[書籍]小早川明子『「ストーカー」は何を考えているか』

「ストーカー」は何を考えているか (新潮新書)

「ストーカー」は何を考えているか (新潮新書)

 東京新聞の書評欄で取り上げられていたので読んでみました。著者は,NPO法人「ヒューマニティ」の理事長で,カウンセラー。500人以上のストーキング加害者のカウンセリングを行ってきたそうです。被害者のためだけでなく,加害者を救済するためにも勝度を行っているというところに驚きを感じました。

 たとえば,カウンセラーとしての矜持を思わせるのは次のような個所です。

カウンセラーにせよ,医療関係者にせよ,回復を望む人がいれば加害者であっても助ける,手を貸す,という判断は自然です。そうした職業意識を有効に活用することです。犯罪を起こす前にカウンセリングに結びつけられたら,殺傷事件は確実に減る。介入しなかったために事件が起きるなら,それこそ責任を負うべきでしょう。

 カウンセリングが成功した事件ばかりではなく,被害者を救えなかった事件にも言及されています。2012年の逗子ストーカー殺人事件は,著者にとって相談者が命を落とした初めてのケースだそうです。この事件では,犯人逮捕時に,逗子署員が,被害者の結婚後の姓を読み上げたことが,その後,執行猶予付きの有罪判決を受けた加害者が,被害者を殺害したという痛ましい事件です。
 ここで,弊事務所の大家さんでもある落合洋司弁護士のブログ『日々是好日』から,次の文章が引用されていたことでした。
 引用されたのは,2012年11月11日のブログ。http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20121111#1352596577

「法律で要請されているのは「示す」ことで、読み上げることまでは求められていません。
(中略)被害者が逗子市在住であったことから逗子警察署が被害届を受けて捜査をしていたものと思われますが(それが通常の手順です)、所轄警察がこうして動くことで、ストーカー側には、その管内に被害者が住んでいる、ということを推測させることになります。被害者に、現住所を知られたくないという強い希望がある以上、被害届を受理したり捜査を行う警察署を別にするなど、捜査の進め方についても細心の注意が必要であったのではないかと思います。

 ということで,本ブログでも紹介させていただきました。

【税理士 米澤 勝】