の成績が同じでも,既修者に比べて,ダブルスコアで結果が振るわない未修者


p13
法科大学院の成績が同じである人達が司法試験を受けると、未修コースの学生の方がダブルスコアで結果が振るわない。司法試験を法科大学院教育に合わせてくれということはないが、法科大学院と適切な連携を図ったものにより一層なっていただきたい。


個人的な経験からしても,8科目の膨大な範囲を1度に問われる司法試験本番の成績が,本当の実力だと思います。
ロースクールの期末試験などは,範囲が狭いですし,授業をした教員が出題するわけですから,授業のノートを見ることが対策になるなどして,対応しやすいです。
そうした期末試験で,「実力のある既修者」が,未修者と同じような成績になってしまうのは,要は司法試験と関係がないので手を抜いているとか,いろいろな理由があると思います。

以前,弊ブログでもこの点を検討したことがありました。

テクニックが要求される法科大学院 - タダスケの日記
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20130201/1359715211



予備試験合格者が中退することで空洞化する法科大学院教育


p13
○ 予備試験合格者や予備試験経由の司法試験合格者のような優秀な学生こそ法科大学院において多様な教育を受けることが望ましいと考えられるが、次々に法科大学院を中退してしまうため、逆に法科大学院教育の空洞化を招くなど、法科大学院教育に大きな影響を及ぼしている


勉強は所詮,個人でするもので,団体戦ではないですから,優秀な人が中退したからといって,何が空洞化するのかよくわかりません。

それほど優秀な学生が法科大学院教育に良い影響を及ぼしているなら,バイト代くらい払うべきではないでしょうか。

なぞかけ


甲「法科大学院制度とかけまして,山の旅館と解きます」
乙「そのこころは?」
甲「改築,改造を繰り返して,もはや原型を留めていません」

おまけ


法曹志願者が激減した?あーそーゆーことね,完全に理解した(予備試験受験者を取り込もう!)←わかってない

画像は以下を参照のこと。

ポプテピピック - LINE スタンプ | LINE STORE
https://store.line.me/stickershop/product/1206683/ja

さては(ロースクールの)アンチだなオメー

画像は以下。

さてはアンチだなオメー (くそまんがのくそめいげん)とは【ピクシブ百科事典】<
https://dic.pixiv.net/a/%E3%81%95%E3%81%A6%E3%81%AF%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%81%E3%81%A0%E3%81%AA%E3%82%AA%E3%83%A1%E3%83%BC

ロースクールゥァア゛ーッ!!

画像は以下。

[15-1] ポプテピピック【15】 / 大川ぶくぶ / まんがライフWIN
http://mangalifewin.takeshobo.co.jp/rensai/popute/popute-015/15107/

ロースクール!?廃校したはずでは・・・

画像は以下。

2018/01/14(Sun)

裁判官・裁判所職員の不祥事の発表の有無がわかる文書(データを含む)が,1年未満で廃棄される裁判所



某岡口Jがtwitterでやらかした件の記録も,廃棄されている模様(朗報)。

裁判所を法の光で照らすために,司法試験合格者を増やして,裁判官を増員すべきですね!

2018/01/07(Sun)

法曹養成をめぐる「時間」と「費用」の問題(中本和洋・日弁連会長,弁護士ドットコムニュース)

ーー次に、その日本の司法を担う人材の問題に移りたい。2017年の司法試験の受験者数は前年比932人減の5967人で、法曹を目指す人が減少している。法曹養成についてどのように考えているのか。

はなわ > 法曹志望者が減っていることについては、法科大学院での教育に時間と費用がかかることが、大きな理由と指摘されています。

土田 > 旧司法試験時代から,「資本試験」と揶揄されて,お金も時間もかかっていたけど,出願者が5万人いたけどね。

はなわ > また、司法試験合格者の8〜9割は弁護士になりますが、弁護士業界は競争が激しくなっており、昔のように「試験に受かればなんとかなる」という状況ではなくなっています。

土田 > 弁護士激増策により弁護士の経済的価値が下落して,ロースクールの負担にペイしないんでしょうね。

はなわ > 司法試験合格はスタートであって、ゴールではありません。弁護士は雇用が保証されておらず、サラリーマンのように退職金をもらえるわけでもありません。自分の努力で生きていかなければいけません。時間と費用をかけてなりたいという職業ではない、という認識が一部の人たちの間にあるのかもしれません。

