高世仁の「諸悪莫作」日記

2016-08-27 差別のある社会はみんなが生きづらい

 処暑(しょしょ)という節季に入った。

 処とは止まるという意味で、暑さが少し和らぐ頃とされる。23日からが初候「綿柎開(わたのはなしべ、ひらく)」。明日28日からは次候「天地始粛(てんち、はじめてさむし)」で秋の気配が感じられるころになる。きょう東京は一日雨で、夕方は肌寒いくらいだった。

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 相模原市知的障害者福祉施設津久井やまゆり園」の殺傷事件。いろんな識者がコメントを出すなか、福島智さんの指摘が問題の根をずばりと突いていると思った。

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 福島さんは小学生で視覚を、高校生のときに聴覚も失い、盲ろう者として初めて大学に入学、現在は東大先端科学技術研究センターの教授だ。

 福島さんは、障害者に対する差別は、人種や性を理由にした差別とは異なり、それは一般社会につながっているという。

《例えば、人種の違いによって生じる差別意識は、肌の色や骨格や容貌の違いなどによって引き起こされる、なんら本質的な根拠のない「上辺にとらわれた」差別です。

 女性差別も、一定の肉体的な条件の違いはあるものの、現代社会で最も重視される能力である知的能力においては、男女間に何の差もないため、やはり本質的な根拠はありません。

 したがって、これらの差別は、少なくとも理論的には、いずれ克服可能な差別だと思われます。

 一方、重度の障害者への差別とは、現代社会に要求される生産能力(知的能力)の低さに対する差別です。

 現代社会で要求される生産能力は、記憶力・情報処理力・コミュニケーション力などに代表される、知的諸能力に基礎を置いています。

 こう考えると、私たちの中に、重度の障害者への差別は「差別ではない。当然の区別だ」と考える意識が生まれるのではないでしょうか。

 しかし、大切なのはここからです。こうした障害者の「(知的)能力の低さ」をどう扱うかは、障害のない人間同士での能力の差をどう考えるかということと、根っこはつながっています

 ここで容疑者の犯行について再度考えてみましょう。確かに容疑者の考えは極端であり、その犯行は残酷で恐るべきものです。しかし、私たちと容疑者がまったく無関係だとは言い切れないと、私たち自身が、心のどこかで気づいてしまっている面があるのではないでしょうか。

 容疑者は、重度障害者の存在は経済の活性化を妨害すると主張していました。こうした考えは、私たちの社会にもあるでしょう。労働力の担い手としての経済的価値で、人間の優劣が決められてしまう。そんな社会にあっては、重度障害者の存在は大切にされず、軽く見られがちです。

 でも、本当は、障害のない人たちも、こうした社会を生きづらく、不安に感じているのではないでしょうか。

 なぜなら、障害の有無にかかわらず、労働能力が低いと評価された瞬間、仕事を失うなどの形で、私たちは社会から切り捨てられてしまうからです。

 では、私たちは何を大切にすればいいのでしょうか。人間の能力の差をどう考えれば良いのでしょうか。そもそも人間が生きる意味というのはなんでしょうか。

 こうした論点を真剣に議論する。生活の豊かさとは何かを共に考えていくべきだと思います。》

https://www.buzzfeed.com/sakimizoroki/sagamihara-prof-fukushima-interview?utm_term=.ufZ77VqMGV#.jy577DemVD

 能力差別は「経済優先」を背景にしている。

 容疑者衆議院議長にあてた手紙で、重度障害者抹殺する理由の一つとして「世界経済の活性化」という言葉を使っています。つまり、重度障害者の存在は、経済活動の活発化や経済成長にとってマイナスになる、だから抹殺するのだ、というのが犯行の動機と思えます。

 これは何にもまして——ときには人間の命よりも——経済的な価値を優先させる、という考え方です。こうした考え方が育った背景には、今の日本社会の中に、経済活動を何よりも優先させるという風潮があることが関係しているのではないかと思います。

