歩いて国境を越える旅へのお誘い 憑祥へ


けっきょく私たちはまる1日遅れて、6月2日午前7時半、上海虹橋空港から再び南寧行きの飛行機に搭乗しました。途中武夷山に停まって南寧着は12時半、やっぱり中国は広いのです。


予定では、南寧からバスで南西に4時間、「徳天瀑布」というところへ行くつもりでした。ここは中国とベトナムの国境となっている川にかかる滝で、滝壺から少し離れた位置ではおだやかな池のようになっていて、中国側とベトナム側と双方から観光船が出ているのです。ですから、その観光船に乗ったまま、お互いビザなしで交流ができるというおもしろいところです。

実は私はここに10年以上も前に行ったことがあり、実際にベトナム人とたばこ交換をしたり、国境警備兵と口をきいたりもしました。川をはさんだ向こう側はベトナムで、洗濯をしている女性やわいわい群がっている子供たちの姿もよく見えました。

しかしけっきょく、今回はそこまで行くのは断念しました。以降の予定が決まっていて、ホテルなども予約が入っているからです。実際に行ってみて細かいチェックも必要ですが、10年前と違って、ネットで様々な情報も得られるようになりました。今はかなり観光化されているようですが、それは同時に外国人旅行客にとっては安全ということです。それに地形が変わるわけではありませんからね。

そこで私たちは、南寧国際空港からバスに乗って、一気にベトナムとの国境の町「憑祥」(ピンシャン)に向かうことにしました。

周りの風景はバナナの林が連なってすっかり南国です。私たち3人は、またしてもウトウトしながら4時間ほどで、ピンシャンに到着しました。

まずは宿探し。今の中国で難しいのはこの宿探しです。なぜかというと、☆のついていないような安い宿は、外国人を泊めたがらないのです。これはオリンピック以降の政府の方針でしょう。4つ☆、5つ☆なら問題ありませんが、それはウチのツアーには高すぎます。



幸い3軒目で見つかりました。ここはピンシャン警察のすぐ斜め前にあるので、安全性もバッチリ。中越国境を行き来する商人たちが使う小さな宿です。経営者は標準語を解しました。実は南に来てから、言葉がさっぱり聞き取れなくて困っていたのです。



お腹がすいていたのでさっそく晩ご飯。すぐ向かいにある店の「蒸飯」というのがおいしそうだったので、これを頼んでみました。陶器の皿の上にコメを乗せて蒸したものに、肉や野菜をかけるのですが、いわば中華風パエリャといった感じでしょうか。これがと〜ってもおいしかったのです。

旅に出て、知らない土地で、食べたことがないものを食べる、というのは、とても貴重な経験で、そこからさまざまに想像力を働かせて、異文化を舌から感じ取る。それはテラ・スコラのツアーでは、とりわけ重要なことだと考えています。

え〜っ!毎日毎日こんなにおいしいものばっかり食べられるの〜〜!うっそ〜!と、これまでの中国でも、毎年参加者からは賛同の嵐嵐でした。肥って帰る人がとても多いのです。


ピンシャンの街で出会った感動的な光景。日が暮れてあたりが暗くなってから、街の中央にあるモニュメントの灯りの下で、一心にノートに向かっている少年がいました。