高世仁の「諸悪莫作」日記

2018-09-27 翁長氏のパトリオティズム

 雨がつづく。きょうは寒いくらいだった。

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 線路ぎわの金網フェンスに巻き付いたアサガオが、オクテなのか、今が盛りだ。

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 雨で虫も寄ってこないが、うれしそうに咲いていた。

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 沖縄県知事選は最終盤で「接戦」と報じられている。ネットで情報を漁ると、佐喜真氏がリードしているように見えるが、ここは翁長氏の遺志をつぐ玉城氏にふんばってもらいたい。

 きょうの夕刊は、中島岳志氏(東京工業大教授)の「翁長雄志と沖縄パトリオティズム」がおもしろかった。

 保守政治家としての翁長の苦悩は、パトリオティズムナショナリズム相克にあったのだろう。パトリオティズムは、一義的には自分が所属する郷土への愛情であり、近代国民国家の誕生とともに構成された政治的ナショナリズムと性質を異にする。政治学者橋川文三は(略)両者を区別し、『原始的な人間の郷土愛は、そのまま国家への愛情や一体感と結びつくものではない』と論じている。

 近代においてウチナーンチュ(沖縄人)が経験してきたのは、日本という国家にパトリ(郷土)が傷つけられ、分断されることだった。(略)翁長家は琉球処分明治5年明治政府琉球国を廃して日本国に組み入れた)によって没落し、沖縄戦で家族を亡くしている。沖縄保守は、日本という国家に対して、引き裂かれた感情を抱かざるを得ない。

 翁長は第二次安倍内閣発足後に、大きなショックを受けた出来事があったと語っている。それはサンフランシスコ講和条約が発効した4月28日を日本の独立記念日として祝う式典が開かれたことだった。もちろん沖縄は日本の独立と引きかえにアメリカの施政下に置かれ続け、本土復帰は20年後のことである。

 翁長は、小泉内閣あたりから本土保守政治家にハートがなくなってきたと語った。そして、日本政府の無理解や差別的対応に対して、翁長は命を賭してパトリの思いを投げかけた。

 翁長の『保守』を見つめ直したい。」東京新聞「論壇時評」)

 民族やナショナリズムについて考えるうえで、沖縄が突きつけるものは外せない。思えばかつて4.28は「沖縄デー」だった。1970年東京での集会、デモのニュース映像http://www.chunichieigasha.co.jp/?p=14060

 沖縄が日本から切り離された日を、日本の「独立記念日」として祝うということは沖縄人から見れば裏切りとなるだろう。翁長氏のショックの大きさを指摘されて、そこに私が十分思い至っていなかったことを反省させられた。はたして我々本土の人間は、復帰の前も後も、沖縄人を同胞として見てきたのか。

2018-09-25 中秋の名月に思う

f:id:takase22:20180917143312j:image:w300:left 秋分といえば、ヒガンバナ彼岸花)。これも薬用植物園で撮影したもの。全株が有毒で、「シビトバナの別名があり、誤って食べると(略)死亡することもある」と解説にある。毒草だったのか。ただ、それは人間にとって有毒ということで、自然(宇宙)はそれをよしとして存在させてきたのである。

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 こちらはオオケタデ(大毛蓼)。タデ食う虫も好き好き、のタデの仲間。東南アジア原産。江戸時代には、葉っぱをもんで害虫にさされたときの解毒に使ったそうだ。何でもクスリになるんだな。最近のテレビは健康情報ばかりで「ニンニクがすごい」、「バナナの意外な薬効」、「トリの胸肉でスタミナを」などととっかえひっかえ特集しているが、考えてみると結局、薬にも毒にもなるさまざまなもののなかで我々は生きているということである。

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 初めての民間での「月周回旅行」をやるのは日本人になるらしい。その人は、通販サイト『ZOZOTOWN』を運営する前澤友作社長(42)。アメリカベンチャー企業スペースX』に予約したとニュースになっている。月旅行は1972年アメリカアポロ計画以来。前澤社長はすでに手付金として100億円以上をスペースXに支払ったとのこと。金額もふくめ、何か別世界のように現実味がない。

