高世仁の「諸悪莫作」日記

2016-10-31 常岡さん拘束される

常岡浩介さんがイラクで拘束されたもようだ。

きょう、フジTVの夕方のニュースを皮切りにメディアが報じ始めた。

《【カイロ時事】在イラク日本大使館は31日、イラク北部で取材中のジャーナリスト常岡浩介氏(47)を現地当局が拘束したとの情報があり、「事実関係の確認を急いでいる」と明らかにした。イラク北部では、過激派組織「イスラム国」(IS)の支配下にある要衝モスルの奪還作戦が展開されている。常岡氏は関連取材で現地を訪れていたとみられるが、拘束したのがISと戦うイラク部隊クルド人治安部隊ペシュメルガ」であれば、危害が加えられる可能性は小さい。常岡氏は中東イスラム圏での取材経験豊富なジャーナリスト。2010年にはアフガニスタン武装勢力に拉致され、約5カ月にわたって身柄を拘束された。》(2016/10/31-22:17)

私もこれ以上の情報を持っていないが、メディア各社からの問い合わせもあり、拘束までの事実関係をここに記しておく。

毎日、マメに連絡してきていた常岡さんとコンタクトが取れなくなったのは27日(木)。

「これから(クルド自治区政府の)バルザニ大統領記者会見取材するため、バーシカに向かう」とラインで知らせてきたのが彼からの最後の通信だった。日本時間の27日夕方6時半前、発信地はバルテラという、「イスラム国」から奪還した町の近く。バーシカは20日のペシュメルガの総攻撃を常岡さんが取材した場所で、いずれもモスルの東20kmほどの位置にある。

それ以降、こちらからの呼びかけに全く返信がないまま丸二日、29日(土)の夜になった。前線でも通信事情が悪いなりにラインは通じていた。スマホの紛失なら誰かのを借りて連絡できるはずだ。何か非常事態が起きたと確信した。最悪、常岡さんの死亡または重傷という事態もありうると考えた。意を決して、夜9時、イラク日本大使館に電話を入れ、常岡さんとの連絡が切れたことを通報した。以上が経緯である。

上記の時事のニュースで「現地当局が拘束した」とあるが、これが正しいとすれば、「当局」とはKRG(クルド自治区政府)に違いない。常岡さんが移動したのはペシュメルガが支配する地域だけだったからだ。

拘束の理由はまだ不明だが、拘束しているのがクルド自治区政府であるとすれば、「イスラム国」のように処刑したり身代金を要求したりすることはないだろう。最悪の事態は免れるのではないかと思いつつ、無事の連絡を待っている。

2016-10-30 拘束され、両親を失っても、私はシリアを撮り続ける

シリアでは陰惨な戦闘と住民虐殺が今も続くが、いま焦点になっている北部の町アレッポ在住の記者のコラムが現地のリアルな状況を伝えている。

AFPの記者、フォトグラファー、そしてビデオジャーナリストとして取材を続けるカラム・マスリ(Karam al-Masri)氏本人の思いをつづった文章で、はじめ英文で読んで感動し、日本語に翻訳していた矢先、邦訳が出たので、ここに紹介したい。

AFP記者コラム】拘束され、両親を失っても、私はシリアを撮り続ける

http://www.afpbb.com/articles/-/3105347

カラム・マスリ氏については冒頭、こう紹介されている。

政府軍イスラム過激派組織「イスラム国IS)」に相次いで拘束され、両親が空爆で死亡し、生まれ故郷の街が包囲され、空腹と爆撃に耐える日々。そうした中でも、彼はひるむことのない勇気をもって、自分が育ったアレッポの街の荒廃した姿を取材し続けている。》

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シリアアレッポで、政府軍とロシア軍による空爆で負傷し治療を受ける少年(2016年9月24日撮影)。(c)AFP/Karam al-Masri】

2011年シリアで革命が始まる前、私の人生はとてもシンプルだった。私はアレッポ大学(Aleppo University)で法律を学んでいた。でも今、私はすべてを失ってしまった。両親も大学も失った。一人っ子だった私が最も恋しいのは家族、父と母、特に母のことだ。母のことは毎日思い出し、夢も見る。今でも母を失ったことを思うと心が痛い。私は今、1人で生きている。誰もいない。友人もほとんどはいなくなってしまった。亡くなったか、亡命してしまった。》

と始まるコラムを読みながら、「ひどいな」、「えらいな」、「すごいな」とため息が出てきて、シリアの現実の残酷さ、さらには人間の気高さに心をゆさぶられた。

国際社会は、シリア問題を最優先課題として取り組むべきである。

2016-10-29 気候変動問題の幻想

きのう用事で新橋で降りたら物産展をやっていて山形からの店舗が三つほど出ていた。

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舟形町の店が大釜で芋煮を炊いて玉コンニャクと一緒に売り出していた。ああ、芋煮会のシーズンだなあ。

いまは全国的に知られるようになったが、山形県ではこの時期、学校総出で河原などに行って里芋を煮て食べるのが恒例の行事になっている。

時間がなかったので芋煮は遠慮して、鶴岡の「JAたがわ」の店で庄内柿を買ってきた。家で食べたら、うまい!

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最近、新聞紙上で印象に残った評論から。

クルーグマンコラム「米大統領選の争点 気候問題 なぜ無視するのか」(朝日新聞)。クルーグマンは08年にノーベル経済学賞の受賞者で、最近は精力的にトランプ批判を行っているhttp://d.hatena.ne.jp/takase22/20160312

むかしワシントンDCの駅でお茶を飲んだことがあるのと、同い年というので親しみを感じ、彼の評論はたいてい読むようにしているhttp://d.hatena.ne.jp/takase22/20090401

米国の2大政党は数々の争点で対立しているが、気候変動ほど意見の隔たりが大きく、かつ重要な意味を持つものはない。」

クルーグマンオバマ政権環境政策「グリーンエネルギー改革」を高く評価してこう言う。

クリントン氏が勝てば、国内のクリーンエネルギー政策と国際交渉とを組み合わせたオバマ政権の路線を引き継ぐだろう。気候変動が気候の大惨事へと変わる前に、温室効果ガスの排出を調整するという、いくらかの望みはつないでくれるワンツー・パンチである。もしトランプ氏が勝てば、気候の大惨事はほぼ避けられないだろう。『地球温暖化は、科学者たちの大がかりで国際的な陰謀によるでっちあげだ』とする被害妄想にとらわれた政策が公式に採用されるからだ。」