 つまり、品物やサービスを生産する労働力や生産効率で、人間の価値の「優劣」を決めてしまうという風潮です。

 《本当は、障害のない人たちも、こうした社会を生きづらく、不安に感じているのではないでしょうか。》という指摘。まったくそのとおりだ。

2016-08-24 真実に生きることができる社会

 きょう、安保法の新任務の訓練開始を防衛相が表明した。

 稲田朋美防衛相は二十四日午前の記者会見で、昨年九月に成立した安全保障関連法に基づく自衛隊の新任務について、訓練を開始すると表明した。他国を武力で守る集団的自衛権行使も含め、同法に盛り込まれたすべての新任務が対象。可能なものから順次、訓練に着手する。当面は、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に十一月に派遣される陸上自衛隊の交代部隊に「駆け付け警護」などの新任務を訓練させる。(略)

 南スーダンPKOの交代部隊は、陸上自衛隊第九師団第五普通科連隊(青森市主体の部隊。今月二十五日から訓練に入り、九月中旬以降に、武装勢力に襲われたPKO関係者らの防護に向かう「駆け付け警護」と、PKO参加各国との宿営地の共同防衛について訓練する。》(東京新聞

 今回は、任務が実際に与えられるのを前提に訓練を実施するわけで、自衛隊にとって大きな転換点になるのは間違いない。まず、南スーダンの現実がもっと報道されるべきだ。

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 北朝鮮潜水艦からの弾道ミサイル発射を成功させた。

 《防衛省は、北朝鮮が24日午前5時29分ごろ、北朝鮮東岸から1発の弾道ミサイルを発射し、およそ500キロ飛しょうして日本海に落下したと推定され、発射された弾道ミサイルは、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルと考えられると発表しました。》(NHK)

 各国の防衛関係者は一様に北朝鮮ミサイル性能が確実に高度化していると見ている。

 これまで多くの「専門家」たとえば伊豆見元氏は、ミサイル発射や核実験が「逆切れ路線」で5月の党大会までしか続かないなどと言っていた。党大会後もどんどんやっているんですけど。

http://www.sankei.com/world/news/160108/wor1601080005-n1.html

 専門家のコメントがいつも的外れに終わるのは、何度もここで書いたように、「思惑」分析に集中するからで、さらに言えば北朝鮮が本気で兵器開発をしているという「事実」を見ないからである。NHKの常連コメンテーター平岩教授は、今回のSLBM発射は日中韓外相会議に合わせたなどと解説していた。それは本質ではない。

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 きのうの水俣病の話で想起するのは、一昨年の天皇皇后水俣訪問だ。

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 この訪問は皇后石牟礼道子さんが働きかけて実現したものだ。

天皇皇后陛下は、2013年10月27日、第33回全国豊かな海づくり大会の式典に出席した後、九州新幹線水俣市に入り、エコパーク(水俣湾親水緑地)の水俣病慰霊の碑では一礼し、白菊の花をささげた。その後、水俣病資料館を視察。患者の写真、被害を伝える新聞記事などの説明を受け、被害の実態を伝えている水俣病資料館「語り部の会」の会員10人と懇談した。事前の公式日程にはなかったが、両陛下の希望で昼食後、胎児性患者ら3人とも懇談された。》

(お忍びでの患者との面会についてはhttp://dot.asahi.com/wa/2014101500072.html

 このとき、天皇は次のような感想を述べている。

 《どうもありがとうございます。本当にお気持ち、察するに余りあると思っています。

 やはり真実に生きるということができる社会をみんなで作っていきたいものだと改めて思いました。

 本当にさまざまな思いを込めて、この年まで過ごしていらしたということに深く思いを致しています。今後の日本が、自分が正しくあることができる社会になっていく、そうなればと思っています。

