高世仁の「諸悪莫作」日記

2016-07-24 鳥越さん、逃げないで!

週刊文春が書いた鳥越俊太郎氏の女子大生「淫行」事件。

記事に対する鳥越氏とその応援団の対応があまりにひどいので一言言わせてもらおう。

私は鳥越氏にいろいろとお世話になっている。

横田めぐみさんを北朝鮮で目撃した亡命者のスクープ証言を私が持ち込んで報じてもらったのは鳥越氏がMCをやっていた「ザ・スクープ」だった。仕事上の付き合いは長く、18年前、私の会社の設立パーティで乾杯の音頭をお願いしたのも鳥越氏だったし、その時いただいた時計は今でもオフィスの壁で時を刻んでいる。

しかし、お世話になったことと都知事としての適性、そして今回の記事の問題は別の話だ。

まず、記事への対応があまりにも情けない。

週刊文春の記事については7月21日午前、鳥越氏の弁護団が名誉棄損と公選法違反の疑いで東京地検告訴状を提出した。すると鳥越氏は「私は弁護士の方に一任している。それ以上のことを言うつもりはない」とだんまりを決め込んだ。

産経新聞より―

東京都知事選に立候補している鳥越俊太郎氏は21日夕、東京都中野区での街頭演説の後、週刊文春が「『女子大生淫行』疑惑」と題する記事を掲載したことについて記者団の質問に答えた。

 --鳥越さんはジャーナリストなんですけれども…

 はい

 --司法の手に委ねるという、言論で返すということはお考えではないのですか?

 ああ、できるだけ地方にですか?

 --ではなくて、あの、今回の週刊文春の件をジャーナリストという立場で告発するということはどうなんでしょうか?

 いや、それはもちろんありますけども、とりあえずは、事実無根なのできちっと法的措置を取ることがまず大事だと思いましたので、そこから始めたいと思います

 --実際に記事に書かれた女性と、当時は別荘にいったというのは事実なんですか?

 ま、そういうことも含めましてね、これはあの、裁判になったり法的な問題ですので、うかつに私の口から具体的な事実についてあれこれ言うのは控えさせてください。これはすべて、そういう問題については、私の法的代理人である弁護士の方に一任をしております。以上です。

 --政治的な、何か背景があるみたいなことをおっしゃってらしたが。それは何なんですか?

 はい?

 --政治的な力が働いたみたいなことを先ほどにおわせてましたけれども

 いやいやそれは、私のまあ、感想なので、あんまりそれは感想なので、事実を確認したわけはないので、それをあんまり強く言うことは控えたいと思います。

 --大きな力が働いたと思われた理由はどういったところなんでしょうか?

 いや、理由は何もありません。僕のカンです。私は51年間この仕事をしてきて、直感をいつでも働かせながら仕事をしてきましたんで、直感である程度そういうことはあるかもしれないな、というのはまあ、思った次第…それは何も事実があるわけではありませんので、こういう事実があるからこうだ、というつもりは全くないです。

 --相手の女性にまったく心当たりはないんですか?

 はい?

 --相手の女性に心当たりはありますか?

 それについても、一切ここで私は答えるつもりはありません。そういうことも含めて、そういう私の法的代理人弁護士の方に、まあ一切、そこが窓口になってますので、そこで、通してください。これ以上のことを言うつもりはありません

 --結果として今回の報道でイメージダウンというのは避けられないという見方もあるんですが、それについてはどう思われますか

 ま、それももう私は私なりにちゃんと受け止めてますので、具体的には、それがどうなるかということについてはですね、私が何も感想をいう立場にはありませんので、それについて、もし影響がどうかということをお聞きしたいんだったら、私の弁護士の方にちゃんと聞いていただければ、お答えできると思います

 --少なからず不安に思っている都民もいるかと思うんですが?

 はい?

 --少なからずこの件について不安に思っている都民もいるかと思いますが…

 まあ、それはだから私がきちっと法的措置をとったということで、不安はできるだけ解消していただきたいと思います。断固たるつもりで私はやっていますから。

 --政治家になろうとしているのであれば、まず説明する責任があると思うが、それはどうでしょう

 はい。もちろん…

 --この場で…

 だから、それは説明の責任はきちっと私の法的代理人のところからきちっと説明させていただきます。

 --本人が説明するのが筋では…

 いやこれはですね、告訴状を提出いたしましたので、今後は法的な裁判とかいうことになってまいりますので、それの具体的なことについて、私の一存で具体的に言及するのはここでは控えさせていただきます。以上です、ありがとうございました。》

