『論理哲学論考』での論理空間の理論を「『論考』の理論」みたいに言うのはゲーデル数化を「『不完全性定理』の理論」と言うくらいにミスリーディング
で、先日のRails勉強会の件に関連して。
『論考』の主眼は、基本的には「哲学とは何か」「哲学として考えるべきではないことは何か」とかいうことを論じることのはず。そのためには、哲学(の対象となる世界と言明)をモデリングしなくちゃならないわけで、そのための道具として論理空間とか真理関数とかが導入されたわけです。たぶん。これってつまり、不完全性定理で数学を論じるために数学の(数学による)モデリング=超数学の算術化の必要があり、そのための道具としてゲーデル数を開発したのと同じ構図じゃないかと。
そう考えると、例えば「『不完全性定理』に基づいてオブジェクトのシリアライズを行います」とか言われたら愕然としますよね。ほんとは単にゲーデル数と同じアイデアがシリアライズにも使われているというだけなのに。そういうことです。
……という話とは別に、ウィトゲンシュタインの議論は電波がゆんゆんやんやんよんよんしやすいように思います。
それにしても、『論考』という著作は妖しい光を放っている。読む者を射抜き、立ちすくませ、うっとりさせる力を擁している。それはおそらくすばらしいことなのではあろうが、危険でもある。うっとりしながら哲学をすることはできない。
――岩波文庫『論理哲学論考』訳者解説(野矢茂樹)より
なので、ウィトゲンシュタインの思想そのものを論じたいならともかく、単に彼が使った道具立てを使いたいだけなら、不用意に彼の名を持ち出さない方がいいんじゃないかなあ、と思う今日このごろです。
高橋源一郎『ニッポンの小説』
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ようやく読み終わりました。いやーたのしかったです。おすすめ。
まごうことなき高橋源一郎の評論です。『ぼくがしまうま語をしゃべったころ』『ジェイムズ・ジョイスを読んだ猫』『文学がこんなにわかっていいかしら』『文学じゃないかもしれない症候群』『文学なんかこわくない』などの評論系列に連なる最新作。『〜こわくない』のあとがきにあった、『文学の向こう側III』(の代わりの作品)に相当する作品じゃないんでしょうか。
内容としては、以前から語ってきたこととそんなにずれた話はないので、そういう意味で新味はないかも。でも、書き方がこなれてきて、わかりやすくなり、さらに核心に近づいた感じがします。
というか、高橋源一郎の小説論って、正直なところ、永遠に完成することなく、何度も何度も論じ直される、その繰り返しになることが運命づけられているのかも。なので、エピローグのラストはある意味予定調和的でもあるのですが、それがわかっていてもきっと「また、違ったことを試みる」のでしょう。
『〜こわくない』以降、この系列の本が出なくてさみしい思いをしてましたが、待った甲斐はありました。
『UMLによる一気通貫DBシステム設計』
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UMLというより、普通にモデリングの本のようなのですが、終わりごろに突然RailsとAjaxの話が。DB中心の本としては興味深いのですが、あんまり詳しいところまでは突っ込んでない感じ。そこが重要なのに……。
サロゲートキーもそのメリット・デメリットについての考察は通り一遍に済ませてしまっていて残念。もったいない。
Railsが出てくる前の、普通のモデリングのところは未読なので評価できません。
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インタビューに江渡さんが!
なんかいまいち話が盛り上がってない感じなのが惜しい。もっとも、これに限らずインタビューは難しいものなのかもしれませんが。問題意識とかの事前共有が大切なんですかね。