 みながその方に向かって進んでいけることを願っています。》

f:id:takase22:20160825003807j:image:w260:left【母の胎内で水銀に侵された胎児水俣病患者の前田恵美子さん(59)と】

 天皇皇后にとっては、戦争とともに戦後の公害象徴である水俣病犠牲者を弔い、生存する被害者たちに直接に語りかけることを自らの任務と考えていたのではないだろうか。

 天皇は、日本が「真実に生きるということができる社会」、「自分が正しくあることができる社会」になっていないことを強く示唆しているように思われる。

2016-08-23 水俣が国のかたちになった

 きょうのクロ現《“加害企業”救済の裏で〜水俣病60年「極秘メモ」が語る真相〜》には怒った。

 番宣は《「補償金支出の歯止めが欠落している」「そのままでは、ザルに水を注ぐがごとしだ」 今回、NHKが独自に入手した、チッソ副社長が残したとされる手記。 記されていたのは、加害企業チッソを手厚く救済する一方で、水俣病患者への補償金を抑えようとする政治家官僚の思惑だった。 水俣病公式確認から60年、初めて明らかになる真相とは?極秘資料と関係者への取材で知られざる水俣病の真相に迫る。》

 昭和53年から、熊本県が県債を発行して政府から調達した資金を、患者補償の資金としてチッソに貸し付けるという県債方式によるチッソ支援が行われ、その県債の累計発行額は約2,260億円となっている。政府はこのチッソへの大規模な財政支援を始める一方で、同年、新たな認定基準を作って患者の認定率を5%未満へと激減させていった。番組では副社長のメモなどから、政府行政・企業が一体になった動きを明らかにした。メモには、患者に補償を行うことを「ザルに水を注ぐ」などと表現した政府高官の言葉などもあり、テレビに向かって思わず罵りの声を上げてしまった。

f:id:takase22:20160824125829j:image:w250:left 水俣病「第1号患者」である田中実子(じつこ)さんの姉の下田綾子さん(72)は、「中学生ぐらいから姉妹みんな指がしびれていた。いまもけいれんが来たりする」という。実子さんのすぐ上の姉は水俣病で死亡している。

 《若い頃は、差別を恐れて、水俣病の認定申請をしなかった綾子さん。昭和53年の通知が出された後に審査を受けましたが、結果は「棄却」でした。》(クロ現より)なんと理不尽な。

 そもそも、チッソの排水が原因の可能性があるとの指摘を握りつぶして排水垂れ流しを続けさせた政府の責任は問われず、公害企業を救済して被害者を切り捨てる構図は、「この国のかたち」として定着したようにみえる。

 福島第一原発事故のあと、「水俣のようになるだろう」と予言する声があったが、東電救済と被災者の切り捨てが進み、どうやらそのとおりになりつつあるようだ。

 水俣病の患者を認定しないまま、政府は「未認定」の人にわずかのお金を握らせる「救済策」を実施したが、それも2012年7月末までという期間限定だった。

 水俣病救済策、6万5千人申請 想定2倍、潜在被害多く

 水俣病の症状があるのに国の基準では患者と認定されない人に一時金や医療費を給付する救済策に、受け付けが締め切られた7月末までに全国で計6万5151人が申請したことがわかった。申請を受け付けた熊本鹿児島新潟各県が30日、発表した。環境省が当初想定した「3万人超」の約2倍で、多くの被害者が潜在していることをうかがわせる結果となった。2010年5月の申請開始からの県別の累計は、熊本4万2961人、鹿児島2万0082人、新潟2108人だった。》朝日新聞2012年8月30日)

 6万人超もの人びとが自らを患者だと自覚しているのだ。認定されぬままに。

 クロ現は2012年7月25日(水)放送で、《水俣病“真の救済”はあるのか 〜石牟礼道子が語る〜》という放送をし、そのごまかしの「救済策」でさえ、さまざまな線引きをして認定から外れる人がたくさんいる事実を伝えている。

http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3234/1.html

 ここで語られた石牟礼道子さんの言葉が胸に突き刺さる。

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●石牟礼さんから見た特別措置法

 特措法の“救済”という言葉は、いかにも官僚用語。最初の段階から基礎調査をすべきだった。一軒の家に患者がいると、必ずと言っていいほど家族全員が何らかの症状がある。

 天草で案の定、被害者が出てきた。行政は地域を区切って減らそうとしている。魚を食べた証明を出さないと、(対象地域外では)救済対象にならない。(特措法の)条文を作った役人は、50〜60年前の証明書を持っているのか。