そしてクルーグマンはこの争点が重視されていない現状にいらだち、批判している。

「これは単に意見の違いがあるというだけでなく、おそらく、ほかのどんな政策における見解の相違よりも、未来に大きく影響する。にもかかわらず、この問題をあまり耳にしないのはどうしてなのか?」

「率直に言って、これほど重要な問題は他にない。そしてこの問題を放置するならば、それは犯罪と同じくらいに無責任なことなのだ。」

クルーグマンが、ここまで気候変動に悲観的で、最重要の争点として指摘するのは、日本人の我々にとっては意外だろうが、実はこれはいわばグローバルスタンダード、世界のごく常識的な識者の見方である。ひるがえって日本はというと、もっとひどくて、選挙気候変動が重点政策としてかかげられることはめったにない。

日本では、温暖化を否定するか、これに疑問を呈する言説が非常に多くメディアに登場することもあって、気候問題への関心は先進国としては異常に低い。多くの人が現状を誤解している。

おそらく漠然とこう思っている人が多いのではないか。「気候変動の問題で世界の足を引っ張っているのは中国で、日本は非常に進んだ対策を採っている」と。これは全くの幻想である。

先月3日、米中両政府は、昨年12月の第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された温暖化対策「パリ協定」を批准した。これで協定の発効にはずみがつくと高く評価された。

協定は55カ国以上が批准し、その温暖化ガス排出量が全体の55%に達する必要があるが、9月中に米中など61カ国が批准を完了。インドも今月2日批准、欧州連合(EU)も批准予定。これで「パリ協定」は11月4日に発効することが決まった。それなのに、日本の批准はまだもたつく。発効後は詳細なルール作りに入るが、日本は完全に出遅れてそれに参加できないだろう。

アメリカ中国における近年の再生可能エネルギーの伸びはすさまじいものがあり、認めたくないかもしれないが、実態でも日本はすでに温暖化政策ではかなりの後進国なのだ。

環境問題景気対策と矛盾するとこれまで考えられてきたが、気候変動対策は巨大な市場がある。どの国も、エネルギ―関連技術をはやく開発して成長産業に育てるべく必死である。

ここで出遅れることは、地球環境への責任においてだけでなく、最有力の成長分野で後塵を拝することにつながる。

2016-10-27 ペンは剣よりも・・・

お前のブログに「節気」とか「候」とか出てくるけど何なの、と質問されるので、ちょっと説明しておこう。

二十四節気」とは。一年を24分割して、立春立夏立秋立冬を区切りに四つの季節を設定。それぞれの季節を六節気に分けて季節の指標にしたもの。

「七十二候」は日本独自に発達した暦で、一つの節気をさらに5日ごとに「初候」「次候」「末候」と三つに分けたもの。それぞれを「霜始降」(しも、はじめてふる)などと季節の特徴を短い言葉で表す。人々はこうした暦を農作業や暮らしの目安にしてきたという。日本人の感性をなぞりたいので、なるべく意識するようにしている。

さて、今は神無月で節気は「霜降」(そうこう)。霜が降り始め、冬の到来を感じるようになる。

この時期は中秋の名月十五夜)と旧暦9月13日の十三夜の名月と夜空の二大イベントがあるという。十三夜は、恥ずかしながら知らなかった。そういえば、いま毎日通勤途中に口ずさんでいる井上陽水名曲神無月にかこまれて』の冒頭が「人恋しと泣けば十三夜」だった。どちらかの月を見逃すのは「片見月」(かたみづき)といって野暮とされたそうな。また、この二つの月見は、男女が一緒に見る約束をする恋のイベントだったともいう。古き日本、いいですねえ。

さて、いまは霜降の初候で、さっき出た「霜始降」、明日28日からが次候の「霎時施」(こさめ、ときどきふる)。通り雨(時雨)が多くなる季節とされる。末候「楓蔦黄」(もみじ、つた、きばむ)が11月2日から。今年はどこかに紅葉狩りに行きたいな。

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朝日新聞1面の「折々のことば」は毎日切り抜いている人も多い人気コラムだが、24日の「ペンは剣よりも強し」The pen is mightier than the sword.の発祥は意外だった。

英国政治家小説家戯曲リシュリュー」の中のせりふ。ただし「偉大なる人物の統治下では」との条件がつく。つまりそれは、いかなる抵抗勢力といえども統治者の令状一枚で潰せるという意味だった。その意味が反転して、権力に屈しない言論の精神をうたうことばになった。その意味が元に戻ってはいないか。この自己検証に堪えてこそのジャーナリズムである。》

17世紀フランス宰相リシュリューは、部下の軍人が自分を暗殺する計画を立てていることを知り、これに対して、署名すれば発効する令状で潰せると語るシーンが戯曲にあるという。

知らなかった。「文は武に優る」と単純に思っていた。

それはそれとして、最後のジャーナリズムへの警告はそのとおりだ。

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先週、先々週と、2週つづけてAbemaTVで、尊敬するリポーター歴30年の所太郎さんと拉致問題を語り合ったが、待ち時間、雑談で所さんが、最近のマスコミ記者の仕事の質が大きく変わったといった。「昔は自分で情報を採ってきて警察に『当てた』もんです、今の記者は、もう『朝駆け夜討ち』なんてせずに、警察からの情報提供を口開けて待っていますもの。これじゃ、権力へのチェックも何もできませんよ」。

所さんのような歴戦の取材者にもっとがんばってほしいものだ。

2016-10-26 PKO部隊が駆け付け警護を拒否する南スーダン

常岡浩介さんのモスル奪還作戦の戦場リポートを見逃した方は、Youtubeでご覧ください。番組開始から28分あたりで始まります。https://www.youtube.com/watch?v=YSwr_ehcln0

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きのう常岡浩介さんが世話になっていたフィクサーが負傷したと書いたが、彼はすぐに戦場取材に復帰したという。

常岡さんのFBより。

《今回、ぼくの取材許可を取ってくれた超敏腕フィクサのユーヌスは、戦場でぼくより先に進んで、額を撃たれた。でも、翌々日には包帯巻いて戦場に戻っていた。典型的なクルドの男だ。》 http://fb.me/8f8JMRet6

ユーヌス氏の写真が別のサイトにのっている。

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フィクサーと日本語でいうと、闇商売みたいな印象になるが、取材の調整、アレンジを行う、戦場取材にはなくてはならない人たちだ。ユーヌス氏はとても優秀なフィクサーで、複数のメディアをかけもちで世話しているという。自分の身の危険もあり、大変な仕事である。

