悪魔の尻尾

50代から60代へ~まだあきらめない

ケープ・フィアー(恐怖の岬) ロバート・デ・ニーロ怪演

画像はU-NEXTより

恐怖の岬という古い映画のリメイクで、この映画自体も30年も前のものです。
いつかは見ようと思っていましたが、見る機会がなかったのですね。
郵便配達は二度ベルを鳴らす」のジェシカ・ラングつながりでU-NEXTに表示されたので見てみることにしました。

 

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映画の概要

監督:マーティン・スコセッシ

脚本:ウェズリー・ストリック

製作:バーバラ・デ・フィーナ

製作総指揮:キャスリーン・ケネディ/フランク・マーシャル/スティーブン・スピルバーグ

製作国:アメリカ合衆国

公開:1991年

上映時間:127分

製作費:35,000,000ドル

興行収入:182,292,000ドル

キャスト

マックス・ケイディロバート・デ・ニーロ

サム・ボーデン:ニック・ノルティ

リー・ボーデン:ジェシカ・ラング

ダニエル・ボーデン:ジュリエット・ルイス

ローリー・デイヴィス:イリーナ・ダグラス

クロード・カーセク:ジョー・ドン・ベイカー

リー・ヘラー:グレゴリー・ペック

エルガード:ロバート・ミッチャム

トム・ブロードベント:フレッド・トンプソン

裁判長:マーティン・バルサム

あらすじ

マックスは刑務所で14年という長い期間服役しました。
彼の体にはいたるところに入れ墨があります。
「真実」「正義」「復讐」といった意味深な言葉がそこにはありました。
彼は出所後、自分を有罪に貶めた国選弁護士のサムへの復讐を始めます。
彼は刑務所で体を鍛え上げ、文字にも疎かったのを改め、本を読み、学習してきました。
サム・ボーデンはマックス・ケイディの弁護人でした。
しかし、マックスの起こした犯罪はレイプ犯であり、その犯罪を憎むあまり彼に有利になる証言を握りつぶしたのです。
それは14年も前のことです。
すっかり忘れていたサムですが、服役していたマックスは刑務所で文字を学び、本を読み、そして体を鍛えまくりながら、出所してからの復讐のために彼の中にある刃を研ぎ澄ましていたのです。

サムは家族を付け回すマックスを不気味に感じ、なんとか排除しようとします。
マックスは以前の粗暴一辺倒な人物ではなく、悪事を働くための知恵も身につけているのです。
嫌がらせはサムの過剰な反応もあってエスカレートしていきます。
そしてついに本性を見せていきます。

感想

ロバート・デ・ニーロが悪役で登場。
彼は本当に役柄に溶け込むために自分自身をどこまでも追い込んでいきますね。
この映画も鍛えまくった素晴らしい肉体を披露。
そしてその表情は不気味を通り超えて気持ち悪さも感じます。
まさに怪演ですね。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のときのギャングのヌードルスとはまた違いますし、もちろん「マイ・インターン」のベンのような優しそうな老紳士とは正反対ですね。

 

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冒頭でも述べましたが、これには古い映画があって、「恐怖の岬」というものだそうです。
見たことはありませんが、リメイクで作られるくらいですからきっと素晴らしい映画でしょう。
4度も映画化された「郵便配達は二度ベルを鳴らす」ほどではないですが、ロバート・ミッチャムがマックス役でサムを演じるのがグレゴリー・ペック
ちなみにロバート・ミッチャムはサムと親しい警官役で、グレゴリー・ペックはマックスの弁護士役として登場しています。
このあたりも映画ファンには見どころなのでしょうね。

オリジナルのモノクロ映画は見ていませんが、見てみたくなりますね。
そしてこの作品の静かな序盤、中盤からどんどん気味悪くなってくるのですが、ラストに近づくとその狂気はエスカレート。
失うものがないマックスは、”無敵の人”となってサム一家に襲いかかりますが、本当にその当たりに凄みがある映画ですね。
見ていてテンションが上りますね。

