UN-GO#11「私はただ探している」(終)

 そして、敗戦探偵は、敗戦する。
 人を愛したいと願い、人の真実を知りたいと願うこと。
 その始まりから、敗戦であると知りつつも。

 振り返れば、新十郎と麟六の関係性が実に面白い作品でした。ヒーローとアンチヒーローか、あるいはその逆か。
 バディもの、というコンセプトで始まった企画だったそうですが、新十郎と因果のみならず、新十郎と麟六もまた、陰陽のバディであったのかもしれない。と、ふと思ったり。

 細工はりゅうりゅう、仕上げを御覧じろ。きっちりと纏め上げた最終回でした。
 お約束の「名探偵、全員集めて『さて』と言い」も入っていて、ニヤニヤ。探偵ものの醍醐味であります。
 ここまでもそうですが、ミステリとしてのギミックと、因果や別天王といった人外の存在が、うまく絡み合って機能していたのが、素晴らしかった。
 アバンにおける因果と別天王のシーンの背徳感は、この世ならざるものを目にしているということが背景にあって、いっそう増していたような気がします。

 ミステリとファンタジー(?)という組み合わせが、何でも有りの卑怯さで公正を欠く、と主張する人も居ますが、元来、ミステリってそんな狭い定義のものではありませんので。
 例えば西澤保彦の一連の作品はSFとミステリの融合ですし、今年話題になった米澤穂信の「折れた竜骨」は魔術を組み込んだ本格推理、古くはグレッグ・イーガンの「星を継ぐもの」もハードSFでありながらミステリでもある名作として知られています。
 前提条件と論理構造さえしっかりしていれば、SFの定義、ファンタジーの定義を持ち込むことは、別に問題無い、とされています。

 で、この作品の場合、脚本を組み立てる時点で、相当に注意深く組み立ててあった模様。でなければ、数多のミステリ作家の興味を惹くことも、その幾人かから褒め称えられることも、無かったことでしょう。

 閑話休題

 事件を解く鍵としては、爆破犯と別天王の主は別の人物であること、しかし別天王の能力は事件を構成する要素のひとつであること。このふたつをきちんと把握出来るかどうかがポイントだったのではないでしょうか。
 例えばミステリにおいて連続殺人と見做された事件が、実は複数の犯人と思惑によるものであった、というように、しばしば見受けられる構造です。
 WHOダニット、WHYダニット、HOWダニットのもつれあい。すべてをほぐし、並べれば、真実へ至る道はきちんと用意されていた。
 そして、爆破事件については、この連続した3話の内に全ての伏線とヒントがきっちりと仕込んであり、推理可能なものであったこと。
 別天王の主については、やはりこの3話である程度の推測は可能でしたが、付け加えてこちらは映画「因果論」を含む以前のエピソードを見ていることにより、納得の度合い(つまりは、後になって分かる伏線の提示量)が限りなく高まる。

 つまり、事件の二側面が、異なる二種類のカタルシスへと繋がっている。これは連続したTVアニメ+映画版という、超変則的な作品形態によってのみ可能になったものでした。まことに、得難い。

 そして事件は、第一話からずっと貫いてきたとおり、人の美しさと醜さ、真実の光と闇にしっかりとスポットを当てるもの。
 倉満の言動からして、フルサークルは決して悪意や利益を求める存在ではなく、独善と信念でもって動いている。そのためなら、他者を貶めることや、犯罪に手を染めることも厭わない。
 ……再生可能エネルギー問題を絡めていることもあり、震災以後の日本の現況と重ね合わせずにはいられないのですが、それはさておき。
 一方の麟六は、利潤の追求のみならず、理想を求めて動いていた、と。そのためなら、無関係の人間を死に至らしめ、戦争を起こすことすら、躊躇い無くやってのける。

 いずれも、単純に糾弾することは難しく、たとえば目の前にこういった主張を持つ存在が居たら、私であれば、きっと見て見ぬふりをする。流れゆくまま、流されるままに。

 けれど、結城新十郎は、探し続ける。

 それは、真実という名の痛みであるかもしれず、
 それは、虚偽という名の美であるかもしれず、
 それは、愛という名の神であるかもしれず、
 
 ただ、探し続けている。

 ともあれ、満足、満腹の最終回でした。
 別天王については完全決着。
 探偵という、ある種言葉を武器にする職業の者が、言霊を「御霊の出来損ない」と言い放ったのがまた、皮肉たっぷりで思わず痺れました。
 そして、神風という概念の扱い方に納得。少々ネタバレになりますが、映画「因果論」を見ていて、唯一腑に落ちない(というか、消化しきれていない)感のある箇所だったので、ここで拾ってくるか!と、思わず快哉を叫びたくなったり。

 麟六とは、決着はつけず、というか、着く日が来るのか、どうか。一応、続きを作って作れないことはない形で落ち着いたので、そういう意味では逆に嬉しくもあったのですが。
 ほんと、二期やってくれないかなぁ。近年珍しく、見応え、歯応えのあるアニメ。堪能致しました。

 スタッフの皆様、お疲れ様でした。
 素晴らしい作品を、ありがとうございました。

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 とりあえず最終回を見た後、因果論含む全巻をあまぞん予約しましたが、アニメイトの特典(BOX)も気になる。因果日記の絵柄というのが、ちょっと微妙なような……とりあえず、現物イラストを見てからですね。はい。

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