相手の女性に心当たりがあるかどうかさえ、「弁護士に一任しているから言えない」。舛添氏や汚職が発覚した政治家を思い出させるが、このやりとりを聞いて、鳥越氏が「シロ」だと思う人がどれだけいるのか。一任しているという弁護団説明する機会を設けないので、結局、何も語られないままだ。

きちんと記者会見を開いて釈明すべきだろう。政治的陰謀だなどと根拠のないことを言いながら逃げ回るのはやめてほしい。あまりにも見苦しい。

何とか文春記事をおとしめようとする鳥越氏の応援団もひどい。

まず、ずいぶん前の話なのに選挙中のこのタイミングに出るのはおかしい、政治的なウラがあるのではないかと記事を批判する。

これはまったく逆で、鳥越氏が都知事に立候補したからこそ、その適性を問うという記事が出せたのである。鳥越氏が私人であれば記事にしがたいプライベートな問題でも、候補者になっているのだから公共性は十分にある。

また、証言した「被害者」の夫は、「この十数年、私たち夫婦は我慢してきました。けれど、もし彼が都知事になったら、いつもあの顔を目にすることになる。それは耐えられません」と記事で言っている。鳥越氏が立候補しなければ、そもそも取材に応じることはなかったのだ。

それに週刊文春は、これまで与党系の政治家を何人も血祭りにあげている。右も左もない。「右」がやられたら拍手喝采し、「左」がターゲットになると「政治的」「陰謀」などと騒ぐのはダブルスタンダードである。

あるジャーナリストツイッターにこう書いている。

《仮に別荘に行ったのが事実であり、キスをし、それ以上の性行為には至らなかったのも事実だと仮定して、何が問題になるのか。ある弁護士匿名で「その記事の通りだとしたら、犯罪性はない」と語った。》

たしかに「犯罪性」はない。強姦していたとしても時効である。しかし、ここでの問題は、刑事罰を科すことができるかどうかではない。都知事としての「品性」が問われているのだ。

さらには、たかがキスされただけじゃないか、などというハラスメントまがいのツイートまで見受けられる。

記事にはこうある。

《鳥越氏は強引にキスをすると、抵抗するA子さんにさらに迫り、こう言い放ったという。

大人の恋愛というのはこういうものだよ」

結局、行為は未遂に終わったが、「バージンだと病気だと思われるよ」と言ったばかりか翌日、東京へ戻る車中で鳥越氏はA子さんに「ラブホテルに行こう」と誘ったという。》

被害者の夫によると、「A子さんは今もなお、事件のトラウマに苦しみ、ときに自殺を口にすることさえあるという」。

「キスされただけ」でないことは明らかではないか。別荘に誘ってからの一連の流れを考えると「淫行」という表現ではおさまらない可能性がある。

鳥越氏の弁護団は文春を刑事告訴したが、これは鳥越氏サイドにとっては最良の戦術だったと思う。これでテレビは腰が引けて、文春の記事の内容を紹介せずに「告訴した」というだけのニュースを流している。

法的代理人の名前を見ると、なんと弘中淳一郎氏ではないか!

情熱大陸」で取材させてもらった「無罪請負人」といわれる、私の尊敬する弁護士である。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110421

先日書いたように、私は事件の舞台になった大学の関係者とも親しいので、この記事に関しては、知り合いばかり。でも言うべきことは言っておかないと。

2016-07-21 大使が陸自宿営地に宿泊する南スーダンの危険度

きょう発売の週刊文春の《鳥越俊太郎 「女子大生淫行」疑惑》という特集が騒ぎになっている。

ある「有名私立大学」のメディア関係のゼミに顔を出していた鳥越氏が、2002年の夏、ゼミ女子大生(当時2年生、20歳)を別荘に誘い、性行為を迫ったという疑惑だ。記事の中心は、その元女子大生の当時の恋人で、現在は夫である男性の証言となっている。

実は私は、この話を当時から聞いていた。その大学のメディア関係のゼミでは、現役の新聞記者やテレビマン、フリージャーナリストなどを講師として呼んでいたが、私も同じころ講師としてゼミに出入りしていたからだ。いつもは温厚なゼミの指導教授が「鳥越はぜったいに許せない!」と声を荒げていたことを覚えている。

疑惑の事実関係についてはコメントしないが、昔を思い出しながら、感慨深く記事を読んだ。「被害者」の元女子大生が当時の恋人といま夫婦になっていることを記事ではじめて知り、それだけはほっとさせられた。

