オリンピックの記録雑感(2)

 映像を見ていて、スピードスケートのショート・トラックという種目は、非常に恐ろしい種目だな、と思う。転倒と巻き添えのリスクが非常に大きい。しかも、足には日本刀を付けているようなものだ。が、これの結果がまた奇想天外!!
 女子500mでは、4人で決勝戦を行ったらしいのだが、1〜3位が42秒569から43秒881という1秒あまりの範囲に収まっているのに、4位はなんと1分23秒063、3位に遅れること約40秒、レースが2回できるくらいの時間がかかっている。これは転んでリンクの隅まで滑って行ってしまったが、元の場所に戻って滑り直した、ということであろう。しかし、単にそれだけで40秒も余計にかかるはずがない。壁にぶつかって一時的に起き上がれなかったとか、戻って滑り直せるということを知らず、しばらくあきらめてボーッとしていたとか、そんな状況があったことをうかがわせる。5位は、タイムが書かれていない。欄外に「5位は出場1人のため順位決定戦を実施せず」と注記されている。なぜこんなことが起こるのか意味不明。6位は決勝で失格となった韓国人選手。失格で繰り下がり順位が付いた人たちは皆タイムが書かれていないが、これまた欄外に、その選手が準決勝でオリンピック新記録を出した、と注記されている。五輪新を出して準決勝を1位通過し、決勝に進んだが、失格した結果、順位決定戦に出た選手の下の順位に繰り下がったということだ。失格者というのがやたらとたくさんいて、失格しても順位が付く、というのがこの種目の不思議なところである。
 同じく女子3000mリレーでは、それぞれ4チームで決勝戦と順位決定戦を行った。決勝戦では、韓国とイタリアが1位、2位でゴールし、中国とカナダが失格した。順位決定戦で失格したチームはなかったので、順位決定戦に出た4チームが、3〜6位となった。決勝で失格した中国とカナダには、その下の順位、すなわち7位、8位が与えられた。おそらくは、先に失格した選手が下の順位になっているのだろう。このこと自体はルールなので問題ない。
 驚くのは、金メダルを取った韓国よりも順位決定戦の1位(銅メダル)、2位、銀メダルを取ったイタリアよりも、順位決定戦の3、4位の方がタイムがよかったということである。しかも、順位決定戦1位のオランダなんて世界新記録だ。つまり、この種目の1〜6位は、タイム順に並べると、3、4、1、5、6、2位になる。男子1000mも世界新記録こそ出なかったもののよく似た状況で、順位決定戦の5〜7位は、タイムの上では決勝戦の2位と3位の間だ。つまり、この種目の1〜7位は、タイム順に並べると、1、2、5、6、7、3、4位になる。加えて、入賞者として名前の出ていないカナダ人選手の名前が、予選でオリンピック新記録を出したとして、わざわざ欄外に書いてある。
 これなら、どうしてタイムを計る必要があるのだろう?完全に相対的な勝負にしてしまった方が、よほどスッキリするのに・・・。
 私が小学校の頃に札幌オリンピックがあった。その時代は、フリースタイルスキースノーボードカーリング、スケートのショートトラックといった種目が存在せず、花形はスキー・ジャンプやフィギュアスケートの他、スキーの滑降や大回転といったアルペン種目だったと思う。これこそウィンター・スポーツの王道だ。ところが、これらの種目で優れた成績を収めた日本人は猪谷千春(1956年、コルチナ・ダンペッツォ大会回転銀メダル=もちろん私が生まれる前)まで遡らなければいないと言ってよく、むしろ年々レベルダウンしているとの印象を受ける。そのためか、今やほとんど報道されない。それらの種目が廃止されたのではないか、と思うほどである。
 記録を見てみると、種目としてはまだ残っているが、日本人が全ての種目に出場しているということもなく、出場した種目でも、男子大回転=30位、男子回転=2回目途中棄権、女子大回転=33位、女子回転=1回目途中棄権、これで全てである。転ばずに下まで滑るということが、日本人選手にとっての目標ラインになっているのではないか?と思わせる結果だ。
 スキー場で見ていても、明らかにスノーボーダースキーヤーに比べてチャラい。野球選手とサッカー選手くらいの違いがある。私はもちろんスキー派だ。今回、スノーボードで銀メダルを取った平野だって、ピアスをぶら下げていた。オリンピック選手、ましてメダリストともなれば、非常に厳しい努力を積み重ねてきているはずで、うわついた生活をしている人なんているはずはないのだけれど、なかなかそうは見えない。そう言えば、前々回の冬季オリンピックに腰パンで現れて批判されたKという選手も、確かスノーボードだった。というわけで、その点を含めて、日本におけるアルペン種目の衰退はとても残念だ。(完)