 私は数年前、取材で前澤さんに会ったことがある。ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイという会社は千葉県幕張にある。ここでは「仕事」を「自事」と呼び、「6時間労働制」。空いた時間で農業をやる社員もいた。会社のある幕張活性化するため近くに住むと月5万円の住宅手当を支給し、社員の8割以上がこの制度を使用しているという。とてもユニークな会社である。若かったら私もこんな会社で働きたいなとも思った。

 前澤さんは、世間物差しには関知しないという吹っ切れた態度が印象的で、カリスマと呼ばれるだけのことはあった。今回、彼はビジネスの宣伝のために月旅行をぶち上げたのではないと私は思うが、結果としての宣伝効果は相当なものだろう。うちのかみさんのように初めて「ゾゾタウン」という会社を知った人も多いはずだ。社員の士気が上がるのはもちろん、一気に海外展開が進んで世界企業になるかもしれない。まさに、飛ぶ鳥を落とす勢い。

 しかし、栄枯盛衰は世の常。きょう、大学時代の後輩二人と呑んでいたのだが、二人とも80年代末に「ダイエー」に入社した。プロ野球南海ホークスを買収してイケイケのころである。中内功さんは「流通革命」のカリスマとして讃えられ91年には経団連の副会長にまで上りつめた。まさかそこから転落するとは。予想できないことが起きるのが世の常だ。

 昨夜は中秋の名月。曇り空でダメかと思っていたら、深夜、雲間に丸い月が顔を出した。これもまたかならず欠けていくのだなあ。

2018-09-23 節気はもう秋分

f:id:takase22:20180917124420j:image:w300:right 栗のイガが茶色になり割れ始めた。夕方暗くなるのが早くなったと思ったら、もう秋分ですか。昼と夜の長さが同じで、ここから夜が長くなり冬に近づいていく。

 きょう23日から初候「雷乃収声」(かみなり、すなわちこえをおさむ)で夏の雷が終わるということ。夕方の空にはイワシ雲が見えた。次候「蟄虫坏戸」(むし、かくれてとをふさぐ)が28日から。虫たちが冬籠りの準備をしはじめる。10月3日からは末候「水始涸」(みず、はじめてかるる)。稲刈りを終えた田んぼから水が抜かれるころになる。

 中秋の名月はあす24日だそうだ。晴れてほしい。

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 大坂なおみ選手、東レ・パンパシフィック・オープン決勝で敗れて準優勝。残念でした。先日、彼女の国籍の話をしたが、最近は国籍が問題になる選手が次々に出てきた。

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 きのうサーフィンのワールドゲームズ(WG)の最終日、個人で2位になった五十嵐カノア選手。




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 また、スポーツクライミングで東京五輪メダル確実と言われる17歳白石阿島(あしま)選手。二人ともアメリカとの重国籍。スポーツ選手としての国籍をどこにするかで日米の駆け引きがさかんになっているという。国際結婚や海外移住が進む中で、こうしたケースが増えてくる。

 バーレーンカタールなどは国策として外国のスポーツ選手を招いて自国選手として出している。自分の国の選手層が厚くて代表になれそうもない場合、選手が進んで他国の代表になるのを希望することある。甲子園をめざす高校生が、出身県から遠く離れて野球留学するのと同じ。選手本人にとっては、どの国籍で登録するのが有利かという判断になるのだろう。

 以前、アメリカで、外国人が「アメリカ人になれよ」と説得されているのを見たことがある。優秀な人がアメリカ人になることは、アメリカにとってもいいことだから、だという。また、私の知り合いの東欧出身の男(日本人の奥さん子どもと日本に住んでいる)は今後の自分の国籍で迷っていたが、「日本も悪くないけど、アメリカ国籍のほうが今後可能性が広がりそうだ」と米国籍をとる準備に入った。

 アメリカ人である」ではなく「アメリカ人になる」・・・。自分で国籍を選ぶという発想は驚きだった。私だけでなく多くの日本人は国籍は生まれる前から死ぬまで変わらぬ属性と思い込んでいるから、大坂なおみのような人が出てくると、ことさらにジャパニーズらしさを見いだして納得しようとするのかもしれない。国際化は国籍を便宜的な属性に変えようとしている。

