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2017-02-19

「とある魔術の禁書目録」と「とある科学の超電磁砲」の演出と演技を比較する楽しさ

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最近は「とある魔術の禁書目録」と「とある科学の超電磁砲」の妹編を比較しながら見ていました。両作品は一方通行との激闘を始める後半は脚本的に殆んど同じ事をしているんですけど、作画と演出と演技の差が大きいから退屈しないというかむしろ楽しい。上記画像の右側が「禁書」で左側が「超電磁砲」なんですが、これを見ると一方通行から御坂妹が受けた傷の差に驚きます。

「超電磁砲」では御坂に肩を貸して貰わなければ立てない位に負傷しているのに対して「禁書」では自力で立つ事が出来て外傷も見られません。これだけ元気そうなら御坂が上条さんを助ける為に、手を貸して欲しいと無理を承知で御坂妹に頼む時にも罪悪感を覚えずに済みそう。本当は御坂妹に無理をさせたくないけど、それでも一方通行を倒す為に無理をさせる非情な決断を下す御坂の台詞に重みを与える意味でも、あそこの場面では御坂妹を瀕死にした方が映えますね。「禁書」の方は上条さんも御坂妹と同様に血を流していないので、一方通行戦を終えた後もまだ戦える余力を残している雰囲気が漂います。ぶっちゃけ上条さんに関しては一方通行と戦う前、御坂を止めようとして受けた電撃の方が効いている気がします。

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電撃を受ける「禁書」の上条さんは演出的にまるでナッパの攻撃から悟飯を庇い死んだピッコロさん。この強烈な光を放つ電撃に耐える上条さんなら一方通行にも苦戦しないで勝てる。「禁書」の一方通行は放送当時は勝ち目の無い強敵に思えていたんですけど、「超電磁砲」の一方通行を見た後ではそうでもないと思えてきました。空気を圧縮してプラズマを生成する場面を比較すると、その規模の違いから両者の力の差を感じずにはいられない。何というか「禁書」の方は生成したプラズマが小さい上にコンテナに挟まれた窮屈な空間にいる所為で、映像的に世界を滅ぼす力を手に入れる場面には見えません。

この辺の演出の差違は「禁書」と「超電磁砲」の見所で、物語的には重要度の低い点になりますが、死体を発見したという上条さんの通報で駆け付けたアンチスキルの態度も異なるんですよね。「禁書」では御坂妹の死体が消えた事に動揺した上条さんに対してアンチスキルが心配する表情を見せるんですけど、「超電磁砲」ではアンチスキルは上条さんの通報が悪戯だと決めつけて不快感を示します。状況的には上条さんが妄言を吐いているとしか思えないとしても、その態度から悪戯ではないと考える「禁書」のアンチスキルの方が私は好きです。

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「禁書」と「超電磁砲」では映像の表現の他に声優の演技も大幅に変更されており、「超電磁砲」で内面や過去が詳細に語られた御坂と一方通行はそれが顕著に表れています。「禁書」の一方通行の演技はテンションが高くて戦闘で弱者を追い詰め喜ぶ外道らしいものなのですが、「超電磁砲」の一方通行の演技はそれに加えて最強である自分に怯えない上条さんに対する不快感や張り合いの無い戦闘に対する退屈感なども感じられるものになりました。岡本信彦さんの演技力の向上も影響して一方通行の精神は、単純に力を持つだけの狂人や三下の域から抜けた複雑な悩みも抱えるキャラに昇華したのではないかと。

これともう一点だけ触れておきたいのが、最初に述べた御坂妹に助けを求める時の御坂の演技。これは完全に別物で「超電磁砲」の方は自分の無力さを嘆いて今にも泣きそうな声の出し方をしています。御坂の台詞量が増えているのもありますが、演技に感情を乗せている為に読み取れる情報力も桁が違う。ここは「超電磁砲」のオーディオコメンタリーで阿部敦さんと岡本信彦さんも凄い褒めていましたね。御坂が孤独に戦い積み重ねてきた辛い想いが感じ取れる最高の台詞でした。ちなみにオーディオコメンタリーでは上条さんと一方通行の演じ方を「禁書」の頃からどう変えたかについて色々と話されています。こちらはレンタル品でも聴けるので興味がある方は借りて見て下さい。

2017-02-11

「やがて君になる」好きだからこそ好きにはなれない

電撃 - 『やがて君になる』仲谷鳰インタビュー第2弾。公式サイト&PV公開、着せ替えアプリ、そして第二巻発売!

