サンプロ「サムスン疑獄」

きょうのサンプロは韓国の巨大財閥サムスンの大疑獄事件を追った特集だ。私は2週連続でサンプロのスタジオに出ることになった。
これを観た高校時代の同級生のT君がこんなメールをくれた。
《女房は隣の国、韓国に、巨大企業があることを知り、びっくりしてました。僕は新聞好きの女房がサムスンを知らなかったことに、もっとびっくりしました。》
日本は、サムスン製品が市場を席巻していないほとんど唯一の国だから知られていない。財閥の中核、サムスン電子液晶テレビ半導体などで世界シェア1位。携帯電話ではモトローラを抜いてノキアに次いで世界2位。02年にはソニー時価総額を超えた。メーカーとして純利益1兆円を超えたのはトヨタに次いで2番目というものすごい企業である。
海外の空港に着くと、待合室の大型液晶テレビ、荷物カート、巨大写真パネルとどこもサムスンの宣伝であふれている。去年フィリピンに行ったとき、サムスンはじめLG、現代など韓国企業の看板ばかりで、様変わりに驚いた。90年代には空港も街中も日本企業の大きな看板で占領されていたからだ。
サムスン財閥はこのサムスン電子を中心に59の企業を持ち、韓国輸出の2割、投資の4分の1を占める。韓国は「サムスン共和国」と言われるほどだ。
日本にも財閥があるが、今では銀行を中心にした緩やかなグループにすぎない。これに対して韓国財閥は「王朝資本主義」といわれ、オーナー一族によるトップダウンとその世襲が特徴だ。もとサムスン経営コンサルタントだった林廣茂さんは、トップダウンの決定の速さは日本企業の比ではないという。そして、カリスマ会長とその手足となって動く「戦略企画室」がグループ全体をすみずみまで支配しているという。
大統領選挙終盤の去年11月、この財閥が4600億円もの裏金をつくり、それを1200近い借名口座で運用、さらにこれを広く政官界に「モチ代」として配っていたというスキャンダルが持ち上がった。元幹部が私怨からか爆弾告発して表面化したのだが、現在影響力がある人、将来出世しそうな人、まんべんなく「モチ代」をばらまいてきたというのだ。
いま裁判中だが、借名口座の存在はサムスンも認めたが、政官界への賄賂は証拠がないとして不起訴となった。しかし、「モチ代」をばらまいた先として告発者が名指ししたなかに今の検事総長までいるし、現最高裁長官はかつてサムスン弁護団にいた人物というふうに、社会のすみずみまでサムスンの支配はおよんでいるように見える。
サムスンは今回の事件で、会長が辞任し、「戦略企画室」を解散した。世論の財閥批判も強くなっている。しかし、8月15日の恒例の恩赦についてこんなニュースがあった。
《韓国法務省は12日、日本の植民地支配から解放された光復記念日の15日に34万人余の特別恩赦を実施すると発表した。恩赦には、不正資金調達事件で6月に執行猶予5年が確定したばかりの鄭夢九(チョンモング)現代自動車グループ会長ら財閥トップも含まれ、雇用創出や経済再生を促す狙いがある。
 発表によると、財界関係者では、鄭会長のほか、SKグループの崔泰源(チェテウォン)会長、ハンファグループの金升淵(キムスンヨン)会長ら大企業の首脳クラス14人を含む74人を特別恩赦にする。
 大企業幹部の恩赦には国民から不満も出ているが、李明博(イミョンバク)大統領は12日の閣議で「恩赦を機に攻撃的な経営に出て投資を増やし、経済再生に協力してほしい」と述べた。》(毎日)
経済再生には財閥の力を借りるというのが、今の政権の方向だ。財閥に変化は期待できるのか。