●なぜ“線引き”はくり返されるのか

 行政はごまかし、ごまかし、大変な事件だと思っているに違いない。手落ちを隠すというか正当化する。

●国はどう向き合うべきだったのか

 日本は経済成長路線でやってきた。人間性の善なるもの、徳義、精神的な成長を国民と共に遂げること、やってこなかった。

●半世紀を経て思うことは

 患者たちと東京によく行った。患者は「日本という国はなかった」と言う。

 東京まで行っても日本という国は、どこにあるかわからなかった。日本という国は、人がつくってくれるのではない。自分たちでつくらないとない。」

 人間の希望。最低の希望はわかり合う努力をすること。一番せつない、わかりあえないということが。それでね、もう亡くなったですけど杉本栄子さんという方がいらっしゃって。

 「私たちは許すことにした。全部許す。日本という国も、チッソも、差別した人も許す。許さないと、苦しくてたまらない。みんなの代わりに私たちが病んでいる。許す。」と言って死ぬ前に、「まだ生きたい」と言って亡くなった。私たちは許されている、代わりに病んだ人から許されて生きている。罪なこと。

 代わりに病んでいる、日本人の代わりに。

●国には何を学んでほしい

 純朴ないいものをたくさん持っていた。水俣の人たちの心をズタズタにした。

 きょうも無事に生きた。あしたも、きょうくらいに生きられればいいと思う人たち、特別、出世したいと考えもしない人が、この世にはたくさんいる。普通に生きている人たちの行く末、普通に生きるというのは大事なこと。

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 こんな「国のかたち」ははやく葬りさらねばならない。

2016-08-22 新任務の訓練に入る自衛隊

 台風で暴風雨の中、長靴を履いて出かける。

 台風が来ると天気予報で「猛烈」という言葉が使われる。「県内各地で猛烈な雨が・・・」と。昔、小川ローザミニスカートがまくれて「Oh!モーレツ!」と叫ぶCMがあったが(古い話だな)、「猛烈」というのは当時でもあまり日常では使わない言葉だったから流行ったのだと思う。天気の表現だけに「猛烈」を使うのはなぜなのか。台風が来るたびに考えてしまう。

 それはともかく、猛烈な風雨だった。傘が壊れ、ズボンはびしょ濡れに。ちょうど雨がやんだとき国会図書館に着いた。するとあたりが蝉の声でいっぱいになった。それまでの風雨の時間を取り戻そうとするかのように。早く雌を引き寄せなくては・・と。

f:id:takase22:20160822131839j:image:w200【雨上がり、ワーンといっせいに蝉の声が】

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 いよいよ自衛隊が「新任務」の訓練に入る。

政府は、安全保障関連法施行に伴い自衛隊の新たな任務となった「駆け付け警護」と「宿営地の共同防衛」の実施に向け25日にも国内訓練を開始する方針を固めた。自衛隊の海外活動を拡大する安保法が運用段階へ本格的に移行する。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)にこれから参加する陸上自衛隊部隊へ新任務を付与することを想定。稲田朋美防衛相が24日に訓練開始を正式表明する見通しだ。政府関係者が19日明らかにした。南スーダンでは現在、陸自第7師団北海道千歳市)を主力とする約350人が10次隊として活動している。》(共同)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016081901002097.html

 各地のPKOの実態を知る伊勢崎賢治氏は、南スーダン自衛隊は、日本の「PKO派遣五原則という虚構」を守るためだけに駐留させられていると指摘、強く警鐘を鳴らす。http://wpb.shueisha.co.jp/2016/08/22/70504/