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恋愛漫画で恋愛に興味が持てない主人公が読者に受け入れられるかどうか不安を感じていたと語る仲谷鳰先生。作者的にはそこは心配してしまう部分でしょうけど、読者的には杞憂で終わるだろうなという気はします。別に主人公が恋愛をする人達を馬鹿にしているとかではないですしね。スポーツ漫画を読む層がそのスポーツをしているとは限らないように、恋愛漫画を読む層が恋愛をしているとは限らないのですから、好きという感情を知らない主人公が読者に共感されない道理は無いと思います。ラノベのハーレムラブコメなら恋愛に無関心な主人公はありがちですし、電撃大王での連載なら読者層を考えるとむしろ恋愛を知らない主人公の方が合いそうです。

個人的には恋愛に興味の無い主人公にしたおかげで、百合漫画というマイナーなジャンルの裾野を広げられた気がします。大多数の日本人は同性愛者では無いですし、恋愛も結婚もする意欲の無い人達が増えていますし、最初から恋愛に興味を持ち女性が好きな主人公よりも、男性も女性も特別に好きになれない小糸侑の方が立場的に近い。共感度からすると百合漫画を好まない層にも読まれやすいのは、どちらかと言えば後者になるのではないでしょうか。大半の読者と同様に同性を好きではない小糸侑が七海燈子を好きになる過程を丁寧に描写する事は、百合漫画を好まない読者がその内面の変化を追う中で同性愛に対する理解を深める事にも繋がり、それは百合漫画に対する抵抗を薄れさせて世間に広める切欠にもなるでしょう。「やがて君になる」はそうした百合漫画の入門書的な役割を担える良作。


七海燈子を好きになろうといている小糸侑
本や歌で憧れたドキドキしてキラキラした恋を求めながら、誰に対しても友達以上の好意を抱けずに恋に落ちる事の無い侑は、燈子先輩と関わる中でそれを手に入れつつあります。この恋を知らない者が恋を知るというテーマを表現する上で百合は相性が良さそうですね。男女の恋愛というのは本能的に性的な欲望と結び付きやすく、異性に対する欲情を恋心と錯覚しているだけの場合も往々にしてあります。相手を好きだから性行為をしたいのか、性行為をしたいから相手を好きになるのか、自分の恋愛感情が完全に性欲と切り離されたものなのか判断が難しい。

初めて相手を見た時から惚れていた場合は性欲で動いている印象が特に拭い難い。事実として相手の人格を評価する前に惚れていますからね。そうした印象を読者に与えず好きになるという心の揺れ方を表現する際には、第一印象が最悪な相手の事を知る内に少しずつ惹かれるとか、初期段階で恋愛対象から外れる相手を選ぶ方がその感情に本物らしさが生まれます。主人公が性的な欲求と無縁の同性を好きになる百合漫画も同様に、恋愛感情に説得力を持たせて描写する点で適しているかもしれませんね。


自分を好きにならない小糸侑が好きな七海燈子
燈子先輩の相思相愛を拒絶する価値観は意味不明に思えますが、作中の説明を聞けば非常に腑に落ちる話でした。簡単に言えば燈子先輩は自分を好きにならない代わりに、自分に失望もしない優しい侑との関係に居心地の良さを感じているんですよね。好きというのは言われた側が自分の価値を感じられる魔法の言葉であると同時に自分を縛る呪いの言葉、相手を失望させない様に相手の求める自分を演じ続ける事は精神的な負担になる。

成績優秀で人望も厚い燈子先輩もそうした皆から愛される仮面を被る事に苦しさを感じています。それならば本当の自分を曝け出して生きればいいという意見もあるでしょうけど、仮面を外せば誰からも特別に思われない平凡な人間に戻る恐怖が伴う為に難しい。そんな燈子先輩には理想の自分も本当の自分のどちらも好きにならない侑の隣は安心して生きられる唯一の居場所。恋愛漫画には相手を好きになる根拠を示さない作品も見られますが、この作品は非常に論理的に相手を好きになる根拠が語られているのがいいですね。


小糸侑と七海燈子の歪な関係
侑と燈子先輩の関係は現時点では良好に見えますが、両者の求める関係は致命的に噛み合いません。恋愛に憧れる侑は本気で誰かを好きになろうとしているのに、燈子先輩は自分を含めて侑に誰も好きになるなと要求していますからね。侑が燈子先輩に惚れて特別な関係を望んだ瞬間に両者の関係は破綻する為、侑は燈子先輩を大切に想うなら感情を殺して付き合わなければなりません。そんな無償の愛を示すのは女子高生には荷が重いですね。そんな関係を強いようとしている燈子先輩は本当にずるい。

演出的に侑と燈子先輩の関係に亀裂が走るのは目に見えているので、そこからどの様に纏めるのか結末が楽しみですね。仲谷鳰先生の中では「やがて君になる」の意味が回収されるまでの大筋は既に見えているでしょうし、行き当たりばったりで読者を置いてけぼりにする展開だけはしないでしょうね。なのでこちらもハラハラしつつも安心して読めます。

そういえば仲谷鳰先生も執筆されている「エクレア あなたに響く百合アンソロジー」を読んだんですけど、想像していた以上に百合成分が薄めでした。半分位は仲の良い女子の域に留められている話で、百合を感じる読者には百合に見える程度に表現が抑えられていました。ちなみに執筆陣は百合方面では有名な人達らしくて、有名な雑誌に読み切りとして掲載されても不思議ではない位には出来が良い作品も見られました。二次創作系のアンソロと比較すると平均的に質は高いと思います。