土田 > 「一部の人たち」ではないから,法曹志願者が9割も減っているんですけどね。

はなわ > でも、私はこんなに素晴らしく魅力的な仕事はないと思っています。

土田 > 魅力を食べて,生きていけないですからね。

はなわ > 自分で仕事が選べ、社会から評価されます。

土田 > 仕事をはじいたら,報酬ももらえませんけどね。

はなわ > 最近では、企業内弁護士になる人もいれば、地方公共団体や中央官庁で働く人もいて、キャリアの積み方も様々です。

土田 > 任期付きだと,任期満了後は放り出されますけどね。

はなわ > 企業で会社員として働いてから、弁護士業に戻ってくることもできます。

土田 > 弁護士としては,ほぼ新人として厳しい競争の中でやっていくことになるけどね。

はなわ > また、報酬が明確になっていて、

土田 > 会社員だって,給与くらい明確ですよね。

はなわ > 自分の努力が目に見えることも弁護士の良いところです。

土田 > 努力が報酬に必ず結びつけばいいですが,結びつかないこともあるのが,自営業の厳しいところですけどね。

ーー法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格が得られる「予備試験」の合格者が増えている。2017年の合格者は444人で、前年よりも39人増え、過去最多を更新した。

はなわ > 元々は働きながら司法試験合格を目指す社会人や経済的事情がある人のためだったものが、現状は法科大学院生や大学生のショートカットになっています。

土田 > ショートカットされてしまう,ロースクールに問題はないのですかね。

はなわ > 元々の制度趣旨から外れているため、実施状況を検証し、本来の制度趣旨を踏まえた運用となるようにしなければなりません。

土田 > 制度趣旨から外れた予備試験経由の法曹を,喜んで採用している大手法律事務所,裁判所,検察にも,抗議しないといけませんね。

はなわ > 法科大学院は、少人数・双方向的で密度の濃い教育を行い、理論と実務を架橋する幅広いカリキュラムを通じ、事実に即して思考する能力の養成に重きを置いています。

土田 > 合格率20%台の司法試験を控えて,そんなことをやるより予備校の模擬試験を受けたほうがいいですけどね。

はなわ > また、実務家が積極的に関与しており、展開・先端科目やローヤリングなど、法科大学院でしか学ぶことのできない分野が多数あります。

土田 > 教室でやる授業なんて,所詮,畳の上の水練ですよね。予備試験経由で早く合格して,お金をもらいながらOJTで学んだほうが,学べますよね。

はなわ > また、法科大学院を卒業すること自体のメリットもあります。最近では、法務部門の人材として、法科大学院修了生を積極的に採用しようとする企業が増えつつあるという報道もなされているところです。

土田 > 待遇が一般の社員と変わらなければ,経済的にロースクールを卒業することは,メリットどころか多大な負担でしかないですよね。

社内弁護士の基本的な給与や賞与は一般の正社員と同等(法曹養成制度改革連絡協議会 第5回協議会(平成28年10月17日開催)) - タダスケの日記
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20161103/1478186236


はなわ > 2017年11月からの第71期司法修習生からは新たな給付制度が創設され、経済的負担の問題の一部が改善されました。

土田 > その前に,給費制廃止という改悪がありませんでしたっけ?その回復としてもはなはだ不十分ですよね。

はなわ > 今後は、もう一つの課題である「時間がかかる」という時間的負担の問題に取り組む必要があります。これについては、現在、文部科学省中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会において飛び入学・早期卒業の利用を念頭においた教育課程面の連携や法学部と法科大学院の間で事実上の「5年一貫コース」として運用していくなどの議論がなされています。

土田 > 時間的負担軽減の決定的な策のような騒ぎようですが,たった1年軽減されるだけですよね。改善見込みのデータ的裏付けもなく,また行き当たりばったりの弥縫策じゃないんですか。それに,社会人や他学部からの人材を受け入れるという司法制度改革の理念に反するんじゃないですか。

元ネタ


「日本の権利救済は世界で通用しない」日弁連・中本会長が語る司法の課題 - 弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/internet/n_7182/


ナイツの漫才 『ドラマ』
http://geininn-netatyou.com/wp/naitu/post-772/



参考


「法科大学院離れの最大の要因は、司法試験合格率の低迷だ」2014/4/19付日本経済新聞 - タダスケの日記
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20140419/1397923127