 


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ミレニアム2 火と戯れる女 スティーグ・ラーソン

画像はKindle本より

ミレニアム・シリーズの2作目です。
長い小説ですね。
文庫本なら500ページくらいのやや厚めのものが上下巻2冊です。
電子書籍なので上下巻合本です。

映画は先に見てしまっているので、読みやすいというのはあるのでしょう。
「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」は映画も何度か見直すなどこの2作目よりはより理解しているつもりでも、少し読むのに時間がかかりました。
この2作目も1作目に負けず劣らず多くの登場人物が入り乱れて、シンプルな物語ではありません。
映画を見ていなかったらこんなにスラスラと読めなかっただろうと思いますね。

 

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映画を見てからある程度時間が経過し、記憶が少し薄れてきたタイミングで、この本を読み始めました。
実は、3部作を観た後、AmazonKindle本を購入しました。
1作目も映画はもちろん良かったのですが、本を読むとものすごくよく分かるんですね。

 

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映画もかなり長いのですが、それでも3時間もあれば見れます。
ところが本を読むとなると普通の人は3時間とかで読むのは無理でしょう。
それこそこの物語に登場するリスベット・サランデルのように映像記憶能力の持ち主でもない限り、映画よりも長い時間が必要です。
通常、小説というものを読むと、文字という情報を脳でいったん処理して映像や音声という形で浮かび上がらせていると思います。
映画で見てもやもやしていた(ハッキリ理解できなかった)部分が文字を通して理解を深めるということがあります。
登場人物が多くて、人間関係も非常に複雑な物語になると、文字情報はありがたいです。
1作目も映画はダニエル・クレイグ主演のデヴィッド・フィンチャー版もオリジナル版もどちらも観たのですが、本を読んだ後に一番スッキリしました。
1作目の映画を見ていたこともあって2作目の映画はとてもわかり易かったのですが、この本を読んでみると更にこの2作目の作品がくっきりとわかるようになりますね。

 

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1作目の話とは全く異なりますが、人間関係や今回の物語の背景になる事柄がたくさん出てきますので、この作品は1作目を知っておく必要がありますね。
この2作目を知るうえでの登場人物を簡単に紹介します。

ミカエル・ブルムクヴィスト
雑誌社ミレニアムの経営者であり、メインのライター。
若い頃に連続銀行強盗犯のアジトを突き止め一躍時の人となり、「名探偵カッレ君」というニックネームがあります。
正義感が強く、集中力が半端ない人物ですが、そうでもないときは凡庸なタイプ。
前回の事件ではリスベットとは深からぬ仲になり、また命の恩人でもあるわけです。
リスベットのことは謎だらけなのですが、彼女がどんな不利な状況になってもなんとかしてあげたいと思っています。
彼は常にリスベットの味方です。


エリカ・ベルジェ
雑誌社ミレニアムの共同経営者であり、編集長。
上流階級出身で見た目もよくテレビ局にいたこともあって人脈も広い才色兼備の女性。
既婚者だが、ミカエルとは長い間肉体関係があり、その点については、芸術家である夫グレーゲル・ベックマン公認。
リスベットとは面識があるものの、ミカエルほど彼女のことを知っているわけではありません。
ただ、ミカエルを信頼しているので、彼の言葉を信じて今回の事件に対応します。
彼女自身の今後の身の振り方にまつわる話題もあります。

ダグ・スヴェンソン
若手のジャーナリストで特ダネを引っ提げてミレニアムにやってきた人物。
そのネタとは「少女売春組織」に関することであり、実名での公表と書籍の出版も予定しています。
ミカエルは彼を見て若い頃の自分を思い出すようです。
ジャーナリストとして大きく飛躍するチャンスの到来でしたが・・・。

 

ミア・ベイルマン
ダグ・スヴェンソンとは同棲中の学者。
犯罪学、特にジェンダーに関することで博士号の取得を目指して作成した論文はダグと同じく「少女売春組織」に関する内容を含んでいます。
ダグとの子供を妊娠しており、博士号もほぼ手中にある状態なので、まさに公私ともに幸せの絶頂期だったのですが・・・。