・・・・・・・

さて、何度か書いてきた南スーダンの情勢は、やはり尋常なものでないことが、この間の新聞記事からはっきりしてきた。

まず、きょうの東京新聞の《南スーダンでの安全確保困難 大使陸自宿営地に避難》という記事。なんと、日本大使館が危なくて、大使陸自宿営地に宿泊しているというのだ。

《【アディスアベバ=共同】戦闘が再燃した南スーダンで、現地駐在の紀谷(きや)昌彦・日本大使大使館員一人が安全確保のため、夜間は首都ジュバで国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊の宿営地に避難して宿泊していることが二十日、関係者への取材で分かった。

 中谷元防衛相南スーダン情勢について「武力紛争に該当する事態ではない」と強調し、PKO参加五原則は維持されているとの立場。しかし、大使館でさえ安全確保が困難な状況が浮き彫りになり、陸自派遣継続の是非が改めて問われそうだ。大使公邸や館員の宿舎は大使館敷地内にある。

 陸自部隊はPKOの南スーダン派遣団(UNMISS)に参加。現在は第七師団北海道千歳市)を主力とする十次隊が展開している。戦闘が再燃してからは国連施設の外に出られず、十九日時点で活動を再開できていない。(略)

 ジュバでは八日にキール大統領派と元反政府勢力との間で大規模な戦闘が発生し、二百七十人以上が死亡した。双方は十一日の停戦命令に従い、戦闘は止まったが、兵士による略奪行為が報告されるなど治安は安定していない。》

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201607/CK2016072102000136.html

共同によれば、陸自宿泊地に流れ弾が着弾していたという

《岡部俊哉陸上幕僚長は21日の記者会見で、南スーダンの治安が悪化した今月上旬以降、国連平和維持活動に参加している陸上自衛隊の宿営地内で、流れ弾の一部とみられる弾頭が複数見つかったと明らかにした。》(共同)

次は、北海道新聞の先週の記事。

陸自宿営地の周辺でも死者 南スーダン》 07/15 07:00

南スーダンPKOのロイ代表は13日、陸自宿営地があるPKO施設について「10日と11日は(近くで)激しい戦闘が続きとても深刻だった」と述べた。PKO本部によると、戦闘が続く間、陸自隊員は防弾チョッキを着用して宿営地内の防弾壕(ごう)に入って安全を確保した。》

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/international/international/1-0293366.html

ここまでの事態なのに「武力紛争に該当する事態ではない」と言い張る日本政府。本来なら、自衛隊はいったん撤退するしかないはずだ。

2016-07-18 『父・伊藤律〜ある家族の「戦後」』出版さる

 おととい、16日の土曜日、伊藤淳『父・伊藤律〜ある家族の「戦後」』講談社)の出版記念会があった。

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 もう知る人も少なくなったが、戦後共産党の大幹部だった伊藤律1950年地下に潜行、後に中国に密出国し「徳田機関」で活動するが、野坂参三により「スパイ」として除名された。帰国した野坂らが「死亡」説を流すなど、消息不明のまま時間が経ったが、1980年突然帰国して大ニュースになった。

 帰国直後、バラエティ番組で、ビートたけしが「キャンディーズのラン(伊藤蘭)の親父さんが中国から帰ってきたよな」とギャグを言ったのを覚えているが、そのくらいの騒ぎだった。

 この本の著者は、伊藤律次男の淳さん。出版意図をこう書いている。

 「父・伊藤律の『無罪』は、主として私以外の多くの人たちの力によって完全に証明された。もはや私には付け足すものはなくなった。ようやく気が楽になった。もし私にできることがあるとすれば、レッテルなどへの気兼ねや政治的立場への配慮などもすることなく、肩の力を抜いて、私が体験したこと、見たままのことを記すことではないか。」

 伊藤律の「スパイ」説には二つあって、一つは戦前、特高の「スパイ」で、北林トモの名前を明かしたことでゾルゲ事件摘発の端緒を作ったこと、もう一つは、戦後、GHQのスパイだとされたことだ。このいずれもが、渡部富哉(社会運動研究家)による特高資料の丹念な読み込みと地道な証人の掘り起し、そして、加藤哲郎政治学者)による米国公文書館の米軍資料の発見でとどめをさされた。(渡部『偽りの烙印―伊藤律・スパイ説の崩壊』、加藤『ゾルゲ事件―覆された神話』)

 伊藤律「スパイ」説が世に知られるにあたって絶大な影響を与えたのは、松本清張の『日本の黒い霧』(文藝春秋)の「革命を売る男・伊藤律」だったが、渡部さんと淳さんらの申し入れを受けて、現在では、文藝春秋は、スパイ説を事実上否定する3ページ弱の「作品について」という断り書きをいれた改訂版を出している。

