DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第6回 LGツインズ

「思わぬ挫折」 
2017年成績 : 69勝72敗3分(レギュラーシーズン6位)
チーム総合採点…50点


1. 【戦力は充実していたはずだが…】
 2016年は前年の9位から4位に大きく順位を上げ、その勢いが続くかに思われた2017年は6位でポストシーズン進出に失敗した。その戦いを振り返る。


 シーズン開幕前、先発、リリーフ陣ともに投手の層が厚く、野手陣のベテランと中堅、若手のバランスがとれていると評され、上位進出が予測されていた。しかし開幕前に外国人投手のハフ、抑えのイム・ジョンウが故障により3月31日のレギュラーシーズン開幕に間に合わないことが明らかになり、暗雲が垂れ込めた。
 

 3月31日の開幕戦では先発ソーサの好投、チョン・チャンホンが抑えを務め2-1で勝利した。4月4日のサムソン戦では、FA(フリーエージェント)行使による4年間の大型契約を結んだチャ・ウチャンが古巣相手に先発すると11-0で大勝し、チャ・ウチャンも移籍後初勝利を記録した。翌4月7日のロッテ戦まで開幕6連勝と順風満帆に見えた。しかし4月13日のNC戦まで5連敗と、スタートダッシュ成功とはならなかった。抑えは結局シン・ジョンナクがつとめ、4月は6セーブと好調を維持した。またリュ・ジェグクも開幕5連勝だった。
 5月11日のサムソン戦まで7連勝と波に乗って3位に浮上し、キアとNCの首位戦線に加わった。5月12日のハンファ戦でハフがシーズン一軍初登板で先発したが敗れ、これ以上は勝率を伸ばせなかった。5月30日のネクセン戦まで6連敗となり、勝率5割近くまで後退してしまった。その原因としては打線の不振があげられ、特に2016年は26本塁打を記録した外国人野手ヒメネスが5月後半からブレーキとなってしまった。さらにヒメネスは5月27日のSK戦で三重殺(トリプルプレー)を記録してしまい、6月2日のNC戦が最後の一軍試合出場となり、その後二軍へ降格したまま7月18日に退団した。
 シン・ジョンナクの調子が落ち、6月9日のSK戦ではソーサを抑えに起用し韓国初セーブを記録するなど、台所事情は苦しかった。6月16日のキア戦まで3連勝し混戦の中3位に浮上し、何とか上位には踏みとどまろうとした。6月18日のキア戦では最大7点差を逆転したが、首位争いをするキア、NCには近づけなかった。6月27日、28日のロッテ戦は2試合ともに5時間を超える激闘だったが、1敗1分けと勝利できなかった。
 7月2日のキア戦は7回表途中のコールドゲームながら13失点で大敗し、引き分け1つを挟み5連敗で勝率5割を切り6位にまで後退するも、7月5日のNC戦で勝利し連敗から脱出した。7月9日のハンファ戦では2016年で引退したイ・ビョンギュ(元中日)の引退セレモニーが行われ、試合は雨天によるコールドゲームだったが勝利し、背番号9が永久欠番に指定された偉大な打者の功績を称えた(イ・ビョンギュは2018年より二軍コーチに就任)。
 梅雨時で雨天中止が相次ぎチームにとって良い休息となったのか、7月15日前後のオールスター戦の中断期間を挟んで7月20日のサムソン戦まで6連勝、4位にまで浮上した。だがその間に左のリリーフとして起用されていたユン・ジウンが飲酒運転の発覚により、レギュラーシーズン残り72試合の出場停止と厳罰を課せられ、大きな痛手をこうむった。その一方7月18日にはヒメネスの代役の新外国人野手として、MLB(メジャーリーグベースボール)で通算1425安打を記録した大物選手ローニーと契約し、終盤戦での反撃を試みた。
 ローニーは7月29日のハンファ戦で韓国初本塁打を記録し勝利に貢献すると、チームは8月3日のロッテ戦まで5連勝と再び上位へと近づいた。しかし抑えの切り札不在は相変わらずで、8月10日のキア戦は6点差を追いつかれ、チョン・チャンホン、シン・ジョンナクが逆転を許しサヨナラ負けを喫した。8月18日のSK戦に敗れ5位に後退するなど、徐々に沈滞ムードが漂い始めた。
 8月22日から27日までNC、ロッテ、トゥサンと上位争いをする3チームとの6試合で1勝4敗1分けと勝てずに7位にまで後退した。さらにローニーは調子が落ちたと判断され、いったん二軍での調整のため一軍登録から外されたことを不満とし韓国から離れ、そのまま8月29日に退団となった。ローニーの代わりに28歳のキム・ジェユルが4番打者を任されるようになり、内野の主力に成長したヤン・ソックァン、個人通算2200安打を記録する38歳の大打者パク・ヨンテクが主軸を打つようになった。
 9月2日、3日のNC戦で2試合連続完封負けで勝率5割を切るかに思われたが、9月9日のトゥサン戦まで4連勝し5位に浮上した。LGはレギュラーシーズン5位を確保し、2年連続ポストシーズン進出を目標として戦うことになったが、他球団より雨天中止の試合が多かったため9月19日以降の追加日程が連戦続きで厳しいものとなり、残り試合数の少なかった5位争いの相手SKやネクセンより不利であった。
 そしてポストシーズン進出が絶望的となっていたKT、ハンファとの9月14日から20日までの6試合で1勝しかできず、7位にまで後退してしまった。迫力不足の打線ではカン・スンホ、アン・イックンなど若手の起用が目立つようになり、9月23日のNC戦で勝利し6位に浮上と5位以内に一縷の望みをつないだ。その後7位に後退し、9月29日のトゥサン戦で敗れレギュラーシーズン6位以下が確定し、2年連続ポストシーズン進出に失敗した。9月30日のサムソン戦に勝利し6位に浮上、残り2試合ともに敗れたがそのまま2017年の戦いを終えた。