 

アニカ・ジャンニーニ
ミカエル・ブルムクヴィストの実の妹で弁護士。
既婚者でイタリア系の夫との間に二人の子供がいます。
女性の権利に詳しい人物。

リスベット・サランデル
映像記憶能力とともに凄腕のハッカーとしての知識もあり、調査員としてはずば抜けた能力を持っています。
ミルトン・セキュリティと言う会社でフリーで働いていましたが、1年以上消息を絶っていました。
人間関係を構築することが圧倒的に苦手な人物ですが、その理由もわかってきます。
150センチ台で40キロほどの非常に華奢な体であるため、パワーはありませんが、すばしこく運動神経も抜群です。
こんな有能な人物なのですが、法的には無能力者とされており、後見人がついています。
それらの事情も今回明らかになります。

ミリアム・ウー
リスベットの数少ない友人。
レズビアンでリスベットとも関係があります。
リスベットと違い170センチほどの体格で肉付きもよく、ボクシングなどの格闘技もやっています。
リスベットが住んでいたストックホルムのアパートに住むことになります。

パオロ・ロベルト
元ボクシングのチャンピオンで、リスベット、ミリアム・ウーともに知っている人物。
今回の事件に協力することになりますが、腕っぷしの強い彼もとても叶わない相手に出会います。

ホルゲル・パルムグレン
リスベットの最初の後見人。
当初は数多くいる患者のうちの一人だったリスベットですが、彼女を深く知るに連れなんとかしてあげたいと心から思ってくれた数少ない人物。
しかし、突然倒れたため、リスベットによって病院に担ぎ込まれます。

ドラガン・アルマンスキー
ミルトン・セキュリティーという会社の社長でリスベットの能力を高く勝っている人物。
ところが全く連絡が途絶えていることに気をもんでいます。
ホルゲル・パルムグレンとは旧知の仲

プレイグ
リスベットいわく世界で指折りのハッカーの一人で、信頼しています。
プレイグも「スズメバチ(リスベット)」の能力は高く買っているようです。
リスベットと同じく社会的不適合者です。

ヤン・ブブランスキー
今回の事件の操作を担当する刑事。
感情に流されず、緻密な捜査をする有能な刑事です。
おまわりさんのブブラさんというニックネームがあります。

ソーニャ・ムーディグ
既婚の女性刑事。
男性社会でもある警察組織にあっては納得できないことも多数あります。
上司のブブランスキーは彼女の能力を非常に評価しています。
非常に勤勉で有能な刑事です。

ハンス・ファステ
旧来の刑事そのままです。
無能ではなく勇敢な刑事の一人ですが、ソーニャとは全く馬が合いません。
女性蔑視の姿勢は変わらない人物です。

リカルド・エクストレム
今回の事件の担当検事。
出世欲の強い人物です。

ニルス・ビュルマン
リスベットの後見人。
弁護士ですが、凡庸な人物です。
前作から登場しているので、彼がどれくらいの「悪」なのかはわかると思います。

ベーテル・テレボリアン
精神科の医療の世界にあってはスウェーデンきっての人物で、彼の言葉は非常に説得力があります。

グンナル・ビョルク
少女買春において実名を出されることになりそうな人物。
公安の人物でもあり、かれはキーマンとなるザラを知る人物です。

ザラ
この物語の「悪」そのものです。
そしてリスベットの不幸の根源でもあります。
ザラは本名ではありません。
謎の多い人物ですが、徐々に明かされていきます。

ロナルド・ニーダーマン
金髪の巨人です。
彼も謎の人物ですが、ラストシーンにも登場する実質この作品のラスボス的な扱いとなります。

 