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南スーダンで7月、政府軍NGOが襲われて、殺害、暴行、略奪が行われたことを先日紹介した。

http://d.hatena.ne.jp/takase22/20161012

このとき、援助要請にもとづき駆けつけるべきPKO部隊が出動していなかったことがわかった。

《【ヨハネスブルク=共同】南スーダン首都ジュバの民間宿泊施設が七月に襲撃された際、出動命令が下されたにもかかわらず、国連平和維持活動(PKO)の南スーダン派遣団(UNMISS)が出動しなかったことが分かった。部隊の一部が危険な現場の状況を懸念したとみられる。国際社会非難の声が上がり、国連潘基文(バンキムン)事務総長は経緯を調査する考えを表明した。

 市民保護を最重要任務とするUNMISSには陸上自衛隊も参加しており、新任務「駆け付け警護」が付与された場合、対象となり得る案件。新任務に高い危険が伴う可能性を物語るとともに、出動の判断も国際社会の厳しい目にさらされることになりそうだ。

 襲撃されたのはUNMISS司令部から約一キロの宿泊施設。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチによると、国際機関職員ら約五十人が滞在していた。

 政府軍兵士らが地元記者を殺害し、外国人の女性らを暴行。数時間にわたり略奪を続けた。現場から電話で国連に救助要請があったが、UNMISSは部隊派遣しなかった。

 米国非政府組織(NGO)「紛争市民センター」は報告書で「UNMISS内部で出動命令が下されたが、中国エチオピア部隊が出動を拒んだ」と指摘。中国部隊は準備が整っていないことを理由に挙げたが、施設に向かう途中にも戦車や数百人の政府軍兵士がいたため、出動は危険と判断したもようだ。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは二十五日「市民が殺されるのを傍観した」とUNMISSの失態を非難した。

 南スーダン政府はUNMISSが反政府側を支援しているとの疑念を持っている。このため、UNMISSは政府から活動を妨害されており、これが失態の遠因になったとの見方もある。》

現地はそれだけ危ないのである。国際機関を襲っているのが政府軍となれば、本格的な戦闘になり、こちらがやられる可能性もある。出動命令を受けた中国エチオピア部隊の腰が引けたのも当然だ。

出動しなかったことを批判された国連としては、今後はビビらないでちゃんと戦うように、と指示することになるだろう。つまり、もっと積極的に戦えと。

一方、政府派遣継続に関する基本的な考え方」という文書をきのう発表した。

冒頭の「情勢」で、《治安情勢は、きわめて厳しい》《邦人に対して、首都ジュバを含め、南スーダン全土に「退避勧告」を出している。これは、最も厳しいレベル四の措置であり、治安情勢が厳しいことは十分承知している》と書きながら、とんでもない屁理屈が書き連ねてある。

《PKO参加五原則については、憲法に合致した活動であることを担保するものである。この場合、議論すべきは、我が国における、法的な意味における「武力紛争」が発生しているか、であり、具体的には「国家又は国家に準ずる組織の間で行われるものである戦闘行為」が発生しているかである。》

南スーダンの治安状況は極めて悪く、多くの市民が殺傷される事態が度々生じているが、武力紛争の当事者(紛争当事者)となり得る「国家に準ずる組織」は存在しておらず、当該事態は「戦闘行為」が発生したと評価し得るものではない

また、我が国における、法的な意味における「武力紛争」が発生したとは考えていない。》

《今後も、南スーダンにおいて武力衝突」の発生は十分に予想されるが、PKO参加五原則は、引き続き、維持されるものと考えている。》

南スーダンでは、大統領派と副大統領派と政府軍が二派に分かれて戦っている。これを「国家に準ずる組織」でないと強弁するのである。PKO原則が維持されるという結論ありきなのだから、どんなにひどい事態になっても「戦闘」ではなく「衝突」だということになってしまう。

Http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201610/__icsFiles/afieldfile/2016/10/25/20161025shiryou.pdf

かつて(2004年)、イラク全土に非常事態宣言が出され、米軍ファルージャ武装勢力に大規模攻勢を続けていたころ、小泉首相が、イラク復興支援特措法が定める「非戦闘地域」の定義について「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」と言い放ったのを思い出す。

2016-10-25 フィクサー負傷―そこは戦場だった

カンボジアで伝統の絹絣(きぬがすり)の復興に取り組み、織物の村「伝統の森」を作った森本喜久男さんのフェイスブックより。https://www.facebook.com/kikuo.morimoto?fref=ts

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クメール語でプレアプムと呼ぶ土地の神様を、伝統の森の繁栄を願いわたしの家の前に奉納した。全ての出来事に感謝。》(10月21日)

元気そうでよかった。

カンボジアのどこに行っても見かける土地神の祠プレアプム。これまで村にはなかったという。右から2番目が村長のトウルさん。うれしそうだ。こういう写真を見ると、ほっとする。また村に行きたいなあ。

この村には年間2000人くらいの見学者が訪れる。ウォシュレットがないと用が足せないような日本の若者たちもたくさんやってきて、電気のない暮らしを体験し、文化ショックを受けて帰っていくという。「幸せって何だろう」と自問しながら。

11月13日に、京都法然院で村の織物の展示即売会と森本さんの講演が予定されている。会いに行こう。

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常岡浩介さんのツイッターより。

《ぼくと同じ日、同じ場所で取材してた自由ラジオ欧州の特派記者が重傷を負った:

RFE/RL Correspondent Injured On Front Lines In Iraq》

《この日は、ぼくの取材許可の手続きをしてくれた有能なフィクサーもバーシカで撃たれてケガをしたし、ペシュメルガは死傷者だらけだったし、ぼくが一緒にいた義勇兵も足を撃たれたし、やはり危なかったみたい。》

http://twitter.com/shamilsh/status/790719785290100736

この日とは、ペシュメルガが総攻撃を始めた20日(報道ステーションで紹介された映像が撮られた日)。常岡さんから、彼のフィクサーの一人がISの狙撃手に撃たれたとの知らせが入った。

フィクサーのY氏が額を撃たれて、すぐアルビル(クルド自治区の中心都市)に搬送されました」。

常岡さん自身は大丈夫なのか。銭勘定から一気に命の心配へと立ちかえさせられる。やはり、そこは戦場だった。常岡さんが死亡するか重傷を負うかしたら、どうやって迎えに行こうかなと飛行ルートが頭をよぎったりする。