 新しい安保法制にもとづく具体的措置が南スーダンから始まるというのは、きわめて危険である。「稲田防衛相が24日に訓練開始を正式表明する」とされるが、何を語るのか。

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 前回お知らせした番組「ゲンよ、中国へ渡れ」。坂東弘美さんは、漫画『はだしのゲン』10巻を6年がかりで中国語に翻訳、中国本土での出版を意図するが、政治的な理由で出版社がのってこない。壁にぶつかるなか、関心をもつ台湾の出版社が現れ、ついに今年台湾で書店に並び、中国語圏への普及の第一歩を踏み出した。坂東さんの熱意が報われてよかった

 坂東さんが中国にここまで関わるようになった大きなきっかけは、戦争中のお父さんの行為に衝撃を受けたことだったという。お父さんは、1937年上海南京攻略戦に参加し、手記にこんな記述を残していた。

 「占領した集落には残敵がいるかも知れぬので掃討を隅々まで行う」「家の角に一団となって隠れていた婦女子を見つけ始末に困った。やむを得ず銃剣で刺殺せねばならぬ」「一番可哀想であったのは一団の中で若い母親が子どもを抱き泣きながら助けを求め機関銃の犠牲になった光景である」

 お父さんは心ならずもではあったにしても、兵士の一員として残虐行為に手を染めていたのだった。坂東さんはお父さんが残した手記を『私は「戦争」から生きて帰った―日中戦争従軍兵士阿部要の手記』という本にまとめている。

 以前、このブログ日テレのNNNドキュメントで放送された「南京事件 兵士たちの遺言」を紹介した。日本軍兵士たちの陣中日記に記された「捕虜せしシナ兵の一部5千名揚子江の江岸に連れ出し機関銃をもって射殺。その後、銃剣にて思う存分突刺す」などの記述から実際に起きたことを検証していく番組だった。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20151019

 ここでは、南京攻略後、捕虜になった敵兵を集団的に「処分」した例が紹介されていたが、それだけでなく、坂東さんのお父さんの部隊のケースのように、農村部での民間人虐殺も広く行われていたわけである。現場にいた兵士たちの手記は資料的価値が高く、公的機関がしっかり保存し利用できるよう整備すべきではないか。

2016-08-19 6万5千人を拉致していたアサド政権

 オリンピックで日本はもちきりだが、「平和の祭典」の最中、シリアでは内戦が続く。特にアレッポでは7月31日から8月14日までの間で民間人327人(うち子ども76人、女性41人)が死亡したという。http://www.syriahr.com/en/

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 ほとんど日本では報道されなかったが、今月17日のアサド政権側による空爆を受けた住宅から救出され埃と血にまみれた男児(5)の映像がインターネット上で公開され、CNNの女性キャスターがニュースを読みながら泣きだすなどして衝撃が広がった。結果、さすがに日本のテレビニュースでも取り上げた。

 これを撮影して配信したジャーナリストに感謝する。こういうのを見ると、できるだけ多様な現場に「記録し伝える人」がいるべきであることを実感する。

 アレッポメディアセンターの動画 https://www.youtube.com/watch?v=7cfBmRW3isc

 

 シリアの事態は、アサド政権反政府勢力の「どっちもどっち」という報道も多いが、事実を見ていくと、一方的な抑圧、虐殺であることが分かる。

 最近の報道から。

 2011年以来、シリアでは65000人もの人々がvanishedつまり「消えた」という。これはもっとも重大な「人道に対する罪」にあたる「強制失踪」である。

 「強制失踪とは、国の機関又は国の許可、支援若しくは黙認を得て行動する個人若しくは集団が、逮捕、拘禁、拉致その他のあらゆる形態の自由のはく奪を行う行為であって、その自由のはく奪を認めず、又はそれによる失踪者の消息若しくは所在を隠蔽、かつ、当該失踪者を法律の保護の外に置くものをいう」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/shissou/index.html

 拉致も強制失踪の一形態とされるから、人権という観点からは北朝鮮に比肩する。

 「人道に対する罪」についてはもう一つ。

 アムネスティの《最新の報告書は、シリア内戦が始まった2011年以降に少なくとも1万7723人が拘束された収容施設内で死亡したと発表。政権側による組織的な「人道に対する罪」の実態告発した。》