映画では描ききれなかったリスベットの外国での滞在時のことなどが書かれています。
そこではフェルマーの最終定理にのめり込み、高等数学の本を読む得体のしれない女性。
そして体が小さくて胸も小さく、女性としてのコンプレックスが強かったため、豊胸手術を受けるまでの流れなども書かれています。
彼女の等身大の姿がこの本で明らかにされ、彼女の魅力にどっぷりとハマってしまうでしょう。
映画で見るタトゥーだらけのぶっ飛んだ女性。
私はファッションとはいえ、タトゥーに対しては肯定的に捉えられず、偏見でどうしても見てしまいますが、私のように考える人はまだまだ多いと思っています。
そんな彼女もミカエルとの出会いを通じて精神的な成長も果たしたのでしょうか、数多くあったタトゥーですが、背中のドラゴンのタトゥーはともかくスズメバチのタトゥーなどは消してしまいます。
とてつもない能力を持つ個性的なキャラクター、リスベット・サランデルの本当の過去が描かれたこの作品は、前作「ドラゴン・タトゥーの女」を読んだ人、映画を見た人は必読、必見です。
最強の女性キャラクターですが、最悪の運命を背負った女性です。
ネタバレは支度はありませんのであらすじはあえて書きません。
キーマンは「ザラ」です。
そして物語を引っ掻き回してくれるのは謎の巨人「ニーダーマン」です。

3作目の「眠れる女と狂卓の騎士」も購入済みですが、読んでいません。
映画は見たので大体わかっているつもりですが、多分読み始めるとやめられなくなりそうです。

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シャイロックの子供たち 池井戸潤原作の映画

画像は公式サイトより

池井戸潤さんの小説を映画化したものなんですね。
妻が見たいと言っていたので一緒に視聴しました。
面白かったですね。

映画の概要

原作:池井戸潤

監督:本木克英

脚本:ツバキミチオ

公開:2023年

上映時間:122分

キャスト

西木雅博:阿部サダヲ
主人公。
個人的にはとても不幸な状態にあるのですが、明るく前向きで銀行員として守るべき倫理観も高い人物。
支店の内勤の課長代理です。

滝野真:佐藤隆太
赤坂支店から転勤してきて間もない営業担当(外回り)。
妻子持ちで立派な自宅を所有。
この店の外回りの職員の中ではエース。

九条馨:柳葉敏郎
東京第一銀行長原支店店長で部下を怒鳴りつけたりはしません。

北川愛理:上戸彩
西木の直属の部下で信頼の厚い人物。
彼女もプライベートではかなり重い立場にありますが、志戸子には真摯に取り組んでいます。

田端洋司:玉森裕太
若手の営業外回りの担当者。
外資系の職場への転職を考えています。

古川一夫:杉本哲太
東京第一銀行長原支店副店長。
店長の代わりに怒鳴りまくるパワハラ人物。
上にはヘコヘコするものの、下には怒鳴り散らし、出世のためにキャリアに傷がつくことを恐れています。

黒田道春:佐々木蔵之介
東京第一銀行検査部次長。
かつては営業店勤務していましたが、現在は出世コースから外れた検査部にいます。


石本浩一:橋爪功
元は赤坂店で滝野担当と浅からぬ仲の顧客です。
表向きは不動産業を手掛けていますが、この物語の事件の鍵を握る人物。

 

沢崎肇:柄本明
テナントビルのオーナーですが、問題の物件を多数抱えており、飲み友達の西木二相談を持ちかけます。

画像は公式サイトより

あらすじ

お金を借りた人間は返さなければいけない。
ただ、返せばそれで良いというわけではない。
シェイクスピアの劇「ヴェニスの商人」を観劇していた夫婦ですが、男はポツリと呟きます。
「金は返せばそれでいいというわけではない」と。

東京第一銀行長原支店。
元気よく業務にあたろうとしているのは内勤の役職である西木雅博。
そしてオープンしてすぐに登場したのは西木の知り合いである沢崎でした。

赤坂支店から転勤になった滝野は外回りの人物。
数字は常に上げていく優秀な行員です。
この店においてもメキメキと頭角を表しますが、赤坂店で担当していた顧客の石本が彼につきまといだします。
もちろん顧客が銀行員にまとわりつくのには理由があり、それは融資を受けたいがためでした。
すでに自分は長原店の人間であり、赤坂店に相談するように告げますが、石本は滝野との「浅からぬ仲」であることをちらつかせて、無視させません。