ここ2〜3日、常岡さんはいったん後方に下がって、映像を送ってきたり、ラジオ番組に出たりしているが、モスル奪還作戦は進行中で、激戦が続いているという。明日からどうするか、先ほど打ち合わせをした。帰国までの無事を祈る。

2016-10-24 モスル奪還作戦からの戦場リポート

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コスモス。宇宙という意味のcosmos(ギリシャ語のKosmos)と同じ。すごい名前だが、なぜなのだろう。

横田めぐみさんを思って、お母さんの早紀江さんが「コスモスの花のように」という歌を作った。その中にはこんな歌詞がある。

遠い空の向こうにいる

めぐみちゃん あなたも

お母さんが育てたあのコスモスのように

地に足をふんばって生きているのねきっと

しっかりと頭を揚げて生きているのねきっと」

もう少しで、めぐみさんが拉致された11月がやってくる。早紀江さんは、めぐみさんの失踪を思い出させる秋がきらいだという。

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いま、イラクでは政府軍クルド勢力、有志連合が「イスラム国」の拠点モスルを総攻撃している。ジャーナリスト常岡浩介さんが、20日、クルド人軍隊ペシュメルガの攻撃開始を取材した。今夜の報道ステーションで短くではあったが彼の戦場リポートが放送された。

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私がプロデュースした形だが、戦場取材リスクが高く、いつも悩む。リスクというのは身の安全だけでなく、採算が合うかという経済的な意味でもある。こうした取材は、何かあると責任問題が生じるから、テレビ局が事前に発注してくれないのだ。となると、こっちのオウンリスクで行くしかない。苦労して取材しても売れなかったら、航空券代はじめ全経費が赤字となってしまう。

みなさんは、戦場では、パンでもかじって、寝袋で寝てるから金なんかいらないと思っているかもしれないが、実は、現代における戦場取材には非常にお金がかかる。例えば、取材許可をタイミングよく事前に取る作業。これにはコネのある人脈を頼らねばならない。ここで活躍するのが「フィクサー」と呼ばれる戦場取材のコーディネーターたちだ。

移動するのに軍用車両に乗せてもらうわけにはいかない。自前で車と運転手も確保する必要がある。今回の作戦は世界中で注目されており、ペシュメルガの前線基地だけで数十人のジャーナリストが開戦を取材しようと駆けつけている。フィクサーも奪い合いだ。もちろん車両費も、近くの町でふつうに車とドライバーを借り上げるのとは全く違った金額設定になる。フィクサーの確保と値段交渉は、ジャーナリストにとって取材前の闘いである。

一日何ドルかかるか分かると、滞在日数を掛け算すれば滞在コストが出てくる。その数字を見ていると、「納得できる映像が撮れるまでねばってがんばる」などと言っていられなくなる。

プロデュースする立場の私としては、どんな取材をすれば売れるのか、またどのくらいコストをかけていいのか、つまりお金のインとアウトを天秤にかけて現地の常岡さんと調整しなければならない。

こんなことを書くと、なんだ普通の商売人と同じじゃないか、と言われそうだが、実際そうなのである。私も常岡さんも、趣味や遊びで、あるいは崇高な使命感だけでやっているわけではない。仕事としてこれで食っていこうとしているのだ。

これからしばらく、商業ジャーナリズムに生きる我々の「黒字をめざす闘い」はつづく。

2016-10-17 天皇のご意志は「普通の」天皇制

天皇生前退位に関する政府有識者会議がきょう初会合を開いた。

実は、すでに6年前、天皇は80歳をめどに生前退位したいとの意向宮内庁参与会議で示していた。2010年7月、御所に、当時の宮内庁長官侍従長、3人の参与などが集まって開かれた「参与会議」の席で、天皇が突然、「生前退位」の意向を明らかにしたという。

その場にいた、去年まで9年間「参与」を務めた三谷太一郎氏(東大名誉教授)がこう語っている。

天皇陛下は『譲位』という言葉を使われた。中世とか近世の『上皇』を持ち出して、『天皇制の長い歴史において、異例のこととは思われない』とも述べられた。そうした意向を初めて直接伺って、大変驚がくしたというのが率直な印象でした」NHKニュース)。

天皇の真意については、様々な解釈が出まわっているが、この三谷氏の証言で、私は天皇が、天皇制を「従来の」、別の表現を使えば「普通の」天皇制にしたいと考えているのではないかと思った。「従来の」「普通の」というのは、明治維新によって「異様な」形にされる前までの伝統的な天皇のあり方、という意味だ。であれば、「譲位」、「上皇」だけでなく当然「女帝」も認めればよい。明治期から終戦までの天皇制が、日本史においては伝統から逸脱した特殊なものであったと相対化することから今後のあり方の議論を進めてほしい。

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きのう、枝元なほみさんに触れたが、『ビッグイシュー』の宣伝をかねて、さらに紹介してみたい。

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私がこの雑誌で好きなコーナーに、枝元さんが登場する「世界一あたたかい人生レシピ」がある。このページは上段が、読者の悩みにホームレスが答える「ホームレス人生相談」で、それを受ける形で下段に「枝元なほみの悩みに効く料理」があるという構成になっている。ある号では;

ホームレス人生相談

Q:結婚して16年。結婚してからずっと夫の仕事の手伝いをしています。つまり、家でも職場でもずっと一緒。夫は良くも悪くもマイペースで、少し自己中心的。私一人の時間をなかなかつくろうとしてくれません。仲は悪いわけではないのですが、いつも一緒だと息が詰まります。(49歳/女性)

《答:仕事もして家事もして、さらにお連れ合いとずっと一緒・・・。彼がどんなに優しい人だって、四六時中ずっと一緒だったら、ケンカしてなくても、しんどくなってしまうよね。

 僕はもともと両親と姉二人の5人家族。1歳上の姉とは歳が近いこともあって、もの心ついた頃からケンカばっかりだった。さらに6歳上の姉まで加勢して、僕をいじめるんです。時にはモノまで投げつけてくる。そのせいで、僕は今も女性が恐いんですよ・・・(笑)。

 ある日、亡くなった祖父が飼っていた犬が我が家にやって来た。で、その犬が、僕の大切にしていた本をかじってバラバラにしちゃった。でもね、「犬だから仕方ないや」と、まったく腹が立たなかった。もしこれが姉のしたことだったら、僕は怒り狂ってたはず(笑)。

