悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

マークスの山 高村薫

映画化やドラマにもなっている、高村薫の代表作。直木賞受賞作ということもあって、ある程度の期待はあった。
警察、検察の内部のしがらみなどに深くメスを入れたような作品だと思う。ミステリーとしては緻密に作られているとは思うが、トリックやびっくりするような展開はない。正統派といえば正統派の警察小説というところなんだろうか。
M・A・R・K・S マークスは暁成大学の登山部の仲間の頭文字をとったもの。ある程度読み進めれば分かりそうなもんだが、松田、浅野、木原、佐伯はそのままだが、Rがわからなかった。林原をリンバラと読ませるのはちょっと強引じゃないのか?
松田は交通事故をもみ消し、浅野は裏口入学、木原は暁成大学の御曹司で中心人物、のちの理事長で政界財界とも強い結び付きがある。佐伯も建設会社の社長だが、結婚に際して木原に借りがある。こういうことがわかるのが最後の浅野の遺書が出てきてから。最後の最後まで何かわからない。とりあえず、幼少期に両親の無理心中のなか一人生存した水沢が連続殺人犯であることは読んでいる途中でほぼ確定となる。だが、その背景が全くわからず、後半にならないとつながりが出てこない。
冒頭の女房に逃げられた岩田耕平は1件目の殺人は結局良くわからず、消化不良。あとから出てきた野村の殺人まで以前勤務していた会社から贈られた時計が現場にあったということで、殺したことになってしまう。これは完全な冤罪。こういった部分が説明不足ではないのか。この物語においては枝葉になってしまったのかもしれないが、それなら冒頭の供述シーンなどは詳細に書いている意味がよくわからない。

長かった。ということは私にとっては読みにくかったということだと思う。ストーリーはよくできているとは思うが、今ひとつひねりが足りないというか、物足りなさが残る。エンディングにも不満。結局のところ何が言いたかったのかもちょっと伝わらない。主人公合田と義理の兄、加納との関係も微妙なままだし、仲間の刑事の人物描写が割と深く突っ込んで描かれている割にはあくまで添え物でしかないのもちょっとしんどかった部分。

期待しすぎていたのかもしれないなあ。

マークスの山(上) (講談社文庫)

マークスの山(上) (講談社文庫)

マークスの山(下) (講談社文庫)

マークスの山(下) (講談社文庫)

文庫版になって大分改定されたらしい。オリジナルを読んだほうがいいんだろうか。今回読むのにつかれたのでおそらくもう読むまいと思う。

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