長原支店は支店長の九条は物静かですが、その分副支店長の古川が毎朝、営業部隊を怒鳴りつけるのが日課です。
そんな中、転属になって間もないもののしっかりとした顧客管理をする滝野は期待値も高いのです。
数字が足りないため、滝野は石本からの融資希望の案件を持ち出しました。
10億円もの巨大な融資。
数字は埋まりましたが、問題はその後の管理。
石本は3ヶ月目には支払いが滞り、利息も払えないのでジャンプさせてほしいといいます。
そして当面100万円ほど都合をつけてくれと、なんとも虫の良いことを言うのです。
滝野はついに店のお金に手を付けてしまうのですが、成績優秀な滝野を疑う人物は皆無。
しかし、ゴミ箱を漁るなどの地道な作業で西木は振込伝票を発見します。
この振込伝票が何を意味するのかはすぐに分かりました。
ところが、100万円が紛失したのは行員の泥棒が原因で、その犯人の濡れ衣を着せられたのが西木の直属の部下の北川さんでした。
100万円紛失事件は一体どうなるのか?
また不良債権となってしまう10億円の融資はどうなってしまうのか?

感想

テレビドラマにもなっていたのですね。
全然知らなかったです。
キャストは映画版のほうが断然よろしいかと思います。
やはり主人公である阿部サダヲさんがとってもいい味をだしていますよね。
この映画ってなかなか殺伐としたテーマですけれど、コミカルでとてもいい人を演じきっていて、だいぶん救われた気がします。
脚本のツバキミチオって誰やねん?って思っていたら、なんと原作者の池井戸潤さんの別名らしいです。
そしてこの映画の内容は完全オリジナル。
いわば映画のために原作者による完全書き下ろし作品でもあるわけですね。
キャスティングが良かったですね。
胡散臭い奴を演じてくれたのが、橋爪功さんですが、まさにこれくらいのクラスになるとどんな役柄もそれなりの雰囲気をまとって演じてくれます。
終盤に彼の対抗馬として活躍する柄本明さんもやはり胡散臭さがものすごくていい感じでした。
副店長役の杉本哲太さん。
本来はこういう人物ではないと思うのですが、朝の会議から怒鳴り散らしている雰囲気が、実際の営業店の雰囲気と似ていると感じました。
私は大手銀行に努めたことはありませんが、短いサラリーマン生活で金融機関の営業店にもいましたので、殺伐として怒鳴り声というのもわかります。
朝、店を開ける前に金庫を開けて、それぞれのキャビネットなんかもそこから引っ張り出すというのも独特です。
お金を扱う商売、というかお金そのものを大量に扱ってその手数料、利ざや(金利格差)で稼ぐというのが銀行ですので、そこは本当にシビアです。
お金が足りないとどうなるのか?1円でも合わないと帰れないなんてことを言われる業界ですが、まさにそんな感じです。
新人のときに先輩と一緒に集金に行った時のお金が数千円合わず、結局先輩と二人でいったので足りない分を弁償(自腹)した記憶も蘇ってきました。
まあ、集金していたときから不安ではありました。
1000万円位を現金で集金したのですが、一万円札は3割位で、残りは千円札と硬貨でしたからね。
それはともかく、この映画では100万円という大金です。
行員が弁償できる金額ではありません。
これは窃盗事件であり、本来は警察にいうべき案件ですが、事件として問題となると自分たちの出世に響きます。
そういう意味で管理職の人間たちは「嘘」で終わらせるのです。
100万円くらいなら自腹を切ってもそういう選択をするというのですから、一部上場の銀行の所得って相当に高いのですかね。
それとも表には見えないお金を持っているのか、どちらかでしょう。
まあともかく主人公の西木たちの活躍によって、この事件は解決し、黒幕を懲らしめる、「倍返しだ!」ということなります。
最終的にはこの物語はハッピーエンド?なのでしょう。
そういう意味で精神的にたいへん救われる内容でしたが、気に入らない点もあります。
これが現実?ということかもしれませんが。