 その時にふと気づいたのは、姉には優しくしてほしいと期待するからこそ腹が立ってたということ。だからそれ以降は姉に何かされても、「これは犬がしたこと」と思うようにしたらストレスが減りました(笑)。もちろん根本的な解決じゃないんだけど、今の状況や相手の性格を急に変えるのは簡単じゃないですもん。毎日のことだからこそ、そんな発想も必要だと思うんです。しんどくなりそうな時は、失礼ながら、お連れ合いのことをクマとかウサギとか好きな動物にたとえてみたら、「じゃあ、仕方がないか!」って笑って流せることがあるかもしれません。

 そしてやっぱり、人間誰だって一人になる時間は必要です。僕も一人の時間と、お客さんやスタッフと話す時間、どちらもあるからどちらも楽しい。ぜひお連れ合いに「私も一人の時間がほしいし、あなたも一人の時間をつくってね」と提案して、お互いにリフレッシュしてさらに仲良しご夫婦でいてくださいね。(大阪淀屋橋/Iさん)》

 ホームレスの人が、家族持ちの読者に「さらに仲良しご夫婦でいてくださいね」とエールを送っているのである。懐の深い答にじんとくる。

 で、この人生相談を受けて、枝元さんの「悩みに効く料理」が下段に続く。この日のレシピは「作り置き肉みそ」。

《私の料理の心の師匠は、背筋のとおった明治生まれでした。その師匠がある時、「台所は女がひとりになれる場所」と言いました。昭和生まれの私は、女だけが料理しなくちゃいけないの?とちょっと疑問に思ったりもしましたが、でも料理をしながらいろいろ考えたりして、確かに自分だけの時間を持てる大好きな場所だと気がつきました。

 おまけに旦那さんに料理を作り置けば、気楽に出かけることもできるかも。さあ、どうぞキッチンへ!》

 このページで確実に心があたたかくなる。

最後に宣伝。『ビッグイシュー』は毎月1日と15日が発売日なので、そのあたりに大きな駅で乗り降りすることがあれば、駅前周辺を見回してみてください。雑誌を手にかかげた売り子がいるかもしれません。定価350円のうち180円が売り子に還元され、自立のための資金になります。中身も素晴らしい雑誌なので、ぜひお求めください。

2016-10-16 「頭で食べる」のをやめよう

夜、空を見上げると満月

このところ雲が多く、久しぶりに見る月だ。

11日のEテレSWITCH インタビュー達人達」は料理研究家の枝元なほみさんとノンフィクション作家で探検家の高野秀行さんで、とても面白かった。高野さんは『謎の独立国家 ソマリランド』など多くの辺境にかんする著作があり、昔、ミャンマー中国国境のワ族の取材をしていたころ、バンコクで会ったことがある。番組で彼が語ったことは、すぐれた文明評論としてうなってしまった。また、枝元なほみさんの今の日本の「食」についてのコメントは、私がつねづね感じていた疑問をずばりと指摘し、胸がすく思いがした。

資本主義はとにかくモノを売らないといけないから、不必要なものを消費者に「必要だ」と思うようにさせる。「フツー」のものではダメで、次々に新たな工夫をこらしたモノを買いなさいと洗脳する。グルメと長寿・健康の情報をひっきりなしに浴び続けている私たちである。以下は、「食はもっと野蛮なもの」と主張する枝元さんの番組での言葉である。

「私たちは頭で食べている。お金が高いとか安いとか、有名だとか有名じゃないとか、名だたる料理人のものだとかそうでないとか。(略)

(普通の料理を)なにか特別なもの、頭の中で考えた付加価値みたいになっちゃって。あと栄養とか、ダイエットしたいとか。そういう呪縛みたいなものから解き放たれたいんですよ。私たちはほんとにガンジガラメになっちゃってる気がするから。もっと大らかなところ、大らかな力に引き戻したい。」

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もっと野蛮でいい、か。いいですね。私は、枝元さんが『ビッグイシュー』に毎号登場するので知るようになった。なぜホームレス支援の雑誌に料理コーナーがあるのかと思っていたのだが、実は、彼女、「ビッグイシュー基金」の理事を務めているという。また、形が悪いなどの理由で捨てられてしまう野菜を流通に乗せる活動や、東日本大震災被災者への支援なども行っている行動派である。

枝元さんは若い頃、劇団に所属していて、そのまかないをやったことから料理の道に入ったそうで、学校や師匠に学んだり特別なトレーニングを積んだりしたことがないという。つねに普通の台所に立つ人の目線に立つのはそんな経歴も影響しているかもしれない。

「『食べる』と『生きる』がくっついている。専門的な、磨いていく、道を究めていく料理じゃなくて、『道ない!』っていうところでやりたいことが家庭料理だから。暮らしの中で普通にある料理をしたい。どういう暮らしの中で料理を作るかを想像する。暮らしている人とつながりたいなら等身大の自分をちゃんともっていく。」

(かたちの悪い野菜が大量に捨てられることについて)

ミスユニバースみたいな野菜ばかりが売れていて、どうしてブスじゃいけないんですか?その良さを見ないと、バチ当たるんじゃない。(野菜を)作ってくれる人にリスペクトを持ちつつ、料理を台所で作る私たちがつながっていける、ともに支えあう。」

「食べていく力、生きていく力みたいなもの、取り戻そう日本人! アハハ」

ミスユニバースみたいな野菜」には笑った。

枝元さんは、いつも笑顔でやさしい言葉で語るが、ラディカルに物事をとらえている人だ。今の社会の病巣を食という視点でみごとに突いて、いちいち頷かされた。

2016-10-15 拉致被害者が帰国して14年

公園で見かけた千日紅。

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白やピンクや赤の花と見えるところは、苞(ほう)だそうだ。苞というのは、花のすぐ下にある葉の変形したもの。夏を過ぎてもずっと咲き続けている。

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今朝テレビを見ていたら、高名な政治評論家がタイの国王逝去を評するなかで、「欧米では王制は民主主義に反するとされているが」云々と言っていた。いや、そんなことはないだろう。

エコノミスト』が毎年発表する民主主義ランキングで「フル・デモクラシー(完全な民主主義)」という最高ランクに属する国が20カ国あるが、ノルウェースエーデンデンマークオランダルクセンブルク英国といった君主制の国が勢ぞろいしている。

