スピーカーは美しい

スピーカーは、オーディオシステムにおいて音の最終出力装置ですので、視聴に最も影響を与えるオーディオシステムです。
すなわち、聞き手に影響を与えやすいコンポーネントは、概ね以下の順であると思います。

  1. スピーカー
  2. スピーカーケーブル
  3. アンプ
  4. オーディオケーブル(アナログ)
  5. プレーヤー(CDプレーヤー)

正直、これまでオーディオケーブルやプレーヤーで音の違いを明確に体験できたことは、私にはありません。

一方、アンプについては、PS AudioのアンプからGOLDMUNDのアンプに換えたときに、その音の違いにびっくりしたことがあります。


PS Audioのナローで落ち着いた音に対し、GOLDMUNDのくっきりとしたパステル調の音は新鮮な感動を覚えました。



誰にでも比較するとすぐに音の変化が実感できるのは、スピーカーとスピーカーケーブルでしょう。

スピーカーケーブルは、微弱なアナログ信号を扱うが故に、経年変化(劣化)や周りの電磁的物理的環境、更にスピーカーやアンプとの接続状態は音質に影響を与えやすいものです。
特に、線材の経年変化の影響が大きいように思われます。
そのためにケーブルメーカーは経年変化が最小になるようなケーブルの構造に様々な工夫を施しているのでしょう。
スピーカーケーブルの端末処理には気を使うべきで、少なくとも1〜2年毎に端末の再処理を行った方が良いと思います。


さて、スピーカーは基本的にはアンプからの電気信号をコーン(振動板)の振動に変換して音を出すのですが、スピーカーシステムで振動するのはコーンだけでしょうか。
つまり、エンクロージャ(筐体、キャビネット、箱)の話です。
スピーカーには様々な種類がありますが、その作りにおいてエンクロージャをなるべく振動させないようにしているものと、ある程度エンクロージャも振動させるような作りになっているものがあります。
つまり、箱(エンクロージャ)を鳴らすか鳴らさないかということですね。

これは作り手の思想の問題であり、聞き手の嗜好の問題であり、決して善し悪しの問題ではありません。
ちなみに、エンクロージャを振動させない思想のスピーカーは密閉型がほとんどだと思いますが、エンクロージャを振動させる/振動させないは、開放型(バスレフ型)と密閉型と言う方式とは直接関係はなく、結果としてエンクロージャが振動しないスピーカーの音や効果を追求すると密閉型になると言うことだと思います。

箱の鳴きを極力抑えたスピーカーは、量感は少ないものの低音が引き締まったソリッドな音楽が楽しめます。
また、エンクロージャーから発生する音が押さえられ、結果として密閉型であることの効果としてスピーカーの後ろからの音(振動板背面からの音)の影響も遮断され、アンプからの音が色づけされず前面にストレートに出てくる印象です。
さらにブックシェルフの場合、スピーカースタンドの影響が比較的少ないことも挙げられるでしょう。

箱鳴きを良しとする設計思想のスピーカーは、音の広がりや量感に特徴があり、柔らかく開放的な音を楽しめます。
こちらはスピーカースタンドの影響は大きく、専用のスタンドが推奨されるスピーカーもあります。

繰り返しますが、この箱鳴きは善し悪しではなく設計者の思想や聞き手の趣味の問題です。
私は、ATC SCM19とHARBETH HL Compact7ES-3という2種類のスピーカーを時々取り替えながらオーディオを楽しんでいますが、SCM19の方は箱鳴きのないスピーカーで、7ES-3は箱鳴きするスピーカーの代表選手のような存在です。
SCM19は2ウェイ密閉型のスピーカーで、非常に堅固な作りになっており、通常サイズのブックシェルフですが重量は1本18kg以上もあります。
一方、7ES-3は2ウェイバスレフ(前面ポート)のスピーカーで、ちょっと品の良さが目に付き、大きめのブックシェルフですが重さは12kgほどです。(専用のスタンドが推奨されています)
どちらも英国製というのが面白いですね。
性格の異なる2つのスピーカーですが、私としてはどちらが好きと言うことはなく、その時の気分によって使い分けています。


最初に、オーディオシステムにおいてスピーカーは視聴に最も大きな影響を与えると書きましたが、文字通り’視’の部分を忘れてはいけません。
音楽を楽しむ時はスピーカーはいつも目に入っているはずです。






そして、いつも目に入っているスピーカーが美しくなければ、音楽の楽しさも半減してしまうでしょう。
よく、音楽を聴くときにスピーカーのネットを外して聴くことがありますが、これはよりよい音で聴く(コーンの前の遮蔽物を取り除く)ためということと同時に、私はそのスピーカーの持つ見た目の美しさを楽しむと言う理由も大きいのではないかと思っています。




丹念に作られた家具は、テーブルでも椅子でも見るだけで楽しい物ですが、スピーカーについても同様なことが言えると思います。
高級なスピーカーは、高級家具と同様に職人が手作りで作っている所もあり、なかには芸術作品のようなエンクロージャを持つスピーカーもあります。

もちろん、音が良ければ見た目などどうでも良いと言う考えもありますが、私はいい音も聴きたいし同時に美しいものも見ていたいと思っています。

[rakuten:digitalside:10001168:detail]

ハーベス 2ウェイ2スピーカー【1本】 HLCOMPACT7ES3

ハーベス 2ウェイ2スピーカー【1本】 HLCOMPACT7ES3