まずは同じ店舗にいる人間を陥れようとした行員。
ほんの出来心で?って、それはないでしょう。
許されざる行為です。
誤って済む問題じゃないです。
盗んだ犯人とされた女子行員に対して支店の役職者もそう思っていたわけですね。
犯人と決めつけていた上席は、どの面下げてその行員に指導ができるのでしょうね。
個人的にはこの部分にもめちゃくちゃ憤りがありましたが、この映画の本質の部分ではないので、軽くスルーされましたね。

2つ目は刑務所から出てくるラストシーンです。
「刑務所から出てくるのは彼ではないでしょう」と思います。
末端ばかりを罰して巨悪は罰することができない、今の世相をそのまま表しているのなら、これを書いた池井戸潤さんはなかなか裏の裏まで考えている人なんだろうなあと思います。

後、佐藤隆太さんの配役が良かったです。
佐藤さんといえば、何と言ってもビッグモーターのイメージキャラクターですよね。
彼のイメージは「ビッグモーター」によって相当に傷ついたと思いますが、この映画でも「嘘つき」の片棒を担がされてしまうものの、本質は善良な役柄です。

この映画には悪いことだとわかっていながらも抗えない人たちが登場します。
佐々木蔵之介が演じる黒田しかりですが、支店長もギャンブル依存症
話題になっている水原元通訳もそうですよね。

もう一点余計なことついでに書いておきたいですね。
銀行員って、転勤が多いです。
特に顧客担当、外回りの人間は転勤がつきものです。
その理由は、やはり顧客との関係が深くなりすぎるのを防ぐためと言われています。
銀行員(サラリーマン)はいくらエリートであっても使えるお金は限られています。
一方の顧客は商売が順調なら潤沢な資金が手元にあります。
商売や会社経営をしている彼らは、お金をとても大切にしますし、基本的に細かい人(=ケチ)が多いのですが、それにもかかわらず、銀行員、担当者に小遣いを渡すということが、度々起きます。
私なんかは新人でしたし、そういう顧客からは当然全く相手にされていなかったのですが、上司と一緒に外回りをしたときに、上司とともにお昼ご飯をごちそうになったりとかもありました。
休暇に海外旅行に行くといえば、小遣いをもらったり、挙句の果てには車を買ってもらったり、持ち家の頭金を出してもらったりとかもあるみたいですね。
なぜ顧客が銀行マンに接待をするようなことがあるのか?というのはやはりそこに損得勘定が働くからでしょう。
電話一本で建て替えておいたり、振込が間に合わなかったら代理で行ったりと、まるで私設秘書のような動きになってしまう行員もいるでしょうね。
みんなお金は大好きです。
資本主義で生きているとお金のもつ力には抗えませんから。
でもね、銀行員がお金に魂を売ってしまったらもうおしまいなんです。
商売には大きなお金が動きますが、常にプラス、なんてことは商売にはありません。
プラスに振れれば、マイナスに振れてしまうこともあるんです。
そんな時、商売人は背に腹を変えられません。
特定のお客様に恩義を感じてしまうと、そこに不正が発生します。
恩義というのがつまり個人的に色々とかわいがってもらったということですね。
ここで行員という一個人について述べていますが、これ、政治家と言い換えてもいいです。
お金のために嘘八百を並べて平然としている人々。
選挙資金やら票の取りまとめやら、とても世話になっている人たち=後援会の人を始めとした利権集団ですね。
そういう人達に頼まれて、嫌とは言えない。
もし嫌とか拒否をしようものなら次の選挙で手痛いしっぺ返しが来るでしょう。
あるいはとてつもないスキャンダルをリークされたりとか。

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