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【出版記念会の淳さん。保坂正康氏、加藤哲郎氏の講演もあり、98人が参加した】

 出版記念会の会場の明大リバティータワーに5分ほど遅れて着いたら、「こちらへ」と案内された席に私の名前が。来賓扱いではないか。恐縮していたら「一言お願いします」とマイクを持たされた。

 淳さんとのご縁は、2013年12月に放送された《父はスパイではない!〜革命家・伊藤律の名誉回復》テレメンタリー)を制作したことと、淳さんを講談社の編集者に紹介したこと。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20131209

 こういう形に結果するのにほんの少しでもプラスになったのならうれしい。

 伊藤律の家族は、これまで多くの事実を封印してきた。

 律の妻、キミさんは、1953年9月の、夫の除名発表の後、「絶縁声明」を出す。

 「私は9月21日付アカハタ発表の党中央委員会声明『伊藤律処分に関する声明』を絶対支持し、心からの憤激をもって、今後ますます強まるであろう米日反動の政策に対して闘うことを誓います」。

 そして亡くなるまで、熱心な共産党員でありつづけ、淳さん自身も共産党に入党して活動してきた。共産党から「スパイ」とされた人物の家族でありながら、その党のために活動するという複雑な人生をどう生きてきたのか、私も大きな関心があり、一気に読んだ。

 伊藤律を「スパイ」として中国共産党に監禁を依頼したのは、後に日本共産党議長になった野坂参三1955年に後の副委員長、袴田里見が「査問」したのが最後で、律への日本共産党からの接触は途絶えた。野坂や袴田らは律を中国に置いたまま帰国、家族にも律の消息を伝えていない。律は27年間、中国の監獄に入れられたままだった。耳を疑うような非人間的な仕打ちである。

 そのうえ1980年に律の生存情報が家族に届いたとき、野坂が夜、黒塗りの車2台で子分を引き連れてキミさんの家まできて帰国妨害している。忠実な共産党員だったキミさんが、野坂に抗う場面など手に汗握る場面が本書に出てくる。

 律が1990年に亡くなったあとの1992年、野坂は「スパイ」だったとして日本共産党を除名された。野坂は「残念ながら事実なので処分を認めざるを得ない」と処分を受け入れた。

 伊藤律冤罪が明らかになったいま、本物のスパイが、律に事実無根の「スパイ」の汚名を着せたことが判明したのだった。伊藤淳さんら家族からの名誉回復の要求共産党は応じていない。番組を作ったさい、私も共産党に質問項目を送ったが、律への評価を変えるつもりはないとのことだった。

 数奇な運命を生きたある一家体験談から、いまだに払拭されない日本共産党全体主義的な体質も読み取れる一冊である。

2016-07-15 南スーダンの危機に自衛隊はどうする?3

怖いニュースが続く。フランスニースで80人が死亡するテロが起きた。

1年半で3回目のテロ。この手の事件は続きそうだ。

 このニュースですっかり隠れてしまったが、南スーダンの邦人はとりあえず退避できたようだ。

 《南スーダン首都ジュバに滞在する日本人の退避に備え、航空自衛隊のC130輸送機3機が14日朝(日本時間)、近国ジブチに到着した。政府は同日中に1機をジュバに派遣し、日本人4人をジブチに待避させた。13日には国際協力機構(JICA)関係者ら計93人が民間機で、ジュバから隣国ケニア首都ナイロビに退避した。(略)

 13日にナイロビに退避したのは、JICAのほか大使館関係者ら日本人47人と、現地で日本企業の下請けとして作業に従事していたエジプト人やフィリピン人ら46人。JICAが調達した車両でジュバ空港まで移動し、民間機をチャーターしナイロビに移った。》(朝日新聞

 

 本来は、350人の自衛隊も、PKO派遣条件(停戦が合意されている)が完全に崩れているのだから退避させるべきなのだ。それを「武力紛争は発生していない」と強弁して派遣を継続する異様な事態になっている。そもそも、南スーダンでは内戦がずっと続いてきた。停戦合意と戦闘再燃を繰り返し、今では、人口の4分の1にあたる230万人が住む家を追われ避難民になっている。

 新たな法改定で、自衛隊はPKOにおいて「停戦監視」「被災民救援」だけでなく「安全確保」「駆けつけ警護」「宿営地の共同防衛」などの任務も担えるようになり、武器使用も「正当防衛」「緊急避難」だけでなく「任務遂行のため」にも認められる。  

