華氏451度へのカウントダウン このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

「表現の自由」を守るためのアウェアネス・リボン運動 「うぐいすリボン」

2016-06-30 民進党の表現規制公約は、一体どこから来たのか?(前編) このエントリーを含むブックマーク

2016年参議院選挙で、民進党が以下のような公約を発表し、特にネット上で批判を招いている。

メディアにおける性・暴力表現について、人々の心理・行動に与える影響について調査を進めるとともに、バーチャルな分野を含め、技術の進展及び普及のスピードに対応した対策を検討し、推進します。

https://www.minshin.or.jp/compilation/policies2016/50091


端的にいえば、性・暴力表現を規制するための調査を行うと読める。しかも表現の自由に配慮する等の文言は全く無い。
一体これはどこから出てきたのか?
結論から言うと、これは児童ポルノ禁止法からではなく、平成22年12月17日に閣議決定された『第三次男女共同参画基本計画』の第9分野『女性に対するあらゆる暴力の根絶』からだ。

同分野では以下のように記述されている。

http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/3rd/pdf/3-12.pdf
メディアにおける性・暴力表現への対応
施策の基本的方向
女性を専ら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであり、女性に対する人権侵害となるものもある。
こうした性・暴力表現については、インターネットの普及等を通じて発信主体が社会一般に拡大していることに加え、パソコンゲームバーチャルな分野においても、国際的に重大な懸念が表明されるコンテンツの流通が現実問題となっていることから、表現の自由を十分尊重した上で有効な対策を講じる。

ウ 調査研究等
・性・暴力表現が人々の心理・行動に与える影響についての調査方法を検討する。
メディア産業の性・暴力表現について、DVD、ビデオ、パソコンゲームバーチャルな分野を含め、自主規制等の取組を促進するとともに、表現の自由を十分尊重した上で、その流通・閲覧等に関する対策の在り方を検討する。


しかしこれは様々な紆余曲折を経て、非常に穏当な書き方になったもので、中間報告に当たる『第3次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理)』では極めて問題の多い内容だった。

『第三次男女共同参画基本計画 第8分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」』
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/kihon/sanjikeikaku/chukanseiri/pdf/honbun2-8.pdf

児童ポルノの根絶に向けて、国民運動の実施、インターネット上の流通防止対策の推進や閲覧防止対策の検討等総合的な対策を検討・推進するとともに、児童ポルノ法の見直しや写真・映像と同程度に写実的な漫画・コンピュータグラフィックスによるものの規制の在り方について検討する


この様に中間整理案では、漫画やアニメ、ゲームなどを児童ポルノとして規制すべし、という文言が明確に書かれている。
ところがこの中間整理案でのメディア規制条項はここだけに留まらない。

メディアにおける性・暴力表現への対応
(2) 具体的な取組
―性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象としたメディアにおける性・暴力表現は、それ自体が「人権侵害」であるという観点から広報啓発を行うとともに、メディア・リテラシー向上のための取組を推進する。
性・暴力表現が人々の心理・行動に与える影響についての調査方法を検討する。
インターネット上の児童ポルノ画像の流通防止対策を推進するとともに、ブロッキングの導入等閲覧防止対策を検討する。
メディア産業の性・暴力表現の規制に係る自主的取組の促進、DVDやビデオ、パソコンゲームバーチャルな分野における性・暴力表現の規制を含めた対策の在り方を検討する。


このように性・暴力表現自体が人権侵害であると断定した上で、性・暴力表現の影響調査だけに留まらず、DVDやビデオ、パソコンゲームバーチャルな分野における性・暴力表現の規制まで主張している。
この様に極めて過激メディア規制条項が第三次男女共同参画基本計画に入り込んだのには理由がある。
それはこの当時の内閣府男女共同参画局『女性に対する暴力に関する専門調査会』のメンバーを見れば分かる。

第47回男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会議事要旨
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/yousi/bo47-y.html
日時: 平成21年8月11日(火) 15:00〜17:00
場所: 永田町合同庁舎第一共用会議室
出席者

会長 岩井 宜子 専修大学法科大学院教授・副院長
委員 伊藤 公雄 京都大学大学院文学研究科教授
大津 恵子 日本キリスト教婦人矯風会理事
同 奥山 明良 成城大学教授
同 神津 カンナ 作家
同 後藤 啓二 弁護士
同 後藤 弘子 千葉大学大学院教授
同 小西 聖子 武蔵野大学大学院教授
同 林 陽子 弁護士
同 原 健一 佐賀県DV総合対策センター所長
同 平川 和子 東京フェミニストセラピィセンター所長
同 諸澤 英道 学校法人常磐大学理事


勘のいい方はもうお気づきだろう。
なんと長年児ポ法での創作物規制を推進してきた、エクパット東京(現エクパットジャパン)の顧問弁護士後藤啓二委員に名を連ねているのだ。
さらにエクパット東京の母体である日本キリスト教婦人矯風会理事もいる上に、エロゲが犯罪組織の資金源になっていると主張した、林陽子弁護士までいるのだ。

第12回男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会議事要旨
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/yousi/bo12-y.html