 レギュラーシーズンが終了した10月3日、思うような結果を残せなかったため大胆な刷新が図られた。2014年シーズン途中の5月から指揮していたヤン・サンムン監督が成績不振のため辞任し、リュ・ジュンイル新監督の就任が発表された。


2. 【チーム分析】
 2017年のLGは打てなかった、勝ちパターンがつくれなかったといえる。


 チーム防御率4.30は10チーム中1位で、先発の防御率4.11は1位だったが、リリーフの防御率4.71は4位とやや見劣りした。クォリティースタート(先発として6回以上登板し自責点は3以下)は10チーム中3位の62と、長いイニングを消化できていたわけではない。LG3年目の外国人投手ソーサがチーム最多の11勝、FA行使で大型契約を結びサムソンから移籍してきた左腕チャ・ウチャンが10勝と結果を残した。だが2016年は13勝を記録したリュ・ジェグクが8勝、防御率2.38と内容はよかったが故障で19試合の登板にとどまったハフは6勝と期待を裏切った。2017年より先発に転向した24歳のイム・チャンギュが6勝、20歳の若手キム・デヒョンが5勝と、今後につながる起用も見られた。
 リリーフでは10チーム中最多の75試合に登板し、最多ホールド(24)の個人タイトルを受賞した左腕チン・ヘスが最も目立った。チーム最多の10セーブを記録したシン・ジョンナクはそのうち5月までに8セーブで、その後は主に中継ぎで12ホールドを記録した。チョン・チャンホン(8勝7セーブ)、キム・ジヨン、イ・ドンヒョンなど中継ぎ陣は10チーム中最多の66ホールドと充実していたが、2016年は28セーブを記録したイム・ジョンウの故障が響き、抑えの切り札を欠き勝ちパターンを作れなかった。また19歳の高卒新人コ・ウソクがリリーフで25試合に登板と、こちらも将来を見据えた起用だった。


 チーム打率.281は10チーム中7位、チーム総得点699は9位、チーム本塁打数110は最下位と攻撃力は弱かった。チーム最年長の38歳のパク・ヨンテクがチーム最多の138試合に出場、90打点を記録し、打率.344と衰えを知らない姿は称賛に値するが、それを超える選手がいないのが問題だった。打撃面で成長を見せたのは14本塁打・83打点を記録した内野のヤン・ソックァン、チーム最多の17本塁打を記録した捕手ユ・ガンナム、外野のレギュラーに定着しチーム最多の11盗塁を記録したイ・ヒョンジョンくらいだった。
 主力としての活躍が期待された外野のチェ・ウンソン、ショートのオ・ジファンは故障や不振で十分な働きができなかった。一方で23歳の内野のカン・スンホ、21歳の外野のアン・イックンが8月以降盛んに起用され、今後の可能性を感じさせた。9月以降4番打者として起用されるようになった28歳のキム・ジェユルは6本塁打と、遅咲きながらその才能を発揮し始めた。
 2015年5月からLGに所属し、2016年は4番打者として活躍していた外国人野手ヒメネスも大誤算だった。5月以降不振に陥り51試合のみの出場、7本塁打30打点の成績で7月に退団した。代役のローニーも23試合のみに出場、8月中に帰国して退団とこちらも期待を裏切った。
 

 2017年のLGは、頭数がそろい防御率こそ低かったが5位以上のチームのように不動のエース級がいなかった先発陣、そして抑えの切り札不在で投手起用も悩みどころが多く、攻撃面でも不動の4番打者不在で故障や不振で期待を裏切った選手も少なくはなく、投打がかみ合わない印象だった。守備も主力の故障や不振などで流動的な起用が目立った内野の連携を中心に不安な面が目立った。



3. 【オフシーズンの動向】
 オフシーズンの動きは早く、レギュラーシーズン終了と同時に2011年から2014年までサムソンを韓国シリーズ4連覇に導いたリュ・ジュンイル新監督の就任が発表された。そしてかつてトゥサンの主軸打者として活躍し、2017年はMLBボルティモアオリオールズフィラデルフィアフィリーズに所属したキム・ヒョンスと4年115億ウォンの大型契約を結び、プロ野球界に衝撃を与えた。
 また2017年も100試合以上に出場した2人のベテラン内野手も整理し、世代交代を推し進めた。37歳のチョン・ソンフンは自由契約となり(2018年は古巣キアと契約)、34歳のソン・ジュインは余剰戦力を対象とした2次ドラフトで古巣サムソンから指名され移籍した。この2次ドラフトではイ・ビョンギュ(背番号7)がロッテ、ユ・ウォンサンがNCから指名され、かつての投打の主力選手もLGから去った。
 外国人選手ではソーサのみ再契約し、年俸交渉が不調だったとみられるハフは日本プロ野球東京ヤクルトへ移籍した。新外国人選手はタイラー・ウィルソン投手、アドニス・ガルシア内野手MLBでの実績のある2名となった。


 2018年のLGは、リュ・ジュンイル新監督のもと2年ぶりのポストシーズン進出を目指すことになると思われる。最大の注目は2015年以来の韓国復帰を果たしたキム・ヒョンスとなるであろうが、ヤン・サンムン監督が掲げていたチームのリビルディング(再建)をさらに進め、1994年以来となる韓国シリーズ優勝を狙えるチームをどのように築いていくのか注目したい。


(文責:ふるりん