 「もっと前に出ろ」というわけである。

 一見、国連PKOの変化に沿ったものに見えるが、これは今ある矛盾をさらに広げる。

 これまで自衛隊は、PKFの「お客さん」として最も治安のよいところで裏方の工兵部隊を担ってきたが、これからは他の国の軍隊のように「文民保護」も手がけることになる。憲法で縛られた「撃ちにくい銃」を持たされたまま、もろの「戦場」に踏み込むのだ。PKO実態をよく知る伊勢崎賢治氏(東京外語大教授)は、自衛隊から犠牲者が出るのは時間の問題だという。

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自衛隊は工兵扱いで、道路工事などが任務だが、今はこんなことはやれないでいる】

 さらに、自衛隊が発砲した場合、また自衛隊員武装勢力の「捕虜」になった場合の法的な不備も、深刻なレベルにある。日本だけが、国家として、戦時国際法・国際人道法違反に対処する法体系も軍法ももっていないからだ。 

 自衛隊は、9条で「交戦主体」になれず、「武力の行使」を禁じられている。だから、国会で追及されると「UNMISSの活動地域において武力紛争が発生しているとは考えていない」と強弁し、「武力の行使」の可能性はないことにしているのである。

 南スーダンへの次期派遣隊(12月派遣)から、新たなPKO法にもとづく新任務が課されるかもしれない。実態にも法制度にも目をつむったまま。

 

 いったん撤退し、法整備してきっちり「軍隊」として派遣するか、あるいはPKO自体に自衛隊を出さないという選択肢しかない。

 実は、国連南スーダン共和国ミッション (UNMISS) への自衛隊派遣は、2011年、民主党の野田政権のもとで決定された。

 日本では、国連の活動なら平和的なものだろうというイメージがいきわたっていること、また、幸運にも、これまで自衛隊PKOで銃を発射することがなかったこともあり、野党になった民進党なども追求が弱い。

 いつなんどき自衛隊員の血が流れるかわからない現場が南スーダンだ。PKO の現実を政治家メディアも直視すべきだ。

2016-07-14 都知事選は人気投票でいいのか

 都知事選がきょう告示された。

 宇都宮氏が降りて、野党4党が共同で推す鳥越氏、自民党都連擁立の元総務相増田氏、前自民党衆院議員小池氏の主要候補3人の争いとなった。

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【立候補の辞退を発表する宇都宮健児氏】

 都知事選2回の落選を経て、都議会の傍聴に通いつめ、一つ一つ政策を作り上げてきた宇都宮氏が、票を分散させるなという圧力のなか、立候補を辞退したのはまさに苦渋の決断だったろう。政策もなにもなく、勝てる候補に乗っかるのでは自公候補者選びと同じだと批判する宇都宮氏の言葉に同感だ。自分がスターだと勘違いしてまともに都庁にも出ない知事が続いて都政がおかしくなったのだから、今回こそ政策本位で選ぶべきなのだ。

 選挙とはベストを選ぶのではなく、「よりまし」を選ぶのだということは理解しているつもりだ。それでも程度というものがある。

 国政レベルでは東京自公野党の票数は拮抗している。保守が分裂するなか、人気・知名度抜群の鳥越氏に野党4党が乗っかるとなれば、ふつうは圧勝するだろうと思う。

 しかし、12日の立候補会見、13日の日本記者クラブでの共同記者会見、13日の「報道ステーション」などで、鳥越氏の受け答えがボロボロで、リベラル派の中からも失望の声が上がっている。慣れているはずのテレビメディアへの露出が、逆に票を減らしかねないという皮肉な事態だ。

 共同記者会見では、冒頭、最も重視する政策として鳥越氏が掲げたのが「がん検診100%」と書いたボード。これには私も驚いた。がん検診率が上がることが望ましいのは分かるが、今の都民の心にずばり訴える政策として挙げるものだろうか?

 他の3人が、宇都宮「困ったを希望に変える」、小池東京大改革」、増田「混迷に終止符」とそれなりの標語を書いたのと比べてピントはずれ感が際立った。

 会見などで熱を込めて語ったのが、

 ガンの患者でも都知事はできるんだということをみせたい・・

 これまでアウトサイダーだったが、最後に1回くらいインサイダーで責任を果たしてみたい・・

 長くない残りの人生を都政にささげたい・・

 参議院選挙とは違う結果が出ればたいへんうれしい・・

 「わたし」のことしか語っていない。都民のためにこうしたいという言い方が出てこないのである。 

 選挙戦が都民を置いてきぼりにして、今回も人気優先のイメージ選挙になっていくことを憂える。