(林委員)
調教ゲームや強姦ビデオなどの製造販売が、犯罪組織の資金源になっているということを明らかにすれば、このような問題に対する社会の見る目も変わってくるのではないか。
また、強姦罪について、被害者側の落ち度を指摘して刑を低くする、損害賠償額を低くするということが多く見受けられるので、ジェンダーの視点をもう少し司法の中にも入れていく ことが必要ではないか。


なぜ後藤啓二が、この『男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会』にいるのか?
2009年に開催された同専門調査会と時を同じくして、東京都ではあの悪名高い”非実在青少年”規制条例を生み出した第28期青少年問題協議会が開催されている。
後藤啓二はそこでも委員にその名を連ねていた。(http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20091001/1254336124、第28期東京都青少年問題協議会 第1回総会議事録 http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/seisyounen/pdf/09_singi/28s1giji.pdf

この後藤による一連の行動の狙いは何なのか?

これはあくまで推論だが、児童ポルノ禁止法での漫画やアニメなどの創作物への規制が頓挫、あるいは頓挫する可能性が高くなった場合に備えて、彼は二重のセーフティを置いたと考えるのが妥当だろう。
まず男女共同参画計画だが、これは内閣閣議決定して承認するので、そこに書かれた内容は政府方針となる。
つまり男女共同参画計画児童ポルノ禁止法による創作物規制を盛り込み、それが閣議で承認されることで政府の後ろ盾を得、議員政党の反対を押し切る狙いがあったと思われる。

事実、後藤啓二は『第52回男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会』に提出した資料の中で、漫画やアニメなどの創作物を児童ポルノとして規制するよう提言しており、これはそのまま中間整理案に採用されている。

『資料2 後藤(啓)委員からの御意見 (※起草WGにおいて検討途上のもの)』
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/siryo/pdf/bo52-2.pdf
(5) 広報啓発活動を始めとする国民運動の実施、インターネット上の児童ポルノ場像の流通・閲覧防止対策等、児童ポルノの排除に向けた総合的な対策を検討・推進するとともに、併せて取締り強化のための児童ポルノ法の
見直し単純所持罪の新設、写真・映像と同程度に写実的な漫画・コンピュータグラフィックスによるものの規制等)について検討。


さらにもし中央立法で規制が不可能になったとしても、都条例創作物規制を行うことで、実質的に中央立法と同じ効果を出すのを狙ったと考えられる。それがいわゆる”非実在青少年”規制の条例だ。
特に都条例を定める第28期青少年問題協議会では、後藤啓二の盟友の前田雅英が陣頭指揮を取っていた上に、反対意見をいう識者を全面排除していたから、ある意味磐石の態勢であったといえよう。
この様に彼は創作物規制を実現化するために、布石をいくつも置いていたのだ。

では第三次男女共同参画計画中間整理案)を定めた、男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会では、どのように議論が進んでいったのか見てみよう。

第三次男女共同参画計画を定める最初の会議である、平成21年8月11日の『第47回男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会』では、まず後藤啓二と林陽子がネット上のポルノ問題に言及し、それを受けて諸澤英道ポルノコミック規制を主張するという展開になっている。

http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/gijiroku/bo47-g.html
後藤啓二
直接のそういう無理やりの性交とは違うかもしれませんが、ダブることがあるんですけれども、先ほども出しました児童ポルノというような問題。
これの多くがインターネット上でだれでも見られるような形で蔓延している。
それは子ども自体が無理やり撮られたものがずっとインターネット上に流通していることで、永遠に大変な精神的な被害、すさまじい暴力にさらされているという問題もあるわけでありまして、そうしたことも性暴力といいますか、女性に対する暴力の一つとして、これは物すごい数に上ると思うんですけれども、検討をするべき課題ではないかと思っております。


・林陽子
先ほど後藤(啓)委員からも御指摘がありましたcyber victimizationと呼ばれているような、いろんなポルノグラフィーとか、インターネット上での人権侵害といったことにどう対処するかということは、必ずしも第2次基本計画では入っていなかったのではないかと思います。


諸澤英道
委員に便乗するわけではないんですが、資料5で第1次から更に第2次でどういうふうに、その後の新しい状況を反映していくかということに関連して、この資料5で、ある程度、整理していただいているわけですが、その中の特に、例えば具体的な取組みの4番目のバーチャルの問題、それから、論点例の5番目で、これは恐らく全員が共有している問題意識だと思うんですが、私はもっと踏み込むべきではないかという気がしております。
実は昨年、フィンランドオランダドイツというような北欧の国の小中高校の視察へ行ったんですが、日本のコミックが非常によく売れている。
それで、行く先々で決まったように、「日本のポルノはどうして性表現が自由奔放というのか、何でもありというので困る。
学校の現場では、これを読ませないようにしているんだけれども、日本の社会はそういう問題について、つまりそういうポルノコミックが社会に存在していることについて、日本の人たちはどういう認識なのか。」ということを行く先々で聞かれるわけです。

