公訴時効について

http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009122501000870.html

茨城県牛久市で1995年、飲食店経営松田行雄さん=当時(68)=を暴行して死亡させ、腕時計を奪ったとして、公訴時効成立の約1カ月前に強盗致死容疑で逮捕された千葉県の70代の男3人について、水戸地検は25日、処分保留で釈放した。不起訴となる見通し。
捜査関係者によると、事件発生から数年後、匿名の投書があり、男らが浮上。松田さんの室内に残された遺留品から男1人の指紋が検出されたが、付着した時期を特定できなかった。物証が乏しい上に、自供が得られないため、公判維持は困難と判断した。


http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009122501000358.html

秋田中央署は25日、10年前に秋田市で女性に乱暴したとして、強姦致傷の疑いで秋田市山王、自営業佐藤一仁容疑者(45)を逮捕した。26日午前0時の公訴時効前日の逮捕で、遺留物と佐藤容疑者のDNAが一致した。
逮捕容疑は、1999年12月26日午前1時ごろ、秋田市の路上で帰宅途中の25歳の女性会社員を「静かにしないと殺す」などと脅迫、両手で首を絞めるなどの暴行を加えて乱暴し、首にけがを負わせた疑い。


公訴時効が完成すると免訴判決と言って,刑罰を課すことができなくなるのですが(刑事訴訟法337条4号),その時効が停止するのは逮捕の時ではなく,起訴された時です(刑事訴訟法254条1項)。この点,刑事事件が報道されるときは逮捕時が一番大きく扱われ,その後に起訴される時点ではあまり大きく扱われないことから誤解されてる部分もあるのですが,逮捕されただけでは公訴時効の進行は停止しないことから,時効完成直前に被疑者(マスコミでいうところの『容疑者』ですが,この用語も問題あります。)を逮捕した場合,検察官はその後の公判で有罪判決となる見込みを慎重に検討する必要が出てきます。

上の茨城の事例では証拠が乏しいために処分保留で釈放となり,他方,下の秋田の事例ではDNA鑑定を元に起訴する方向とのことですが,当時の遺留物の保存状態についての検討も含め,慎重な検討な求められると言えそうです。


(追記)

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091228/crm0912281944025-n1.htm

10年前に秋田市で女性に乱暴したとして、秋田地検は28日、強姦(ごうかん)致傷の罪で、合鍵製作販売業、佐藤一仁容疑者(45)を起訴した。
同罪の公訴時効は当時10年。佐藤被告は事件発生から丸10年となる前日の25日に逮捕されたが、地検は海外渡航の期間があるとして同日中の起訴は見送っていた。地検は時効が完成する日については「公判の争点になりうる」として明らかにしていない。

被告人が逃亡中に海外へ行っていた場合には公訴時効の進行が停止される(刑事訴訟255条)のですが,その適用の余地があると言うのが捜査の結果明らかになったものと思われます。ただこの点は,事実上・法律上いずれの点も争いになるものと思われます。

なお,現行の公訴時効期間の規定によれば,強姦致傷罪の時効期間は15年ですが,この点は犯行当時の規定によるため,時効期間は10年となります((刑法等の一部を改正する法律平成16年法律第156号)附則第3条第2項参照)

(阿部憲太郎)