 そう考えると、アジア競技会もオリンピックも選手の国籍で大騒ぎする意味があるのか疑問になってくる。いっそ、国別メダル獲得ランキングなんてやめればいいのに。

2018-09-13 シリアで今世紀「最悪の人道的惨事」か

 いま、歴史的大惨事が起きる可能性が高まっている。

 シリアでは、アサド政権ロシア軍の全面的支援のもと、化学兵器まで使用して支配地を拡大。反体制派の最後の拠点となった北西部のイドリブ県に総攻撃をかけようとしている。イドリブ県には、アサド政権軍・ロシア軍の無差別爆撃を逃れ、シリア各地から大量の避難民が集まっている。

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 国連は10日、シリア北西部での戦闘激化により、今月だけで3万人余りが避難を強いられたと発表し、シリア政府軍が同地域に進攻すれば今世紀「最悪の人道的惨事」をもたらす恐れがあると警告した。》(9月7日 AFP

 総攻撃はまだだが、ロシア軍が一部の地域の空爆を始めたようだ。

《イドリブ県が8日、空爆を受けたとみられる。現地のボランティア救助組織「シリア民間防衛隊(通称・ホワイトヘルメッツ)」などが報告した。ホワイトヘルメッツは、8日の空爆で4人が死亡、5人が負傷したとツイートし、攻撃の場面とされる写真を投稿した。反体制派の在英NGO「シリア人権監視団」も、イドリブで同日「集中的」な空爆があったと伝えた。両組織とも、ロシア機による空爆との見方を示した。》(CNN)

 イドリブでは去年も、アサド政権ロシア軍が、サリンと思われる化学兵器を使用し多くの犠牲者が出ている。https://www.unicef.or.jp/news/2017/0074.html

 アジアプレスの玉本英子さんも、現地の医師の撮った写真を紹介して報じている。

http://www.asiapress.org/apn/2017/04/syria/post-53684/

 手段を選ばずに住民殺戮をやってきたアサド政権軍とロシアが、トルコ国境を背にした反体制派支配地域を完全制覇のため「総攻撃」するならば、恐ろしい惨事になるとの懸念が広がっているのだ。

 ここで警告したいのだが、シリア情報にはフェイクニュースが広く出回っている。発信元はロシア

 ロシア通信インフラへの攻撃やハッキングでも知られるが、アメリカ大統領選挙に見られるように、組織的なフェイク情報、プロパガンダ拡散による情報戦に力を入れている。今の情勢についてはこんなニュースを流している。

 中東の複数のテレビ局及び米国のテレビ局1社が、シリアのイドリブで組織「ホワイト・ヘルメット」参加の下、演出された「シリア政府軍化学兵器攻撃」の9つのシーンを撮影した。シリアにあるロシア紛争当事者和解センターが発表した。またこの「芝居」に参加させるために、親のいる子供と、難民キャンプから連れ出された孤児22人が選ばれたという。ロシア国防省は、「ホワイト・ヘルメット」はテロリストと合同で民間人に対する化学兵器を使った実際の攻撃を準備をしていると発表した。》

https://jp.sputniknews.com/middle_east/201809125332067/

 ロシアによれば、化学兵器を使用するのはアサド政権側ではなく、逆に「ホワイト・ヘルメット」と反体制勢力であり、政府軍化学兵器を使用したという動画は「芝居」つまり「やらせ」で撮影されたというのだ。4月、首都ダマスカス近くの東グータ地区で化学兵器が使用されたときも、この手のデマがけっこう広まった。ロシアは多様なルート、チャンネルからフェイク情報を流すので、何回も接した人は、ひょっとして事実かもしれないと思うようになる。危険である。

 

 フェイク情報もあずかって、アサド政権反体制派も悪いという「どっちもどっち」論がメディアでもよく聞かれるが、実際は、アサド政権側が一方的に住民を殺戮している。

 先日紹介した白川優子さん(国境なき医師団看護師)の本『紛争地の看護師』を見てみよう。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20180821

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 優子さんは、シリアでは、他の紛争地と違って、医療活動自体が命がけだったという。医療従事者を政府軍がターゲットにするからだ。

 イエメンでは、私たちは中立の立場で人道支援に入っているという事実を、政府、それぞれの紛争当事者、各コミュニティなどと交渉しアピールしながら活動していた。

 地元民からも感謝されたし、そうした実績が私たちの実の安全につながっていた。

 スタッフが活動時に着用するTシャツや移動の車にはMSF(国境なき医師団)のロゴを入れ、病院にもMSFの旗や看板を立て、周囲にMSFの医療活動であると分かってもらうようにしていた。