気がついてみれば、日本というのは、この点ですごく、表現の自由ということが戦後、最大限尊重されてきて、結果としてこういう問題が常に遠慮していたと思うんです。
ポルノグラフィーの問題も、ポルノと言われているものの中でも日本のポルノの特徴が、いわゆる暴力による強姦を扱ったポルノグラフィーというものが非常に日本のポルノの特色になっている。
これは多くの国で原則禁止なんです。ポルノグラフィーはいいけれども、暴力による強姦表現の自由などという問題ではないというコンセンサスが特に先進国の多くで存在していると思うんです。
やはり今まで、聖域というのか、どうもメディアや言論界に遠慮していて、そういう問題について何か突っ込んだ議論をどうもしないような気がしてならないんですが、私たちとしてはやはり、女性に対する暴力という問題に関して、特に青少年に悪い影響を与える性表現、特に暴力による性行為というものに対して、もっとはっきりした意思表示をすべきではないかという気がいたします。


さらに平成21年10月26日の『第49回男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会』では、林陽子のほかにキリスト教婦人矯風会理事大津恵子や、フェミニストの平川和子までもが、ポルノは女性への人権侵害・女性への差別であるとメディア規制論をブチあげている。

http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/gijiroku/bo49-g.html
・林陽子
メディア苦情処理機関について総務省内閣府にお尋ねします。メディアにおける、特に女性に対する暴力表現というのが、今後、国内人権機関をつくるに当たっても重要な論点になっていく部分だと思いますので、深く研究が必要ではないかと思っております。

今回、総務省から、質問16への回答として、テレビ局各社の倫理綱領において、人権性差別を言及しているものの御回答がありましたが、例えばポルノグラフィであるとか、女性に対する暴力表現についても、これらの綱領に基づいて、例えば苦情処理を受けるという仕組みがあるのでしょうか。
例えば放送と人権についての委員会などが存在しますけれども、個人の名誉が毀損されたということではなくて、ある番組が女性に対して暴力的であると。
こういった暴力表現をしてもらっては困るというような申立てを受理してくれる機関は存在するのでしょうか

同じく内閣府に対しては、テレビ以外の媒体の、特に雑誌・週刊誌に対して、今、新聞社は各社、読者委員会という形でそれなりの苦情処理を受け付ける体制を整えつつあると思いますが、私は雑誌メディアが大きな問題として残っていくのではないかと思っています。
そうしたときに、ある週刊誌の見出しや記事、ヌードのグラビアなどが極めて女性差別的であるといったことを受けとめて、専門家ないし独立なパネルが審査をしてアドバイスを出してくれるというような仕組みは今どのくらいあって、かつ官庁とそういう雑誌の業界団体とはどの程度対話が進行中なのでしょうか。


大津恵子
私のほうからですけれども、簡単に買える雑誌、書店やコンビニで売っている雑誌などをあるところから見させていただいたときに、いわゆる漫画であっても、子どもや女性に対してのレイプの実態というものが書かれている。
これは雑誌にしてもそうですけれども、出版、言論の自由のところでのハードルがきついからそれが許されているのか、その辺がわかりにくくて、明らかに、たとえ個人がわからなくても、そういうものに対してなぜ禁止されないのかということを伺いたいと思います。

それから、友人でドイツから帰ってきた人が、日本がビデオでレイプのものを見ることができるけれども、日本はレイプ被害に対してもっときちんと、ビデオであろうと何であろうと規制をしていくべきではないかという質問を私のほうに投げかけられましたので、それの回答もお願いいたします。


・平川和
ポルノに関しては女性に対する人権侵害だと私は思っているのですが、DV被害者から聞く話では、ポルノDVDを見ながら性暴力行為が妻に対して行われています。
さらにその場面を子どもたちに見るように強制するというような実態があるのですね。
そのあたりを含めて、先ほどから問題になっているような表現の自由ということとの関連もあるかもしれないのですけれども、実際に現場では女性たちが人権侵害にあっている現実に直面していますし、子どもたちもその目撃ということで非常に大きな被害を受けているということがありますので、そのあたりを何とか考えていただけないかと思っております。


・後藤弘子
ポルノグラフィについては後ほどというお話だったのですけど、第2次の基本計画で「ポルノグラフィ」という項目は項目立てしていなかったんですよね。
それについて、ポルノグラフィについて、今、平川さんがおっしゃったように、私も女性に対する暴力だと思うんですけれども、ポルノグラフィについて項目立てをするべきだと私は思っています。
今の話だと、女性に対する暴力のところでもポルノグラフィについて正面から議論ができないし、メディアのところだと、私たちが担当するべきなのは青少年に対してという形になってしまうような気がして。
ポルノグラフィについて、女性の暴力であるといった形を今回の基本計画には盛り込めないかというふうに考えています。


これらに加え、先述した後藤の提言である、漫画やアニメなどの創作物の規制が盛り込まれ、かくて第三次男女共同参画計画中間整理案は、先述したように非常にメディア規制色の濃いものになった。

それがいかに撤回され、緩和していったのか?
そして第四次男女共同参画計画ではどうなったのか?
なぜ民進党選挙公約メディア規制条項が紛れ込んだのか?

それは《後編》で語ろうと思う。