 シリアでは、ジャーナリスト人権活動家医療関係者に至るまで、少しでも反体制的とみなされればだれでも投獄される危険がある。最近は、シリア国内で人道支援活動に携わる職員が投獄されるケースも急増している。

 聞き取り調査に協力したのは、シリア当局が運営する刑務所や収容施設で拷問を受けた生存者65人。平和的な抗議活動に参加して拘束されたという弁護士活動家、農家の青年など、元収容者の多くが拷問されたうえ、処刑の現場に居合わせていた。目の前で収容者が殴り殺され、監房には死体が転がる惨状だったという。収容施設では一切の私語が禁じられ、静まり返った建物内には生々しい拷問の音が響き渡った。》

 このあたりも北朝鮮政治犯収容所を彷彿とさせる。

 《聞き取り調査を基に再現した悪名高いサイダネヤ刑務所の3D画像も公開、一刻も早い行動を促している》https://news.nifty.com/article/magazine/12172-20160818-E175556/

 サイダネヤ刑務所の3D画像は以下のアムネスティのサイトで見ることができる。

https://saydnaya.amnesty.org/?kind=explore

 アサド政権とそのパトロンロシアを糾弾すべきなのに、安倍首相プーチンと会いたいと来月訪露を予定している。国家ぐるみのドーピング実態とその後の開き直りを見れば、いかに異様な政権か分かりそうなものだが、プーチンにはシッポを振りつづけだ。

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 これはこれとして、さてオリンピック

 吉田沙保里選手が「申し訳ない。取り返しのつかないことをしてしまって」と泣きじゃくるのを見て、こっちまでもらい泣きしそうになった。

 国家のためにスポーツをやっているんじゃない、という正論は分かるが、期待される金をとらねばという責任の重圧と闘う姿にも共感する。

 近年、大きな試合に臨んで「楽しんできます」と言うスポーツ選手が増えているが、私などはちょっと抵抗がある。古い人間なんでしょうか。

 吉田選手を足かけ5年取材した知り合いの長南武さんが書いた『吉田沙保里 強さのキセキ』という本を読んで、彼女がいかにすさまじい精進を重ねてきたかを知っていたので、勝たせたかったなあ。でも、ほんとうにごくろうさまでした。

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 お知らせ:テレビ朝日系「テレメンタリー」で「ゲンよ、中国へ渡れ〜被害と加害の狭間で」が放送されます。弊社の制作ではないのだが、ここにご縁のある方が登場する。

 《漫画「はだしのゲン」を中国で出版しようと奮闘する女性がいる。坂東弘美さん(68)。9年前から「はだしのゲン」を中国語に翻訳する作業を進めてきた。しかし中国の出版社が見つからない。加害者である日本を被害者として描くのは時期尚早、という理由からだ。坂東さんは贖罪の意味も含めて「はだしのゲン」を中国に伝えたいという。そこには日本が被害者としてだけではなく、加害者としても描かれているからだ。制作:名古屋テレビ放送

 坂東弘美さんは、かつて「チェルノブイリ救援中部」という市民グループで中心的に活動されていた方で、私はこのグループに付いて行って初めてチェルノブイリを取材した。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110413

 テレビ朝日は21日(日曜)の朝4時半〜5時、地方局で放送時刻が違うのでサイトで確認してください。

 それにしても、ドキュメンタリーは視聴率が取れないので、こういう時間帯に追いやられてしまうのが残念だ。私はこの枠で『父はスパイではない!〜革命家伊藤律の名誉回復』と『21年目の真相〜あれは誤報だったのか』(http://d.hatena.ne.jp/takase22/20130602)というかなりオタクな番組を放送してもらってとても感謝している。

 日テレ系のNNNドキュメントと並んで地方局ががんばっている老舗のドキュメンタリー枠なのでぜひ応援してください。