2017/12/23(Sat)

理念を後退させるロースクール(法科大学院「未修者3割」目標撤回 文科省方針:日本経済新聞)

多様な人材を養成するという理念を後退させるようです。

法科大学院「未修者3割」目標撤回 文科省方針  :日本経済新聞

文部科学省は15日、法科大学院の入学者について、3割以上は大学で法律を学んでいない「未修者」とする基準を撤廃する方針を明らかにした。未修者を中心に入学志望者が減り続けており学生の質を保つために基準が不要と判断した。

(中略)

04年に始まった法科大学院を巡っては、修了者の司法試験合格率が当初見込みの7〜8割に届かず、2割台に低迷。特に未修者コースは近年の合格率が12%にとどまり、入学者に占める未修者・実務経験者の割合は、17年度に25%と、5年連続で3割を下回る。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2470172015122017CR8000/


記事を見ますと,

未修者コースの入学志望者が減っている(不人気
未修者コースの司法試験合格率が低い(低合格率

を理由に,未修者コースの定員を政策的に確保することをやめ,そのために司法制度改革の理念が後退することを許容する,ということのようです。

この理屈をパラレルに適用すると,

予備試験の出願者が増えているのに対して,法科大学院の入学志願者は減っている(不人気
予備試験が毎年トップの司法試験合格率を叩き出しているのに対して,法科大学院の合格率は,はるかに低い(低合格率

のですから,たとえ法科大学院によるプロセス教育という司法制度改革の理念が後退するとしても,合格率の高い予備試験を推すべきであり,法科大学院の定員を政策的に維持することもやめていいように思われます。

あくまで法科大学院政策を推進するなら,せめて理念とともに殉じるべきと思いますが,法曹志願者を激減させた結果,法曹の質を低下させ,さらに理念を放棄してしまうのであれば,何も残らない,有害無益の制度となってしまわないでしょうか(反語表現)。

弁護士増員政策に役立たないロースクール


f:id:tadasukeneko:20171223114717p:image

日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:基礎的な統計情報(弁護士白書2016年版等から抜粋)
https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/statistics/reform/fundamental_statistics.html


また,こちらの司法試験合格者数の推移を見ますと,旧司法試験の時代でも,最大1500人程度の合格者を出しています。

一方,今年は予備試験の合格者が444人でしたので,仮にその60%が司法試験に合格したとすると,266.4人が予備試験ルートの合格者となります。

全体の合格者が1500人と仮定すると,差し引き1233.6人が法科大学院ルートの合格者となります。

そうすると,百歩譲って,弁護士増員の方向性が正しいと仮定しても,旧司法試験の一発試験の制度と比べて,法科大学院制度は,増員政策に資する制度とも言えない状況になっています。

増員政策に役立たない
法曹志願者の激減を招いた
理念を安直に放棄する

というのであれば,法科大学院制度は,有害無益の制度と評価されてもやむを得ないのではないでしょうか。

参考データ


平成29年司法試験予備試験口述試験の結果
4 合 格 者 数 444人
http://www.moj.go.jp/content/001238840.pdf


司法試験予備試験合格者等に関するデータ一覧
http://www.moj.go.jp/content/001166781.pdf

2017/09/16(Sat)

常に「◯時◯分現在,お電話が繋がりやすくなっております。」と表示する法律事務所の債務整理広告

ネット上で,以下のような法律事務所の広告を見かけました。

f:id:tadasukeneko:20170916125659p:image

過払い金請求の無料相談なら弁護士法人アディーレ法律事務所
https://www.adire.jp/lp/kabarai/1701_a.html


「12時36分現在,お電話が繋がりやすくなっております。」

と表示されています。

「事務所内の電話システムと連携して,電話が繋がりやすいか繋がりにくいかを調べて,サイト(webサーバ)に反映させるのは,かなり面倒だな」と思って,興味本位でソースコードを見てみました。

なお,例えばGoogle Chromeであれば,以下のような方法で,簡単にソースコードを表示させることができます。

ソースコードを表示する - Google Surveys ヘルプ

Ctrl+U(Windows)または ⌘-Option-U(Mac)を押します。
https://support.google.com/360suite/surveys/answer/6172725?hl=ja