なお、日本はこの20には入らず、その下の「フロード(欠陥ある)デモクラシー」のグループに入れられ、韓国よりも下にランクされている。血圧の高い人は見ないように。

http://www.yabiladi.com/img/content/EIU-Democracy-Index-2015.pdf

というわけで、少なくとも欧州では「君主制が非民主的」などと思われてはいない。もちろん、サウジアラビアあたりの王制がオランダの王制と内実がまったく異なるのはいうまでもない。同じ共和制でも、北朝鮮韓国の政治実態がかけ離れているように、政体そのものよりも、中身が問題なのだ。

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きょう10月15日は、14年前の2002年に、5人の拉致被害者北朝鮮から24年ぶりに日本に戻ってきた日だ。

最近、拉致問題とご縁がある。

先週土曜日の8日は「大阪ブルーリボンの会」主催の「大阪府民の集い」で講演してきた。

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いま、拉致をめぐる事態が全く動かないように見える。北朝鮮にかんするニュースは核・ミサイル一色になっている。何を話すか迷ったが、原点に戻って、そもそも拉致問題とは何か、拉致されることがいかに残酷なことか、どこまで運動は進んできたのかという、そもそも論を話した。

集会では、飯塚繁雄さん、飯塚耕一郎さん(田口八重子さんの息子)、有本明弘さん(恵子さんのお父さん)、福山晴海さん(特定失踪者、ちあきさんのお母さん)が、政府に、拉致問題解決を、核・ミサイルの話とは切り離して進めてくれるよう訴えた。

Http://osaka-blueribbon.org/

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連休初日にもかかわらず400人もの参加者があり、集会のあと200人が御堂筋デモ行進した。それにしても、拉致問題は時間があまりにもたちすぎた。田口八重子さんは、耕一郎さんを産んだ翌年(1978年)に拉致されているが、耕一郎さんはいま39歳。彼は記憶にない母親を「お母さん」ではなく「八重子さん」と呼ぶ。演壇で、耕一郎さんが「八重子さん」という名を言うたびに痛ましく感じた。

f:id:takase22:20161008151135j:image:w250【右から2人目の一番小さい赤ちゃんが耕一郎さん、左端が八重子さん】

おととい13日(木)は、Abema PrimeというネットTVの『所太郎の今だから言える“真実”』というコーナー(夜10時から)のスタジオで、拉致問題を語る機会があった。スタジオには20歳前後のゲストが4〜5人いて、彼らの質問にも答えたが、いかに若い世代拉致問題が浸透していないことに驚いた。ただ、私たちの説明には非常に高い関心を示して、一刻も早く救出しなければと強く思うと語っていた。もっと啓蒙しなくては。

AbemaTVアベマTV)とは、サイバーエージョンとテレビ朝日が出資して今年4月に開局したインターネットテレビで、20以上のチャンネルをもち、24時間放送している。

今回は主に、横田めぐみさんを中心に語り、次回(20日)もやはりスタジオ出演して、寺越武志さんのケースを取り上げる。

帰国した拉致被害者蓮池薫さんは、拉致によって「夢」と「絆」を奪われたという。いまだにそれを奪われたままで帰国できないでいる被害者たちに思いを馳せたい。

2016-10-14 タイ国王の死を悼む

タイのプミポン国王が88歳で亡くなった。

タイは、21世紀になってもクーデターが起きる国である。実は、いまもタイは、2014年クーデターでできた軍事政権が続いている。しかし、立法行政司法が混乱をきたしても根底で国民の心の支えになってきたのは、王室の存在だった。いわば国の重し、あるいはつっかい棒が国王だった。私はタイに長く滞在するうち、この国の発展段階は、国王をどうしても必要とすると肌で感じるようになった。

問題は次の国王だ。王位継承者、ワチラロンコン王子(64歳)は素行の悪さで知られ、今年もドイツを訪問したさいの写真が欧州のネットに出て、騒ぎになったばかりだ。

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空港の赤じゅうたんに降り立ったのは、何とも形容しがたい格好の王子と愛人の一人、そしてプードル。8月にタイに行ったとき、友人から、みなひそひそ話でこのスキャンダルを噂し合っていると聞いた。

 タイ政府はこの写真が捏造であるとし、言論弾圧事件も起きている。

《【バンコク時事】タイ警察は22日、英国人記者がソーシャルメディア上で共有したワチラロンコン皇太子(63)のものとされる写真をめぐり、記者のタイ人妻の身柄を拘束した。警察は不敬罪など違法行為に当たる疑いがあるとみて事情聴取した結果、妻は無関係と判断し数時間後に釈放した。

 問題とされているのはドイツ大衆紙ビルトが最近ウェブサイトに記事と共に掲載した写真。元ロイター通信記者でタイ王室に批判的な著作で知られるアンドルー・マクレガー・マーシャル氏が21日、フェイスブックなどで共有していた。地元メディアなどによると、タイ警察は22日、写真が「改ざんされていた」と主張、首都バンコクの実家にいた妻を連行した。

 マーシャル氏はフェイスブックを通じ「私と結婚しているという理由だけで無実の女性に嫌がらせをしている」とタイ当局を批判。妻の釈放を訴えていた。》(2016/07/22-20:24)

 

捏造改竄かどうかはさておき、この手の王子の素行の悪さは知れ渡っているから、国民はこの写真が本物であると思っている。

反対に次女のシリントーン王女は絶大な人気を誇り、どんな田舎に行っても家々に王女の肖像やカレンダーが飾ってある。実は、彼女にも王位継承権がある。国民の圧倒的多数は王女の即位を願っているはずだ。即位をめぐっての混乱があるかもしれない。

日本の新聞も識者を引用しながら、遠慮がちに指摘する。

《【岩佐淳士バンコク西脇真一】タイは14日、プミポン国王(88)の死去を受け1年間の服喪期間に入った。長男のワチラロンコン皇太子(64)に王位が継承される方針が速やかに示され、国内に混乱は起きていない。だが、皇太子が国王としてどのような治世を行うかは不透明で、人々は王位継承をめぐる動きを固唾(かたず)をのんで見守っている。

 プラユット暫定首相は13日夜、テレビ演説皇太子即位すると明らかにした。2014年のクーデター後に制定された暫定憲法によると、内閣の通知を受けた暫定議会議長が議会を招集し、皇太子即位を要請。その後、国民に公示する手順になっている。

 軍政は、皇太子への王位継承をにらんだとみられる動きを進めてきた。皇太子は昨年、国王とシリキット王妃(84)の誕生日を祝う2度のサイクリングのイベントを実施することで、国民に対し存在感をアピール、プラユット氏らも参加して協力した。