 ところがシリアではそれが一切できず、隠れながら活動をしなければいけなかった、なぜなら医療活動の場が攻撃のターゲットになっていたからだ。

 デモから始まったシリアの騒乱は、政権側がデモを起こす市民に銃を向けたことで内戦と化した。撃たれた市民は病院に運ばれるが、やがて政権側は先回りをして病院に検問を張るようになり、そこでデモ参加者を逮捕した。さらには怪我人を治療する医師たちも反逆者を治療したという罪で逮捕されるようになってしまった。

 挙句の果てには市民が治療できないよう病院自体を攻撃するなど、命を救うはずの医療の場が戦場と化した。」(P91)

 そして実際に、白川優子さんが詰めていた病院に政府軍の飛行機による爆撃があった。明らかに病院であることを分かった上で狙ったのだ。

 これは、いま囚われの身のジャーナリスト安田純平さんによる、シリアではアサド政府軍が、医師看護師など医療従事者や医療関連施設を狙い撃ちしているという2012年のリポートに符合する。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120820

 フェイクニュースを打ち破るためにも、現地からリアルな状況を伝えることは非常に大事である。ジャーナリストであろうがなかろうが。

 安田純平さんは、イドリブで拘束されていることが確実で、その点からも、政府軍ロシア軍による「総攻撃」をめぐる情報を注視している。

日本人論はまた次回に)

2018-09-11 大坂なおみは日本人なのか

f:id:takase22:20180910085111j:image:w280:left アサガオが、線路沿いの金網から電線をつたってはるか上まで上っている。おお、がんばってるな。朝、花を見上げて通勤している。きょうは、ずいぶん涼しくなって秋の気配がただよってきた。








 大坂なおみ、テニスの四大大会最終戦全米オープン女子シングルスで初優勝。私同様、テニスなどふだん関心のない人たちも「日本人が勝った」と大いに盛り上がっている。

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 大坂なおみはすごかったと思う。明らかにセリーナ・ウィリアムズを圧倒していたし、スピーチも素直でよかったし、表情がとても可愛らしい。それは認めたうえで、なおみフィーバーを見るにつけ、「日本人」っていったい何だろうと思ってしまう。3歳からアメリカで育ち、日本語はほんの片言。今は日米二重国籍アメリカ人でもあるのだが、「テニス選手としての国籍」として日本を選んでいるのだという。スポーツにおける国籍選択はよく見られることだ。マラソンオリンピック代表になりたいためにカンボジア国籍にした猫ひろしなど、国籍はむこうかも知れないが、やっぱり日本人だろうと見てしまう。

 日本の法律では22歳までに国籍を選びなさいということになるそうで、大坂なおみは来月21歳になるから、あと1年ほどで選択を迫られる。もしアメリカ国籍を選べば「日本人」ではなくなってしまうが、日本国籍を選べばアメリカ国籍は残って二重国籍のままなので、たぶん日本国籍選択するだろうと言われている。

 というわけで、彼女が日本人かどうか、なんだかきわどい感じなのである。

 そのあたりを意識してか、ニュース番組などでは、北海道のおじいちゃんを登場させたり、抹茶アイスが好物だと披露したり、対戦相手に会釈し礼儀正しいとなでしこぶりをアピールしたりしていた。

 たしかに罵詈雑言を浴びせて審判に抗議するセリーナ・ウィリアムズの姿には、日本人としてはかなり違和感を覚え、それに比べれば大坂なおみはジャパニーズだなと感じるのだが、大坂自身、2年前には試合中かんしゃくを起こしてラケットを叩き壊したことがあるそうで、個性の範囲かもしれない。

 日本人とは何だろう。先日観に行った「縄文展」でも考えさせられた。

 世界の人類の歴史において突出した造形美の土器をつくった縄文人たち。また、研磨加工を施し、刃先の長い石器を世界で最初につくったのもこの日本列島に住んだ人々だった。

 これって「日本人はすごかった」というふうに考えていいのか?私としては、どういうところに誇りを持てばよいのか。そもそも縄文文化を私が誇りに思っていいのか。

 愛国心という問題にもつながってくる。

(つづく)