日本の雇用はどうなる

takase222009-10-04

玄関灯の中にヤモリがいた。東南アジアではヤモリを見慣れていた。家の天井には常時複数のヤモリが這い回っていたものだ。そんな暮らしが長かったせいか、日本でヤモリを見るとうれしくなる。このヤモリ、微動だにせず、灯りに寄ってくる虫をじっと狙っていた。
今月2日、8月の失業率などが発表され、有効求人倍率は0.42倍と過去最低のままだった。依然として厳しい雇用情勢が続く。
去年から派遣切りの問題が表面化して、非正規雇用に焦点が当たってきた。だが、いまや事態はもっと進んで、派遣ばかりか正社員がどんどん切られている。
NECが今年1月、衝撃的な発表をした。
《今年度末までに正社員を含めグループで2万人超に及ぶ人員削減を行うと発表。削減数は国内8000人、海外1万2000人程度をそれぞれ見込み、正社員と非正規社員の割合は半々になるという》
ソニーはじめ錚々たる大企業が、軒並み大幅な人員削減計画を実行中だ。
さらに、数字には現れない「隠れた失業」がある。従業員を解雇せずに休業する企業に対して、国は「雇用調整助成金」を出している。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/a01-1.html
助成金の申請は2月以降急増し、対象者は毎月200〜250万人に達する。つまり、国からの手当がなくなれば、これだけの人数が解雇される可能性があるということになる。ちなみに対象者が最も多いのはトヨタのある愛知県だ。
http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009100201000097.html
先日、NHKスペシャルで「金融危機1年」を見て考え込んでしまった。
内容は;
アメリカではヘッジファンドが暴落した不動産を買い始めるなどマネー資本主義の復活の兆しがある一方、雇用や消費は低迷したままで、「ジョブレス・リカバリー」(雇用なき回復)といわれる状態だ。芝刈り機をヒットさせた日本の「クボタ」も、売り上げの減少に苦戦している。頼みの綱はやはり中国。社長自ら中国市場を視察したところ、現地メーカーの品質の向上ぶりに驚く。これでは価格競争に負けるのは明らか。そこで、これまで決して海外に出さなかった、エンジンなど高度技術の基幹部品を、ついに中国で生産することにした。日本に残るのは研究、開発部門と海外工場への教育機能だけになる・・》というもの。
いったい日本の産業はどうなるんだ?
実は、事態はさらに先に進んでいるという見方がある。
家電、自動車といったこれまでの花形産業の大企業、まさに日本を代表するような企業がいま、研究・開発部門まで中国、インドに出すという方向に踏み出しつつあるという。
大分前から、アメリカの大学や大学院では、チャイニーズやインド系が成績トップは占め、ITベンチャーでも頭角を現した。シリコンバレーはICばかりといわれたが、このICは集積回路ではなくインディアン(I)とチャイニーズ(C)のことだ。
母国で仕事を見つけようという人も多いから、アメリカ帰りの若手の研究者、技術者も調達できる。「日本人よりはるかに優秀で勤勉。日本に研究所はいらない」と公言する企業トップもいるという。
すると日本に何が残るのか。事業の世界展開のマネージメントをする「本社」だけである。そこに働くのはごくごく少数のエリートだけになるだろう。
今の産業構造とつぶしあいのグローバルな競争を前提にすれば、私が経営者でも同じ方向を選択せざるをえないだろう。その結果はどうなるか。
企業としては儲けを出しても、国民に働く場所を提供できないということになる。
「企業栄えて、国滅ぶ」。シュールな悪夢ではなく、これが現実になりつつあるのではないか。
(つづく)