 ただ、プラユット氏は皇太子拝謁後、記者団に皇太子が「国民と共に哀悼する時間を持ちたい」と、即位を遅らせるよう求めたと述べた。チュラロンコン大のチャイワット・カムチュー教授は「悲しみに暮れる国民の感情に反することになるので、王位継承を急がず、時間を置くのはよい判断だ」と話す。

 しかし、王位継承をめぐっては国民に人気の高い次女のシリントン王女(61)を推す声もあったとされる。軍、政府内部は一枚岩とは言えず、別の政治学者は「『シリントン派』を警戒する皇太子周辺にとって王位継承まで空白期間が生じるのは得策ではないはずで、意図が読めない」と言う。憲法では、即位要請などがなされていない間は枢密院議長が暫定摂政を務めることになっている。

 ワチラロンコン皇太子は1952年にバンコクで生まれた。英国の高校、豪州陸軍大学を卒業し、75年に陸軍情報局の軍人として公職に就いた。90年11月に天皇陛下即位の礼が行われた際に来日したこともある。ただ、海外に滞在することが多く、王室関係の行事ではシリントン王女の方が存在感を示してきた。皇太子は3度離婚し、女性スキャンダルが伝えられたこともある。

 タイ政治に詳しい浅見靖仁・法政大教授は「王位継承めぐり水面下で何が行われているのかが見えづらく、皇太子が国王としてどう振る舞うかも未知数だ。王室をよりどころにした『国体』が揺らげば、現軍政不安定化したり、経済に悪影響が及んだりする恐れもある」と指摘する。》(毎日新聞)/span>

テレビで、多くのタイ国民が泣いている様子を見たが、その涙には、信頼する国王の死への悲しみとともに、「これからこの国はどうなってしまうんだろう」という大きな不安が入り混じっているのではないかと想像した。

タイは私が7年にわたって住んだ第二の故郷で、行く末を心配している。

2016-10-12 「安全」と言いたいための視察なり

今朝の朝日川柳より

オバマ氏に三期やらせてみたくなり (神奈川県 石井 彰)

 近年、ヒラリーの面相がどんどん悪くなって、権力欲むき出しの「ドヤ顔」には辟易させられるが、それでも、トランプが大統領になるのだけは勘弁してもらいたい。

 人格的に失格なのは当然として、日米関係はじめ、彼の言う政策はいわゆる「床屋談義」レベルにも及ばない支離滅裂なもの。

 例えば対シリア政策について、アサド政権ロシアを支援すると明言している。米国ロシアとともにアサド政権を支える事態など想像したくない。

「安全」と言いたいための視察なり 東京都 三神玲子)

 稲田朋美防衛相は8日、南スーダン首都をわずか7時間視察して「(治安が)落ち着いていることを目で見ることができた」。安全だというためのアリバイ視察。実は、稲田氏が首都ジュバを視察した同じ8日、ジュバから100キロ離れた幹線道路を走っていたトラックが武装グループに襲撃され、乗っていた市民など21人が殺害されるという事件が起きている。

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 11日の参院ではこんなやりとりが、

 7月には衝突事案もありましたし、緊張感を持って今後のことについては考えて検討して政府全体で判断をしてまいりたいと考えております」稲田朋美防衛大臣

 「衝突があったんですね、戦闘ではなかったんですねと聞いている」民進党 大野元裕参院議員

 衝突であるという認識をいたしております稲田朋美防衛大臣

 稲田大臣、7月の武力衝突は「戦闘」ではなく「衝突」と繰り返し審議は中断。安倍総理が答弁に立ってこう言い放った。

 戦闘をどう定義づけるかということについては、国会などにおいても定義がないものでありますから、我々は衝突、いわば勢力勢力がぶつかったという表現を使っているところでございます安倍晋三総理大臣

 武装した勢力と武装した勢力が「衝突」したら「戦闘」じゃないのか?7月の「衝突」で270人も殺されていて、それでも「戦闘」ではないと?

 いま、国会でこんな言葉遊びをしている場合ではないのだが・・。

 TBSは、7月の実情をとらえた映像をニュースで流したが、なんと政府軍NGOを襲って殺害、略奪し、NGOで働く外国人女性5人がレイプされたという。

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2888202.html

 政府軍に襲われたNGO国連に「助けて」と要請して自衛隊が駆けつけたら、政府軍と戦うことになるのである。

 ところで、この防衛大臣、どうにかならないのか。国会での答弁のお粗末さには目を覆うものがあるうえ、潜水艦にハイヒールで乗り込むなど常識を疑う行為を次々とやってのけている。白紙領収書の問題もあるし。

領収書整理の我が手バカに見え 京都府 小山富太郎)

問題があるときに言う「問題ない」 (東京都 小野良明)

 亡国という言葉が目の前に浮かんできそうなご時世だ。

2016-10-05 戦闘状態に決まっているでしょ

通勤の途中、違う道を通ると発見がある。

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あるお宅の垣根に紫式部の実が・・・白からだんだん濃くなって、すっかり秋の色だ。

気がつくと、もう秋分もあさってまでだ。

夜の時間がどんどん長くなっていく。中秋の名月というのはこのころだったという。

初候の雷乃収声(かみなり、すなわちこえをおさむ)―夕立や雷が収まっていく―、次候の蟄虫坏戸(むし、かくれてとをふさぐ)―鳴いていた虫たちが巣篭りのために土に潜っていく―、をすぎて、いまは末候の水始涸(みず、はじめてかるる)―収穫で、田んぼから水が抜かれる時期。

資金繰りが厳しく、きょうもお金の算段で取引先と交渉していたが、夜、寝る前に外に出て一服しながら虫の声を聴くと心が落ち着く。

明日、山形から「もってのほか」(食用菊)が届く予定で、とても楽しみだ。

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きのう、伊勢崎賢治さんから演奏会のお知らせがあって(彼はプロのジャズトランペット奏者でもある)、そこに書かれた文章が、こないだ私が紹介したよりも直截に彼の主張を伝えているので、紹介しよう。

戦闘状態に決まっているでしょ

内戦状態に決まっているでしょ

停戦が破れているに決まっているでしょ

PKO派遣後五原則は成り立っていないに決まっているでしょ。

じゃあ、今、自衛隊を撤退させろ、というのですか?

戦火で苦しむ無垢な住民を見放すのですか?

国連、そして世界の人権世論が、この人道的危機を前に、見放すな、と言っている最中に、自衛隊だけ撤退するのですか?

