水着

 こういう兼題が結構困る。水着という季語で思い浮かべるのは俳句を詠むほうも読者の方も大人の女性の「ファッション」としての水着だから、当然着たこともなく、まじまじと見ることもできないできたことを句にするのは難しい。
 乏しい経験の中で印象に残っている女性の水着姿は島牧の海である。
 青年団の夏の行事、「浜鍋」。海中に魚を追いかけてヤスで魚を突く者、潜ってアワビを採る者、潜ってウニを拾って来る者、私のように能力の低いものは。水面から手の届くところのヒル貝を採ることで参加させてもらう。女性たちは野菜を切り、採ってきたものをさばいて鍋にする。私は水中の浜の若者たちのまるで魚族のような動きに見惚れていた。そのうちに一人の女性がひやかされながら岩の間から水の中へ泳ぎ進んだ。水着は明るい感じの赤い花模様だった気がする。「久しぶりなのー」といいながらもちょっと前までの「浜の子」はすぐに潜り始めた。大きな岩の向こうは暗く深い日本海の海底につながっている。そこを頼りなげな女性がアワビでも探すのか蝶のように岩に取り付く。水の色に水着は色を失い白さが際立つ女性の四肢が美しかった。
     水を着て水着は色を失へり   未曉