- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2008/11/22
- メディア: 単行本
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Amazonで買えるようになっていました.『数学ガール 上 (MFコミックス フラッパーシリーズ)』と一緒に,購入しました.
旧版のほうは,2004年度から3年間,情報セキュリティの授業で教科書として使用してきましたが,その本1冊では,自分が授業で取り上げたい(学生に理解してほしい)ことの半分程度になることがわかりまして,それと自習に授業終了後に,活用が難しいなと感じまして,2007年度から外しました.
新版をざっと読みまして,旧版に比べて図が増えましたが,
- 鍵配布センターによる鍵配送問題の解決(pp.109-110)でman-in-the-middle攻撃を考慮していない*1
- RSAの鍵生成で,E×D mod L = 1という式から(E, Lが既知で)Dを求める効率のよい方法が書かれていない
の2点については変更なしです.まあいずれについても,多く方々によるレビューで見過ごすわけはなく,著者の判断で書かないことにしたのでしょう.自分の授業では,面白い所だし,後者は拡張ユークリッドの互除法として有名な話なので,取り上げています.
ということもありまして,現時点では教科書復活は保留中です.シラバスを書くのは年明けですので,またそのときに考えるとします.
ついでなので,情報セキュリティと工学とのかかわり,学科授業における情報セキュリティの科目の位置付けについて,整理してみました.ポイントは3つで,
- 情報理論,情報ネットワークI,情報ネットワークIIの学習内容を踏まえて*2,安全に情報をやりとりする技法を学ぶこと
- たいていの場合,状況を適切に定めれば,そのニーズを満足する技法が存在すること(自分で作る必要はなく,しばしばそれは「先人の知恵」よりも安全性などが劣ること)
- 基礎となる技法が安全であっても,それを用いたシステムが安全であるとは限らないこと
だと考えています.最後の項目は,「暗号化の反対は復号化ではなく復号」と同じく,学生時代に叩きこまれました.