書評:『空の中』有川浩/角川文庫

森博嗣ばっかり読むのもどうかと思ったわけではないのだけれども、まぁ積極的に新規開拓していかないと出会えない作品が世の中には数多くあるとおもうので、なるべく積極的に。そんなわけで、ジャケ買いならぬ表紙買い(^_^;)。見渡す限りの雲海が広がっている文庫版の表紙は思わず手に取ってしまった。

空の中 (角川文庫)

空の中 (角川文庫)

200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは調査のために高空へ飛んだ。高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?
一方地上では、子供たちが海辺で不思議な生物を拾う。大人と子供が見つけた2つの秘密が出会うとき、日本に、人類に降りかかる前代未聞の奇妙な危機とは−すべての本読みが胸躍らせる、未曾有のスペクタクルエンタテイメント!!

分類することに意味があるとは思わないけれども、基本的にライトノベルなのでそこまでSFしているわけでも、ラブコメしているわけでもない。適度な感じに(ライトに?)それらの要素が盛り込まれており、王道ともいえる大人と子供の世界によって描かれたストーリーはスムーズに読み進めることができる。夏休みで時間のある人であれば、きっと2,3日もあれば十分なはず。
トーリーのプロットはとてもシンプルで、展開もそれほどどんでん返しもない。期待を裏切らずに、謎があり、盛り上がりがあって、満足のいく結末が描かれる。小説ぐらい、というか小説だからこそといってしまえばそれまでかもしれないけれども、テレビドラマよりも、下手な映画よりも、数百円で買える文庫本の中で繰り広げられる世界の面白さをぜひ知ってもらいたいと思うし、本書はそうしたきっかけとしてたまには活字を追ってみるか、と思った方にはちょうどよい1冊だ。