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たかなべが、ゲームやそれ以外の関心事を紹介します。

  ラヴフール(www.lovefool.jp) 

ブラックボックス


春ですよ!って具合に眩しいしんだけどやさしめの日差しに目が覚めて、雪かきしたところだけちゃんと歩きやすくなっているのを玄関を開けて確認。週末はいつも天気が悪かったので、アリ塚のように溜まっていた洗濯物を片づける。何人家族だっつうぐらい膨大な靴下を干していて、全部自分のものだとはなかなか気が付かなかった。で、干しながら一足ずつペアを探していくんだけども、ないんだよ片割れが。それも一足二足じゃなくて十足とかがコイビト募集中。あるいは単身赴任。ま、いっか。足下が左右でカラフルだったら困ったときの話題の一つにでもなるかと思って、気にしない方向で対処してみました。


そんで干し終わって近所でお気に入りのファミコン屋+古本屋+レコード屋がセットになっている建物へゴー。ロクヨンの「糸井重里のバス釣りNo.1決定版」の新品を980円で、ビョーク「セルマソングス」、ファットボーイスリムの新しいの、電気グルーヴ「イルボン2000」を5000円で、あと「風来のシレン2」の攻略本の後編とジョジョの貸しっぱなしで返ってこない巻を買った。で、鼻歌交じりで自転車を漕いで家に帰ると何故か母親が玄関でカンカンに! あれ? めずらしく洗濯とかしちゃったせいで罰が当たったか?と思ったら「あんた! 免許証落としたんだって!?」と言われる。「なーにとぼけた言ってんだよ。ズボンからパスケースが落ちたら馬鹿でもわかるっつうんだよ」と鼻で笑いながら尻に手を伸ばすと、途端に顔が真っ青に。結局自転車で行きに通った道のコンビニで保護されてるっつうことで、いきがった反動でしょぼーんとなりながら再び自転車を漕ぐ。店員に手渡されて「この方が届けてくださいましたので連絡をしてみて下さい」とメモをもらう。さっそく電話してみる。拾い主はおばあさんだった。声がやさしい感じ。お礼を言って、なんかお礼の品でもお届けしたいんだけどもと言ったけどやさしく断られる。4月までの通勤定期(5万円強+2万)とか、クレジットカードも入っていたので、僕にとっては相当の死活問題だったんだけれども、拾ってみた方にしてみれば、道に落ちてるものに手を伸ばしただけなので案外どうでもいいことかもしんなかった。今まで定期も落としたことなかったので、ちょっとどっきり&小さなやさしさに触れてふんわり、な日だった。


深夜に膨大なエロ画像をダウンロードしながら、五十嵐威暢の「デザインすること、考えること」を読んだ。1ページ完結の自分のお仕事振り返り系エッセイだ。代表作はありすぎて困るぐらい。サントリーホールのマーク(後にサントリーのマークに)、パルコのマーク、カルピスや明治のマーク、そんで最近の多摩美の校章もそう。平面にとどまらず工業デザインも数多く手がけているし、彫刻などのクラフト的なアプローチもする。スーパーマンだ。スーパーマンなんだけれども、なんつうか少しも共感できなくて困った。大先輩だし、オーソリティーなんだけども、ロジックから感覚に飛ぶ瞬間のブラックボックス部分があまりに大きすぎて、彼の作品の一つ一つが緻密な論理で組み立てられていることは伝わってくるんだけど、それを証明しようとして逆さに辿っていくと全然元通りになっていかない。なんか上手にだまされている気持ちだけが残ってしまう。


顕著なのはサントリーのマークだ。
http://www.suntory.co.jp/company/index.html
世界一「響き」のよいホールを造るにあたって「響」の字と「ライオン」のマーク(2頭のライオンが盾を中心に掲げているシンボルマーク)を両端に置き、その中間地点に向けて抽象化していったものだ。そのアイディアは本当に素晴らしい。ライオンの紋章にも「響き」という字にも読めるしシルエットも美しいと思う。でもクラシック専用の世界一「響き」のよいホールのマークに、どうして直線的で、こうデジタル風な(作業は手書きだそうです)冷たいタッチが来てしまうのか、僕にはさっぱり理解が出来ない。アナログの境地であるはずのクラシックホールだったら、もっと「にじみ」や「かすれ」を生かしたデザインの方が豊かに感じるし、アナログ的な温かみがある。ましてや何年も寝かして味わいを得るお酒を売る会社に冠するマークに格上げしちゃうなんて、まったく逆の印象を与えてるようにしか思えない。「デザインには説明が不可欠だ」と彼は本の中で語っている。僕もそう思う。デザインを選考する会議室で何が起こっているのか、そのブラックボックスを説明して欲しいと思う。