歩いて国境を越える旅へのお誘い トラブル

旅にトラブルはつきものですが、さっそくです。私たちは本来、上海浦東発9:05のフライトで12:05南寧着の予定でした。南寧というのは、広西チワン族自治区の首府で、そこからベトナム国境に向けてのバスが出ます。

私たちは前夜空港近くのホテルに泊まって、7時ころに出発しました。ところがカウンターでチェックインしようとすると、この便は今日は飛ばないので、1時間後の別の便に乗り換えてくれというのです。それはいいのですが、その便というのが、浦東ではなく、もうひとつある、主に国内線の発着となる虹橋空港から出るというのです。虹橋までは1時間以上かかり、道が混んでいたりしたら間に合わない時間帯です。


あせりまくりましたが、無事到着してチェックインしました。ところがこの便がなかなか飛ばないのです。大量の他の便も総遅れ。その頃になってようやく事情がわかったのですが、この日、上海は曇り空だったのですが、南寧方面は豪雨だったようです。カウンターではいっさいそういう説明がなく、近くにいたおっさん情報です。

ただ、航空機自体はすでに空港で待機しているようで、もう腹をくくって待つより仕方ありません。私たちもコーヒー1杯(3人で)でマックの席に陣取り、ひたすら待ちました。


待つこと5時間あまり、午後3時ころにようやく搭乗しました。この便は途中で武夷山に停まってから南寧に向かいます。武夷山というのは、世界一高級なウーロン茶の樹があることで有名なところです。

ウトウトしていると、1時間あまりで機内放送がありました。「まもなく上海虹橋空港に着陸します」というものです。あれっ、いい間違えてるな、と私は思いました。しんさんも「武夷山にしては、周りに山が見えねぇなぁ」とつぶやきました。そしてランディングしてもう一度「紅橋空港に到着しました」というアナウンスがあったのです。

“狐につままれた”とはまさにこのことです。途中の1時間ほど、天候はまったく正常でした。そんなに遠くない武夷山だけが大荒れだったとは信じられません。機体に異常があったとしたらもっと早くに引き返すはずです。ましてや爆発物でもあったとしたら、乗客は到着してすぐに機体から離れたはずですが、なかなかタラップが届かず、15分以上も機内で待たされたのです。乗務員に聞いても、上からの指令なので自分たちにもわからないと困惑するばかりでした。


けっきょく、この日の南寧行のフライトはすべて欠航となり、私たちは航空会社が用意したホテルに入って翌朝の便を待つこととなりました。用意されたホテルは、中国東方航空が、こういった時のために用意しているもののようで、クルーなども使うのでしょう、立派なホテルでした。東方航空はおそらく中国最大の便数を持つ航空会社で、上海発着の便は、成田・関空など、比べ物にならないほどの本数です。こういった事態はたびたび発生することと思われ、ホテルの従業員も手際よくすべてを整え、私たちは翌朝6時前に、けたたましい電話の音で、「南寧行のフライトが出るので、15分後にロビーに集合してくれ」と、たたき起こされたのです。