該当の箇所は,以下のコードで表示されているようです。

<p class="msgTel"></p>

html上では,タグの間が空になっているので,JavaScriptなどをいじることで表示しているのでしょう。

そこで,headタグ内をを見ると,以下のように「time_change.js」というJavaScriptファイルを読み込んでいます。

<script type="text/javascript" src="js/lib/time_change.js"></script>

そこで,この「time_change.js」というJavaScriptファイルを見ると,以下の内容でした。

$(function(){
//時間判定処理

var dateAttr = new Date();
var hour = dateAttr.getHours();
var minu = dateAttr.getMinutes();

if((hour >= 10) && (hour < 22)) { $(".msgTel").html("※" + hour + "時" + minu + "分現在,お電話が繋がりやすくなっております。"); }
else { $(".msgTel").text("※本日の受付は終了いたしました。"); }
});

なお,以下のリンクからも直接コードを見ることができます。

https://www.adire.jp/lp/kabarai/js/lib/time_change.js

これを見ると,要するに,現在の時間と分(正確にはサイトにアクセスしたときのそれ)を取得し,時間が10時以上22時未満であれば,以下の文字列の「hour」のところに時間を,「minu」のところに分を入れて表示させるようになっています。

「"※" + hour + "時" + minu + "分現在,お電話が繋がりやすくなっております。"」

そして,もし10時以上22時未満でなければ,

「※本日の受付は終了いたしました。」

という文字列を表示するようになっています。

f:id:tadasukeneko:20170916125704p:image
(受付時間外にアクセスしたときの表示)

これを見ると,事務所内の電話システムとの連携というものはなく,当該事務所の受付時間である10時から22時であれば,機械的に,現在の時間と分を表示し,続けて「お電話が繋がりやすくなっております。」という固定の文字列を表示するようになっています。

欺罔的な広告手法ではないか


「お電話が繋がりやすくなっております。」という表示は,反対の「電話が繋がりにくい状態」がありうることを意識させます。
これを見た閲覧者は,「電話がつながりやすい今のうちに電話しよう」と動機付けられると思われます。
しかし,電話が繋がりやすいのかどうか,電話システムの稼働状況をそもそも調べておらず,そうであれば事務所としては「電話が繋がりやすい状態であるかどうかはわからない」はずです。
それにも関わらず,「電話が繋がりやすい」と表示し,閲覧者に今この瞬間は「電話が繋がりやすい」と誤解させ,架電を誘引するのは,欺罔的な広告手法と感じます。
(万一,電話システムの稼働状況を調べていたとしても,サイトには「電話が繋がりやすい」と固定文字列を表示して,実態を反映しない表示をしているのであれば,閲覧者から見れば欺罔的でしょう)

宣伝に関する過去の懲戒審査


弁護士のネット広告に関する問題といえば,懲戒審査に発展した事例もありました。
もし,広告の宣伝文句に問題点があれば,当該事務所は反省し,万全の再発防止策をとるべきでしょう。

アディーレの宣伝に「懲戒審査を」 3弁護士会が議決:朝日新聞デジタル

アディーレ法律事務所は「景品表示法違反については反省し、再発防止策をとった。ただ、所属弁護士は宣伝への責任はない。いずれも弁護士会の懲戒には当たらないと考えており、懲戒委員会で経緯などを説明していく」としている。

http://www.asahi.com/articles/ASK4344FXK43UTIL01Z.html


実態として,この広告サイトは業者が作成しており,当該事務所の弁護士は内容をよく把握していなかったのかもしれないとも思っています。
しかし,自らの事務所の名前で広告を出している以上,業者とよくコミュニケートをとって意思疎通を図らなくてはなりませんし,少なくとも作成された広告を見てチェックすれば,この「電話がつながりやすいとの自動表示」にはすぐに気付いたはずです(私が気付いたように)。

もし,こうしたチェックも不十分であったとしたら,そうした姿勢,意識自体に多少の問題があるのではないでしょうか。

弁護士激増時代になり,当該事務所は弁護士の採用数も多く有名ですが,このような多数の弁護士を採って全国に支店展開を図る事務所は,この事務所以外にも出てくると思われます。

そうした新しいタイプの事務所のさきがけとして,うまいビジネスモデルを築くことができるのか,個人的に着目しています。

参考サイト


JavaScriptのDate オブジェクト についての解説ページです。

Date オブジェクト (JavaScript)
https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/cd9w2te4(v=vs.94).aspx