日本のPKO派遣原則は、国連PKOが過去の”見放した”末招いた悲劇の教訓から立ち上がり1999年に”見放さない”と方針を大転換した時から、成り立っていないのです。

今、日本人が議論すべきは、自衛隊を撤退させるか否かではなく、自衛隊の代わりに”今”何をするか、です。これなしに、自衛隊は撤退できません。

交戦権が支配する戦場で、PKO自体も交戦する決定を既にしているのに、交戦権を持たずに送られている自衛隊員の無事と、交戦権違反を犯さないことを祈りながら。

憲法9条は、そもそも「交戦権」を認めていない。交戦するのが任務の現場に自衛隊を出すという、はじめからムチャクチャな派遣(それも民主党政権時代の)だったのだが、その原理的な違和に与野党とも(共産党も)気がついていなかったのである。しかし、「あ、じゃあ、やーめた」といま言うわけにはいかない。これは、護憲派改憲派をとわず、まさにオールジャパンに突きつけられている問題だと思う。(南スーダンの事態に自衛権適用できないのはいうまでもない)。

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先日、マインドフルネス瞑想について、ちょっと揶揄するような文章を書いたが、私はこのブームに非常に注目している。

いま、マインドフルネスの研究は、以前、瞑想につきまとっていたちょっとオタクで怪しげなイメージから完全に抜けだし、はっきりとメジャーな学問にまでなっている。

スタンフォード大学カリフォルニア大学ロスアンジェルスルス校(UCLA)、マサチューセッツ大学などの著名大学では瞑想研究センターを作り、アメリカ国立衛生研究所NIH)は、2012年以降、瞑想の研究に日本円で1000億円以上を補助金としてつぎこんでいる。最近の調査ではアメリカで9.4%、つまり2000万人の人が瞑想を実践しているという。

最新の科学で、瞑想がたんにストレスの軽減だけでなく、脳細胞の働きや質量そのものを変え、さらにがんを含む病気への抵抗力の強化といった身体の変化を引き起こすことことが次々と実証されてきたからだ。薬物と瞑想の併用はいま医療最先端で採用されつつある。

しかし、アメリカという国は不思議だ。こうした突出した最先端が躍動するのもアメリカなら(ノーベル賞受賞者もダントツ)、いまだに白人警官が黒人を殺し、大統領候補にとんでもない人物が出てくるのもアメリカである。

私は、瞑想が、体や心に効果があるという以上に、これを人口の一定数が習慣にすれば、文明のあり方が変わる可能性さえあると思っている。

最新の瞑想研究については、おりにふれ、書いていこう。

2016-10-01 自衛隊は南スーダンから撤退できない

f:id:takase22:20161001235302j:image:w250:right秋の花、リンドウオミナエシ。竜胆と女郎花。漢字で書くと印象が違うものだ。

ところで、秋の七草ってなんだっけ。

ハギ・キキョウ・クズ・フジバカマオミナエシ・ オバナ・ナデシコ秋の七草、と五七五で覚えるそうだが、春の七草と違って、食べるものじゃない。オバナとはススキのこと。

さすがに気温がぐっと下がって朝夕は寒いときもある。季節の変わり目で、ご自愛ください。

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最近、国連PKOにくわしい伊勢崎賢治さん(東京外語大学教授)が、いろんなところに講演に呼ばれている。

南スーダンPKO派遣自衛隊に、「駆けつけ警護」などの新しい任務を付与することが「現地の情勢などを見極めて検討」(安倍首相)されているうえ、その新任務の訓練はすでに開始されたからだ。

私もおよそ1ヵ月前の9月2日、明大での「「駆け付け警護」任務付与で自衛隊はどうなる?」という学習会で伊勢崎さんの話を聞いてきた。

そこで伊勢崎さんは、ほぼ100%が護憲派と思われる聴衆に対して、「PKO派遣5原則があてはまらない事態になっているから自衛隊は今すぐ撤退せよというのには反対だ。撤退していはならない」と言い放ち、会場に困惑が広がった。

伊勢崎さんによると、「もう遅すぎる」というのだ。

そもそも自衛隊のPKO派遣の最大の問題は、安保法制ではないという。「PKO派遣原則」は、国連が「住民保護」のため「紛争の当事者」になることを決めた1999年から既に成り立たなくなっていた。これを日本の与野党は知らず(南スーダンへの自衛隊派遣を決めたのは民進党政権だった)、共産党でさえ最近まで気づかなかったという。

ここにきて、私たちだけ撤退しますと、危機に瀕した住民を見放す非人道的な行動はとれない。現地が小康状態になったときに、タイミングを逃さず、自衛隊を撤退させる。(ただし、撤退するだけではなく、何らかの貢献策を用意したうえで)

その上で、「PKO派遣5原則」の見直しを行う。ただし、これにを政局にすることなく、与野党が協力しながらやるべきだ。

こう語る伊勢崎さんの議論は、根本的な問題提起となっており、非常に説得力があった。私も「自衛隊即時撤退」を引っ込めて考えなおすことにした。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49799?page=4

なんだよ、意見がコロコロ変わって、と言われそうだが、全然気にしない。より良いものがあればすぐ取り入れる。「ぶれない」ことが美学だとは思っていない。

問題は非常にラディカルだ。交戦権を認めない憲法9条を維持する限り、交戦権を前提にするPKOには参加できない。9条論議では、ここもポイントになるはずだ。さらに学びを続けよう。

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きのう、ヌスラ戦線がドイツ人ジャーナリストを1年ぶりに解放したことを書いたが、一つ興味深いのは、ドイツメディアが、彼女の拘束の報道を自制し続けてきたことだ。

英字紙から

ドイツでは、ドイツ外務省の要請で、ほとんどのメディアは、フィントアイゼン氏の生命を危険にさらさないため、誘拐されたとの報道を控えた」

ドイツ国境なき記者団は、『ドイツのほぼすべてのメディアが、同僚の保護に協力するために誘拐事件をセンセーショナルな報道に利用しないことに合意したことも重要だった』と声明を出した」。

安田純平さんのケースでは、途中から、さまざまな人々の暗躍もあって、センセーショナルな報道になっていった。また、ドイツと違って、アジア太平洋地区の「国境なき記者団」は去年暮れ、安田純平氏のカウントダウンが始まったなどというデマ情報でセンセーショナルな報道に火をつけた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20151225

ドイツでは海外でのジャーナリストの誘拐という緊急時における政府メディアとの信頼関係がそもそも違っているので、単純な比較はできないものの、センセーショナルな報道に流れがちの日本にいて、メディアの姿勢を考えさせられる。